著者
沖林 洋平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.133-136, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
6

本研究では,知的好奇心と授業に対する興味および授業内容の定着度の関係について検討した.本研究では,学習者が主体的に考える活動として,動画視聴や関連する課題を行った後,グループでの意見交流を行った.受講者を対象として,知的好奇心尺度と大学生用興味尺度および授業内容定着度調査を実施した.その結果,特殊的好奇心と興味対象関連の知識が内容定着と関連が見られることが明らかとなった.また,特殊的好奇心と授業内容定着度の関係について,興味対象関連の知識の調整効果がみられた.本研究により,興味対象関連の知識は特殊的好奇心と授業内容の定着に関連することが示された.
著者
矢部 隆 Takashi YABE
雑誌
コミュニティ政策研究 = Studies in community policy
巻号頁・発行日
vol.9, pp.21-39, 2007-03

都市部にある愛知県名古屋市川原神社の境内の池でカメの捕獲調査をし、カメの種類相や生息状況を調べた。1985年には池の岸から2mの柄のたも網によりカメを捕獲し、2003年には排水された池の底に残されたほぼ全数のカメを集めた。1985年に捕獲された110個体のカメの内訳はニホンイシガメ76個体(69.1%)、クサガメ12個体(10.9%)、ミシシッピアカミミガメ21個体(19.1%)、ニホンイシガメとクサガメの交雑個体1個体(0.9%)であった。一方2003年に集められた574個体のカメには202個体(35.2%)のニホンイシガメ、109個体(19.0%)のクサガメ、254個体(44.3%)のミシシッピアカミミガメ、4個体(0.7%)のニホンイシガメとクサガメの交雑、そして2個体(0.3%)のスッポンが含まれていたほか、変わったカメとしてハナガメ2個体、セマルハコガメ1個体が見つかった。外来のカメであるミシシッピアカミミガメの増加は著しく、食物や日光浴、越冬、産卵などの場所などの生活にかかわる資源を巡る競合を通じて、在来のカメの生存を脅かすことが懸念される。ニホンイシガメは減少が著しく、しかもオスの個体数が著しく少なく、個体群が崩壊の危機にあるかも知れない。クサガメとスッポンはそれぞれペット、食用に利用される種で、本調査地の個体群にも在来の個体のほか、流通の結果放逐された外来の個体がいる可能性があり、在来の個体と交雑して個体群の遺伝子を汚染する危険がある。2003年の調査には次のような点で社会的意義が認められる。つまり地域コミュニティの地元市民がカメの収集作業に多数参加した。そして古くからの神聖な場所として在来の生物の生息場所として重要である一方、外来生物の放逐場所にもなりやすい神社という環境において、在来のカメの保護をどうするのか、外来のカメの扱いをどうするのかを研究者である著者とともに議論し、考察した。
著者
橋本 智己 櫻井 友之 宇田川 裕二 高倉 保幸 浜田 利満 赤澤 とし子 山本 満
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第26回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.156, 2010 (Released:2010-11-05)

本稿では,仮想空間内の街中を散策することで日常生活動作の訓練をする,足踏み式歩行シミュレータを開発し,高齢者と若年者で運動機能と認知機能の比較を行ない,本シミュレータの使用方法について検討する.開発したシステムは,PC,バランスWiiボード,ハンドル,ケージからなり,ボード上で足踏みすると仮想市街を歩くことができる.2009年11月~2010年5月,高齢者5人(男性3人,女性2人),若年者9人(男性9人)が本システムを利用した.運動機能が衰えていなくても認知機能が低下する傾向があることや,課題の難易度が上がることで注意が分散されることが示唆された.これらの結果を踏まえ,本システムの利用方法について検討した.
著者
石塚 譲 出雲 章久 安松谷 恵子 西田 眞治 斉藤 恵子
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.11-16, 2016-02-25 (Released:2016-03-26)
参考文献数
29
被引用文献数
1

我が国における現在のブロイラー(Ross 308)雄の血液生化学検査値の基準範囲の一つを示すことを目的として,14項目について21,28,35,42および49日齢の値を比較した.49日齢の平均体重は3696.2gであった.トリグリセライド値は日齢とともに増加したが(106.1mg/dL,平均値),49日齢で急激に減少した(P<0.0001).アルカリフォスファターゼ値は日齢とともに減少し(P=0.0333),逆に,アスパラギン酸トランスアミナーゼ値(P<0.0001),クレアチンキナーゼ値(P<0.0001)および乳酸脱水素酵素値(P=0.0012)は,日齢とともに増加した.本試験での乳酸脱水素酵素値(6420U/L)およびクレアチンキナーゼ値(51020U/L)は,既報と比較して約2倍の値であった.総タンパク質,アルブミン,血糖,尿酸およびアスパラギン酸トランスアミナーゼの各値は既報と大差はなかった.本結果では,血清酵素値が既報と比較して高かった.これは,筋肉の急成長を目指した改良が進められた結果と考えられ,我が国の現在のブロイラーでは基準範囲であると考えた.
著者
押田 敏雄 猪股 智夫 英 俊征 佐藤 憲明 氷熊 謙二 矢山 和宏 小西 信一郎
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.58-62, 1992-06-20 (Released:2011-06-08)
参考文献数
13

豚血液の生化学成分の測定について血清を用いた場合と血漿を用いた場合の濃度差を比較し, あわせてそれぞれの溶血傾向について検討し, 以下の成績を得た。溶血程度を吸光度測定 (日豚会誌. 25. 1988) で比較し, 血清および血漿の溶血程度を区分した場合, 血清では-が53.3%, ±が33.3%, +が6.7%, ++が6.7%を占めたのに対し, 血漿では-が46.6%, ±が16.7%, +が20.0%, ++が16.7%を占めた。生化学成分の測定値について血清と血漿を比較した結果, 血清と血漿で差がないものとしてAlb, BUN, Na, K, Cl, ALP, CPK, GPT, LDH, Glu, T-chol および Tri-G があげられ, 差があるものとしてTP, T-bil, Cre, Ca, GGTおよびGOTがあげられた。血清と血漿の測定値で差があった項目について, 相関をみると, すべての項目について, 両者の間には有意な相関が成立した。さらに, 相関係数が0.7以上, 回帰係数が0.7~1.2の範囲のものとしては, TPおよびCaがあげられた。
著者
那須 義次 荒尾 未来 重松 貴樹 屋宜 禎央 広渡 俊哉 村濱 史郎 松室 裕之 上田 恵介
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.47-58, 2019-08-31 (Released:2019-09-12)
参考文献数
39

The insect fauna in Ryukyu Ruddy Kingfisher nests was investigated on Iriomote-jima, Ishigaki-jima and Miyako-jima Is., Okinawa, Japan. Kingfishers on Iriomote-jima and Ishigaki-jima Is., where Takasago termites which make ball-like nests on trees are distributed, often dig nesting holes in the termite nests, but they excavate holes in decayed trees on Miyako-jima I. where the termites are not present. Moths belonging to the family Tineidae were found to be the main symbiotic insects in the nests, and eight moth species, including two species considered to be undescribed or newly recorded species from Japan, were confirmed. The differences in moth faunas of the kingfisher nests between the three islands are discussed.
著者
森 耕平 久保田 雄大
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会論文誌 (ISSN:13425668)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.66-71, 2017-02-15 (Released:2017-05-15)
参考文献数
12

We describe a tractable numerical procedure using polynomial kernel functions to prove the nonexistence of Lyapunov functions. The algorithm terminates in polynomial time of the dimension of the state space, the number of sample states, the degree of the polynomials appear in the system,and the degree of the Lyapunov candidate polynomial functions. The algorithm is also avairable to construct Lyapunov functions with SOS techniques. We demonstrate the appearance by some simple numerical examples.
著者
Julie Brock ジュリー ブロック
巻号頁・発行日
2002-03-01

加藤周一を世に知らしめた1955年の論文『日本文化の雑種性』における、日本文化の雑種性、フランス文化の純粋性という二項対立を見直し、雑種性の概念の普遍性を主張した。まず、加藤周一の思想の根底にある比較文化研究者としての視点を解明するために、なぜ「雑種性」が加藤周一の業績の根幹であるかという理由を述べ、そこに展開される思想の概略をまとめた。その上で加藤と同じ方法論に立脚しながら「雑種性」の中核をなしている文化の雑種性という概念の普遍性を証明し、それが現代の若い世代にとってもなお、より豊かで創造的な社会の基本原理であることを指摘した。京都工芸繊維大学 工芸学部研究報告 第50巻 人文(2001) pp.167-175
著者
川堀 眞一 荒川 卓哉 田中 研 野中 聡
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.809-815, 1994-06-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
16

The parapharyngeal region of one cadaver was dissected, and enhanced CT scans and T1 weighted MRI of three normal persons from the skull base to the hyoid bone were performed. Three-dimensional reconstruction of the parapharyngeal space was carried out on the basis of CT images. We examined the relationship between the parapharyngeal space which consisted mainly of fatty tissue and the surrounding structures. Our findings seem to be useful for the understanding of the shape and location of the parapharyngeal space and the clinical understanding of parapharyngeal space tumors. We discussed the differences between the parapharyngeal space and the carotid space with the 9th-12th cranial nerves, sympathetic chain, carotid artery and jugular vein.
著者
吉川 健治 外山 和隆 戸口 啓介 山口 拓也 平林 邦昭
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.713-716, 2011-07-31 (Released:2011-09-14)
参考文献数
14
被引用文献数
1

絞扼性イレウスでは,高率に腹水が出現する。今回,絞扼性イレウスにおける腹水が腸管虚血がどの程度進行した段階で生じるのかを明らかにする。対象と方法:緊急開腹手術が施行された絞扼性イレウス20例を6例の壊死群,14例の非壊死群に分け,以下の項目を比較検討した。1.両群の初診時の腹水の出現率 2.SIRS陽性率 3.血液生化学的検査値(CRP,PK,LDH)異常の出現率。結果:SIRS陽性率,血液生化学的検査値の異常値出現率のいずれも壊死群,非壊死群で有意差は認めなかった。SIRS陽性率は壊死群33% 非壊死例21%であった。一方,腹水出現率は壊死群100%,非壊死群で86%であった。結語:絞扼性イレウスにおける腹水の出現は,腸管壊死前でさらにSIRS項目,血液生化学的異常値が出現する以前に出現すると考えられる。