著者
茂本 咲子 奈良間 美保
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.28-35, 2011
参考文献数
13

本研究の目的は、早産で出生した乳児を養育する母親の育児困難感の特徴と関連要因を明らかにすることである。無記名自記式質問紙調査を行い、平均月齢6.3±2.7か月、平均出生週数31.5±2.9週、平均出生体重1456±478gの早産児の母親と、平均月齢6.2±2.6か月の正期産児の母親各23名の回答を分析した。早産児の母親が認識する育児困難感の中央値は16点で、正期産児と比べて高くなかったが、妊娠中に夫や家族の理解を得ること、夫が育児の相談にのってくれることに対してネガティブに捉えていた。早産児の母親の育児困難感は、夫の心身不調、母親の不安・抑うつ傾向と正の相関、NICU退院後の経過期間と負の相関が認められた。早産児の母親の育児困難感を軽減するためには、早産児との関わりや家族のサポートに対する母親の認識に着目し、NICU入院中から退院後間もない時期に支援を行うことが重要だと考えられた。
著者
久保 仁美 今井 彩 阿久澤 智恵子 松﨑 奈々子 金泉 志保美 佐光 恵子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.18-26, 2018

<p> 本研究の目的は、NICU入院児の母親への退院支援に対する熟練看護師の認識を明らかにすることである。5年以上のNICU勤務経験を有する熟練看護師12名を対象に、退院支援の認識について半構成的面接調査を行い、Berelson. Bの内容分析を行った。結果238コードから、49サブカテゴリー、15カテゴリー、6コアカテゴリーが生成された。6コアカテゴリーは、【母子関係・母親-看護師関係を構築し深める】、【出産後のプロセスを支える一貫した支援】、【退院後の育児を見据える】、【退院調整に多職種でかかわる】、【退院後の母子の生活を知りNICUでの退院支援を評価する】、【妊娠中から退院支援が始まる】であった。熟練看護師は、出産後のプロセスを支える一貫した退院支援の認識を基盤とし、各時期における退院支援の認識を相互に補完し合い、母親への退院支援に結びついていることが示唆された。</p>
著者
表 摩耶 脇本 裕 亀井 秀剛 浮田 祐司 原田 佳世子 福井 淳史 田中 宏幸 柴原 浩章
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.134-142, 2018

<p>慢性早剥羊水過少症候群(chronic abruption oligohydramnios sequence;CAOS)は,一般に周産期予後は不良で初回出血の週数が早いほど予後が悪いとされている.今回,われわれは異なる経過をたどり,CAOSの予後規定因子について示唆に富む2症例を経験したので報告する.症例1は妊娠14週4日より性器出血と絨毛膜下血腫(sub-chorionic hematoma;SCH)を認め,妊娠23週4日に腹痛と多量の性器出血により当院に救急搬送され入院管理となった.入院後も性器出血は持続し,妊娠24週1日で羊水過少を認めCAOSと診断した.妊娠31週6日に陣痛が発来し経腟分娩となり健児を得た.胎盤病理は絨毛膜羊膜炎(chorioamnionitis;CAM)を認めなかった.症例2は妊娠15週4日に性器出血を認め当院に受診し,SCHを認めた.妊娠16週1日より持続する性器出血と子宮収縮を認め入院管理とした.同時期より羊水過少を認めCAOSと診断した.妊娠21週3日より子宮内胎児発育停止を認め,妊娠24週1日で子宮内胎児死亡となり,妊娠24週6日に経腟分娩した.胎盤病理はCAM III度であった.2例の経過を比較すると,CAOSにおいてもCAMという炎症の長期持続が児の予後不良因子であった可能性が示唆された.SCHに羊水過少を認めた場合はCAOSを念頭に,児の関連合併症に注目するとNICU併設の高次医療機関での周産期管理が推奨できる.〔産婦の進歩70(2):134-142, 2018(平成30年5月)〕</p>
著者
松村 圭一郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.141-164, 2007

本稿は、エチオピア西南部の多様な民族が居住する農村社会を対象に、土地から生み出される作物などの富がどのような手続きをへて、誰の手に渡っていくのか、富の所有と分配という問いを考察する。とくに「分け与えること」と「与えずに自分のものにすること」をめぐる人びとの相互行為から、所有や分配を支えている力学を浮き彫りにしたい。IIでは、農作物の分配行動に注目する。作物が収穫されたとき、雨季で食糧が不足するとき、持つ者は持たざる者から乞われたり、自発的に与えたりしている。じっさいに農民たちが誰にどのようなものを与えているか、具体的事例を分析することで、身近な親族から見知らぬ物乞いまで、さまざまな相手に対して富が分配されている実態を明らかにする。IIIでは、与える相手ごとの分配行動の差異に注目する。相手との社会関係が違うことで、分け与える背景にどのような違いがでるのか。「親族」と「よそ者」という対照的な相手に対する分配の事例から、それぞれに異なる動機が分配を促すきっかけとなっている可能性を示す。IVでは、人びとの分配をめぐる意識や葛藤について分析する。分配を定める宗教的な規律がある一方で、人びとは与えすぎると自分が困るというジレンマを抱えている。貧しい者が分配を受けるために行う働きかけのあり方と、与え手が分配を回避する事例から、与え手と受け手との相互行為において「分け与えること」と「与えずに自分のものにすること」が交渉されている点を指摘する。そして、Vで互酬性の議論を再検討しながら、「分け与える」という行為を支える相互的な「働きかけ」の重要性を提起する。
著者
根本 裕史
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、ゲルク派の創始者ツォンカパの時間論と業報思想についての考察を通じて彼がインド仏教中観帰謬派の思想体系をどのように解釈しているか明らかにすることである。本年度はまず彼の『中論大註』および講義録『現量章疏』に依拠して、時間に関する表現の問題について検討した。彼は未来を「事物の未生起状態」と定義し、過去を「事物の消滅状態」と定義する。その結果、三つの時間は話者の属する時間とは無関係に措定され、無時制的な時間表現が可能となる。以上のことを英語論文"Tsong kha pa on the Three Times: New Light on the Buddhist Theory of Time"としてまとめた。つぎに、ツォンカパの『密意解明』に依拠して、彼が自身の時間論を応用して独自の業報思想解釈を展開している点を解明した。彼によれば過去になされた業は「業の消滅状態」として存在しており、その消滅状態が中観帰謬派の学説では効果的事物(結果を生み出す能力を具えた存在)とされる。それゆえ、ツォンカパが理解する帰謬派の学説では、唯識派が説くようなアーラヤ識の存在を前提とする業異熟の理論ではなく、業の消滅状態そのものが果をもたらすのだという独特の理論が採用される。以上のことを英語論文"Tsong kha pa on the Madhyamakavatara VI 39"として発表した。ツォンカパや後代のゲルク派の時間論を解明するためには、チベット語意味論の観点からの分析が必要である。本年度は「ドゥラ」とよばれる問答の手引書を精査し、チベット語の限定詞kho naが適用された場合にどのような命題解釈ができるか、特にrtag pa kho na(「常住なものだけ」)の有無をめぐる議論について考察した。その成果を第14回世界サンスクリット学会にて発表した。
著者
山口 豊 Yutaka Yamaguchi
出版者
武庫川女子大学大学院文学研究科教育学専攻『教育学研究論集』編集委員会
雑誌
教育学研究論集 (ISSN:21877432)
巻号頁・発行日
no.13, pp.9-16, 2018-03

本研究の目的は,言文一致がまだ行われていない幕末のことばの様相を『海外新聞』という,幕府をはじめ大名などの権力者から制約を受けることがなかった素材を取り上げ,口語文としての兆しがどのような所に,どのような形で現れるのかということについて用例をあげて調査し,言文乖離の状況下で言文一致へと向かう様子について考察することである。そのために,『海外新聞』の持つ意義や作者たちについて触れ,ついで文語文にまぎれた口語文要素を文法面,表記面から総索引を活用して用例を拾い上げた。その結果,文法面では下二段活用の下一段化が,表記面では発音通りの表記が多く見られることを確認した。さらに外国語表記には一定性がなく,聞こえた通りの音をカタカナ表記しており,当時の人々がどのように聞こえていたのかを知る手掛かりとなることを指摘した。
著者
静間 清 横畑 憲二 稲田 晋宣
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院工学研究科研究報告 (ISSN:00182060)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.87-93, 2004-12

A new low-background shielding was installed for a Ge detector. Background gamma-ray spectrum was measured and compared with that of old shielding to investigate how improved the background counting rate. Additional improvements for the new shielding was installed to reduce background counting rate. It has been shown that shielding of the neck part of Ge detector cryostat and concrete floor are effective to reduce background contribution. The reduction factor of ^<40>K 1461 keV gamma-ray was much improved from 51 of old shield to 4290 of new shield.

1 0 0 0 OA 実用高等数学

著者
堀乙次郎 編
出版者
海事教育振興会
巻号頁・発行日
vol.上巻, 1933
著者
工藤暢須 著
出版者
中興館
巻号頁・発行日
vol.附録 地理実習器機器具研究法, 1925