著者
赤坂 貴志 飯塚 佳代
出版者
専修大学情報科学研究所
雑誌
専修大学情報科学研究所所報
巻号頁・発行日
vol.92, pp.7-11, 2018-07-31 (Released:2018-10-05)

私たちの生活を取り巻くものとしてスマートフォンは欠かせないものとなりつつある.スマートフォンの利用者増加に伴いソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用者も増加傾向にある.本研究では,現代社会における若者へのSNSの浸透の深さに着目し,インスタグラム利用者におけるファッションの購買行動について19歳~30歳の若者を対象に調査を行い,ファッション認識・行動にInstagramがどのように影響するかについて分析を行った. Smartphones are becoming indispensable in our modern human lifestyles. In accord with the increasing of the smartphone users, social networking services (SNS) users are also increasing. In this paper, the authors analyzed how Instagram impacts the awareness and behavior of young people (from 19 to 30 years old)'s fashion under the condition that Instagram is spreading to them.
著者
赤嶺 光
出版者
日本草地学会
雑誌
日草誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.286-290, 2008
参考文献数
12

暖地型牧草による自給飼料生産基盤の特性。沖縄の各島々は隆起サンゴ礁によって形成され、海岸線は特色のある海浜植生でおおわれている。サンゴ礁は、熱帯性の海洋環境で形成されるものであり、わが国では琉球列島にのみ見られる。ここに発達した植生は、熱帯に類似性を示し、マングローブ植生と共に熱帯海浜植生の北限に当たるもので最も沖縄らしい植生といわれている。隆起サンゴ礁上の海岸植生をみると、海水のしぶきを浴びるようなところに群生するイソフザギ群落、それに続いてコウライシバ群落やイソマツ・モクビャッコウ群落がある。さらに内陸には、ミズガンピ群落、クサトベラ・モンパノキ群集となりアダン群集へと続く。このような礁原に見られる植生が、亜熱帯沖縄を特徴付ける景観を形成している。海岸の隆起サンゴ礁の風化が進んだ平坦地には、コウライシバが、風衝性の植物群落として発達したのを見ることができる。沖縄本島恩納村万座毛や国頭村辺戸岬、久米島北海岸、宮古島東平安名崎、石垣島御神崎などである。また、沖縄本島より南西へ約500 kmに位置する与那国島には、このようなコウライシバ群落を利用した放牧が行われている。そのため、コウライシバを優占草種とする広いシバ型草地が出現し、放牧家畜の存在と相まって与那国島独自の景観を呈している。
出版者
BOC出版部

特集 長谷川テルを辿る旅 今こそ長谷川テルの勇気に学ぼう/岩垂弘テルの軌跡を辿り、戦争阻止の誓いを新たに長谷川テルを辿る中国の旅 その概要長谷川テル・暁子の足跡(年表)長谷川テルと有事法制―日中戦争反対を叫んだラジオ放送の主に想う/坂井尚美自分を確かめる旅/有元幹明「平和」と「人権」を考えた旅/岩田淑子長谷川テルと日中交友について/竹内康長谷川テルの魂にふれて/田村豊死者と出会う旅/橋本幸子前事不忘、后事之師/芹澤礼子母に、そして良心に恥じない生き方を続ける/長谷川暁子「旅のスコア」/西原東洋子「失くした二つのリンゴ」を朗読して/木田日登美遥かなる大地を訪れて/西村雅芳<詩>失くした二つのリンゴ―病床にて/長谷川テル歴史の見方が変わった旅/宮崎和子長谷川テルを辿る旅に参加して/宮本兼次反ファシズムを貫いた「長谷川テル」に逢う!/宮原進意義ある旅の体験/山口鞆絵「戦争」を問う旅/斎藤千代旅行業に関る者として/西島善治旅を企画して/澤田和子めじゃーなりすとのめ 取材中の疑問から生まれた連載/佐藤圭子ぐるーぷ紹介 戦争を許さない女たちのJR連絡会/中国残留婦人交流の会読書室 赤い夕陽と黒い大地 ほかあごらめいと さわやかで頼もしい憲法の守り手 木瀬慶子さん語りかけたいあなたへ 49 ため息/大里知子TOPICS 松井やよりさん、女性平和資料館を呼びかけ/東京都に初の女性区長ほか集会から 日米地位協定改定と損害賠償法制定を考える合同会議 ほか;あごらのあごら 『あごら』やめるな!の声が殺到/新入会員からほか目次で振り返る『あごら』30年(7) (1986年12月~1987年12月)
著者
平原 友紀 矢野 興一 星野 卓二
出版者
日本植物分類学会
雑誌
日本植物分類学会誌 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.23-30, 2007
参考文献数
21
被引用文献数
1

ビャッコイ(Isolepis crassiuscula Hook, f.)は日本とインドネシア,パプアニューギニア,オーストラリア,ニュージーランドに分布することが報告されている.日本では福島県白河市のみに生育しており,絶滅危惧種(IB)に指定されている.本研究では日本産ビャッコイの染色体と葉緑体遺伝子の解析を行った.その結果,ビャッコイの染色体数は2n=96であり,今までに報告されたビャッコイ属の他種よりも高次の染色体数を持つことが明らかになった.また,ビャッコイ属10種について葉緑体rbcL遺伝子とtrnL intron傾城の比較を行なった結果,日本産ビャッコイは同属9種よりも,オーストラリア産ビャッコイと相同性が高いことが明らかになった.
著者
広瀬 正幸 伊藤 琢巳 松原 仁 Masayuki Hirose Takumi Ito Hitoshi Matsubara
雑誌
人工知能学会誌 = Journal of Japanese Society for Artificial Intelligence (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.452-460, 1998-05-01

Several techniques have been developed to solve puzzle problems in conventional AI, but there are few attempts to compose problems automatically by computers. Tsume-Shogi, a mating problem of Japanese Chess, is a kind of puzzles that is created and solved according to specific rules. This paper presents a system to compose Tsume-Shogi problems by reverse method. The search space increases enormously when the reverse method is adopted, but we can reduce it by using some constraints. We conducted several experiments with our method to compose Tsume-Shogi problems and showed that our system could compose some good short Tsume-Shogi problems and some special Kyuku-Tsume problems.
著者
麦島 剛 上野 行良 中村 晋介 本多 潤子
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.85-91, 2006-11-30

軽微な犯罪の早期解決がそれより重大な犯罪を抑止するという考え方を割れ窓理論 (broken windows theory)という。現在では、環境悪化放置の防止が地域の犯罪の抑止となる、 という観点から議論されることも多い。この理論の実践は1990年代半ばから米国において警察主導の取り組みとして始まった。最近は、日本でも地域住民主体による落書き防止などの取り組みとして盛んになっている。本研究は、地域環境悪化の放置および地域に立地する各種施設と、中学生の非行容認度との間にどのような関係があるのかを検討し、非行防止対策への手がかりとすることを目的とした。 福岡県内の中学2年生と矯正施設入所等中学生に対し、質問紙により以下の点を調査した。1)校区の悪化環境の放置に関する認識について、2)校区に立地する各種施設について、3)非行の容認について。その結果、悪化環境が放置されていると考える中学生は非行の容認度が高いことが示唆された。いっぽう少年院等の中学生は、悪化が放置された環境で暮らしていたと考える率が低かった。自らの住む環境の悪化が放置されていると感じるとき、中学生は非行を絶対悪だと考えなくなるが、放置状態に対して無頓着になると、実際に非行を犯す可能性が高まるとも考えられる。また、校区に、ギャンブル場などがあると答えた中学生において非行を許す程度が高かった。さらに、どんな施設であっても、立地する場合に環境が悪化していると認識する率が高かった。 以上の知見を踏まえると、落書きやゴミ放置などの公衆ルール違反を即急に解決することは、中学生が非行を許さないと考えることにつながる可能性がある。犯罪の低減と同様、割れ窓理論にもとづく具体的な取り組みが非行防止の一助となると考えられる。
著者
中本 佳紀
出版者
京都大学教育行政学研究室
雑誌
教育行財政論叢 = Reviews in Educational Administration and Finance
巻号頁・発行日
vol.12, pp.25-38, 2013-03-31

The purpose of this paper is to reconsider the role of Aritomo Yamagata in the process of making "the Imperial Rescript on Education"("IRE"). On the basis of "Hikki" and "Gunbiiken" , the previous studies conclude that Yamagata' s action concerning "IRE" was aimed at promulgation of "IRE" . According to the analysis of this paper, however, it has become clear that those documents are not appropriate to conclude that Yamagata' s action was aimed at the promulgation of "IRE" .Thus, this paper examines Yamagata' s action in the process of making "IRE" in terms of the political issues he tried to solve. The important acts by Yamagata concerning the formation of "IRE" are the following : 1. He took up the matter of moral education in the Cabinet meeting after the Local Governors' proposal for moral education reform. 2. He appointed Yoshikawa Akimasa as the Minister of Education. This thesis concludes that his having taken up the matter of moral education was related to his desires to implement the local autonomy system smoothly, to unite the members of the Cabinet. And it is clear that his having appointed Yoshikawa Akimasa as the Minister of Education was also related to his desire to choose a person who would follow him. It means that Yamagata' s action concerning the formation of "IRE" was relevant to the political issues he tried to solve, and as a result, his action led to the promulgation of "IRE" .
著者
中島 春生
出版者
別府史談会
雑誌
別府史談
巻号頁・発行日
no.29, pp.46-50, 2016-03
著者
間遠 伸一郎
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学国際学部研究論集 (ISSN:13420364)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.59-116, 1997-03-31
被引用文献数
1
著者
池田 裕
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

第一に、当該年度は日本における争点態度の構造を検討した。「政治と科学に関する意識調査」(PIAS調査)のデータを用いた分析によれば、憲法改正・原子力発電所・集団的自衛権・靖国神社・尖閣諸島・道徳教育・生活保護・女性管理職・保育サービス・夫婦別姓・同性結婚のなかで、最も人気があるのは尖閣諸島・生活保護であり、最も人気がないのは原子力発電所・靖国神社である。11項目の争点態度は、自民党政治・伝統的秩序・社会的平等・家族多様性の四つの次元を構成する。この四つの次元は、互いに独立しているのではなく、互いに関連している。加えて、保革自己イメージは四つの因子のすべてを有意に予測する。具体的には、自身を保守的だと考える人ほど、自民党政治と伝統的秩序に好意的で、社会的平等と家族多様性に好意的でない。第二に、当該年度は保革自己イメージと政府支出への支持の関係を検討した。日本版総合的社会調査(JGSS)のデータを用いた分析によれば、環境保護・犯罪取締・教育・安全保障・社会保障・雇用対策のなかで、最も人気があるのは社会保障であり、最も人気がないのは安全保障である。6項目のあいだの相関は、単一因子によって十分に説明される。線形回帰モデルにおいて、政府支出への支持に対する保守主義の効果は統計的に有意でない。しかし、分位点回帰の結果は、条件付き分布の中位の分位点に対して、保守主義が有意な負の効果を持つことを示している。それゆえに、自身を保守的だと考える人ほど、政府支出の増加を支持する傾向が弱いという仮説は部分的に支持される。日本では、有権者のイデオロギー的立場が、社会福祉への選好や小さな政府への選好とほとんど相関しないとされている。それに対して、本研究の結果は、社会的平等や政府支出に関して、保守と革新のあいだに意見の隔たりがあることを示している。保守と革新の対立は深刻でないが、無視することはできない。
著者
河崎 隆文 打越 大成 岩本 健嗣 松本 三千人 米澤 拓郎 中澤 仁 徳田 英幸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告高度交通システムとスマートコミュニティ(ITS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.3, pp.1-8, 2015-02-25

全国の道路で老朽化が進行している.そのため,自治体による道路の維持管理がより一層求められているが,点検には特殊な車両が必要になり,そのコストが負担となる.また,車両の数が限られていることから,一度に点検できる範囲に限度が生じ,広域における点検が困難である.そこで,自治体の所有するごみ収集車やコミュニティバスなどの公用車の利活用によって,コストの低減や点検の広域化を図るため,本研究では特殊な車両を使用しない道路の点検手法を実現する.本稿では,路面標示の状態収集に着目し,天球カメラと半天球カメラを用いて路面標示を撮影し,その画像から擦り切れの有無を検出する手法を提案する.本稿の実験では天球カメラの RICOH THETA と半天球カメラの QBiC D1 を使用し,それぞれ車両に取り付けて走行した際の撮影と検出実験を行った.
著者
池田 亮作 日下 博幸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

都市の気温は, 都市化の影響を大きく受けていると考えられており, 都市の暑熱環境の悪化は, 熱中症など都市住民の健康にも影響を与えうると不安視されている. そこで, 街区の風通し, ドライミスト・街路樹の設置などの暑熱環境緩和策への関心が高まっている. これらの効果を, 数値モデルを用いて評価するためには, 街区スケール(10<sup>2</sup>~10<sup>3</sup>m)から建物周辺スケール(10<sup>1</sup>m)の現象を計算できるモデルが必要となる.そのためには, 建物を解像し, 街路樹の効果もモデルに反映させる必要がある.本研究では, 街区・建物周辺スケールのシミュレーションが可能なモデルの開発を行い, 現実都市における熱環境シミュレーションを行った.
著者
岩城 陸奥
出版者
日経BP社
雑誌
日経ネットビジネス (ISSN:13450328)
巻号頁・発行日
no.86, pp.132-135, 2001-11-25

ある時、既存の媒体の担当者と雑談をしていたら、その人がふと、「ネット広告は590億円しかない市場だから、広告主も広告代理店もネットに真剣に取り組めないのではないか?」とつぶやかれました。2000年のネット広告市場の小ささを評して、そう言われたわけですが、「なるほど、そういう見方もあるな」と思った半面、「でも、ちょっと違うかな」と、違和感を覚えました。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ニューメディア (ISSN:02885026)
巻号頁・発行日
no.1488, pp.11-12, 2015-11-09

一方で、ネット広告費市場がテレビ広告費市場を全体として上回るようになってきた。しかしだからといって、テレビ広告の媒体価値がインターネット広告のそれを下回ったとは言えない。テレビ局の数は限られる一方で、ネット広告を請け負う事業者は、星の数ほ…
著者
齋藤 仁 松山 洋
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100075, 2015 (Released:2015-10-05)

1.はじめに 解析雨量(レーダー・アメダス解析雨量、気象庁)は、日本列島における詳細な降水分布や豪雨による災害防止を目的に、1988年4月より運用されてきた。これまでに蓄積された解析雨量を用いることで、確率降水量の算出も可能となると言えるが、詳細な検討は少ない。本研究では、豪雨災害への応用を想定し、解析雨量を用いて、高解像度(5kmグリッド)の再現期間50年の1時間降水量と土壌雨量指数を算出した。 2.手法 1988年4月~2013年12月(26年間)の解析雨量(毎正時1時間降水量)を用いた。対象としたのは、23年以上のデータが得られる地域である(図1)。解析雨量の空間解像度は5kmから2.5km(2001年4月)、2.5kmから1km(2006年1月)と変化しているため、2005年までのデータを5kmへと再編集した(Urita et al., 2011, HRL)。次に、得られたデータに対して、均質性を検定した(Wijngaard et al., 2003, IJC)。そして、1時間降水量と土壌雨量指数の年最大値からL-moments(Hosking, 2015, R Package)を求め、再現期間50年の確率値を算出した。その際には、一般的なGumbel分布と一般化極値(GEV)分布を用い、Jackknife法により算出した。 3.結果と考察 日本列島における再現期間50年の1時間降水量は、17.0–158.0 (平均68.2)mm/h (Gumble分布、図1a)、16.8–186.4 (平均69.6)mm/h(GEV分布、図略)である。また再現期間50年の土壌雨量指数は、82.1–638.6(平均226.9、Gumbel分布、図1b)、68.6–705.0(平均221.8、GEV分布、図略)であった。これまでAMeDASデータを用いた確率降水量が産出されてきたが、解析雨量を用いることで、高解像度(5km)の確率降水量と土壌雨量指数の分布を検討可能と言える。特に、大雨の頻度が高い西南日本の太平洋岸において、その詳細な空間分布が明らかとなり、災害対策への応用が考えられる。本研究は予察的なものであり、今後より詳細な解析雨量データの検証と、結果の検証が必要である。
著者
石橋 晃
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.1-13, 2007-02-25
参考文献数
33
被引用文献数
3 1

日本の配合飼料の生産量はここ数年約24,000万tである.その原料の大部分は外国からの輸入に依存しており,TDN換算で純国内産飼料の自給率は24.7%,濃厚飼料の自給率は9.7%である.そのため,自給率をあげることはわが国の畜産業界の最大の課題である.それを35%にまで引き上げるべく取り組みがなされている.また,BSE発生以来食の安全性に対する関心が高まり,安全性を担保するため色々な方策が講じられている.反芻動物の飼料への動物性タンパク質の混入を防止するためのA飼料,B飼料の製造工程分離,有害物質の混入防止,その他,配合飼料のトレサビリティ,鳥インフルエンザなどの疾病対策,環境問題など取り組むべき課題は山積している.しかし,絶対的な安全性の担保は不可能である.可能な限り,科学的な立場で対処していかなければならない.その中で不安視され,関心が持たれている遺伝子組換え作物と抗生物質の現状について述べた.
著者
■田 幸子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.57-71, 2010-03-01

16世紀後半、キリスト教布教・伝道を目的に来日した宣教師によって伝えられ、日本語に翻訳された『イソップ寓話集』は、ローマ字口語体で書かれた『イソポのハブラス』と国字文語体で書かれた『伊曾保物語』の二種である。『イソポのハブラス』は、文禄2(1593)年天草学林で出版されたが、鎖国時代の発禁措置もあり、一般には流布せず、現在世界中に唯一冊、大英博物館の所蔵本があるのみである。一方『伊曾保物語』は、一般に広く普及し、芸の道の教えや子弟の教育のための教訓書として受容された。キリスト教の宣教師によって伝えられた書物であるにもかかわらず、鎖国後も『伊曾保物語』が出版され読み続けられたのは、物語の寓意が、その時代にふさわしい教訓として受け入れられたからであろう。『伊曾保物語』の本文と書物に引用された本文及び寓意に着目することで、日本の近世における『伊曾保物語』の受容のあり方を考察した。