著者
米山 京子 池田 順子
出版者
日本小児保健協会
雑誌
小児保健研究
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.331-340, 2003-05

母乳のみあるいは殆ど母乳で哺育している出産後3~16週の健康な授乳婦44人を対象に,母乳中の蛋白質,脂肪,カルシウム濃度と妊娠中および授乳時の体格要因,授乳期3日間の栄養素,食品群摂取量との関係を分析した。母乳の脂肪濃度は妊娠中の最大体重時のBody Mass lndexと正,授乳時の脂質摂取量と負の有意相関が認められ,重回帰分析でも両者が独立に影響することが確認された。妊娠中には脂肪を蓄積し,授乳初期には脂肪摂取を控えることが母児ともに合目的である。母乳のカルシウム濃度は授乳時の母の骨密度が高い程高く,蓄積されたカルシウムが母乳成分に影響することが示唆された。蛋白質濃度は授乳時の飯,野菜摂取量が多い程低い傾向が認められた。
著者
山本 欣司 ヤマモト キンジ Yamamoto Kinji
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.87, pp.11-21, 2002-03-28

「たけくらべ」をめぐる論争をたどりながら明らかになったのは、美登利の変貌の原因を初潮とする見解の背後に、性的な「成熟」によって(子ども)/ (大人)を分割する近代的パラダイムがひそんでいるということである。初潮を迎え(大人)になるまで美登利は無垢で、娼妓の世界-の参入を猶予されているとアプリオリに前提されてきた。ところが、佐多稲子氏は初潮にそれほど大きな意味はないとして、女性のセクシュアリティをめぐる神話に疑問を投げ掛けた。暴力による変貌を主張した《水揚げ説》は強い説得力を持つ。だが、これまでの議論には、娼妓になるべき娘として、実際に美登利にどのような立場の変化があり得たか一という視点が欠けていた。日本近代公娼制をめぐる歴史的事実に目を向けたとき、娼妓とは売られた娘であったことがわかる。私は、美登利の変貌が「身売り」によるものであり、「たけくらべ」の合意する残酷さから目をそらしてはならないと主張した。
著者
岡部 光明
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
明治学院大学国際学研究 = Meiji Gakuin review International & regional studies (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.91-109, 2015-10-31

豊かさを測るため,これまで経済的尺度(経済成長率や一人あたりGDP)が重視されたが,近年その不十分さが強く意識されるに伴って「幸福」についての関心が上昇し,関連研究も増加している。本稿は,経済学的視点のほか,思想史,倫理学,心理学,脳科学などの知見も取り入れながら考察した試論であり,概略次の主張をしている:(1)幸福を考える場合,その深さや継続性に着目しつつ(a)気持ち良い生活(pleasant life),(b)良い生活(good life),(c)意義深い人生(meaningful life; eudaimonia)の3つに区分するのが適当である。(2)このうち(c)を支える要素として自律性,自信,積極性,人間の絆,人生の目的意識が重要であり,これらは徳倫理(virtue ethics)に相当程度関連している。(3)今後の公共政策運営においては,上記(a)にとどまらず(b)や(c)に関連する要素も考慮に入れる必要性と余地がある一方,人間のこれらの側面を高めようとする一つの新しい思想もみられ最近注目されている。(4)幸福とは何かについての探求は,幅広い学際的研究が不可欠であり今後その展開が期待される。
著者
藤井 可
出版者
熊本大学
雑誌
先端倫理研究 (ISSN:18807879)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.49-63, 2012-03

This paper investigated the stabbing incident of downed B29’s soldiers caused by residents in Aso area in Japan (May 5, 1945). First, the information and the time background about this incident were described. Second, the validity of residents’ act from a legal standpoint and an ethical standpoint was examined. Finally, the alternative options were proposed. The discussion is aimed at a descriptive-ethical work. In addition, this work should be regarded also as a trial for a new framework that enables local researchers to talk about problems or inequality of their own local community.
著者
京都大学図書館業務改善検討委員会 資料保存環境整備部会
出版者
京都大学図書館業務改善検討委員会資料保存環境整備部会
巻号頁・発行日
2010-03

マイクロフィルムは、図書館資料の中でも特に長期保存に適した記録媒体であるが、環境整備が難しい資料だと認識され、管理面での積極的な取り組みが行われていない現状が見受けられる。しかし、放置しておくと連鎖的に被害が広がる類の劣化現象も報告されており、定期的な点検による異常の早期発見と、適切な処置が求められる。まずは所蔵するマイクロフィルムの種類と数量を把握し、その目的に沿った保存環境を整えることから始めよう。
著者
岩村 誠
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2012-02

制度:新 ; 報告番号:甲3533号 ; 学位の種類:博士(工学) ; 授与年月日:2012/2/25 ; 早大学位記番号:新5871
著者
小林 信彦
出版者
京都大學文學部
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-21, 1988-03-31

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
王 海
出版者
Institute for Cultural Interaction Studies, Kansai University
雑誌
近代世界の「言説」と「意象」 : 越境的文化交渉学の視点から
巻号頁・発行日
pp.161-178, 2012-01-31

It is widely believed that Shiba Ryōtarō made his first decision to learn Mongolian at Osaka Foreign School as major, because he was so interested at literature about the Nomads. In fact, Shiba was failed in the previous entrance exams for Osaka High School 大阪高等学校 and Hirosaki High School 弘前高等学校. After the 9.18 Incident and the establishment of Manchuria, more Japanesegraduates were sent to work at Manchurian and Mongolian area, especially the Mongolian major students. After the frustration of the exams, it was possible for Shiba too, to dream to open a new life there. From those above, it is necessary to explore Shiba's motivation from the perspective of imperial Japan. Osaka Foreign Scholl was founded to enhance the economic communication withAsian continent at the beginning. However, with the proceedings of Japan imperialism, the school started to change its position to meet the needs for "North Expansion". Students and teachers actively participated in politics. They organized speeches, donations to support the war. Although Shiba didn't like the life in the camp, he wished to work at the secret service in Mongolia. We can see the obedience and resistance in the time from Shiba. Mongolian department published a magazine called "sakuhu". "sakuhu" was believed to inherited Oriental Studies. It demonstrates Asia history as the offense and defense between the cultivation and nomadism. Shiba was influenced by this view of history.
著者
肖 潔
出版者
北海道大学大学院文学院
雑誌
研究論集 (ISSN:24352799)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.153-166, 2021-03-31

本研究では,交感機能という語用論的観点から雑談の分析を試みた。雑談の本質を見極めるために,話し合いの本題の特徴(形式内容と機能)と対比することで雑談の特徴をとらえた。分析対象として,制度的場面に現れる雑談を選択し,雑談の表現形式と役割を考察した。分析データは東京都議会速記録2020年(新型コロナウイルス感染症対策補正予算等審査特別委員会)を使用した。 本研究では,先行研究を踏まえながら,雑談の定義と判別方法を提案し,雑談の種類及び交感発話との関係も論じた。雑談は,話し合いの本題から逸脱した,交感機能をもつ自由な談話である。雑談の判別には会話の協調原理と交感機能という二つの指標がある。そのなかで,交感機能は雑談の重要な役割であり,会話進行中の雰囲気調整に不可欠な話題であることが明らかになった。雑談の役割は有効な情報伝達をするよりも,安定的な会話状況を作ることに重点があると言えよう。会話中に雑談をすることは,会話の課題を遂行するのには役立たないが,相手と積極的に共感を形成し,近しい関係を構築することができる。とりわけ,議会のような制度的場面においては,自己開示,話の脱線などのような雑談的な発話を本題に挟むことによって,議会の雰囲気が和み,話し合いを活発に進めることができるとみられる。ただし,雑談には幅広い表現例が含まれているため,実際の用例によっては交感機能が強いものから弱いものまで漸次的に存在するのである。また,形式内容面では,雑談は本題との関連性と聞き手にとっての情報価値の有無と関係することが分かった。雑談の内容が聞き手にとって知らない可能性が高ければ高いほど,有効な雑談となるのである。本研究では,東京都議会のような制度的場面では,肩書や年齢を超えた参加者の間に,雑談はどのような形式,どのような役割をもって出現したのかを示した。