巻号頁・発行日
vol.[57], 1600
著者
島崎 義孝
出版者
藍野大学
雑誌
藍野学院紀要 (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.93-105, 2007

現代のわが国では,若い世代になるほど生と死との明確な見境が失われつつあるように見受けられる。自分たちの日常生活の周辺で,死に直接かかわる機会が減少しているからであろう。たしかに現代は若い世代の人たちも含めて,以前であれば誰しもが嫌でも経験せざるを得なかった生死の現実をいよいよ見ない社会に生きている。欧米社会はキリスト教の強い影響下で,伝統的に生死を明確に分けて捉える伝統の中に身をおいてきた。しかし,わが国では通俗的な生死の観念が色濃く作用し,仏教移入後も,むしろ仏教の教説をたくみに換骨奪胎させながら独自の,連続性をもった生死観を形成してきた。ありていにいえば死の世界の仮説や物語は実証方法がないため,あらゆる憶測や伝承,仮説が生き続け,それが巧妙かつ乱麻のごとく長年にわたって人々の観念の中に定着してしまっている。それが現代に至って,以前からある生死観を引きずりつつ,同時に現実の死の実感を希釈させてしまい,それらをない混ぜにした非連続性のある広汎な「生死感」のようなものが形成されつつあるようだ。しかしながら,それはいよいよあやふやな,かつ感覚的・無感動で底の浅い生と死の内容しかもたなくなってしまったのではないだろうか。
出版者
文房堂
巻号頁・発行日
1914
著者
奥野 義雄
出版者
奈良大学文学部文化財学科
雑誌
文化財学報 (ISSN:09191518)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.43-58, 1994-03

中世公家・武家の孟蘭盆習俗は、端的に祖先祭祀を表現するものである。すでに、公家・武家の孟蘭盆習俗にみる燈籠進供について触れたが、そこでは、中世孟蘭盆の習俗とは、古代の孟蘭盆習俗とは違って新しい習俗が付加されたものであることを大雑把に提示したのみであり、もう少し詳しく中世公家・武家の社会における孟蘭盆習俗を検討し、どの時期にどのような習俗が付け加えられてきたかを究明することによって、中世以降の孟蘭盆習俗とどのようにかかわっていくのかを考えていく手掛りを捉えることができるのではないかと想定し得るからである。また、中世の孟蘭盆習俗を軸に古代の孟蘭盆習俗と対比することによって、中世の孟蘭盆習俗の存在形態が明確にし得るのではないかと考えたからにほかならない。この視点で中世公家・武家の孟蘭盆習俗について、小稿で検討することにしたい。
著者
深谷 美都季
出版者
金沢大学人間社会学域経済学類社会言語学演習
雑誌
論文集 / 金沢大学人間社会学域経済学類社会言語学演習 [編] (ISSN:21886350)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.113-128, 2018-03-22

<概要>日本語には語尾を「だぞ」「だわ」にすることで、男性もしくは女性が使用していると客観的に判断できる習慣があり、そういった言葉を男ことば・女ことばと言う。そのような性差的な表現は、世代によって使用頻度に違いがあるようだ。本研究では、映画の吹き替え版を使用して登場人物が性差的な表現をどのような場面で、どのくらいの頻度で使用しているのか、成長するにつれて使用頻度がどのように変化していくのかを明らかにする。仮説として、子供の頃は他者への意識が希薄な時期であることから乱暴な表現を使用しやすく、成長するにつれて常識や世間体を気にするようになり、中性的な表現を多用し性差的な表現を控えるようになると考えた。この仮説を検証するために、映画『ハリ ー ・ポッター 』シリー ズの中から成長の変化がわかりやすい3作を使用する。ハリー・ポッターとハーマイオニー・グレンジャーの台詞から性差的な表現の使用頻度を調査し、経年変化による変化があるかどうかを分析した。
著者
吉田 仁美 Hitomi YOSHIDA 岩手県立大学社会福祉学部
出版者
岩手県立大学社会福祉学部
雑誌
岩手県立大学社会福祉学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Social Welfare, Iwate Prefectural University (ISSN:13448528)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.51-57, 2015-03-01

本稿では、1995年度のミス・アメリカに選出された、へザー・ホワイトストーン・マッカラム(Whitestone Mccallum, Heather)という米国の聴覚障害女性の物語を中心に描く。 本稿の目的は、第一に、彼女のミス・アメリカ獲得までの道のりを文献等によって整理し、第二に、それによって、彼女の著作、行動や生き方が、聴覚障害や女性学の世界にどのような影響を及ぼしたのかを考察することである。その際には筆者の学問領域でもある障害者福祉はもちろんのこと社会政策、ジェンダー視点も含めて考察を行う。This report presents the story of a hearing-impaired woman in the United States, Heather Whitestone Mccallum, who was elected Miss America 1995. This report summarizes her activities until winning the title of Miss America through a literature review. It also considers how her writings, behavior, and way of living influenced hearing-impaired persons and women's studies around the world. Considerations will include not only the issues of welfare for disabled persons, the author's field of study, but also social policy and the viewpoint of gender.
著者
桑原 一也
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, 1967

周知の如く,軟膏療法は主として基剤が皮膚表面の病巣に作用して皮疹を改善に導く場合と,軟膏に添加した薬剤が健康皮膚を浸透,病巣に到達して始めて皮疹の改善を斉らす場合とがあるが,本研究は申すまでもなく後者に関する研究である.さて,副腎皮質製剤(以下「コ」と略す)に限らず,一般に薬剤を病巣へ運搬する目的で使用する場合,従来最も大きな障壁となつていたのは,薬剤の皮膚吸収に自ずから限界のあることである.従つて,全身投与に比べると,どうしても臨床効果が劣り,殊に表皮に全く損傷のない手掌足底や,その他の部位でも角化肥厚の強い病的皮膚では期待するほどみるべき効果があがらなかつた.このため軟膏療法はせつかく全身療法とはまた異なる幾つかの優れた特徴を持ちながら,ただ表層の病巣を修復することに主点がおかれていた.ところが,最近Carb,Sultzberger & Witten,Scholz,Tyeらが軟膏貼布部位を特殊な方法で密封する,いわゆるoccu-lsive dressing technique(密封療法,以下ODTと略す)を考案してより,かかる病巣へも目的の薬剤が充分到達して臨床効果を発揮でき,しかも全身性の副作用を起さない程度の,甚だ好都合な結果を斉らすことが明らかにされた.ともかくODTは軟膏療法に一大進歩を斉らし,今や各方面に素晴らしい成果を挙げているが,このODTを契機に,最近皮膚吸収に関する研究が再び活発となつて来た.ところで,皮膚吸収の最近における最も大きな進歩といえば,なんといつても,Malkinson & Kirshenbaum,McKenzieら一連の研究であろう.従来,薬剤の皮膚吸収は専らこれが生体に浸透することのみに重点が置かれ,皮膚でそれがどのように,どの程度利用されるかどうかという点については全く考慮が払らわれていなかつた.換言すると,薬剤の皮膚吸収は,極く最近までサルチル酸(以下「サ」と略す)値や14C-labelled 「コ」軟膏の尿中排泄量の測定が優れた検査法とされ,主として,その多寡により良否が云々されていた.ところが,Malkinsonらが独特な器具gas flow cellを考案,放射性「コ」軟膏の皮膚吸収状態を,尿中排泄量を測定するかわりに,皮上に残るいわゆるresidual radioactivityから逆に皮膚吸収状態を推測したところ,ここに多量放射性物質の残る軟膏,つまり吸収の悪い軟膏ほど,臨床効果の優れていることが判り,軟膏の優劣は吸収の良否より,病巣に,活性の形でどの程度残存するかにあることが明らかにされた.また軟膏の皮膚吸収は無制限に行なわれるのでなく,病巣と皮膚表面のそれとの濃度の差,つまり濃度勾配(concentration gradient)と密接な関係のあることが併せて明らかにされた.これと前後してMcKenzieらは各種「コ」軟膏のいわゆるvasoconst-rictor activity(毛細血管収縮能)を測定,この成績を皮疹の臨床効果と比較検討して,吸収の良否と本検査成績とはむしろ負の相関関係にあり,本作用の強い「コ」製剤ほど皮膚からの吸収が遅延し,一方臨床効果はそれだけ優れていることが確認され,かくして,軟膏の皮膚吸収に関する概念はこの数年間にすつかり変貌した.
著者
高橋節夫 編
出版者
小島忠国
巻号頁・発行日
1891
出版者
巻号頁・発行日
vol.第1軸,

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1922年06月12日, 1922-06-12
出版者
[ ]
巻号頁・発行日
vol.[1], 1800
著者
添田 孝彦 山崎 勝利
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.354-360, 2002
被引用文献数
1

沖縄および関東地方の市販木綿豆腐に関する商品調査, 聞き取り調査および物性評価を中心におこなった.<BR>(1) 原材料について, 凝固剤はすまし粉からニガリへ, 大豆は輸入大豆から国産大豆への切り替えが, 特に関東地方において顕著で, 近年の潮流であることが示された. 消泡剤は沖縄地方では使用されず, 関東地方でも約半分以上が不使用となっていた.<BR>(2) 製法について, 沖縄地方では現在でも約70%が生絞り法を採用していたが, 関東地方はすべて煮とり法となっていた.<BR>(3) 沖縄地方の豆腐料理を豆腐の前処理法と調理法の二つの軸を用いて整理した. 調理耐性をもった豆腐が沖縄地方の豆腐の存続の要因と推察された.<BR>(4) 成分的にはMg含量は上昇し, 逆にCa含量は低下していた. これは商品調査から約80%がニガリ使用であるという結果と併せると, 凝固剤はすまし粉からニガリへの切り替えを裏付けるものであり, 現時点で既に5訂日本食品標準成分表記載のMgおよびCa値と大きな差異がみられた.<BR>(5) 豆腐のかたさについては沖縄地方と関東地方間で大きく異なった. 関東地方の豆腐に比べて, 沖縄地方の豆腐のかたさは1.7倍を有し, 豆腐物性の地域間での客観的比較が可能となった. 将来, 大豆をより多く摂取するための手段として, 沖縄料理的な豆腐料理を各地に提供していく意義は大きいと感じる.