著者
真田 信治 簡 月真
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.69-76, 2008-04-01 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
2

日本語と台湾のアタヤル語との接触によって生まれた日本語クレオールが台湾東部の宜蘭県大同郷と南澳郷に住む一部のアタヤル人(のすべての世代)によって用いられていることが観察される。が,その日本語クレオールの存在はほとんど知られておらず,今日までこれに関する学術的な研究は皆無である。本稿では,日本語クレオールの存在を指摘し,その運用状況を紹介するとともに,その言語構造について,公表された教科書3冊を主たる対象として,語順,語彙,名詞の語形,動詞(ヴォイス,アスペクト,テンス等)などに関する分析を行った。これまでのクレオール研究では主に欧米諸語を基盤としたクレオールが取り上げられ,日本語が視野に入れられたことはほとんどなかった。その意味で,本研究は斯界に貴重な事例を提供するものである。
著者
James Taylor Arata Amemiya Takumi Honda Yasumitsu Maejima Takemasa Miyoshi
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
pp.2021-008, (Released:2021-02-09)
被引用文献数
6

The predictability of the July 2020 heavy rainfall event that saw record-breaking rainfall over Western Japan in July 2020 is examined with the near real-time SCALE-LETKF numerical modelling system in a low resolution 18-km configuration setting. Ensemble-mean 5-day rainfall total forecasts showed close agreement with Japanese Meteorological Agency 1-km precipitation analyses in relation to the large-scale distribution of rainfall and to location of heaviest rainfall over Kyushu. Onset and duration of rainfall at specific sites across Kyushu were also well predicted by the forecasts. However, the precise prediction of heavy rainfall, including over the worst-hit Kumamoto and Kagoshima prefectures, was severely underestimated. Examination of the atmospheric conditions at the time of the heavy rainfall from reanalysis datasets and ensemble member forecasts showed very high humidity over central Kyushu with strong transport of moisture from the southwest to central regions. In addition, strong low-level convergence was observed to the west of Kyushu in both reanalysis and best performing member forecasts during the time of heavy rainfall, suggesting a potential contributing factor to the record-breaking rainfall.
著者
清水 勝嘉
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.72-86, 1976 (Released:2011-02-25)
参考文献数
33

In this papes, administrative orpanization for public health, tuberculosis control and prevention of venereal disease, which had been involved in the problems of public health in the early years of the Showa Era, were discribed. 1. In those days, public health administration had been centrlized to the Health Bureau and Social Bureau of the Ministry of Home Affairs, and they gave their instructions to the Public Health Section of the Prefectural Police Department. Countermeasures for the chronic infectious diseases were the most imoprtant problems at that time. 2. The mortality from tuberculosis in Japan was two or three times higher than that of Western countris, and there were poor and insufficient preventive facilites in all over the country. It was epock making in 1932 that the Health Guidance Clinic were established in every prefectures in order to prevent against tuberculosis by the subsides offered from NHK (Nihon Hoso Kyokai), but not by the national budget. 3. Licenced and unlicened prostitute, geisha, waitress and barmaid had been the major contagion source of venreal disease. Legal inspection system for the syphilis was forcibly applied only to the licenced prostitutes, but the others took the medical check only when they were arrested. Since 1928, when the original Venereal Disease Prevention Law enforced, all prostitures, streetwalkers, geishas, barmaids and waitresses have forcibly taken medical check for the venereal disease.
著者
内山 弘美
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究論文集 (ISSN:13459597)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.233-239, 2002-10-26 (Released:2010-03-17)
参考文献数
24

地球環境問題を解決し, サステイナブルな社会を築くために, 環境科学という学問分野の構築が必要とされる。しかし, 環境科学の研究・教育を行い, 環境科学の人材養成機関であるはずの環境冠学科において, 従来から, 理念と現実の乖離の問題が指摘されてきた。この問題が生じた要因の一つは, 環境冠学科の設置の過程にある。従って, 本研究では, 国立大学工学系学部の建設系学科に焦点を当て, 工学系の拡大過程と科学研究の「ライフサイクル」論の枠組みを用いて, 環境冠学科の設置のメカニズムを解明した。その結果, 環境冠学科の設置は, 環境科学だけでなく, 工学系学部の学科構成や学科設置動向を反映していることが明らかになった。
著者
中島 義和 山田 和雄 甲村 英二 藤中 俊之 吉峰 俊樹
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.443-447, 2004 (Released:2007-06-12)
参考文献数
16

We present 2 cases of arteriovenous malformation (AVM) in children that recurred 5 and 16 years, respectively, after initial total extirpation confirmed by cerebral angiography. In the first case, a parasplenial AVM that presented initially as a hemorrhage in a 5-year-old patient was completely resolved. Sixteen years later, it reappeared posterior to its initial location in the nidus and then ruptured. The second case also presented initially with AVM-related hemorrhage. Five years following extirpation of the diffuse paracallosal AVM in the right frontal lobe, the defect reappeared surrounding the location of the initial lesion and continued to grow. These cases demonstrate that even in cases where cerebral angiography and operative findings confirm total extirpation of an AVM, the AVM may recur after 10 years or longer. Thus, long-term follow-up is recommended in such cases, especially for children.
著者
田村 宏樹 坂田 健一郎 唐 政 石井 雅博
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.124, no.9, pp.1918-1919, 2004 (Released:2004-12-01)
参考文献数
5

In this paper, we propose a genetic algorithm(GA) with local minimum escaping technique. This proposed method uses the local minimum escaping techique. It can escape from the local minimum by correcting parameters when genetic algorithm falls into a local minimum. Simulations are performed to scheduling problem without buffer capacity using this proposed method, and its validity is shown.
著者
伊藤 正次
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.43-55, 2006-12-10 (Released:2019-03-18)
参考文献数
13

本稿は,総合科学技術会議の運用状況を分析することを通じて,橋本行革を検証するための視座を拡大することを目的とする。橋本行革によって内閣府重要政策会議として創設された総合科学技術会議は,科学技術政策という特定分野に関し,予算・計画・評価といった手段を用いながら「総合調整」機能を発揮することが期待されている。このような「特定総合調整機構」とも呼ぶべき総合科学技術会議の運用状況について,本稿では,科学技術予算の優先順位付けを通じた「予算による調整」,第3期科学技術基本計画策定を通じた「計画による調整」という2つの側面から分析を試みた。その結果,総合科学技術会議は,行政資源の「選択と集中」の実効性という面で,調整機能に各種の限界を抱えているものの,「特定総合調整機構」としての制度化が進んでいること,しかし他方で,予算編成・計画策定と評価活動との連結という点では課題も残されていることが確認された。
著者
藤本 吉則
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.94-103, 2010-12-25 (Released:2019-06-08)
参考文献数
42

本稿は,2000年前後から各国で導入が始まった電子政府の議論を基に,電子申請の利用件数が伸び悩んでいることや住民基本台帳ネットワークの効用が実感できないことなど,日本の電子政府の普及が円滑に進んでいないことの要因の分析,類型化を行い,これからの公共部門におけるICT利用の可能性を検討する。類型化にあたっては,電子政府の進捗段階ごとに阻害要因によって与えられる影響力が異なることを踏まえ,双方向の特徴を活用した電子政府の段階に焦点をあて,とくにデータの蓄積とその活用といったデータベースの視点を取り入れ,分析を試みる。検討を行った類型化を日本の電子政府に当てはめてみると,技術的な要因による障害より,組織的・制度的要因による影響が強いことが示される。そのため,行政改革やより有益な価値のある情報創出などに電子政府を効果的に用いるため,情報システムの導人だけではなく,制度・組織の抜本的改革をも視野に人れた電子政府の取組みの検討を進める必要がある。
著者
一瀬 敏弘
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.109-124, 2014-12-20 (Released:2019-06-08)
参考文献数
34

本稿では,地方採用警察官の技能形成促進策を明らかにするため,政令指定都市を擁する1万人以上の大規模警察本部の人事データに基づき,その昇進構造を検証することを目的とした。人事データと警察官僚の聞きとり調査による実証分析で得られた知見は,次のとおりである。まず,地方採用警察官が昇進可能な最高階級である警視長(部長職)への昇進には,fast track効果がみられ,早く昇進した者ほど国家公務員(地方警務官:警視長・警視正)へ転身する傾向がみられた。そして,少し遅れて昇進したグループには,警視(警察署長)や警部(警察署課長)への昇進可能性が提示される一方で,その他多くの警察官には,警部補(係長)への昇進可能性が提示される。これらの結果からは,全ての警察官に技能形成へのインセンティブを付与するような人事政策が展開されているとも解釈できる。つまり,自治体警察の昇進構造は,全てのノンキャリア警察官の努力を引き出すよう設計され,その人的リソースを最大動員するための選抜システムが内在されているとも言えるだろう。
著者
新川 達郎
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.64-77, 2015-12-25 (Released:2019-06-08)
参考文献数
25

日本公共政策学会(以下,本学会という)では,公共政策学教育の在り方について,その基準あるいは標準の検討を重ねてきた。公共政策学やその教育の定義については多様な見解があるとしても,共通して参照可能な基準は探索できるのではないかという見通しのもとに作業を進めることとした。そのために本学会として「公共政策教育の基準に関する研究会」(以下,研究会という)を設置し,2013年度と2014年度の2年間にわたって検討を行ってきた。その検討の経過においては,研究会メンバーの議論のみならず本学会の年次研究会における報告を行うことも含めて,本学会会員諸氏の積極的な参加と助言を頂戴した。その最終報告書は,2015年秋季の本学会理事会に提出された。そこでは公共政策学の学問体系を踏まえながら,日本の学士教育の実情に沿った公共政策学教育の基準を発見するべく努めた。本論文においては,「公共政策教育の基準」に関する検討の経緯を振り返りながら,その中で研究会に加わった一人である筆者として改めて「公共政策学」の「教育」の標準をどのように考えればよいのか,その「参照基準」について,その背景,意義,課題について,検討することとしたい(1)。