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著者
新井白石 (君美) 著
出版者
白石社
巻号頁・発行日
vol.下巻 亜細亜,南亜墨利加,北亜墨利加, 1881
著者
岡本 尚
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.113-124, 1975-05-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

The conception of "electrogenic ion pump", actively separating charges across cell membranes, has been recently developed as a concequence of the recognition of the more intimate relationship between the mechanism generating resting membrane potential and the energy metabolism of the cell than formerly supposed. Existence of the resting potential larger than the equilibrium potential of any major permeable ion across cell membrance supports the above view and is regarded as a safety criterion for electrogenic activity. Another criterion, rapidity of the depolarization caused by the application of inhibitory reagents or conditions for energy metabolism, is examined critically taking several experimental results for instances. The investigations towards the energy sources for electrogenic activity and several hypothetical models for electrogenic ion pump are also reviewed. The ion which is transported across membrane by the electhogenic mechanism seems to be H+ in most plant cells, though in some cases Cl- is a possible candidate. The role of H+ in plant cells as a substitute of Na+ in the case of animal cells is reviewed with special reference to the "co-transport" of organic molecules and also from the view point of origin and evolution of the membrane transport systems.
著者
船舶管理システム審査室
出版者
一般財団法人日本海事協会
雑誌
日本海事協會會誌 (ISSN:02870274)
巻号頁・発行日
no.247, pp.97-107, 1999

ISMコード(国際安全管理コード)は、近年ヒューマンエラーによる海難事故が頻発したことが契機となり、IMOにおいて船舶の安全と海洋環境の保護を目的とした幾多の審議を経て、1998年7月1日からSOLAS条約の強制要件として発効した。本会はこのような世界の動きに対応すべくISMコードに係る審査業務にいち早く取り組み、1992年以来船舶の運航と安全管理に関する調査を行うとともに、「船舶安全管理システム」規則を制定し、主任審査員が世界の各港で審査活動に従事している。条約が発効して8ヶ月が経過したこの機会に、今日までの審査業務を振り返り、本会が行ったISM審査の実情の報告を行い、また公表されたPSC検査における拘留船についての取り纏めと原因の分析を試みた。
著者
藤田 祥子
出版者
拓殖大学
雑誌
拓殖大学経営経理研究 (ISSN:13490281)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.25-54, 2005-08-31

今まで会計帳簿等の帳簿閲覧請求の可否が争われた事例で問題になったのは、会計帳簿および資料の意義や請求理由の具体性と会計帳簿等の特定といったことだった。近時、商法293条の7第1号前段を問題とし、請求を認める最高裁判決が出た。それを契機に従来議論されてきた商法293条の7第1号にでてくる「株主の権利」に何が含まれるかという問題について歴史的考察を加え、株主であることに基づく権利がすべてはいるものとする私見を述べた。そして新会社法における改正点に検討を加えた。
著者
井山 政志 清本 晋作 福島 和英 田中 俊昭 高木 剛
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J95-A, no.7, pp.579-587, 2012-07-01

ペアリングを用いることで従来実現困難な暗号プロトコルが構成可能になる.ペアリング暗号の高速な実装を目的として,ηTペアリング,R-ateペアリング等の高速なアルゴリズムが提案されている.そして,ペアリングはPCだけでなく,ユビキタスデバイス(携帯電話,センサノードやSmartcard)においても実装が行われている.しかし,Windowsのような高性能なOSを搭載しない携帯電話や,Java言語がベースのAndroid携帯電話におけるペアリングの実装報告は少ない.本論文では,128ビットセキュリティレベルのR-ateペアリングとηTペアリングをAndroid携帯電話とBrew携帯電話において実装評価を行う.またそれぞれの携帯電話において,ペアリング演算とべき乗演算との実装比較のデータを示す.また,ペアリングを用いたIDベース暗号とShort Signatureのプロトコルの実装に関する報告を行う.
著者
井沼 学 大塚 玲 峰村 淳 稲富 康朗 竹久 達也
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J95-A, no.7, pp.588-599, 2012-07-01

キャンセラブル・バイオメトリクスと遠距離型(アクティブ型)のRFIDシステムを組み合わせることで,高い利便性を有し,かつ,生体情報の漏えいに耐性のある安全な認証システムを低コストで実現することが可能となる.例えばRFIDシステムと適切な虹彩読取装置があれば,利用者にストレスを与えることのないウォークスルーやハンズフリーで認証可能なキャンセラブル・バイオメトリクス認証システムへの展開が期待できる.しかしながら,リーダと通信可能なRFIDタグがリーダの周囲に多数存在する場合は,その中から生体情報を提示したユーザのタグを絞り込まなければならない.さもないと,数多くのタグに対してバイオメトリクス認証プロトコルを実行しなければならず,処理時間の大幅な増大を招いてしまう.この問題を解決するために,本論文では,認証プロトコルを実行する前に,あらかじめ認証に成功する確率の高いタグを特定するプロトコル(タグフィルタリングプロトコル)を提案した.

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1928年06月09日, 1928-06-09
著者
古平 栄一 森 源治郎 今西 英雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.891-897, 1996-03-15
被引用文献数
6 2

アリウム•コワニーの無加温ハウス栽培における生育, 開花習性を明らかにするとともに, 開花に及ぼすりん茎の貯蔵温度および栽培温度の影響について調べた.<BR>りん茎を入手した6月中旬には, りん茎内に3枚の未展開葉が形成されており, 生長点は7月上旬までに葉を1枚分化した後, 葉の分化を停止した. 茎頂は9月中旬に生殖生長に移行し, 第1花序を分化した. この花序は, 10月上旬に小花原基形成期, 11月中旬に外•内雄ずい形成期, 12月上旬に雌ずい形成期に達し, 翌年の2月中旬に開花した. また, 第2花序は, 10月中旬に茎軸の最上位葉の葉えきから仮軸分枝した茎軸の茎頂に分化し, 翌年の3月上旬に開花した.<BR>7月1日から10月1日まで温度条件を15°, 20°,25°および30°Cと変えて乾燥貯蔵すると, りん茎の第1花序の発育は15°Cおよび20°Cで最も促され,25°Cではこれらよりやや遅れた. また, 8月1日から9°, 15°, 20°, 25°および30°Cで貯蔵した場合にも同様の傾向が認められた. 7月1日, 8月1日両貯蔵開始処理ともに, 30°C区では過半数のりん茎が花芽未分化にとどまった.<BR>これら種々の温度区で貯蔵したりん茎を10月1日に植え付け, 最低10°Cの加温室で栽培した結果, 7月1日貯蔵開始処理では, 20°, 25°および30°Cの各温度区では大部分のりん茎が開花したが, 15°C区では開花率が低かった. しかし, 8月1日貯蔵開始処理では9°~30°Cの温度下で開花が認められた. 両貯蔵開始処理ともに, 貯蔵温度が低い区ほど開花が促進されたが, 1りん茎当たりの開花花序数は減少した.<BR>栽培時の夜温20°C区では, 10°C区に比べて第1花序, 第2花序いずれも開花期は促進されたが, 開花時の花茎が短く, 小花数が少なくなった.
著者
川口 則幸 広沢 春任 山本 善一 小野 真裕
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播
巻号頁・発行日
vol.97, no.228, pp.23-28, 1997-08-22
被引用文献数
2

宇宙科学研究所は本年2月に工学試験衛星(MUSES-B)を搭載したM-V型ロケット1号機の打ち上げに成功し、超楕円軌道に投入された衛星は「はるか」と命名された。「はるか」のミッションはスペースVLBI観測が主で、直径8mの大型アンテナとVLBI観測に必要な機器を搭載している。ただし、VLBI観測に必須の原子時計は搭載しておらず、周波数標準の基準信号は地上の水素メーザ型原子時計から衛星に供給している。本研究は、この基準信号の衛星への伝送の際に生じる伝搬位相揺らぎの影響を評価し、実際に得られた伝搬路の安定度についての報告を行う。
著者
長谷川 耕二郎 中島 芳和
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.291-299, 1991
被引用文献数
4 6

着花の少ない'西条'と'前川次郎'の7年生樹を供試し, 側枝を針金の被覆線で結縛処理を行い, 結実や果実品質ならびに翌春の着花促進に及ぼす影響について調査した. なお, 合成サイトカイニンであるKT-30 {N(2一クロルー4ピリジル) -N-フェニルウレア} を夏季に芽に塗布し, 翌春の着花に及ぼす影響についても併せて調査した.<BR>1.6月10日の側枝結縛処理により, 当年の'西条'および'前川次郎'の結実は顕著に増加した. 6月10日および7月1日の処理により, '西条'では果実が大きくなり着色が増進した. また'前川次郎'では果実の着色が増進するとともに糖度が高くなった.<BR>2.6月10日の側枝結縛処理により, 翌春の着花数が'西条'では約3倍, '前川次郎'では約10倍となった.7月1日の処理区でも着花が増加したが6月10日処理区に比べると少なかった. 6月10日結縛処理により当年の'西条'の夏枝の発生が抑制され, また6月10日および7月1日の結縛処理により'西条'および'前川次郎'の翌春の新しょう生長が抑制された.<BR>3.結縛処理により, '西条'および'前川次郎'の当年ならびに翌年の収量が増加した, 特に着果数の多かった6月10日結縛区の増収効果がいちじるしかった.<BR>4.KT-30の芽への塗布処理では, 翌春における着花数が増加することはなく, 対照区と同程度であった.
著者
田中 信之
出版者
金沢大学人間社会環境研究科 / 金沢大学
雑誌
金沢大学人間社会環境研究科博士論文 199p.
巻号頁・発行日
2011-09

The purpose of essay writing guidance in Japanese language education is not only to improve the student’s ability in essay writing but to also enhance the student’s autonomy, or sense of self-responsibility when writing. Students carried out the peer response activity, were then surveyed and after analysing their responses, improvements were made to the peer response activity. In addition, the effectiveness of using peer response in feedback activities and whether the use of peer response leads to improvement in the student’s autonomy was reviewed. This study, based on the analysis of these 2 aspects, examined the significance of peer response in Japanese language education. After exploring the effectiveness of peer response, it was evident that peer response played a large influence in how students revised the organization and content of their essays. In order to carry out peer response activities effectively, it is implied that the method and content of instruction needs to be considered carefully. Furthermore, it was clear that students were able to judge the relevance of peer feedback and there were indications that this activity contributed to how students revised their work from peer response. It was understood that students adapted to peer response from analyzing their reflective writings after carrying out the peer response activities. Students who were teacher dependent can adapt to collaborative learning, which leads to autonomous learners. This is a result of the effectiveness of peer response improving autonomy. Based on this study, it became clear the effectiveness feedback has on peer response and at the same time, the possibilities as an activity to cultivate an autonomous writer. 本研究は、日本語教育におけるピア・レスポンス(peer response)を有効性と自律性の観点から考察したものである。 日本語教育における作文指導の目的は、学習者の作文能力を向上させることだけではなく、文章執筆における学習者の自律性を高めることにある。しかしながら、従来の作文指導の中心である、文法・語彙等を直接訂正する教師添削では、学習者を教師に依存させてしまうおそれがあり、学習者の自律という目的とは相反する結果となることがある。このような状況において、本研究では、学習者同士が協働的に推敲活動を行うピア・レスポンスを取り上げ、検討した。 ピア・レスポンスは、多様な仲間からのフィードバックが受けられることや、それらのフィードバックを通して、批判的思考が身に付くことなどの利点がある一方、東アジア系学習者はピア・レスポンス活動に適応しにくいという指摘もある。そのため、本研究では、ビリーフ調査を行い、その調査結果をもとに実践を改善することを目指した。そのうえで、本研究では、(1)ピア・レスポンスがフィードバック活動として有効か、(2)ピア・レスポンス導入により、学習者の自律性にどのような影響を及ぼすのかを検討した。本研究の目的は、これらの二つの研究課題の分析によって、日本語教育におけるピア・レスポンスの意義を考察することである。 本研究は、大きく分けて、ピア・レスポンスの改善を目的とする研究(第2章)と、研究課題を実証する研究(第3章および第4章)という二つの部分で構成されている。 第2章は、ピア・レスポンスに対するビリーフを調査することにより、実践の改善を行うことを目的とした。 第1節ではアンケートによるビリーフ調査を行った結果、先行研究ではピア・レスポンスについて否定的な結果が見られたが、本節ではむしろ学習者の積極的な意識が見られた。しかしながら、仲間に作文を読まれたくないという活動に消極的な意識が見られたこと、クラスの仲間の作文を訂正することに否定的な意識も見られたことから、ピア・レスポンスの実施方法を十分に検討する必要があることが明らかとなった。 第2節では、第1節の結果をもとに、記述ピア・レスポンスを取り入れた作文授業を行い、ピア・レスポンスに対し、どのようなビリーフを持つか調査した。その結果、コメントを書くこと、仲間のコメントの効果には否定的なビリーフが見られた。しかし、これらはすべての学習者に共通するものでなく、仲間の作文を読むこと、仲間に作文を読まれることには肯定的なビリーフが見られた。これらのことから、東アジア系学習者(本節では中国人学習者)は必ずしもピア・レスポンスに否定的だとは言えないことが明らかとなった。 以上の結果に基づき、改善策として、(1)話し合いの方法を取り入れること、(2)導入法の充実を図ること、(3)教師の介入を多くすることの3点を提案した。 第3節では、前節の改善案を受け、口頭ピア・レスポンスを実践し、ビリーフ調査をもとに話し合いの問題点を考察した。その結果、学習者は記述コメントより、仲間と話し合う方法のほうを好む傾向があることがわかった。しかし一方で、(1)教師への依存度の高さ(自律性の低さ)、(2)個性の差異、(3)日本語能力の制限、により活動に適応できないということが明らかとなった。 話し合いについては、「基本的には日本語で話し、うまく表現できないときは母語で話したい」と考えている学習者が多かったにもかかわらず、実際の話し合いでは母語を多用している学習者が多く見られた。以上のことから、母語利用を検討する必要があるが、まずは学習者のできるだけ日本語で話したいという意識を活動に生かすべきだという提案をした。 第4節では、前節で課題となった話し合いにおける母語利用について検討した。ピア・レスポンスにおける話し合いの言語、および、それと深く関わるグループ編成について、実践を行い、ビリーフ調査をもとに改善を行った。 前期授業では教師がグループ編成をし、日本語で話し合いを行った。授業後の調査の結果、①母語で話し合いたい②グループに不満がある等の意見があった。そこで、後期授業では話し合いの言語を特定せず、グループ編成も自由にした。後期授業の後、調査した結果、前期授業の問題点は解決できたが、新たな問題が出てきた。①日本語で話し合いたい学習者がその機会を失った、②活動に集中しなくなった、等である。今後は以下のように実践を改善し、実施することを提案した。(1)話し合いの言語については、日本語と母語のどちらがいいということではなく、なぜ教師の指示する言語を用いるのかを学習者に明確に説明する必要があること、(2)グループ編成は教師が行うが、一部に自由な編成を取り入れること、の2点である。 第2章には残された課題が二つある。一つ目は、教師依存の学習者に対する活動改善である。二つ目の課題はグループの人間関係作りである。前者については第4章で考察した。後者については、作文の完成まで仲間とのかかわりを増やすこと、作文の目標を共有化すること、グループの存続期間を見直すことを提案した。 第3章では、ピア・レスポンスの有効性を検証した(研究課題1)。 第1節では、作文プロダクトの観点からピア・レスポンスの効果を検証した。先行研究では、ピア・レスポンスは作文の内容や構成の評点を向上させるという結果がある一方で、ピア・レスポンス後の推敲は表面的な推敲の割合が非常に高いという矛盾した結果が見られた。そこで、先行研究における分析方法の問題点を整理したうえで、次の2点を提案した。(1)ピア・レスポンス後の推敲において、作文評価が向上するかどうかを調べるため、第一作文と推敲作文を比較すること、(2)ピア・レスポンス後の推敲作文の変化についてアイデア・ユニットを用いた分析を行うこと、である。 このような分析方法を用い、ピア・レスポンスの有効性を分析した結果、ピア・レスポンス後の推敲により、作文評価、特に内容の評点が向上する傾向が示された。 しかし、第1節には、第一作文と推敲作文の比較方法や、推敲ソースを分析していないことなど、課題が残った。さらに、フィードバックに関する教示(instruction)も再検討する必要があることを指摘した。この二つの課題については第3節で分析した。 第2節では、フィードバックの教示の観点から、どのように推敲を指導したらよいかを考察した。 推敲に関する講義が推敲結果にどのような効果を及ぼすのか調査した。二つの条件(講義を受ける群、講義を受けない群)を設定し、作文を推敲させた。講義では作文の内容・構成の推敲を促すために、推敲基準を示した。講義の効果を調べるために、推敲前と推敲後の作文を量的、質的、誤用率、および作文評価の面から分析した結果、本節における講義は、作文の質的変化を大きくさせたが、作文評価は向上させなかった。すなわち、講義の効果は認められるが、講義内容および方法は再検討する必要があると言える。このような結果から、第3節では、推敲基準を示すだけではなく、学習項目をもとにした講義を検討し、ピア・レスポンスを実践した。 第3節では、第1節および第2節の結果を踏まえ、ピア・レスポンスを実施した。第1節で述べた分析方法、(1)ピア・レスポンス後の推敲において、作文評価が向上するかどうかを調べるため、第一作文と推敲作文を比較すること、(2)ピア・レスポンス後の推敲作文の変化についてアイデア・ユニットを用いた分析を行うこと、に加え、(3)推敲におけるピア・レスポンスの影響を明らかにするため、推敲の際のソースをポスト・インタビューにより特定すること、を提案した。 本節におけるフィードバックの教示は、学習項目(論理性、文章構成など)に基づき、作文の内容・構成のみについてフィードバックを行わせるものであった。ただ内容・構成に関する推敲基準を示すのではなく、授業において学習した知識をもとにして、推敲するように促した。 ピア・レスポンスの実施後、上述した三つの方法によって分析した結果、以下の二つの効果が確認できた。(1)ピア・レスポンスは推敲全体の約7割に影響していた。また、文章の意味内容に影響を及ぼす推敲のうち、約9割がピア・レスポンスによるものであった。(2)第一作文に比べ、第二作文の評点は、作文の「構成」では有意に向上し、「内容」では向上する傾向が見られた。 これらのことから、ピア・レスポンスが作文の内容・構成の推敲に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。また、ピア・レスポンスを効果的に行うためには、単にフィードバックの焦点を絞った教示をするだけではなく、講義やフィードバックの練習等と有機的に結びついた教示を行う必要があることが示唆された。 第4節では、フィードバックの教示と推敲の二つの観点から、学習者作文に対する学習者のフィードバック(ピア・フィードバック)を分析した。内容・構成に関するフィードバックのみを行うように教示し、ピア・レスポンスを実施した後、ピア・フィードバックを分析した。その結果、(1)フィードバックに関する教示がピア・フィードバックの対象や妥当性に強く影響していること、(2)書き手である学習者はピア・フィードバックの妥当性を判断し、採用するため、推敲成功率が高いことがわかった。 ピア・フィードバックは教師フィードバックのように完全なものではない。だが、ピア・フィードバックの不完全さを補うものとして、学習者にはピア・フィードバックの妥当性を判断する能力があることが明らかとなった。 第4章では、ピア・レスポンス導入による自律性への影響を調べた(研究課題2)。第1章および第2章では、学習者の教師依存度の高さがピア・レスポンス実施の障害になっていることを指摘した。そこで、このように教師依存度の高い学習者のためにデザインされたピア・レスポンスを実施することにより、日本語学習者がピア・レスポンスに適応するかを分析した。第2章で述べたように、教師依存的な学習者ほど協働学習に適応できないことから、協働学習に適応していくことが学習者の自律につながると考えられる。本章では、学習者のピア・レスポンスへの適応の分析を通して、ピア・レスポンスが自律的な書き手を育成する活動となり得るのかを検討した。 テキストマイニングを用い、学習者の内省文を分析した結果、活動第1回目後の内省文に比べ、活動第3回目後の内省文では活動の熟達化が見られること、学習者が作文能力の向上を実感していることなど、ピア・レスポンスに適応していることが窺えた。このことから、自律的な書き手を育成する活動としてのピア・レスポンスの可能性を示すことができた。 ただし、一部の学習者には仲間に依存する意識や潜在的な教師主導の学習観があり、ピア・レスポンスに適応できないケースが見られた。 本研究の成果は三つ挙げられる。第一の成果は、ビリーフ調査によるピア・レスポンス改善の可能性を示したことである。第二の成果は、ピア・レスポンスの有効性を示したことである。これには二つの要因が挙げられる。一つは、ピア・レスポンス分析方法を再検討したことで、もう一つはフィードバックに関する教示内容および方法を改善したことである。第三の成果は、協働学習と自律性との関連性を指摘し、自律的な書き手を育成する活動としてのピア・レスポンスの可能性を示したことである。 本研究ではピア・レスポンスが作文の内容・構成の推敲に大きな影響を及ぼしていることを明らかとしたが、ピア・レスポンスが学習者の推敲能力の向上に貢献したか否かは明らかにしていない。本研究におけるピア・レスポンスの有効性の検証は、作文指導による学習者の作文能力向上のための基礎的研究であり、今後はピア・レスポンスを継続することによって、学習者の推敲能力が向上するかを分析する必要がある。また、第4章において、一部の学習者にピア・レスポンスに適応できない学習者が見られたが、今後も実践の改善を図っていく必要がある。 金沢大学博士学位論文 田中信之, Theisis of Nobuyuki TANAKA