著者
野村 亜由美
出版者
長崎大学
雑誌
保健学研究 (ISSN:18814441)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.73-78, 2009-03

精神科医/臨床家・小澤は,数年前肺がんの告知を受け余命一年と宣告された.死を前にした小澤が「ぼけ」,「ケア」をどう捉えているのか.本書には専門用語がほとんど用いられず,平易な文章で綴られている.平易な文章で「ケア」を語る切り口は,「ケア」がおそらく万人が共通して持つであろう<やさしさに至る知>であり,そしてそれが,精神科医/臨床家として得た答えだったと考えられる.小澤は,痴呆という障害のありようを明らかにし,暮らしのなかで彼ら(認知症を患うもの)が抱えている不自由を知ること,できないことは要求せず,できるはずのことを奪わないこと,そして現在の暮らしぶりを知り,彼らが生きてきた軌跡を折にふれて語っていただけるようなかかわりをつくりたいと考えてきた.小澤は,研究者あるいは医療者が社会的に力を持つのは仕方がない.大切なのはそれを自覚することであるという.そのことばを受け筆者が感じたことは,医療に限らず,人類学者が対象を一方的に研究するのではなく,研究の対象となる人たち自身に人類学者になってもらって自らを研究し,そして自らが置かれている状況や文化を相対的な視点からながめるようになる.病気を患う人たちや医療に携わる人たち双方が,自らの状況を文化人類学的な視点でみつめるようになり,それぞれの立場や置かれた状況から解放されていく.そんな「野生の人類学者たち」が生まれることを期待しながら書評としてまとめた.
出版者
金曜日
雑誌
金曜日
巻号頁・発行日
vol.18, no.27, pp.52-55, 2010-07-23
著者
小沢 博 有馬 哲夫 大西 洋一 中村 隆 大河内 昌 石幡 直樹 ROBINSON Peter
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、英文学に現れた異人概念の変遷を比較検討することにより、英文学及び英国文化を、広義の異文化交渉史の中で捉え直すことにあった。新大陸や東洋のみならず、文学的尚古主義、階級差、性差といった広い意味での内なる異文化も対象とし、そこに継起する異人概念の変遷を検証することにより、英文学を内と外の複眼的視点で相対化しようとする試みである。こうした観点から、小沢は、英国ルネサンス期に見られる外国人排斥運動の思潮を検討し、これが当時の演劇作品と上演活動にどのような影響を与えているかを考察した。石幡は、英国ロマン派文学に顕著な尚古主義や高尚なる野人の概念を異文化への憧憬の象徴的行為として捉え、ロマン派思潮台頭の背後にある社会文化的要因を当時の異国趣味との関連で検討した。大河内は、19世紀における階層社会の形成を異人としての下層階級の形成として捉え、当時の政治経済理論がこうした内なる異人の生産といかに連動していたかを政治社会史的文脈の中で探った。中村は、19世紀英国小説におけるユダヤ人の表象を検証し、大衆文化の担い手としての小説がいかに通俗的な異人観を形成していったかを考察した。大西は、17・18世紀英国演劇における新大陸と東洋の表象を比較検討し、西欧の西進と東進がもたらした異なる二つの非西欧文化との交渉を演劇の文化史として考察した。有馬は、アメリカ文学におけるインディアンの表象の変遷を俯瞰し、これを英国の植民地政策との関連で比較文化論的に考察した。Robinsonは、英国近代文学の創作活動が異人としての女性の侵入と密接な関係を持ってきたことを、RichardsonのClarissaやT.S.EliotのThe Waste Land改作問題と絡めて検証した。以上のような具体的研究成果を通じ、共同研究者の知見を統合して、英文学における異人概念の変遷の一面を解明できた。
著者
小杉 誠司
出版者
淑徳大学短期大学部
雑誌
淑徳短期大学研究紀要 (ISSN:02886758)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.155-166, 2009-02-25
被引用文献数
5

測定過程に関連したHeisenbergの不確定性原理に対する小澤の批判を考察し,小澤が定義した測定値が正しくないために,小澤の理論にはいくつかの不合理な点が存在することを指摘した.本論文で明らかにした正しい測定値を用いれば,これらの問題は生じない.EPRがおこなった粒子2の位置測定の結果から粒子1の位置測定をおこなう間接測定の場合には,Heisenbergの不確定性関係を一般化した小澤の不等式は成立していない.
著者
小沢 弘明 大峰 真理 上村 清雄 橋川 健竜 秋葉 淳 後藤 春美
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、近現代ヨーロッパにおける中心=周縁関係の再編過程を分析することであった。この研究では二つの側面を重視した。第一は、ヨーロッパ内部の地域的な不均等発展を分析することである。この側面では、ルネサンス・イタリアにおける中心=周縁関係をフィレンツェとシエナめ関係に見る研究、ハプスブルク君主国とオスマン帝国内における中心=周縁関係から分析する研究を行った。第二は、ヨーロッパ概念の特質と、近代世界における構造化の中でヨーロッパの位置を探る研究である。本研究では、両大戦間期の国際社会における中心=周縁関係の議論をイギリス帝国を中心に分析する論考、植民地期の北アメリカを帝国史や大西洋史(アトランティック・ヒストリー)などの研究動向から分析する論考、18世紀フランスにおける奴隷貿易を基軸にヨーロッパ=アフリカの通商関係を再考する論考を準備した。本研究ではまた、いくつかの方法論上のアプローチも検討に付した。それは、「域内周縁」理論、 「境界地域」理論、ハプスブルク君主国やオスマン帝国について最近行われているカルチュラル・スタディーズやポストコロニアル・スタディーズからの議論である。EUの東方拡大と新自由主義による世界の構造化が進んでいる現在、とりわけ周縁の位置からヨーロッパの歴史的位置を解釈することは不可欠である。そのような視点を取ることは、帝国論や、新帝国主義論、新自由主義論などに関するわれわれの理解を深化させることになろう。本研究ではさらに、主題に関する今後の研究の基礎を拡大するためにデータベースの作成を行った。これらを利用することによって、近現代ヨーロッパ史を、これまでとは異なった観点で分析していくことが可能となろう。
著者
江木 啓訓 西川 真由佳 宇木 等以香 大菅 直人 重野 寛 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.106, pp.13-18, 2003-10-23
被引用文献数
3

本研究は、空間と空間の接点である「出入り口」を場と捉え、その場におけるグループの支援環境:Collabogateを構築する。出入り口空間での活動は、その内容や所要時間などの点において従来の協調作業空間とは異なる特性を持つ。Collabogateは出入り口空間におけるアウェアネス情報を収集・蓄積し、グループにおけるインタラクションを支援する。センサとディスプレイを組み合わせたCollabogate環境の設計とアプリケーションの提案を行った。今後実装されたシステムを用いた実験と評価をもとに、出入り口空間でのグループ支援環境に必要な要件を検証する。This research focuses on the gateway place, where two or more rooms are connected. The gateway place can be considered as a collaborative place as well as meeting or working rooms. We propose "Collabogate", which supports group interaction with various services at the gateway place. First, we analyze the characteristics of the gateway space, and design the Collabogate environment with sensors, displays and portable devices owned by each user. Collabogate manages these devices and gathers awareness information from various sensors. Several applications are proposed based on the Collabogate environment, and experiments and evaluations are planned to be held.