著者
麻田 治男 黒沢 由明 下辻 成佳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1995, pp.310-311, 1995-09-05

パターン認識の中でも文字認識は最も古くから実用化が進んでいる.文字認識の応用システムとしては汎用のOCR(optical Character Recognition)装置があり,この国内市場は93年度で約300億円,台数にして1万数千台に達している(矢野経済研究所調査).文字認識のもう一つの応用としては郵便物自動区分機があり,近年,手書き漢字認識による宛名読み取り区分機が実用化されている.この二つを見ると,ずいぶんと実用化が進んでいるようであるが,日本語ワードプロセッサの市場(年間約3千億円)と比べると,実用化の度合いは小さいといえる.文書・文字認識と類似技術である図面認識についても第二世代に入って既存図面の入力システムが電力会社などで実用に共されているが,まだ,市場規模を云々するほどは普及していない.また,オンライン文字認識は携帯情報機器などのペン入力に用いられ,期待されてはいるが,仮想キーボード入力のような代替手段に比べて優位な位置は占めていない.このように文書・文字認識の技術はそこそこの実用化はなされているが,長年にわたって伸び悩んでいるというのが実情である.一方では,文書・文字認識に関する国際会議やワークショップが新たに発足するなど,国際的な研究活動の高まりを見せており,社会の真のニーズに沿った研究の方向性を見極める必要がある.本稿は「認識技術の実用化を阻むもの」という大テーマの中で,文書・文字認識について応用範囲を拡大するために何をすべきかを述べる.
著者
〓 斗燮 小井川 広志 村岡 輝三
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は昨今の東アジア経済の構造転換を「直接投資時代」への移行段階として規定し、その本質を企業連携、産業金融、地域協力という三つの局面において総合的な把握を試みた。この場合、直接投資の雁行型拡大により好調を続けてきたアジア経済が1997年タイの通貨危機以降、地域全体が構造的な危機を露呈している現状に鑑み、以下の三つの追求すべき課題を設定した。(1)「アジア型発展」モデルが90年代の後半に急激に機能不全に陥った理由は?。再び成長基調に乗せるための条件と問題点は何か。(2)経済成長の持続化ためには成長段階に合わせて人材の質を高める必要があるが、学校教育と企業内教育とどちらが有効であろうか。(3)「アジア型発展」モデルは、究極的には日本企業による企業内国際分業の展開及び高度化にその本質がある。今後の直接投資は、大企業よりは中堅中小企業による国境を越えた成長戦略がカギになるものと考えられるが、彼らの国際化を支える競争優位や企業文化とは何か。以上の三つの課題に対する我々の答えは以下の通りである。(1)「アジア経済」の成長は、アメリカ、日本、アジア諸国の3者(トライアングル)による技術、資本、地域協力の枠組みに内在する「協力」と「緊張」の好循環によるもの。しかし、昨今の通貨危機のなかで既存のトライアングルが持つ弱点がはっきりしてきた。特に、金融・通貨面での対応能力が脆弱である点が明らかになった。対応策としては、地域経済路力機構(ASEANやAPEC)の機能強化、共通通貨や通貨圏の設置などが不可欠であるが、問題は2大勢力の円(日本)と人民元(華人経済)が共通目的に向けて協力できるかである。(2)日本の高度成長は質の高い人材を長期安定的に供給できた点に負うところが大きいが、教育投資による経済的効果に関する定量分析によれば、いわゆる学校教育による労働生産性の増加効果はそれほど大きくない。企業内教育(OJTを含む)の重要性を示唆する結果である。(3)中堅企業の国際化がアジア経済を再び成長軌道に乗せるには非常に重要なファクターである。高い競争力を持つ中部圏の製造企業11社に対するヒヤリング調査から以下の点が確認された。第一は、全体として国際化にはまだ消極的であること。第二は、ある特定技術分野に特化した専業企業が多いこと。第三は、カリスマ的な創業者による独特の組織文化を共有していること。第四は、上位文化として製造業や熟練の継承に好都合の地域文化(中部圏)が存在していること。アジア経済の再生には、こうした中堅企業の対アジア進出と組織文化の地域的な拡散が大きく寄与するものと考えられる。
著者
渡部 和彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究における成果をまとめると、これまで一流スキージャンプ選手の踏み切り局面における構えおよびサッツ動作の解析を行うことができた。それと合わせて、足底部圧力分布と圧力中心点(COP)の移動の特徴を解析した。その結果次のような知見を得ることが出来た。(1)バイコンシステムによる3次元画像解析装置により、選手のサッツ動作時における構えのシミュレーション実験を行い、身体重心位置(COM)を特定するとともに、地面からのベクトルが圧力中心位置(COP)といかなる関係にあるかを静的な条件のみならずダイナミックな状態で記録し、すぐさまそれを分析して、その場でコーチ・選手に結果を呈示することを可能とした。このことにより、研究者がその実験資料の意義をについて解説・説明し、その場所で資料を基に、選手・コーチと共に結果と今後の取り組み方等を論議することができるようなシステムを構築できた。(2)足底圧のCOP移動軌跡から、一流選手の特性として、サッツ動作を行わせた際の移動軌跡を分析した結果、COPが足部の尖端近くにまで及んでいるものと、その手前で終了してサッツ動作を行っているものとがあった。その違いは、サッツのテクニックおよび跳躍の高さと関係があることが判明した。ある一流選手のサッツ直後のスキー板の変動とサッツ動作の選手の特性との関係が明らかとなり、選手・コーチの疑問に対してその場で、実験資料を基にアドバイスなど指導することができることが示された。その結果、オリンピック直前に代表選手の一人は、自分が抱いていた疑問を払拭して自信を持って自己のサッツ動作を行いトリノのオリンピックに出場した。良い成績を上げることができた。このたびの研究における成果の一つであり、我が国のオリンピックの成績に貢献できたと考える。今後の指導のあり方に、具体的な方向を示すことが出来た。
著者
岩井 浩一 澤田 雄二 野々村 典子 石川 演美 山元 由美子 長谷 龍太郎 大橋 ゆかり 才津 芳昭 N.D.パリー 海山 宏之 宮尾 正彦 藤井 恭子 紙屋 克子 落合 幸子
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.57-67, 2001-03

看護職の職業的アイデンティティを確立することは, 看護実践の基盤として極めて重要であると考えられるが, 看護職の職業的アイデンティティの概念や構造は必ずしも明確になっていない。そこで, 現在様々な立場にある看護職を対象に調査を行い, 看護職の職業的アイデンティティの構造を探るとともに, 職業的アイデンティティ尺度を作成した。因子分析の結果をもとに, 1)看護職の職業選択と誇り, 2)看護技術への自負, 3)患者に貢献する職業としての連帯感, 4)学問に貢献する職業としての認知, 5)患者に必要とされる存在の認知, という5つの下位尺度が抽出された。これらの下位尺度に高い因子負荷量を示した項目について信頼性係数を算出したところ, α係数は0.78〜0.89といずれも高い値を示しており, また尺度全体としては0.94と信頼性が高いことが確認された。さらに, 因子得点を算出し, 看護職としての臨床経験年数や看護教員としての教育経験年数などの変数との関連を探ったところ, 看護職の職業選択と誇り, 看護技術への自負, 患者に貢献する職業としての連帯感, および学問に貢献する職業としての認知という4つの因子は, 年齢, 臨床経験年数, および教育経験年数と有意な相関が認められたが, 患者に必要とされる存在の認知因子は年齢および臨床経験年数とのみ関連が見られた。各因子とも, 看護学生群でスコアが低く, どのようにして職業的アイデンティティが高まっていくかを探ることが今後の課題といえる。
著者
片方 信也 佐々木 葉 小伊藤 亜希子 室崎 生子
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1 中高層集合住宅の建設動向:京都市都心部では、バブル期についで1993年以降再び中高層集合住宅の建設ラッシュに見舞われている。1993年以降の特徴は、分譲、および9階建て以上の高層の割合いが増えていることであるが、敷地規模は依然として多くが400m^2以下であり、周辺の町並みの日照を奪っている。2 都心部中高層分譲集合住宅入居者の特性:1993年以降では3〜4000万円台と分譲価格が下がっているため、子どものいる世帯を含めて多様な世帯の入居がみられる。全体の7割は京都市内からの転入であり、うち半数は都心部内からである。6割の世帯に現在、または以前に都心部に住んでいた親族がおり、都心部とのコネクションの強い住民の入居が多いことがわかった。3 中高層集合住宅に対する周辺住民の対応:中高層集合住宅の建設に対して、日照やプライバシーの侵害、ビル風等の実施的な被害に加え、周辺住民が多大な不安を示していることがわかった。それは、マナーが悪い、だれが住んでいるかわからない、といったコミュニティ形成上の問題である。また、中高層集合住宅建設時に町内会として業者と交渉したり、建築協定を作って対応するといった積極的な動きがみられる。4 中高層集合住宅の立地する町内のコミュニティ形成:集合住宅自治会として町内会に属し、町内会の行事にも参加しているケース、管理人だけが町内会とのつなぎをしているケース、まったく別組織にしているケースなど、集合住宅の町内会との関係は様々であった。概して、集合住宅住民と周辺既存住民の交流は薄く、周辺環境を破壊する集合住宅の建て方がコミュニティ形成のひとつの疎外要因になっている。5 京都市都心部の地域ストックの享受と破壊:周辺既存住民と同様に、集合住宅入居者も、生活のしやすさ、便利さ、歴史や文化の存在、自然環境等、京都の都心部の「京都らしい」環境を評価して入居しているが、現在のような中高層集合住宅の建設は、その環境を破壊しつつあるという矛盾を抱えている。
著者
箱山 洋
出版者
独立行政法人水産総合研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

無性型・有性型からなるフナ類の集団は同所的に共存している。この共存のメカニズムを理解することを目的とした。(1)野外個体群動態から、共存を可能にする3つの仮説(病気、中立、メタ個体群)を棄却した。(2)実験個体群で、有性生殖のオスを作るコストの個体群への影響を初めて実証した。(3)発育段階ごとに、有性・無性型の成長率の違いを明らかにした。結論として、共存メカニズムは出生率の差に関する何らかの要因によることが示唆された。
著者
大隅 典子
出版者
国立精神・神経センター
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

脊椎動物の脳形成はまず外胚葉に神経上皮が誘導され、その後背側で癒合して神経管が形成されるとともに、前後軸に沿ったいくつかのコンパートメント(分節)に分がれることによりなされる。近年、多数の形態形成遺伝子やシグナル分子がこの脳分節に特異的に発現することが報告されており、脳の分節構造は形態的な単位であるばかりでなく、その後の領域特異的な神経細胞の分化やネットワーク形成の基本単位として極めて重要な役割を果たしていると推定される。ショウジョウバエの形態形成遺伝子であるpairedのホモログの一つとして同定されたPax-6遺伝子は転写因子をコードし、発生中の前脳や菱脳・脊髄で領域特異的に発現する。本研究では実験発生学的手法と分子形態学的手法を駆使することにより、脳分節形成の細胞系譜的解析および脳のパターニングにおけるPax-6の役割について解析することを目的としている。今年度は、Pax-6陽性領域である前脳コンパートメントの成立とその運命地図の作成について、培養マウス胚を用いて詳細な解析を行った。さらに昨年度確立した電気穿孔法による培養哺乳類胚への遺伝子導入系を用いて、前脳コンパートメントの維持にカドヘリン群が果たす役割を解析した。また、ラット胚菱脳部において、Pax-6の下流の分子カスケードについて解析し、Wnt遺伝子によってコードされる分泌因子がlslet2などの遺伝子発現を調節することにより、神経細胞の多様性獲得に役割を果たしていることが示唆された。
著者
八幡 英雄
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會誌 (ISSN:00214728)
巻号頁・発行日
vol.91, no.840, pp.1151-1156, 1988-11-05
被引用文献数
1
著者
崎村 建司
出版者
新潟大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

神経細胞壊死の機構解明を目的として、2つのテーマで研究を進めてきた。第一に、一過性の脳虚血負荷後の遅発性神経細胞壊死や、カイニン酸などの薬物投与による急性神経細胞壊死に、NMDA受容体チャネルがどのように関与しているかを検討した。カイニン酸投与による急性中毒では、4種類のNMDA受容体チャネルεサブユニットをノックアウトしたマウスはいずれも耐性を示したが、とりわけε1サブユニットノックアウトマウスは高い耐性を示した。また、眼圧上昇による一過性虚血負荷により発生する遅発性神経細胞壊死が、NMDA受容体チャネルサブユニットε1-4失損マウスでどのように起こるかを経時的な組織学的検索により検討した。その結果、一過性虚血負荷により発生する視神経細胞及びアマクリン細胞の遅発性の壊死が、ε1サブユニットノックアウトマウスではほとんど起こらないことが明らかになった。以上のことから、これらの神経細胞壊死の過程にNMDA受容体チャネルを介する過程が存在することが示唆された。一方、ヒト疾患モデル動物を作成するために、ヒト家族性パーキンソン病、脊髄小脳変性症、歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症の原因遺伝子であるα-Synuclein、SCA1およびDRPLAのマウスカウンターパートをノックアウトした動物の作成を進めている。現在、それぞれの遺伝子のマウスカウンターパートを得るために、プローブ用のマウスcDNAクローンを検索している。
著者
牛田 享宏 大迫 洋治 末冨 勝敏 小畑 浩一 石田 健司 藤原 祥裕 神谷 光広 石田 健司 藤原 祥裕 神谷 光広 小畑 浩一
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

四肢の不動化(ギプスやシーネの装着あるいは過度のベッド上安静)はしばしば不動化した部位の廃用とそれに伴う痛みが生じる。しかし、この痛みのメカニズムについてはまだ明らかにされていないのが現状である。そこで我々は独自に開発したギプス固定法による前肢拘縮モデルを作製し、痛みの発症のメカニズムに関与する脊髄後角における神経ペプチドであるCGRP、転写因子であるC-fosおよびアストロサイトの活性マーカーであるGFAP、ミクログリアの活性マーカーであるCD11 bについて調査した。また、後根神経節においてCGRP陽性細胞の大きさとその分布について調査を行った。更にこのような拘縮に対する運動療法の有用性を検証する目的での訓練の効果について調べた。その結果、ギプス除去後にギプス固定側の脊髄後角においてCGRP陽性線維の増加、C-fosタンパク陽性細胞の増加、GFAPおよびCD11bの染色性の亢進が観察された。これらのことはギプス固定により、脊髄後角においてミクログリアやアストロサイトの活性化亢進し、それを引き金として炎症性神経ペプチドの増加などが引き起こされていることが示唆された。同時に調べた後根神経節細胞レベルのCGRP分布パターンの変化は、同部位においても長期のギプス固定により、後根神経節細胞に感作や可塑的変化が引き起こされていることを疑わせるものと考えられた。今回のモデル動物では、ギプスから解放を行っても治療を行った患肢を使う傾向が乏しい。そこで、水中訓練や反対側のギプス固定などを行ったところ反対側のギプスによって、生活障害が引き起こされると患側を使うようになり自ら動かすようになることが判った。今後はタイミングや運動強度などについても検証を行っていく必要があるものと考えられた。
著者
中島 洋
出版者
太平洋学会
雑誌
太平洋学会学会誌 (ISSN:03874745)
巻号頁・発行日
no.24, pp.8-21, 1984-10
著者
臼井 敬太郎
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.72, no.621, pp.223-228, 2007

Angiolo Mazzoni's Reggio Calabria Station Building, constructed in 1938, is one of the latest works of a series of railway station buildings that Mazzoni had designed in Italy. One explanation for Reggio Calabria Station Building characteristic would be that it achieved the total design by systematic rule in each level from architecture to furniture. It was based on "The principle of architecture" that Mazzoni suggested in the magazine Architettura e Arti Decorative, in 1927. The rules adopt the following logic. First, a grid system is set for fixing the ground plan and the elevation of the architecture. Next, the same grid is divided equally as a layout of stones to finish the surface inside and outside of architecture; the built-in furniture also follows the layout of stones as a part of the architecture. In addition, shelves are also designed by the systematic way, determination of the proportion by the combination of contents inside and the division of the front of shelves.
著者
服部 健司
出版者
群馬大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

臨床倫理学の特異性はもっぱら個別特殊的なケースに照準を合わせたケーススタディに存する。ケーススタディの成果が豊かなものであるか貧しいかを決定する要因は、議論の仕方に先立ち、すでにケースそのものの叙法のもつ物語論的特性のうちに存する。具体的に言えば、カルテや症例報告を範型とした客観的自然科学的な視点からの記述よりも、見えない陰の部分、発せられる言葉の曖昧さ、明示あるいは暗示される意思の両義性の仄めかしをそのままに残した、多声性を含んだ文学的叙法こそが臨床倫理学ケースにふさわしい叙法である。次に問われるべきはケース解釈の妥当性をいかに確保し確証するかである。正典の妥当な釈義をいかにして得るかをめぐって興った解釈学が、その対象領域を文献一般、他者とその生、歴史へと拡張したのは一九世紀後半である。前世紀には、解釈の方法論の基礎づけという進路そのものの変更と深化が行われ、解釈学的哲学へと転回が図られた。臨床倫理学の領域での課題は、いわば共通の文化的地平上の大文字の文化の理解ではなくて、個々の人々の生きざまや迷いが描き込まれた小文字の物語としての臨床倫理学ケースの理解である。そのためには、解釈学的哲学以前の、方法論的な解釈学へとあえて意図的に後退する必要があるように思われる。客観的にではなくむしろ心理主義的、直観主義的な要素を排除するのでない仕方の解釈学でなければ、目前の小文字の物語を読み解く助けにはならないように思われる。この種の読みの技法を磨きつづけてきたのは文学であった。臨床倫理学の方法論的研究のためには、文学の哲学へと進んでいかなくてはならない。
著者
相内 眞子 相内 俊一
出版者
浅井学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、女性議員の選出に作用するアクターや条件を、日本、アメリカ合衆国、スコットランドの比較を通して検証することにある。議会選挙と議員の選出には、候補者の選考方法、政党の関与と支援、有権者の候補者選好傾向、さらに政治文化や選挙制度など、多様な要因が複合的に作用し結果に大きな影響を与える。本研究は、(1)アメリカにおける候補者選出過程に関する先行研究の紹介、(2)2006年のアメリカ中間選挙の分析、(3)2005年の衆議院選挙の分析、(4)2007年のスコットランド議会選挙の分析(5)ジェンダークオータの有効性分析などを中心に、主に国会レベルの議会への女性の選出につながる要因を抽出しようとするものである。女性の議会への選出については、その促進/阻害要因として、これまでは政治文化や有権者の候補者選好傾向がとりあげられてきたが、本研究はより制度的な側面に焦点を絞り、女性議員の選出に有効な選挙制度に着目した。その一つが、アメリカで議論され、近年採用州も増加しつつある「議員任期制=タームリミット」であり、もう一つが、世界に拡がりつつある「ジェンダークオータ制度」である。アメリカにおけるタームリミットは、『現時点では連邦議会にその効力は及んでいないが、女性の選出に必ずしも積極的な効果を与えていないことが統計上明らかになっている。また、ジェンダークオータ制度については、女性の選出を助けるものとしてその効果が評価される一方、自由主義的立場からは、有権者の選択権を制限するものだとする批判や、平等主義的立揚からは、不公平、逆差別等の批判があり、更にジェンダー論的立場からも賛否を巡る論争が続いている。本研究は、以上の共通の分析視点から3力国における女性の選出プロセスを検証したものであり、日本における政治学、選挙学研究においてまだ十分とはいえない分野に焦点を当てたという意味で、その重要性を主張できよう。
著者
森田 浩 刀根 薫 福山 博文 上田 徹 廣津 信義 関谷 和之 実積 寿也 刀根 薫 福山 博文 上田 徹 廣津 信義 実積 寿也 関谷 和之 高橋 新吾 篠原 正明
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

DEAにおける理論と応用の両面からの展開とその融合研究を行った。ネットワークDEAや不確実性下のDEA、評価指標の開発などの理論的貢献とこれらの成果の多様な分野への適用による事例研究における応用面での貢献を得ることができた。さらに、国際シンポジウムの開催や外国人研究者の招へいなどによる国際交流の活性化および国内におけるDEA研究の中心的役割を果たすことができた。