著者
岩田 孝 桂 紹隆
出版者
早稲田大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

法称(七世紀中葉)は、独自な論理系を導入して、陳那(六世紀前半)の論理学を説明しつつ、自らの論理系と、陳那のそれとの無矛盾性を多くの箇所で示している。本研究では、法称の論理系が陳那の独創である九句因説と矛盾しないことを論じた『知識論決択』の箇所を分析した。その結果、陳那には見られない法称の視点が浮き彫りになった。それは、推論の成立の主要な条件である論証因と所証との論理的関係を、陳那が「確定される」ものと見なしたのに対して、法称は確定できない場合も有るとし、「疑い」の視点を導入して論理的関係を再分類したという点である。「疑い」の概念の導入により、他者が日常的に認識できない不確定な事柄を証明する場合(例えば常住不変なる実我などの存在を証明しようとする場合に)これを批判することが可能になった。印度の論理学は実例に依存する為に帰納的であると言われている。実例に基づく為に生じる諸矛盾を回避する方法を検討することは、印度論理学の限界を示すという意味で重要である。本研究では、陳那の論理学での喩例の役割を分析した。更に、法称の『知識論決択』での疑似論証因の論述を調べ、実例に依らずに、論証因の成否を検討するという見方の萌芽が法称説に存することを指摘した。上記の推論説の文献学的研究は、仏教論理学の基礎論の研究である。以下の研究は、その応用部分に相当する。ものごとの認識を成立させる根拠を定め、その根拠に基づいて、何が妥当なものとして残るかをラディカルに追求した法称は、世尊自身についても、何ゆえに人々にとって信頼される拠り所(公準、量)になるのかを問題にし、これの証明を試みた。本研究では、この証明に関するプラジュニャーカラグプタ(八世紀後半)の解釈を分析し、世尊の量性の証明が、世俗的上での証明と、勝義上での証明に分類されることなどの特徴を指摘した。
著者
西脇 紀子
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.15-17, 2009-12

掲載誌目次の論題:自動精算機 (券売機) の図書館文献複写等サービスへの導入報告新潟大学附属図書館では,文献複写等(ILL)サービスの料金収納に自動券売機を導入し,2009年2月より運用を開始した。これにより利用者自身による料金支払ができ,夜間・土日祝日の文献複写物・相互貸借図書の授受が可能となり,利用者サービスの向上と,併せて文献複写料等の財務会計手続き上の業務改善も図ることができた。Niigata University Library installed a vending machine to handle interlibrary loan service payments and began using it in February 2009. This allowed users to make payments themselves, which then meant that they could received their requested articles and books in the evenings and weekends. As a result, use of the service increased and procedures for financial accounting improved.
著者
織田 剛 満田 正彦 山極 伊知郎 田中 俊光 名倉 隆雄 大石 峰生
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.64, no.620, pp.1127-1134, 1998-04-25

Two-dimensional axi-symmetric Euler equations are solved in order to simulate the compression wave induced by a high-speed train entering a tunnel or a tunnel entrance hood. Pressure and pressure gradient histories at the tunnel entrance obtained from the calculation are compared with experimental results. It can be found that calculated results and experimental results are well corresponding each other. The effect of the cross-sectional area of the tunnel entrance hood is numerically investigated by this calculation method. Then, propagation of the compression wave along the tunnel is one-dimensionally calculated by a double mesh method which induces little numerical diffusion.

1 0 0 0 OA 名将言行録

著者
岡谷繁実 著
出版者
玉山堂
巻号頁・発行日
vol.巻之1, 1869
著者
尾瀬 智昭
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.93-99, 2000-02-25

冬季北半球における、西太平洋パターン(WP)および太平洋・北アメリカパターン(PNA)の出現が、2年振動する南シナ海の海面水温とこれに関係する熱帯西太平洋上の降水量の変動と統計的に次のように関係していることが分かった。(1)NINO4の海面水温偏差が正(負)で、フィリピンの東で降水が抑えられる(活発化する)時、WP(逆符号のWP)パターンが現れる傾向があり、このことは局所的なハドレー循環の理論と定性的に一致する。(2)NINO4の海面水温偏差が正(負)で、フィリピンの東で負(正)の降水偏差が小さいか、または西方にシフトしている時、PNA(逆符号のPNA)パターンがWP(逆符号のWP)パターンよりむしろ現れる傾向がある。(3)上記の熱帯西太平洋での降水量の変動は、南シナ海の海面水温の2年振動を説明する降水量の変動と一致する。
著者
日高 真子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.19-28, 2010 (Released:2010-04-01)
参考文献数
4
被引用文献数
3 2 4

国内の学術研究団体から主に日本語で発行される約50誌の学術雑誌の著作権の取り扱いについて文献およびインタビューによる調査を行った。文献調査によれば,論文をはじめとするコンテンツの著作権は学会に帰属する場合が多く,著作権規定の中では複製権や公衆送信権,翻訳権・翻案権といった著作権法上の権利や,利用許諾,著作者の著作物利用,著作者の責任に関する規定が重要視されていた。文献調査とインタビュー調査の結果をもとに著作権の取り扱いに関する方向性を検討し,著作権が学会に帰属する場合と著作者に帰属する場合について,著作権規定の日本語のひな型を作成した。このひな型は,利用許諾を広範に認める緩やかな規定をベースとしており,インターネット上で公開し,普及活動を行っている。また,このひな型を利用して,『情報管理』誌の投稿規定を見直し,著作権規定を新たに追加した。
著者
安藤 信廣
出版者
法政大学
雑誌
日本文學誌要 (ISSN:02877872)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.101-106, 1993-07-01
著者
鈴木 潔
出版者
同志社大学
雑誌
言語文化 (ISSN:13441418)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.279-296, 2007-12

E・T・A・ホフマンの『アウトマーテ』という小説は、17、18世紀にヨーロッパで多く作られたからくり人形を題材にした作品である。物語の発端に「喋るトルコ人」という人形がでてきて、この人形に伺いを立てるとお告げをする謎をめぐってストーリーが展開する。人形が人間の運命を透視する謎を二人の若者が追及してゆくが、その過程で当時の様々な自動人形、自動楽器が取り上げられる。二人の推理は人形制作者の何らかの手立てで、未知の世界を覗く霊視者が人形を通じて謎の交信を送っているのではないか、というように進み、物語は、当時これもまた世間の注目を浴びていた動物磁気(催眠術)による魂と魂との不思議な触れ合い、精神の交感というテーマに進んでいく。
著者
徳永 和也 児島 彰 弘中 哲夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.394, pp.19-24, 2010-01-19

FPGAはユーザが任意の論理回路を生成できるデバイスであり,多くの分野でハードウェア(HW)化による処理の高速化に利用されている.本研究室ではそのようなFPGAを複数有するリコンフィギャラブルコンピュータシステムの開発を行っている.今回,システム利用環境を整備する目的でFPGAに対する管理機能であるRC-OSの開発を行い,RC-OSが提供するサービスをアプリケーションが容易に利用するためにAPIライブラリの開発を行った.本稿では作成したRC-OSの実行環境として作成したプロトタイプHWである"RC-SYS1"上で動作させ,各サービス実行時間を測定した結果を示す.また,実際のアプリケーションとして2次元DCT処理を実行した場合の,アプリケーション実行時の総処理時間に占めるRC-OSによる処理時間の割合を机上計算により導出した結果を示す.
著者
鳩野 逸生 伴 好弘 佐々木 博史
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT)
巻号頁・発行日
vol.2009-IOT-7, no.1, pp.1-5, 2009-10-02

神戸大学では,2009 年に,神戸大学キャンパスネットワークシステムの更新を行った.本ネットワークは,部局間接続に 10GbE を採用するとともに,VRF を用いて複数の論理ネットワークに分けた構成となっている.本稿では,旧ネットワークシステムにおけるネットワーク運用の問題点について考察するとともに,問題点を踏まえたネットワークの設計方針について述べる.さらに実際に拘置したネットワークの物理構成および論理構成について概説する.
著者
草桶 秀夫 酒井 宏晃
出版者
福井工業大学
雑誌
福井工業大学研究紀要. 第一部 (ISSN:02868571)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.191-196, 2005-03-18

Luciferase gene (Luc) was introdeced into plants by using praticle gun methods and expression of the luciferase gene in the trasgenic Tobacco cells and leaves was studied by bonitoring lumineascence agter feeding the dsubstarate, luciferin. Luminescence in the cells and leaves transformed with pBE2113-luc vector, which contains a duplicated enhancer of caulifolwer mosaic virus 35s high expression promoter, was markedly stronger than that with pBI-luc and pMLH2113-Luc. The luminescence in the ransgenic Begonia leaves transhormed with pBE2113-luc vector using gold particle of 1.0 μm in deametor was higher than that using gold particle of 0.6 μm in deametor.
著者
嶋田 義皓
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本研究はマルチフェロイクスやキラル磁性体などの時間反転対称性と空間反転対称性が同時に破れた系においてのみ発現する「光学的電気磁気効果(Optical Magneto-electric ; OME)効果」および「磁気カイラル効果」の微視的メカニズムを明らかにし、機能効率の向上やデバイス応用に向けた新しい物質設計の指針を提示することを目的とする。このような時間・空間反転対称性が同時に破れる系として、強誘電体に磁性を担う希土類イオンを添加する手法がOME効果の観測に有効であるという前年度の研究成果をもとに、今年度は希土類サイトを有する強誘電性結晶について同一結晶場環境下での希土類依存性や同一希土類での結晶場依存性、遷移の振動子強度依存性などに注目して研究を進めた。前年度までに研究を行った強誘電性チタン酸化物La2Ti207と同様の結晶構造を有する強誘電性Nd2Ti207に注目し、Nd3+の4f-4f遷移による吸収におけるOME効果の検証を磁場変調吸収測定によって行った。Nd3+は反転中心のない結晶場環塊におかれk⊥H⊥Pの配置でOME効果に起因する非相反的方向二色性が生じると予想された。前年度までに研究を行った発光における方向二色性と本年度行った吸収における方向二色性は本質的には同じ2次のOME効果を起源とする非相反的光学応答を観測している。しかし、吸収測定では励起準位の占有率の影響が無いため、多くの状態へのff遷移が観測可能である点で発光とは大きく異なっており、全てのAサイトがNd3+で占められているNd2Ti207結晶を用いることで、初めて各遷移間での系統的な強度の吸収スペクトルにはNd3+のff遷移による構造が多く見られ、Judd-Ofelt理論による9つの励起状態について定量的にアサインを行った。磁場変調スペクトルには吸収スペクトルの構造に対応して、多くの構造が見られ、発光での測定同様、電気分極の反転にともなう磁場変調スペクトルの符号反転によってファラデー効果と区別でき、得られた磁場変調スペクトルがOME効果によるものであることを確認した。磁場変調スペクトルの積分強度から見積もったOME効果による振動子強度の移送量と、電気双極子(E1)・磁気双極子(M1)遷移の振動子強度の半経験的な計算値を比較することで、OME効果の微視的起源がE1遷移とM1遷移の干渉にあることを半定量的に裏付けた。実験によって得られた振動子強度移送量と計算によって得られた量では、結晶場分裂した励起状態に関する和のとりかたが、前者と後者では異なっていることに起因して、20倍もの違いが生じており、両者の相関はあきらかであるにせよ、定量的な比較は困難であった。
著者
河原 康雄 岡崎 悦明 土屋 卓也 宮野 悟 藤井 一幸
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

研究課題名「計算科学への圏論の応用」で行われた本研究は, 情報化社会を支える基礎理論である情報科学, 計算科学, ソフトウェア科学への数学的基盤を与えるために計画された研究であった. 以下, 本科学研究費補助金によって実施された研究実績を報告する. 1.研究代表者:河原康雄は, 初等トポスにおけるpushout-complementの存在定理証明し, 有限オートマトンによって受理される言語の基礎的性質をカテゴリー論的に整理すると共に, Arbib-Manes等のプログラム意味論を初等トポスにおいて考察した. これらの成果は従来から研究を蓄積してきた関係計算(relational calculus)を駆使して得られたものであり, 西ドイツのEnrigを中心としたグラフ文法等についての研究に新しい視点を与えるものであり, この分野の基礎を与えるものと期待される. 2.分担者:宮野悟は, 計算量の理論においてP≠NPの仮定のもとで効率よく並列化できると思われる, 即ち, NCアルゴリズムをもつ問題として, 辞書式順序で最初の極大部分グラフを計算する問題について考察した. 3.分担者:藤井一幸は, 古典的によく知られている4次元のCursey modelを任意次元の時空間上に拡大し, そのinstaton(meron-)like configurationsを具体的に構成した. さらに, 従来からの研究で構成していた高次元Skyrme modelsに付随したWess-Zumino termsを高次元hedgehog ansatsを使用して具体的に計算した. 4.分担者:岡崎悦朗は, 位相線形空間上の確率測度の研究を中心に研究を遂行し, 昭和62年8月よりCNRSの招きによりフランス・Paris V大学において研究を継続中である. 5.分担者:土屋卓也は, 境界要素法よって極小曲面を計算機を利用して計算し, 線形常微分方程式の特異点に関する山本範夫の定理を線形代数の範躊において一般化した. 現在, 土屋は米国・Maryiand大学において研究を発展させている.