著者
松木 洋人
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.106, pp.149-181, 2001-03

特集変容する社会と家族投稿論文0. はじめに1. 社会構築主義という視点2. 社会問題研究における社会構築主義3. 家族社会における社会構築主義4. 誤解と混同5. 家族言説と解釈実践の社会学へ6. おわりにRecently, a social constructionist approach is a growing concern in the field of family sociology. This trend reflects the recognition among family sociologists that they need an alternative perspective to approach "postmodern" contemporary family which differs from the traditional structural-functionalist framework. In order to examine the implications of social constructionism for family sociology, sociological studies of family based on a method of social constructionism will be illustrated here with examples mainly from works of Gubrium Holstein. Also, pointing out the popular but unsound evaluation of the constructionist family study as a "subjectivistic micro-theory", this paper emphasizes that the approach is very sociological in that it addresses the social character of interaction and discourse and the relation between family and social order.
著者
島中 一俊 古賀 順二 坂本 毅 杉若 直樹
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会研究発表大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.289-292, 2003-03-11

現在NTTコムウェアでは, RUP(Rational Unified Process)[1]を全社的な作業標準として全社展開を進めている。RUPの目的は, 遍く広く様々なシステム開発を前提とし, 高品質なソフトウェアの開発方法を提供することにある。ところが, その幅広い記述のため, 本来はプロセス・フレームワークとしてプロジェクト毎に適合させるはずにも関わらず, 額面どおりヘビーウェイトプロセス[5]のカテゴリが与えられている。そこで, 我々は高品質を維持しつつ柔軟さと素早さを身に付けることを目的とし, RUPのカスタマイズ指針を得るための検討を行った。本論文においては, 我々が得た効果的にRUPを適用するための実践的なカスタマイズ指針を提案する。
著者
星 洋輔 小林 貴訓 久野 義徳 岡田 真依 山崎 敬一 山崎 晶子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.764-772, 2009-11-01
被引用文献数
1

我々は,美術館での学芸員と観客の相互行為を,言葉と身体の動きの連動に焦点を当て,エスノメソドロジーの観点から調査・分析してきた.その結果,ロボットが作品の説明を行う場合でも,文の切れ目などの適切なタイミング(TRP)で,観客の方向へ正しく振り向くことが,観客の反応を増加させることが分かった.このような観客の反応の増加は,観客をロボットの説明に引き付けることができたためと考えられるが,これまでの知見は実験室での実験によるものであるため,実際の美術館においても同様の結果が得られるかどうかは確認できていない.そこで,本論文では,実際の美術館において実施した実験とその結果について述べる.まず,実際の美術館では観客に対して立ち位置の指定などはできないため,説明対象者の頭部を検出・追跡して正しくその方向へ振り向くことができるロボットを新たに開発した.そして,実際の美術館において,実験目的やロボットの動作に関する知識を一切もたない一般の観客に対して,ロボットによる作品の説明実験を行った.その結果,これまでの実験室での実験結果と同様に,高い割合で観客の同期的な反応を促すことができた.
著者
田中 大介
出版者
The Kantoh Sociological Society
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.21, pp.13-24, 2008

This paper's purpose is to examine the potential of the network concept advanced by Manuel Castells. Various commentators have already criticized the network concept of Castells for its ambiguity. But the ambiguity of his concept, especially its abstract and formal character, has important implications. Network as a social form can be distinguished from other forms (hierarchy, market, and community), but, on the other this form's logic can also connote those forms as well. In other words network as logic can be located in a metaperspective as it operates on other social forms and as it generates alternative forms. A network can be expected to have a great potential to produce "timeless time" and "space of flow". And this high reflexivity of the network reveals the network society as an open system.
著者
長谷部 恒規 万代 慶昭 佐野 義信
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.120-121, 1991-02-25

SPARCLTはRISCプロセッサを使用したラップトップEWSである。小型で使い易いラップトップに、デスクトップに劣らない性能、機能及び拡張性を実現する事が、基本的な開発コンセプトであった。また、標準的なソフトウェアとハードウェアに準拠し、既存及び今後開発されるソフトウェア、ハードウェアがそのまま利用できるような互換性の装備も重要なポイントであった。さらにSPARCLTではラップトップに実装するために、アーキテクチャの検討のほかに実際の回路設計上でも、コンパクト設計、低消費電力、低EMIノイズなどの技術課題があった。本稿では、SPARCLTのハーウェア・アーキテクチャとハードウェア構成の概要を述べ、高速化、コンパクト化技術について報告する。
著者
青木 周司 菅原 敏 佐伯 田鶴 中澤 高清
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

人間活動によって大気に放出された二酸化炭素が陸上生物圏と海洋にどのくらい吸収されているかを定量的に評価するために、二酸化炭素濃度と炭素同位体を組み合わせて解析する方法と、酸素濃度と二酸化炭素濃度を組み合わせて解析する方法を実施した。まず二酸化炭素濃度と炭素同位体を組み合わせて解析することによって得られた人為起源二酸化炭素の陸上生物圏と海洋による吸収量を1984-2000年の期間について評価した。その結果二酸化炭素吸収は、陸上生物圏について1.21GtC/yr、海洋について1.59GtC/yrとなり、観測期間全体を平均すると陸上生物圏も海洋も二酸化炭素の吸収源となっていたことが明らかになった。これらの吸収源の強度は年々変動しており、特に陸上生物圏による吸収がエルニーニョ現象や火山噴火による異常気象の影響を強く受けて変化することが明らかになった。一方、酸素濃度と二酸化炭素濃度を組み合わせることによって評価した1999-2003年の二酸化炭素吸収は、陸上生物圏について1.1±1.0GtC/yr、海洋について2.0±0.6GtC/yrと見積ることができた。2つの独立した研究から得られた成果を観測期間がほぼ重なっている時期について比較した。陸上生物圏による二酸化炭素吸収量は、二酸化炭素濃度と炭素同位体から得られた1994-2000年の値が0.90GtC/yrであり、酸素濃度と二酸化炭素濃度から得られた値が1.1±1.0GtC/yrと評価された。また、海洋による二酸化炭素吸収量は、二酸化炭素濃度と炭素同位体から得られた1994-2000年の値が1.73GtC/yrであり、酸素濃度と二酸化炭素濃度から得られた値が2.0±0.6GtC/yrと評価された。2種類の全く異なった研究方法によって得られた結果が良く一致しているため、本研究によって信頼性の高い結果が得られたと考えられる。
著者
中澤 高清 森本 真司 塩原 匡貴 和田 誠 青木 周司 山内 恭 菅原 敏
出版者
東北大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

1998年7月、1998年12月〜1999年3月にスバールバル諸島ニーオルスンにおいて、大気中の温室効果気体やエアロゾルなどの実態の把握を目指し、集中観測を行った。これらの観測から、北極域におけるCO_2、CH_4、O_3の変動が詳細に捉えられると同時に、CO_2データは海水表層でのCO_2交換の評価のための基礎データとなった。エアロゾルについては今回の集中観測で多くの基礎データの蓄積がなされ、冬から春にかけての極域におけるエアロゾルの特徴をとらえることができた。北極域における大気微量成分の広域3次元分布、特に極渦の形成・崩壊期に着目した輸送・循環・変質の過程を調べるため、1998年3月6日〜14日の期間、航空機にオゾンおよびCO_2の連続測定装置、大気サンプリング装置、エアロゾル計測装置、エアロゾルサンプリング装置等を搭載し、観測を実施した。観測は北極点を通過し北極海を横断する長距離高高度飛行(巡航高度12km)を基本とし、その他、スピッツベルゲン島近海上空およびアラスカ州バーロー沖合上空では海面付近から高度12kmまでの鉛直プロファイルの観測を行った。機器は概ね順調に動作し、良好なサンプルやデータを取得することができた。その結果、(1)CO_2やO_3濃度は圏界面高度で不連続に変化し、圏界面を挟んで鉛直混合が大きく妨げられる様子が確認された、(2)CH_4とN_2O濃度に見られた正の相関は前年度にスウェーデンで実施された大気球による北極成層圏大気の観測結果と良い一致を示した、(3)硫化カルボニル(COS)の高度分布測定から、COSが成層圏エアロゾルの硫黄供給源であることを示唆する結果が得られた、(4)北極ヘイズ層は多層構造をなし対流圏上部まで到達することがあった、(5)エアロゾルの直接サンプリングにより、成層圏・自由対流圏では主に硫酸粒子、下部混合層では海塩粒子の存在が確認された。
著者
松岡 譲
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

消費エネルギー(最終エネルギー)の需要量積み上げモデル構築のために先進国、途上国の民生、産業、交通各部門のエネルギー消費関連パラメーターの収集とそのデータベース化を行った。わが国、中国及びインドネシアを中心とする東・南アジア諸国を中心として、詳細なエネルギー消費機器に関する技術及び経済パラメーターを収集した。さらに、エネルギーが行うサービスの今後の推移に関するシナリオ策定を行った。一方、シナリオで外生的に与えられた各エネルギーサービスを満たすべく、エネルギー消費機器の選択を、固定費用、エネルギー費用及び税補助金交付下において費用最小化基準て行うとの仮定のもとで、機器選択モデルを構築した。機器選択及び補助金額の算定は、機器選択の最適化については、線形計画問題となり、補助金投下量はその最適空間内にて、二酸化炭素抑制量最大となる点を求めるという多段階最適化問題となっている。このモデルでは、前者に関してはシンプレックス法を用い後者に関しては、前者の問題の感度解析を拡張した逐次的線形計画法によって求解を行っている。国内でのエネルギーの部門分けは民生に関しては、家庭、業務の二部門、産業においては、鉄鋼、製紙、パルプ、セメント、化学工業などの部門、及び交通部門である。これらの各部門に関して、それぞれ5〜20のサービス量が発生していると設定されている。わが国での計算結果を例にとれば、産業各部門においては、現在市場化されている省エネルギー機器はほぼ完全に導入されるのに比べ、民生二部門においては、初期費用(機器費用)が高いために、省エネルギーあるいは二酸化炭素排出量が少ない機器の選択がなされないことがしばしば発生している。
著者
中澤 高清 青木 周司
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

南極及びグリーンランドで掘削された氷床コアを分析することによって過去の温室効果気体の変動を推定するために、コアから効率よく空気を抽出する装置と試料気気中に含まれるCO_2,CH_4,N_2C,CO_2のδ^<13>Cを高精度で定量する装置を開発した。総合分析精度はそれぞれ、1ppmv,10ppbv,2ppbv,0.05%以内であった。これらの装置を用いて南極みずほコア,南やまとコア,グリーンランドSiteJコアを分析した結果、以下のことが明らかとなった。1.9000-250年前の後氷期におけるCO_2,CH_4,N_2O濃度は280.9±4.6ppmv,729±30ppbv,265±8ppbvとほぼ一定であった。しかし、何れの気体の濃度も、人間活動の影響によってこの250年の間に急速に増加し、現在のレベるに達した。2.南やまとコアを分析することによって得られたCO_2,CH_4,N_2O濃度は213.3±4.6ppmv,484±44ppbv,243±10ppbvであり、後氷期の値よりかなり低く、このコアは氷河期のものであることが示唆された。また、δ13CはCO_2濃度の変動とほぼ逆相関となっており、このことから、氷河期の大気中のCO_2濃度の変動は海洋生物活動に帰依されると考えられる。3.みずほコア及びSite Jコアから得られた250年以前のCH_4濃度はそれぞれ701±10ppbv,756±10ppbvであり、工業化以前でも自然的発生源の強度の違いを反映して、南半球高緯度よりも北半球高緯度において濃度が高かったことを意味している。また、現在の南北両半球の濃度差は本研究で得られた値の役3倍であり、CH_4の濃度増加の原因は北半球における人間活動による発生源の強まり、あるいは消滅源の弱まりによるものと考えられる。
著者
茅 陽一 手塚 哲夫 森 俊介 辻 毅一郎 小宮山 宏 鈴木 胖
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

1)統合型エネルギーシステムに関する研究 近年の地球環境、中でも温室効果問題の関心増大を考慮して、現在はCO_2(二酸化炭素)の発生抑制を基本目標として作業を行なった。a)LPモデルによるCO_2の発生抑制シナリオの検討、b)化石燃料の2次エネルギー転換時のCO_2の除去のためのプロセスの化学工学的概念設計、c)エネルギーシステムの個別機器及びシステムの規模の経済性の検討。a)従来システムと異なる化石燃料の二次エネルギー(CO、H_2等)への転換設備を含むLP型システムモデルを開発し、CO_2の抑制量を変化させた時、そのシステム構成・総コストの変化を検討した。この結果CO_2の数十%迄の抑制は、海洋投棄がエコロジカルに可能ならば、さほどの不経済を伴わないが、それ以上の抑制は電力の熱需要充当を必要とし、システム効率の大幅な低下をもたらす、との結果を得た。また、従来型システムに比して原料価格変動に遙かに強いことを立証した。b)化石燃料からメタノールに至る変換の過程で、かなり工業的に可能性の高いCO_2除去プロセスが可能であるとの示唆が得られた。c)電力系統中心の分析の結果、個別の機器については、送配電部門でデメリットが現れている可能性が高い。2)都市を中心とするエネルギーシステムの研究近畿地域を対象とし、研究基盤であるエネルギー需要モデルの改善とデータの更新した。そして太陽光発電及び都市ガスコージェネレーションを想定し、モデルによりそれが従来システムに代替するポテンシアルを推定した。更にコージェネレーションシステムについては、民生用を対象とし、建物用途・規模・運転時間帯を入力可能とするモデルを作成し、建物用途毎に(事務所・デパート・ホテル)適したシステム構成・運転方式・建物規模を検討すると共に、システムの運転時間帯の影響も検討した。また、蓄熱諸方式の経済的・技術的特性の予備調査も行った。
著者
山元 龍三郎 住 明正 田中 正之 鳥羽 良明 武田 喬男 松野 太郎
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

1.大気中の二酸化炭素などの温室効果気体の増加により,地球の気候が著しい影響を受けることが懸念されている。気候変動のメカニズムが充分に解明されていないので,国際学術連合会議(ICSU)と世界気象機関(WMO)が気候変動国際共同研究計画(WCRP)を提案した。わが国では,このWCRPに参加することが文部省測地学審議会から関係大臣に建議され,昭和62年度から大学・気象庁などの機物において4年計画の研究が進られてきた。この計画の調整は測地学審議会のWCRP特別委員会が行ってきたが,主な研究者をメンバ-とするWCRP研究協議会がその研究連絡に当たってきた。平成2年度は建議された計画の最終年度に当たる。2.3年計画のこの総合研究(A)では,昭和63年度以降WCRP研究協議会が中心となって,全国のWCRP参加の大学などの研究機関の連絡を密にしWCRPを円滑かつ効果的に実施するために,毎年WCRPニュ-スを刊行して,各研究の進捗状況などを広く関係者に衆知させた。また,毎年1回11月〜12月の3日間に約150名のWCRP参加研究者が出席するWCRPシンポジュ-ムを開催し,その内容を250〜380頁のプロシ-ディングスとして,その都度刊行してきた。平成2年度では11月26日〜28日に名古屋市において,第4回WCRPシンポジュ-ムを開催した。出席者は約150名にのぼり,53件の研究発表があった。最新の研究成果の発表や大規模観測計画の予備観測結果の報告があり,活発な討論がなされて,WCRPの4年計画の最終年度として予期以上の成果が挙がった。これらの内容は,約380頁のプロシ-ディングスとして印刷・刊行し関係方顔に配付したが,その内容はわが国のWCRPの著しい進展状況を示している。
著者
若濱 五郎 成瀬 廉二 庄子 仁 藤井 理行 中澤 高清 高橋 修平 前 晋爾
出版者
北海道大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

本研究は、南極クィ-ンモ-ドランド氷床、グリ-ンランド氷床、北極氷冠、およびアジア内陸地域の氷河等にて堀削し採取された氷コアの解析を行い、諸特性を相互に比較検討することを目的として進められた。特に、最終氷期以降の大気環境変動の過程ならびに氷床・氷河の変動におよぼす氷の動力学的特性を明らかにすることに重点をおいた。研究成果の概要を、以下の1〜4の大項目に分けて述べる。1,氷の物理的性質の解析:氷床氷中の氷板、気泡、クラスレ-ト水和物の生成過程、ならびに多結晶氷の変形機構や再結晶について新しい知見が得られるとともに、氷コアの構造解析の新手法が開発された。2,氷の含有化学物質の分析:氷床氷中の酸素同位体、トリチウム、二酸化炭素、メタン、固体微粒子、主要化学成分、火山灰等の分析結果から、最終氷期以降あるいは近年500年間の大気環境変動過程について多くの情報が集積された。特に、両極地の比較検討も行われた。3,雪の堆積環境に関する解析と数値実験:南極地域にて観測された気象・雪氷デ-タ等の解析、および数値シミュレ-ションを行うことにより、中・低緯度から極地氷床への物質・水蒸気の輸送過程ならびに雪の堆積・削はく現象と分布について研究された。4,氷河・氷床の流動と変動機構に関する解析と数値実験:南極東クィ-ンモ-ドランド氷床の平衡性、白瀬氷河の変動、山脈周辺の氷床の動力学的特性、深層氷の年令推定法などについて考察された。1990年9月、札幌において本総合研究の全体研究集会を開催し、各研究結果の総合的討論を行った。この成果は、総合報告書(B5版、312ペ-ジ)として1991年3月に出版された。同報告書では、将来の氷床コア研究の展望と諸課題も論じられている。
著者
住 明正 新田 勍 岸保 勘三郎
出版者
東京大学
雑誌
環境科学特別研究
巻号頁・発行日
1986

大気中の二酸化炭素の増加は、温室効果により、大気中の気温を上昇させ、大規模な気候変化を引き起こすとされている。しかしながら、従来のモデルの計算では、海面水温を気候値に固定して行なって来た。しかしながら、最近の大気ー海洋結合モデルの結果によれば、同時に、海面水温も増加するという結果が得られている。しかし、海面水温が上昇すると、当然、積雲活動が変化する。それ故に、【CO_2】の気候変化に対する影響を見積るためには、この積雲活動のふるまいを正しく理解する必要がある。このためには、積雲活動の振舞を充分に表現出来るような大気ー海洋結合モデルを用いれば良いのであるが、現在の計算機の能力では時期尚早である。そこで、本研究では、高分解能の東大大気大循環モデル(T4-2全球スペクトルモデル)を用い、海面水温上昇を既知として、その後の、積雲活動の分布の変化を計算し、【CO_2】の増加に伴う、気候の変化の予測を行うことを目標とした。その結果、熱帯域では、海面水温が東西に一様であっても、積雲群は特長的な分布をすることが分かった。つまり、海洋の西半分に、二本のITCZ(熱帯収束帯)が、そして、赤道上では、海洋中央から東に積雲群が分布する。この傾向は、初期値、海面水温の絶対値には、依らなかった。【CO_2】による海面水温の上昇は、東西に一様になるという結果が得られているので、そのような温度アノマリーを与えると、当然の様に、海洋西半分のITCZの積雲活動が強化される。その結果は、亜熱帯ジェットの強化、そして、低気圧活動の強化と一連の現象をへて、中緯度に伝わっていく。しかしながら、それは、東西一様ではなく、大陸の西半分で顕著であった。日本のように、大陸の東端には、それ程顕著な影響は見られなかった。この結果を確証するには、更なる実験が要る。
著者
大木 薫 新城 靖 佐藤 聡 板野 肯三 馬渕 充啓
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.10, pp.67-74, 2007-01-31

この論文では、XML Webサービスのための分散OS(Operating System)について述べる。本分散OSはWebサービスのためのファイル、パイプ、シェル、およびコンソールを提供する。本分散OSの特徴は、アプリケーションとして動作するWebサービスのサーバが本分散OSの機能を用いて直接連携できることにある。本分散OSでは、オブジェクトへのアクセス制御の仕組みとしてケーパビリティを用いている。また、利用者はコンソールを通じてWebサービスのサーバを対話的に利用することができる。This paper describes a distributed operating system for XML Web Services. This distributed operating system provides files, pipes, a shell and a console for web services. By using these functions, web services can interact. This operating system uses access control based on capabilities. By using the console, users can use server of web services interactively.
著者
大谷 元
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

筆者はまず,牛乳αs1-カゼインのトリプシン消化物を対象にリンパ球の増殖調節ペプチドの探索を行い、59〜79域に相当するホスホセリン集中域を念むペプチドがリンパ球の増殖を促進することや免疫グロブリンの生産を促進することを明らかにした。ホスホセリン集中域を有するカゼイン由来のペプチドは一般にカゼインホスホペプチド(CPP)と呼ばれており,CPPは牛乳β-カゼインからも調製できる。そこで筆者は,牛乳β-カゼインのトリプシン消化物からβ-カゼインの1〜25域に相当するCPPを調製し,そのペプチドにも牛乳αs1-カゼインの59〜79域と同様の免疫促進活性があることを確認した。CPPはカルシウムの吸収促進を目的として市販されている。そこで筆者は,市販のCPP標品を購入し,その標品にも細胞培養系において牛乳αs1-カゼインの59〜79域やβ-カゼインの1〜25域のCPPと同様の免疫促進活性があることを示した。また,市販CPP標品をマウスや仔豚の飼料に添加して与えると,それら動物の腸管の抗原特異的および総IgAレベルが有意に高くなり、妊娠豚に与えると分娩後の初乳中のIgAレベルとIgGレベルがCPP無添加の場合よりも高くなることを見出した。一方、各種合成ペプチドを用いることにより,CPPがマイトージェン活性,リンパ球増殖促進活性およびIgA生産促進活性を発現するためには,SerP-X-SerPという構造が必要であり,遊離のホスホセリンやSerP-SerPにはそれら免疫促進活性はないことを明らかにした。さらに、CPPはTh2細胞に作用して,インターロイキン-5やインターロイキン-6の生産を有意に高めることを観察した。
著者
鎌田 智也 李 仕剛
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.375, pp.67-72, 2005-10-21

本論文では, 球面モデルに基づいた魚眼カメラによる頭部運動追跡について述べる.狭い視野のカメラを用いて部分的なシーンしか観測できず, カメラの運動により観測される特徴が消えたり, 新しい特徴が現れたりすることで, 観測誤差が累積し, 正確なカメラの運動追跡が困難である.そのため, 我々は, 広い視野の魚眼カメラを用いて, 部屋の天井に配置されているマーカを観測する手法を提案する.まず, 半球視野をもつ魚眼カメラに対して, 球面カメラモデルでカメラから見える周りの点を一様に表現する.次に, その球面射影モデルを利用して, 拡張カルマンフィルターで空間の特徴点からカメラの運動を推定するアルゴリズムを提案する.最後に, 部屋の天井に同一平面に配置している特徴点から, 魚眼カメラによる頭部運動追跡を行う実験を行い, その有効性を示す.
著者
吉田 豊
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.463-468, 1985-05-31

原発肺癌による死亡50例につき死亡前の疾病,苦痛対策を麻酔科医の立場から検討した。死亡前,何らかの処置を必要とした疼痛,苦痛は,背胸部痛,腰部痛,呼吸苦などが多く,投与された薬剤は,メフェナム酸内服,インドメサシン坐薬が多く,死亡1ヶ月以内では,麻薬やペンダゾシンの使用頻度が高い。神経ブロックの適応は,消炎鎮痛薬が無効となり,麻薬やペンダゾシンなどが余り用いられていない時期で,疼痛部位が限局している場合である。神経ブロックでは硬膜外ブロックが最も多く,次いてくも膜下ブロック,肋間神経ブロックが用いられる。特に凍結手術用プローブを用いた肋間神経ブロックは有効で多用している。病態の進展による広範囲な疾病,全身苦に対しては,麻薬やペンタゾシンの外に,ケタミンの静脈内持続点滴投与が時に有効であり,夕ーミナルケアとして試みて良い方法であろう。