著者
韓 静妍
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.47-62, 2010-10-01

日本語における非情の受身は、状況描写の場面に用いられる状態性の表現という限られた用法を除いては、西洋語の翻訳文体の影響により近代以降本格的に発達したものと云われているが、近代以降の非情の受身の発達様相についての具体的な検証はまだ行われていないようである。本稿では、近代以降の文学作品における受身用例を年代別に観察することによって、時代による非情の受身の発達様相を明らかにすることを目標とし、状態を表す非情の受身から出来事を表す非情の受身への拡張、抽象名詞を主語とする受身の発達などの様相を年代ごとに示す。また、翻訳文体の影響を検証するために、近代初期の翻訳文献における受身用例を観察し、それらの日本語の受身体系への影響力について確認する。最後に、近代以降非情の受身が発達した日本語内部の動因として、自動詞的対応項という受身の役割について検討する。
著者
曽我 良成
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.279-317,413-41, 1983-03-20 (Released:2017-11-29)

In the later Heian period, the officials who were in charge of political affairs used to keep the official documents issued in the process of fulfilling their duties in their own hands. These documents were handed down from generation to generation as the hereditary property of the aristocratic families From the viewpoint of the aristocracy as a whole, this practice means that they were entrusted with official documents by the government. Therefore it was considered to be a national loss when a fire broke out in one of these residences and the documents were reduced to ashes. Under such circumstances, in the Benkankyoku (弁官局) which issued orders as to the Daijokan (太政官)'s policies, it was the Daifushi (大夫史) who took custody of the documents. The main duties of the Daifushi were as follows : i)to investigate the former examples of political affairs, ii)to draw out the Daijokanpu (太政官府), the Kansenji (官宣旨) and the Senji (宣旨), and iii)to take charge of the Kanfudono (官文殿), the house for storing documents, which belonged to the Benkankyoku. Originally the Daifushi was supposed to be chosen among a wide range of nobles, but this position had never been occupied by the upper nobles of such as the Fujiwaras and the Minamotos. The Daifushi was an important post, but never thought to be a high and noble status. Around the middle of the 11th century Takanobu Ozuki (小槻孝信) was appointed as Daifushi, and from then on, the position was inherited by the Ozuki family. As a result, the Ozuki family was called as "Kanmuke", which means a family that inherits the Daifushi. The main reasons for the choice of the Ozuki family to this position can be assumed as follows : firstly, they had an excellent Skill of preserving documents ; secondly, their family was a specialist of mathematics, who fixed the amount of taxes to be imposed on and collected from various provinces. Moreover, since the middle of the 11th century, in Ochokokka (王朝国家), the government tended increasingly to intervene directly in affairs of the provinces. Accordingly, the Benkankyoku became the administrative center to deal with political matters. And, by making the position of the Daifushi hereditary, the government entrusted main duties of the Benhankyoku to a family -the Ozukis.
著者
岩田 祐美 田島 明子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.439-448, 2021-08-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
33

要旨:訪問作業療法(以下,訪問OT)での活動・参加の促進は,個々の作業療法士(以下,OTR)が経験から築きあげた実践知に基づいていることが多い.OTRの語りからその実践知を体系化することを目的とし,訪問OT経験5年以上のOTR 9名にそれぞれインタビューを行い,語りを質的に分析した.結果,テーマ1「訪問OTの介入指針を持つ」,テーマ2「介入指針を関係性の文脈に乗せる」,テーマ3「活動・参加に向けた作業を導入する」の3つのテーマが得られた.これらのテーマから訪問OTの実践においては特に,訪問OTの介入指針を持ち,事例とOTRの関係性の文脈を把握したうえで作業を導入する関わりが重要であると考えられた.
著者
磯崎 正則 小林 隆幸
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.126, no.4, pp.210-213, 2006-04-01 (Released:2007-02-06)
参考文献数
4

本記事に「抄録」はありません。

4 0 0 0 OA 昔語質屋庫

著者
滝沢馬琴 著
出版者
忠雅堂
巻号頁・発行日
1884
著者
吉良 芳恵
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.285-305, 2003-03-31

本論考は、満州事変・日中戦争、アジア太平洋戦争期をとおして、国家、特に軍が、兵士の見送りと帰還にどのような方針で臨んだのか、また兵士はどのようにして戦場へ送り出され、あるいは帰還したのかという点について、徴兵・兵事史料等を用いて考察したものである。満州事変期、軍は入営兵への餞別や除隊兵の返礼等旧習の打破、冗費の節約に力を入れた。その後日中戦争が勃発し、多くの兵士が動員されるようになると、応召兵の出征を祝す壮行会や歓送会、激励会、武運長久を祈る祈願祭等が盛大に行われ、「赤紙の祭」が始まった。戦争が長期化すると、軍は防諜を理由に入営・応召兵の盛大な歓送迎会や見送り等「別れ」の儀式の簡素化を試み、特に帰還兵士の歓迎には神経をつかい自粛を求めるようになった。ところが、一九四一年七月の「関特演」は、こうした「別れ」の儀式を一変させた。軍は防諜を理由に、地方行政機関に召集業務を極秘に遂行するよう指示した。当初は軍側の方針の不統一により、行政機関に少々混乱をもたらしたが、その後は軍の執拗な要請により、神社や学校での歓送迎、駅での見送り、送別会、祈願祭など種々の儀式が制限・禁止され、また応召兵も軍服着用を禁止され、私服で密かに出征することになった。これは「赤紙の祭」の終焉を意味し、兵士や民衆の志気を弱め、戦意を喪失させた。こうした軍の方針自体、戦争の遂行に矛盾するものであった。そのため軍は、一九四一年一二月の日米英開戦後、銃後の鬱屈した気分を一掃し戦意を昂揚させるため、歓送や見送り等を許可し、種々の制限を緩和せざるを得なくなった。「赤紙の祭」の復活である。とはいえ、根こそぎ動員がすすむ中では、増え続ける戦死者をどのように祭るかが最大の課題であり、防諜を心配せざるを得ないほどの「赤紙の祭」の熱狂は、どこにも見あたらぬ時代が到来した。

4 0 0 0 OA 桃太郎の妹

著者
相馬泰三 著
出版者
植竹書院
巻号頁・発行日
1914
著者
望月 要 佐藤 方哉
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.42-54, 2003-04-20

本稿は行動分析学の立場から"パーソナリティ"の概念的分析と実証的研究の展望を試みたものである。従来、人間の個体差を示すパーソナリティ"という概念は、個体の内部にあって、その人間の行動を決定する仮説構成体と考えられてきた。この定義は現在でも広く用いられているが、言うまでもなく、行動の内的原因を排除する行動分析学からは容認できない。しかし、"パーソナリティ"について行動分析学の立場から新たな定義を与えることは不可能ではない。本橋ではパーソナリティ"に対して「特定個人の行動レパートリーの総体」という定義を、まだパーソナリティ特性"に対して「個人において安定している共通の制御変数によって制御されるレスポンデントおよびオペラントのクラス」という行動分析学的な定義を提案し、これに基づいてパーソナリティ特性"の概念的分析を行なうとともに、行動分析学的立場から行なわれた幾つかの実証的研究について展望を試みた。行動分析学は行動を制御する主要な制御変数の探求を完了しつつあり、今後は、制御変数間の相互作用の分析に力を注ぐべき段階にさしかかっている。制御変数の相互作用を解明するとき、同一環境下で発生する行動の個体差は研究の重要な糸口となり、その意味においても行動分析学における個体差研究の意義は大きい。
著者
佐藤,仁
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.13, 2007-10-31

本稿では「持たざる国」としての認識が長く浸透してきた日本で,戦前から戦後にかけての資源論がどのように立ち上がり,展開してきたのかを検討するのと同時に,資源を明示的な考察対象に含めてこなかった環境社会学への問題提起を試みる。日本では,著しい資源の欠乏が政府によって自覚された第一次世界大戦期から終戦直後の時期に資源論がまとまった形で展開された。戦前期における「資源」の概念は,日本が「持たざる国」という自覚を海外侵略の口実として利用されていく過程で,多様な国力の源泉を総括的に動員する圧力から定着した。戦争の終結に伴いアメリカから民主的な資源論の注入を受けた日本は,一転「国民生活」の維持という目的に向けて徹底した合理化と科学技術の応用を資源政策に具現化しようとした。国力強化を求心力とした戦前の資源論とは対照的に,戦後の総合化は生活資源の切迫と災害などの脅威に駆り立てられる形で生じた。欠乏感が最も強かった時代に栄えた資源論の蓄積は,日本が豊かになる過程で勃興した環境論に生かされなかった。資源論そのものも1980年代以降,ほとんど受け継がれていない。環境社会学が,環境問題を人間と自然との相互作用として総合的に捉える学問であるとすれば,自然に対して働きかける方法を学際的に追求した資源論から得られるものは大きいはずである。
著者
好田 裕史
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.81-85, 2015 (Released:2018-04-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1

ウイスキーは長期貯蔵後,製品化され,その複雑な香味が特徴的で大きな魅力のひとつである。このウイスキーの豊かな香り成分は単に味わいとなるだけでなく,ストレスを緩和させる作用があることが明らかにされつつある。筆者らの内分泌,神経科学,生理学的検証から,その作用を解説して頂いた。
著者
文部省 編
出版者
文部省
巻号頁・発行日
vol.児童用 巻6, 1939
著者
田中 雅一
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.863-883, 2009-03-30 (Released:2017-07-14)

本稿の目的は、現代社会が直面する主要な問題のひとつが他者であるという認識に基づき、他者とのあらたな関わり方や共生のビジョンについて、いかに宗教学が貢献できるかを論じることにある。その際、他者を「誘惑する他者」とみなし、「誘惑」という概念の特殊性に注目する。まず、誘惑は、誘惑する側の能動性とされる側の受動性が逆転する、あるいは逆転を求める動詞であることを指摘する。さらに、この逆転は一回限りに終わらず、自他の相互転換や融解へと続く。つぎに、誘惑においては身体が重要な役割を果たしている。誘惑とはなによりも身体的実践であり、それゆえにまた偶発的である。誘惑が導くのはエロスの世界である。誘惑とそれが開示するエロスに注目することで、他者との連帯の可能性を探る。と同時に、あらたな宗教学の可能性を、オリエンタリズム批判、身体・エロスの宗教学の創出、信仰研究の深化に求める。