著者
安藤 佳珠子 Kazuko ANDO
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学教育基盤センター紀要 = The Journal of Nagasaki International University Center for Fundamental Education (ISSN:24338109)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-12, 2019-03

本稿の目的は、クリティカル・ソーシャルワークに基づくソーシャルワーク教育を実践するにあたり、講義形式の授業において、どのように展開することができるのかを提示することにある。このことにより、スクールソーシャルワークにおいて必要である環境に対する変革のアプローチを、講義形式の授業で実施する方法を提案し、その実施における成果と課題について整理する。第1章では、スクールソーシャルワーク教育におけるクリティカル・ソーシャルワークの導入の必要性について検討する。第2章では、講義形式の授業内で、クリティカル・ソーシャルワークに基づくソーシャルワーク教育の展開を、提示する。具体的には、スクール(学校)ソーシャルワーク論での実施したクリティカル・ソーシャルワークに基づくソーシャルワーク教育実践である。それに基づき、第3章では、その実施における成果と課題について整理する。
著者
井藤 彰 上平 正道
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.82-88, 2015-01-20 (Released:2016-01-20)
参考文献数
32

標的細胞を磁気標識することによって,磁力による細胞の遠隔操作が可能となる.筆者らは,磁性ナノ粒子の表面をさまざまなバイオマテリアルで修飾した機能性磁性ナノ粒子を作製し,これらの機能性磁性ナノ粒子で標的細胞を磁気標識して磁気操作によるティッシュエンジニアリング技術として用いるMag-TE(Magnetic force-based tissue engineering)法の開発を行っている.これまでこの技術を用いてさまざまな細胞を使った三次元組織の構築を行ってきた.本稿では,骨格筋組織の作製を中心に解説する.
著者
牧 勝弘 赤木 正人 廣田 薫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.304-313, 2004-06-01
参考文献数
17
被引用文献数
1

中脳に位置する下丘中心核(Icc)において観察される複雑かつ多様な時間応答パターンの模擬が可能な計算モデルを提案する。Iccに関する生理学的,解剖学的実験報告に基づき,下位の神経核細胞(蝸牛神経核腹側核,又は外側毛帯核腹側核)からIcc細胞への興奮性入力とそれよりも時間的に遅れた抑制性入力という単純な神経回路により,計算モデルを構成する。モデルを用いたシミュレーションの結果,本計算モデルは,生理学的応答特性に基づいて詳細に分類されたIcc細胞の時間応答パターン,すなわち,chopper,pauser, sustained,onset,on-sustained型,及びそのサブタイプ全10種類を再現できることが分かった。この結果は,Iccにおいて観察される時間応答パターンは複雑かつ多様であっても,それを生じさせる神経回路は単純であるという可能性を示している。
著者
毛内 拡
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.492-497, 2021-08-05 (Released:2021-08-05)
参考文献数
19

脳が生きているとはどういうことか? 脳細胞を漫然と集めても脳にはならない.一方,最近,試験管の中で幹細胞から作られたミニ脳が,統合的な脳活動を意味する脳波を発生したそうだ.その脳は果たして,ものを考えたり,喜怒哀楽を感じたりするようになるだろうか.神経細胞(ニューロン)は,神経インパルスとよばれる電気的活動を行い,ニューロン同士の接合部であるシナプスを介して神経回路を形成している.シナプスを介した一対一の精緻で迅速な信号伝達は,ニューロンが神経インパルスを発生した/発生しないのように二値のデジタル信号として解析される.例えば,ラスタープロットとよばれる作図法は,個々のニューロンの神経インパルスの発生を,短い時間窓で判定し,バーコードのように並べることで,ニューロン同士の活動の同期・非同期を可視化する方法であり,神経科学の論文では多用されている.さらに,現在,注目を集めている人工知能や深層学習を支えるニューラルネットワークも,神経回路をデジタル的にモデル化することで,パターン認識や機械学習などの分野において大きな成果を上げている.これまで,ニューロンのシナプス伝達を介した“デジタル的”な相互作用によって,感覚情報や意識や知覚などの高次機能を説明しようとする試みがなされてきた.一方で,ニューロンのデジタル回路の理解だけでは説明のつかない現象も数多く報告されている.脳を理解するためには,ニューロンの電気的活動の二値的な理解だけでは不十分である.ニューロンの局所的で速い信号伝達が,感覚や運動などの一次的な情報処理を担うことは間違いない.一方で,脳の中には,広範囲でゆっくりとした調節的な伝達様式も存在していることがわかってきている.筆者は,従来の二値的な解釈だけでは理解できない脳の多様な伝達様式を「アナログ的な伝達」とよんでいる.この点で脳とコンピュータは本質的に異なるのである.例えば,脳には神経回路ネットワークのほかにも血管網やグリア細胞が存在しており,栄養や脳内物質の補給や物流の支援と管理(ロジスティクス)を担っている.また,脳細胞の隙間である細胞外空間は,単なる隙間ではなく,細胞外環境を一定に保ち,老廃物の排泄のための通り道となっている.さらに液性因子の拡散や,細胞外電場を介した近接作用の「場」として重要な役割を果たしている.意識や知覚,知性などの脳の高次機能を理解するためには,これらのシナプスを介さないアナログ的な伝達を理解する必要があると私は考えている.筆者の考える知性は,「答えがないことに答えを出そうとする営み」で,例えば,創造やいわゆる“人間らしさ”などが挙げられる.一方,知能は,「答えがあることに答えを出す能力」で,例えば,将棋の局面において最適な一手を導き出す高度な計算能力などが挙げられる.これらは,区別して考える必要があるのではないか.人工知能は,計算が速く,人間の知能を凌駕しているが,残念ながら知性とは程遠い.知性の謎を解き明かす鍵は,ニューロン以外の脳の要素にあるのではないだろうか.
著者
中村 敏 小長谷 一之
出版者
日本学術会議協力学術研究団体 総合観光学会
雑誌
総合観光研究 (ISSN:13488376)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.37-46, 2014 (Released:2021-05-07)
参考文献数
21

Recently tourist trains' (as sightseeing objectives themselves) development strategy become more and more important for the regeneration of local line area. However there may be the cases of such tourist trains, there are few comparative study and real evaluation of economic effect. In this study, text mining method is applied to newspaper data base, and 296 tourist trains are found. Existing 67 typical tourist trains are extracted and classified by 5 attracting factors. Accordingly JR Kyushu proved to take most actively the 'tourist trains' (as a sightseeing resources) development strategy, to run 9 famous tourist trains, Of which 'IBUSUKI NO TAMATEBAKO' seems most successful. The economic effect is evaluated about ‘IBUSUKI NO TAMATEBAKO' up to ¥ 6 billion.
著者
京都大学図書館業務改善検討委員会 資料保存環境整備部会
出版者
京都大学図書館業務改善検討委員会資料保存環境整備部会
巻号頁・発行日
2010-03

マイクロフィルムは、図書館資料の中でも特に長期保存に適した記録媒体であるが、環境整備が難しい資料だと認識され、管理面での積極的な取り組みが行われていない現状が見受けられる。しかし、放置しておくと連鎖的に被害が広がる類の劣化現象も報告されており、定期的な点検による異常の早期発見と、適切な処置が求められる。まずは所蔵するマイクロフィルムの種類と数量を把握し、その目的に沿った保存環境を整えることから始めよう。
著者
松田 太希
出版者
日本体育・スポーツ哲学会
雑誌
体育・スポーツ哲学研究 (ISSN:09155104)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.23-35, 2016 (Released:2016-11-01)
参考文献数
61
被引用文献数
1 1

From now, we did not give much attention to issues of violence, especially corporal punishments. Osaka Sakuranomiya high school incident made us reflect on our attitude. Suzuki has presented a statement urging our self-purification. The statement fills out with the spirit urging our self-reflection. But, what on earth, how could we take notice of problems of violences include the corporal punishments. This doubt leads us to think about what research on violence should be. Violence has inherently hiding nature and wriggle in a invisible phase. research on violence of violence should take notice of this phase. Then, this paper stands on viewpoint of violent. This viewpoint is a position that grasping the bud connecting with violent phenomena in daily relations among players. The purpose of this paper is to describe how daily relations among players produce acts of violence among players standing on viewpoint of violent. Daily relations among players are made up by what called Freud identification. This is the mind bond is made up by playerʼs finding important similarity with each other in point of administration to their coaches. This identification notion leads us to Girard’s theory on violence. Freud’s identification and Girard’s mimetic desire explain the same situation in different order, and Girard describes the mimetic desire produce the triangle desire as opposing human relations. This relation will get worse by appearing a charismatic coach and producing the scarcity of desired object as the environment. In this situation, not only sudden violence and violent language but also bullying and brutal beating inflicted by a group will occur.