著者
大島千佳 西本一志 宮川洋平 白崎隆史
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.1778-1790, 2003-07

本論文では、楽器の演奏経験が乏しい人でも容易にMIDIシーケンスデータを作成することができ、しかも従来の楽器と比べて遜色ない音楽表情づけのポテンシャルを持ち合わせるMIDIシーケンスデータ作成システムを提案する。近年の計算機の普及にともない、DTMシステムが多数開発され、誰でも音楽演奏に挑戦することができるようになった。しかし、MIDI楽器で通常に演奏してMIDIシーケンスデータを作成する方法では、楽器の演奏経験が乏しい人に多大な負担がかかる。また、音楽要素を個別に、端末を使って数値的に入力する方法では、質の高い音楽表情を担う各要素の微妙な調整や、音楽要素間の相互的な関係を考慮して操作することは困難である。そこで、入力を2段階に分けて、1段階目に端末かMIDI楽器で音高データのみの入力を行い、2段階目に音楽表情に関する要素を統合して入力する「2段階式作成方法」を提案する。38名の被験者に現在主流の2通りの入力方法と、提案した入力方法の3通りにより演奏データを作成してもらったところ、童謡とクラシック作品では「2段階式作成方法」が従来の方法よりも短時間で容易に入力ができ、作成された演奏データに満足がいくことが示された。また、ピアノ熟達者が従来の方法のうち、MIDI楽器を演奏して入力する「リアルタイム入力」と「2段階式作成方法」の2通りで、十分練習をしてから演奏データ作成を行い、20名の被験者に聞いてもらったところ、「2段階式作成方法」で作成された演奏データの音楽表情は、リアルタイム入力で作成されたものと比べて、遜色ないことが確かめられた。 : In this paper, we propose a method that allows people who are not good at playing musical instruments to construct performance date with rich musical expression. Recently, everybody becomes able to tackle with performing music by a MIDI system. There are two methods for composing MIDI sequence date, i.e., by normally playing the MIDI instruments and by separately inputting musical elements as numerical values. However, it is very difficult for inexperienced people to input correct note number with normally playing the MIDI instruments. On the other hand, it is also difficult for people to achieve rich expression by balancing all of the musical elements, by inputting them as numerical value separately. Consequently, we propose “ a two-phase input method”. In the first step, the user inputs only sequence of note number that she/he wants to perform by using MIDI instruments or Keyboard of a personal computer without considering musical expression. In the second step, she/he plays the MIDI keyboard to input musical expression by integrated control of the expressive musical elements. We conducted two experiments for examining the effectiveness of the two-phase input method. These results show that it is easier for inexperienced user to compose the MIDI sequence data with the two-phase input method than the conventional methods. Moreover, the musical quality of the MIDI sequence data composed by the two-phase input method was not inferior to that composed by normal performance with using a MIDI keyboard.
著者
外村 中
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 = The Zinbun Gakuhō : Journal of Humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.1-43, 2013-03-25

琵琶は,古代中世の東アジアにおいて最も流行していた楽器の一つである。小稿では,正倉院に伝わるタイプの琵琶の源流とその流伝について,新たな仮説を提起する。従来の研究では,とくにローマとの関連は考察されていないようであるが,琵琶をひいては伝統音楽をあるいはさらには東西文化の交流を総合的に検討するためには,見落としてしまってはならないであろう。「阮咸」は,中国起源あるいは中国系であるとされる。そういえないことはないであろう。ただし,その原初タイプは,西アジア系長頸リュートから2世紀頃から3世紀頃までに中国において分岐したものらしい。また,1世紀から3世紀頃の西アジア系長頸リュートの中央アジア西部・北方インドのクシャーナ朝における流伝は,ローマあるいはローマ文化圏と関連がありそうである。「曲項」は,ペルシャ起源とされるが,ローマ文化圏からもたらされた梨形直頸リュートから2世紀頃までに中央アジア西部・北方インドのクシャーナ朝で分岐したものを原初タイプとするらしい。「五絃」は,インド起源とされるが,正確にはローマ文化圏からもたらされた梨形直頸リュートから3世紀頃までに南方インドのサータヴァーハナ朝で分岐したものを原初タイプとするらしい。「秦漢」は,詳細不明であるが,あるいはギリシア・ローマ文化圏の梨形直頸リュートの直系あるいはそれに近いタイプであったかもしれない。
著者
植阪 友理 鈴木 雅之 市川 伸一 Manalo Emmanuel 和嶋 雄一郎 小山 義徳 瀬尾 美紀子 植阪 友理 Manalo Emmanuel
出版者
東京大学大学院教育学研究科附属学校教育高度化センター
雑誌
Working Papers
巻号頁・発行日
vol.1, 2012-08-31

科学研究費補助金基盤研究B「学習方略の自発的利用促進メカニズムの解明と学校教育への展開」(代表 Emmanuel Manalo)
著者
橋本 順光
巻号頁・発行日
pp.3-13, 2013-03-25

卓越した大学院拠点形成支援補助金「コンフリクトの人文学国際研究教育拠点」

3 0 0 0 OA コトの物理学

著者
樺島 祥介 杉浦正康
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:07272997)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.1-33, 2008-10-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
王 玉
出版者
北海道大学文学研究科
雑誌
研究論集 = Research Journal of Graduate Students of Letters (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.83-104, 2014-12-20

大正七年(一九一八年八月)、鈴木三重吉は「世俗的な下卑た子供の読みものを排除して、子供の純粋を保全開発するため」の話及び歌を創作し、世に広める一大運動を宣言し、『赤い鳥』を発刊した。しかし、創作童話、童謡以外にも、鈴木三重吉の手による作品をはじめとする、多くの再話作品が『赤い鳥』において重要な位置を占めている。特に、第一次世界大戦中にヨーロッパの思想、文化がこれまで以上に流入するようになったことにともない、欧米の昔話の再話が『赤い鳥』に数多く掲載された。「私は、これまで世の中に出ている、多くのお伽話に対して、いつも少なからぬ不平を感じていた。ただ話が話されているというのみで、いろいろの意味の下品なもの少なくない」と当時の児童文学を手厳しく批判した三重吉は、積極的に芸術性の高い海外の作品を日本の子どもたちに紹介しようとした。しかし、外国昔話の再話作品が、どういう基準で選ばれたかはまだ明らかになっていない。ところで、昔話は残酷な場面が多く、子どもに向いていないという説があるが、大正時代の代表的な児童雑誌として、『赤い鳥』における昔話の再話作品に「殺す」「殺される」など「殺害」もそのまま残っていることが多い。「殺害」が残された理由として、昔話における「殺す」「殺される」というモチーフが単に残酷性を表わすものではなく、独自の意味を持っていることが挙げられる。本論は『赤い鳥』の欧米昔話の再話作品群を中心に、作品中の「食べる」「食べられる」「殺す」「殺される」などの場面を取り上げながらその特徴を明らかにし、そこに現れた三重吉を代表とする『赤い鳥』の編集方針とその意図を検討したい。
著者
會田 宏
巻号頁・発行日
2012

筑波大学博士 (コーチング学) 学位論文・平成24年3月23日授与 (乙第2598号)
著者
閻 慧
出版者
北海道大学文学研究科
雑誌
研究論集 = Research Journal of Graduate Students of Letters (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.55-70, 2014-12-20

本稿は宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の改稿に関して考察するものである。周知のように、「銀河鉄道の夜」は、数回の改稿を経ることにより、多彩な容貌を持っているテクストである。その多面性を捉えるため、各次稿の間の改稿過程をどのように受け止めるかは、無論重要な問題となる。従来の研究においては、「銀河鉄道の夜」の改稿問題が焦点となっているもののうち、初期形〔三〕と後期形との間に行われる改稿を中心に論じるのが圧倒的多数である。つまり、テクストの初期形〔一〕から初期形〔三〕までに行われる改稿はこれまで看過されたきらいがある。そこで本稿では、新校本全集に収録された「銀河鉄道の夜」のテクストを参照し、まず初期形内部の変容を把握し、ついで初期形から後期形までの改稿について考察する。まず、初期形〔一〕と〔二〕の特徴について考えてみる。両者において、質的な差異は殆どない。ブルカニロ博士の全能性と実験という枠組みに注目すれば、初期形〔一〕と〔二〕をブルカニロ博士の実験記録として見なすことができる。次に、初期形〔二〕から初期形〔三〕まで、作中の現実世界に関する加筆に注目し、ジョバンニを苦しめる現実状況および彼が持っている逃走願望を読み取る。そこで、ジョバンニが焦点化されることによって、初期形〔三〕を彼の逃走物語として読むことができる。続いて、後期形における労働するジョバンニの設定が誘発した鳥捕りとの関係の変化、またジョバンニの父の帰還とカムパネルラの水死についての改稿を中心に、分析を行う。それによって、変容する後期形の姿が明らかになり、ジョバンニの行方の未定着によって、「銀河鉄道の夜」という作品の未決性が見出される。以上のように、「銀河鉄道の夜」が実験記録から未決の物語までの改稿プロセスを考察する。それと同時に、初期形〔一〕から後期形まで貫通している、ジョバンニの切符、金貨、牛乳などのモチーフの役割・意味についても吟味する。「銀河鉄道の夜」の物語に潜在する未決性、また共通するモチーフの多義性の分析によって、新しい読み方を示唆する。