著者
成瀬 翔
出版者
日本福祉大学全学教育センター
雑誌
日本福祉大学全学教育センター紀要 = The Journal of Inter-Departmental Education Center (ISSN:2187607X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.59-68, 2017-03-31

When we examine the theory of fiction, we usually consider the impact on arts and literatures. However, the most famous theorist Kendall Walton has attracted the attention other than arts and literatures. This paper considers an application of the Walton's theory in social philosophy. The contents of this paper are as follows. In Section 2, I will examine theory of make-believe. In Section 3, I will purpose an application to sports of theory of make-believe. Finally, in Section 4, I will consider John Searle's idea: brute and institutional (or social) fact. And, I suggest that theory of make-believe is beneficial in social philosophy.
著者
浜田 寿美男
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.133-139, 2007
被引用文献数
1

わが国では刑事取調べにおいて無実の人が嘘の自白をする例が少なくない.この虚偽自白の典型例は強制下の迎合によるものである.身柄を拘束された被疑者に対して,取調官が被疑者は犯人に間違いないと確信して取り調べるが,それはしばしば証拠なき確信である.この状況のもとで,被疑者は一般に想像されるよりはるかに強い圧力をこうむる.被疑者は身近な人々から遮断され,生活を警察のコントロール下に置かれ,屈辱的なことばを投げつけられ,弁明しても聞き入れてはもらえない無力感にさいなまれる.しかもこの苦しみがいつまで続くかわからず,見通しを失ってしまう.そこでは有罪となったときに予想される刑罰が自白を押しとどめる歯止めにならない.取調べ下の苦しみはたったいま味わっているものであって,それを将来に予想される刑罰の可能性と比べることはできないからであり,また,無実の人にとっては予想されるはずの刑罰に現実感をもてないからである.虚偽自白の心理は,第三者の視点からではなく,まさに渦中の当事者の視点からしか理解できない.この渦中の視点からの心理学をどのように展開するかは,今後,刑事事件を超えた課題となりうるはずである.
著者
山元 里美
出版者
水産大学校
雑誌
水産大学校研究報告 (ISSN:03709361)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.249-261, 2016-03

The article examines the political and social conditions as well as the historical background of how German carp were anthropomorphized as German immigrants in the United States. In doing so, it first reviews the literatures of critical media studies and propaganda studies. Second, it traces the historical evolution of German carp dispute between the 1880s and 1910s, and it points out that the fish once considered as valuable were devalued by the early 1910s. Third, it shows how German-Americans and German permanent residents were treated in the United States during World War One. Fourth, it analyzes newspaper coverage of War on German Carp, and it argues the media representations of German carp were used to justify the U.S. war entry.
著者
植田 康孝
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
no.29, 2019-03-15

物事が変化する時には,予想を超えて急速に非連続的に変化することがある。物理学で言う「相転移」に相当する時代転換である。アイドルの世界における「相転移」は,メディアの変化をきっかけとして生じた。人工知能(AI),情報通信などが急速に発展する中で,アイドル・エンタテインメントも予想を大きく上回る速さで進展している。 経済,社会が移り変わる中で,アイドル業界はメディアの劇的な変化に適応しながら,あの手この手でマーケットを切り拓いて来た。人口減少により,国内でアイドルのファンになる人の数は確実に減って行く。アイドル分野は幸いにも不況を抜け出し,新しい技術やモデルが生み出された「多面的な確変モデル」に入っている。21 世紀に入り,昭和のマスメディア型思考から捉えて「音楽番組がまた一つなくなった」「CD が売れない」「音楽は斜陽産業である」という論調が支配的であったが,ライブ,握手会,サイン会などの「直接コミュニケーション」,SNS,動画配信,音楽配信などの「ヴァーチャルコミュニケーション」の高まりにより,アイドルを取り巻く状況はドラスティックに変わっている。インターネットを使ったライブ配信の発達・普及に伴い,最近数年でアイドルファンは質的に変化した。かつて女性アイドルのファンは男性が中心であったが,アイドルが発信するメイクやファッションの情報に興味を持つ女性ファンが急増するようになっている。楽しみ方が多様化した中で,生まれたのが現在のアイドルブームである。ブームをリードする存在が,乃木坂46,欅坂46,けやき坂46 の「坂道シリーズ」とTWICE,BLACKPINK などの「KPOP」である。かつてのアイドルはテレビや雑誌を通して,歌や踊り,かわいさを見せることが第一であったが,現在は,個々のメンバーがインターネットを通して表情豊かにキャラクターを見せることにより,ファンの裾野を拡大している。ライブ中継を通して自然体で振る舞うことは,デジタル時代のアイドルのあり方を象徴する。かつてのアイドルは手の届かないセレブが中心であった。AKB48 は素人が成長していく姿を男性ファンに訴求するアイドルグループであった。一方,現在,アイドル・エンタテインメントの頂点に立つ坂道シリーズは,そのどちらでもない,男性ファンだけでなく,同性ファンにも憧れと親しみの両方の感情を抱かせる絶妙な距離感を保つ独自の強みを打ち出すことに成功した。 本稿は通常,定性的にしか議論されないアイドルとファンのコミュニケーションについて数理モデルを援用して科学的アプローチを試みたことに,新規性と独自性を伴う。
著者
花田 文男
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.63-101, 2003-12-31

ロベール・ド・ボロンの『メルラン』の後には13世紀の初めに大別して二つの続編が付け加えられた。『流布本続編』と『メルラン続編』である。その淵源は散文『ランスロ』の冒頭に描かれたメルラン自閉の短いエピソードにあるとされる。メルランは美しい少女に恋をする。彼女は後にランスロの養育者,守護者となる湖水の貴婦人である。メルランは悪魔の子の性を受けつぎ彼女を狂おしく愛する。最後には自ら教えた魔法によって眠らされ岩屋に閉じ込められる。もはや時代は変った。古い主人公は新しい登場人物に席をゆずらねばならない。今やアーサー王を守る者はメルランではなく湖水の貴婦人である。このエピソードを核として二つの続編はそれぞれの仕方でメルランの最後を描いた。物語の枠を同じくしながらも,登場人物の性格などに小さくないちかいが存在する。本論は『ランスロ』および二つの続編でのメルランの幽閉にいたる物語の紹介を試み,あわせて三つのテキスト間の物語の異同の指摘におよぶ。
著者
山野 勝次
出版者
家屋害虫研究会
雑誌
家屋害虫
巻号頁・発行日
no.27, pp.1-10, 1986

東海道・山陽新幹線におけるゴキブリの被害調査ならびに殺虫剤抵抗性の実験を行うとともに,ダイアジノンMC剤による防除効果に関する現車試験を行い,下記の知見を得た。(1)新幹線のゴキブリは各種病原菌を媒介するなど衛生上の被害のほか,乗客に不快感を与え,車内では配電盤や蛍光灯.その他の電気機器類に入って車両故障の原因となる。新幹線電車では食堂車,ビュッフェが最も多く,そのほか,車両間の渡り板下部やくずもの入れ,洗面所下部,戸袋,デッキにある塔載品収納庫などに多い。(2)新幹線のゴキブリはフェニトロチオン,フェンチオン,ダイアジノンMC剤のいずれの薬剤に対しても殺虫剤感受性ゴキブリより強く,これら有機りん系殺虫剤に対してかなり抵抗性を得ていると考えられる。(3)新幹線における現行の燻煙処理だけでは残存虫が多く,十分な駆除効果は期待できない。(4)ダイアジノンMC剤は新幹線のゴキブリに対して残効性も高く,かなりの防除効果を有するが,燻煙処理より遅効性であるので,現行の防除処理行程でゴキブリがすでに多く生息する列車を処理すると,営業運転中に車両の通路や座席周辺に仮死状態で現われ死滅し乗客の目にとまるという難点がある。(5)ダイアジノンMC剤は低毒性で引火性がない上に,散布時の薬臭もほとんど問題でなく,1編成列車を2人で2時間程度で防除処理できて作業性もよい。(6)ダイアジノンMC剤による防除では1回の防除経費はもとより,従来の燻煙処理法より年間処理回数をかなり節減できるので,防除経費が相等節約でき経済的である。(7)新車,あるいは工場で解体検査を行いゴキブリがごく少ない状態の車両にダイアジノンMC剤による防除処理を一定周期で施行すれば相当な効果が期待でき,さらに,燻煙処理とうまく併用すればより有効で,効果的であると考えられる。
著者
出村 みや子
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.135-161, 2019

<p>教父のジェンダー理解を知る上で、教父文書が構成において高度に文学的かつ修辞学的であることを示したエリザベス・クラークの視点が有効である。本稿では正統信仰確立の過程でどのようにジェンダーバイアスが生じたかを三位一体論や反異端論争の事例を通じて考察し、次に創世記一六章の解釈に焦点を当てて考察した。教父たちは聖書解釈を様々な論争に効果的に利用したが、特に結婚と禁欲の価値をめぐる論争では、貞節な結婚は当時のローマ社会の男らしさの表明であり、厳格な性的禁欲主義はキリスト教の修道制が提示した新たな男らしさの定義であったゆえに、夫であれ、教会指導者であれ、女性が男性の指導下のもとに置かれることに変わりはない。他方でアレクサンドリアのクレメンスは、宗教教育における徳の追求には本性的に男女の差を認めておらず、こうした男女平等主義がローマ帝国におけるキリスト教の急速な拡大や女性の地位の向上につながったと考えられる。</p>
著者
永田 大輔
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.41-58, 2017

<p>本稿は、オタク文化を社会学的に考察するために、OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)の使用実践に着目する。中でも一九八〇年代のOVAの言説的な特徴を詳らかにするために、OVAが"第三のメディア"とアニメファンの間で呼ばれていたことに着目する。 言説を検討する際に、二つの構造的な条件が重要である。一つ目は一九八〇年代中盤のビデオの急速な普及であり、二つ目はアニメーター数が、作品数が増加し質の向上が求められる中で、増加していなかった点である。そうした条件を元に、OVAというメディアをめぐる言説を検討する。 まず第三のメディアの言葉の含意を考えるために、第一のメディア(テレビアニメ)と第二のメディア(劇場版アニメ)の移行関係に着目する。その移行は一九七〇年代後半頃に起こった。テレビアニメは子供むけのものとされてきたが、一九七〇年代後半に子供だけではないファンが発見される。ファンの存在を背景とし、アニメ制作者の側も作家性を発揮することを求めるようになる。しかし、当時のテレビアニメは作家性を発揮するには制約が多かった。そこで注目されるのが劇場版アニメであった。しかし、こうした移行の段階で「作家性の発揮」と「万人に受容されること」の競合関係が存在し、両者の議論の制約としてクリエーターの人数が存在した。 本稿では、OVAが上記の論点を引き継いで語られた媒体であることに着目する。その中で制作者人口が限られた中での「商業の論理」と「作品の論理」のせめぎあいを編集者・消費者・制作者がそれぞれどのように意味づけていくのかという点からその歴史を検討し、様々なアクターの論理のせめぎあいのダイナミズムの中での歴史性を検討する。</p>
著者
竹野 真帆 高田 明典
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.2761-2771, 2009-12-15
被引用文献数
1

コンピュータゲームやアニメーションや映画などの娯楽制作物は,今日では,私たちの生活に深く影響を及ぼしている.私たちはそれらをプレイもしくは視聴することによって価値観を形成し,その価値観とともに生きている.娯楽に関する分析的研究の主たる目的とは,したがって,それによってどのような価値観が,どのようにして形成されるかを知ることにあるといえる.ゲーム研究や物語論の分野において作品の分析手法に関しての多くの議論が行われてきたが,実際にコンピュータゲームの分析に適用可能な手法が提示されている報告は少ない.一方で,物語構造分析の分野には,多くの手法の蓄積が存在している.本研究の目的は,それらの物語構造分析の手法をコンピュータゲームの分析に適用しうる手順を模索することにある.Barthesによって用いられた標準的な構造分析の手順を検討し,そこで用いられている手法に若干の変更を加えた手法を提案している.さらに,RPG "テイルズウィーバー" の分析例を示し,そこで抽出された訴求構造について検討を加えている.Entertainment products such as video games, animations and movies deeply influence our life nowadays. We form sense of values by playing or viewing them and also live by those values. Therefore the primary goal of analytical entertainment studies is to know what those values are and how they are formed. Many arguments about analysis method for video games have been made in the domain of game studies and narrative studies. But there are very few reports that have methods available for video game analysis in actual use. On the other hand there are many methods in structuralism's analysis. The purpose of this study was to improve the methods of structuralism's analysis of narrative so that we can apply them to video game. We examined standard procedures used with structuralism's analysis basically along with Barthes' method, and suggested implementing several changing to those procedures. A sample analysis of RPG "Tales Weaver" was presented and resulted appealing structure was discussed.
著者
木下 古栗
出版者
河出書房新社
雑誌
文芸 (ISSN:05251885)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.403-430, 2018
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1313, pp.110-112, 2005-10-24

1秒間の着陸のために、4年の歳月を費やす。そんな小惑星探査計画が11月初旬、見せ場を迎える。 2003年5月9日に「M-V(ミュー・ファイブ)ロケット5号機」で打ち上げられた小惑星探査機「MUSES-C」は、打ち上げ成功後、文部科学省所管の独立行政法人である宇宙航空研究開発機構(JAXA)により「はやぶさ」と命名された。
著者
畑中 恒夫 田村 暁良 浅村 恵未
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.309-316, 2005-02

ネズミ駆除器の電磁波がマウスの生理作用に様々な影響を及ぼすことが知られている。それらの電磁波に対する感受性がマウスの成長段階により異なるかどうか確かめるため, 成体, 幼若体及び乳児を市販のネズミ駆除器の電磁波に曝露し, 影響を調べた。その結果, 成体では電磁波を感じ装置を避けることが示されたが, 長期間の曝露に対しても, 曝露期間中, 餌及び水の摂取量と体重に変化がなかった。また, 幼若体も順調に成長し, 共に電磁波曝露の影響が見られなかった。しかし, 乳児は3分の2が曝露期間中に死亡し, 生存した個体も成長が遅れ, 授乳期には電磁波曝露は重大な影響を及ぼすことが示された。