- 著者
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二木 立
- 出版者
- 社会政策学会
- 雑誌
- 社会政策 (ISSN:18831850)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.2, pp.12-21, 2009
小泉政権の医療改革の新しさは,医療分野に新自由主義的改革方針を部分的にせよ初めて閣議決定したことである。それにより政権・体制内の医療改革シナリオが2つに分裂し,激しい論争が戦わされたが,最終的には「骨太の方針2001」に含まれていた3つの新自由主義的医療改革の全面実施は挫折した。他面,小泉政権は1980年代以降続けられてきた「世界一」厳しい医療費抑制政策をいっそう強め,その結果日本は,2004年には医療費水準は主要先進国中最低だが,患者負担は最高の国になった。安倍政権は大枠では小泉政権の医療費抑制政策を継承したが,ごく部分的にせよ,行き過ぎた医療費抑制政策の見直しも行った。さらに,政権・体制内での新自由主義派の影響力は急速に低下した。日本の医療制度の2つの柱を維持しつつ,医療の質を引き上げるためには公的医療費の総枠拡大が不可欠であり,そのための主財源としては社会保険料の引き上げが現実的である。