著者
内村 直之
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.47-56, 2017-01

一般の人にはなじみの薄い「物理学の成果」をどうすれば理解してもらうことができるだろうか.わかりやすさと正確さの両方を求めなければならない,という科学コミュニケーションにとって永遠の課題ともいえるこの問題について,2016年のノーベル物理学賞となった「トポロジカル相転移及び物質のトポロジカル相の理論的発見」という業績を材料に考察した.新聞,放送などのメディアに登場した解説を紹介・比較した上で,その材料となったノーベル財団の発表資料も吟味した.そこでは,一般向け解説にはどんな要素が必要かという私見を提示した.以上の分析をもとに,一般の人に理解してもらえる記事を書くにはどうすればよいかをまとめた.
著者
西村 綾夏
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科言語科学講座
雑誌
言語科学論集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.19-38, 2017-12

本稿では、文体パロディにおける絵文字の分析を通し、これまでの文体研究においてあまり議論がなされてこなかった視覚的文体素の重要性を指摘する。なお本稿における文体とは、小池 (2005) の定義する「メッセージの効率的伝達を考え て採用される、視覚的文体素 (文字・表記) 」と意味的文体素 (用語・表現) とによる言語作品の装い、または、装い方」をさす。小池の定義によれば「視覚的文体素」とは「漢字 (正字・略字・俗字) 、ひらがな (変体がな) 、カタカナ、アルファベット、ギリシア文字、キリル文字、ハングル、アラビア数字、ローマ数字、振り仮名・送り仮名・仮名遣い、それに疑問符、感嘆符、句読点などの各種記号や改行・空角・余白、文字の大小等」をいい、「意味的文体素」とは「言表態度 (モダリティ) 、話し言葉・書き言葉、共通語・方言、漢語・和語・外来語・外国語、古語・新語、完全語形語・省略語、雅語・俗語・隠語・流行語、男言葉・女言葉、老人語・幼児語、慣用句、引用句、文長、表現技法 (レトリック・視点等) 、ジャンル (物語・小説・実録・記録・日記等) 」をいう。文体を分析する手段としては、著名な作家を対象とし、その人物史や時代的背景をヒントとして紐解く方法 (小池 2005) 、計量的な観点から文体の特徴を捉えようとする方法 (工藤ら 2011, 佐藤ら 2009, 村上 2004) などがある。しかしこれらは主に意味的文体素の検討に留まり、視覚的文体素について分析した研究はほとんど見られない。本稿で扱う絵文字は、書き言葉において欠落するパラ言語的情報 (表情、声のトーン、ジェスチャー等) を補い、メッセージに対する話し手の態度を表明する (Evans 2017) 点で意味的文体素の一種であるが、漢字・ひらがな・カタカナ等と並べて使用される視覚的文体素の一種でもある。本稿では文体パロディ中に現れる絵文字の分析を通して、文体研究においては意味的文体素だけでなく視覚的文体素を分析することの重要性について論じる。本稿の構成は次の通りである。2 節ではまず、文学的観点からの文体研究、および計量的観点からの文体研究の手法について確認し、その問題点を指摘する。さらに、構文文法の枠組みから文体 (スタイル) を扱ったÖstman (2005) とAntonopoulou and Nikiforidou (2011) の主張を踏まえ、文体研究においてパロディを扱うことの重要性について述べる。加えて、絵文字を含んだ文体パロディの具体例を挙げ、絵文字の性質とその利用目的、文体パロディにおける絵文字の役割について整理する。3 節では実際に文体パロディ中で用いられる絵文字を分析し、パロディにおいては絵文字の選定・使用規則が模倣対象となっている点、ただしその使用ストラテジーに関しては、パロディ特有の誇張が見られる点を指摘する。4 節ではこれらの点を踏まえ、文体パロディにおいて絵文字の模倣が意味することについて論じる。最後に5 節では、今後の文体研究の展望を述べて議論をまとめる。
著者
佐藤 善之
出版者
北海道大学観光学高等研究センター、鷲宮町商工会 = Center for Advanced Tourism Studies, Hokkaido University, Washimiya Town Commerce and Industry Association
雑誌
CATS 叢書 (ISSN:03855961)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.115-127, 2010-03-20

次世代まちおこしとツーリズム : 鷲宮町・幸手市に見る商店街振興の未来 = Community Development and Tourism for the Next Generation
著者
山中 敬一
出版者
関西大学法学会
雑誌
關西大學法學論集 (ISSN:0437648X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.127-200, 1991-04-15
著者
稲垣 智恵
出版者
関西大学文化交渉学教育研究拠点(ICIS)
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian Cultural Interaction Studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.279-299, 2010-03-31

Many Japanese suffixes, such as 的 “-teki” were created in the early Meiji period in order to translate Western languages with inflection, and they were also introduced to China. To date, those suffixes have been used in both Chinese and Japanese as they can be found in modern Chinese and Japanese lexicons. While the Japanese suffix, 的 “–teki” is used to add an adjective meaning to a noun, whereas the Chinese 的 “de” is not . By comparing the usage of the suffix 的,this paper examines how differently Western languages with inflection were understood by Chinese and Japanese people, as well as, how the usage and meaning of the suffix have changed over time.
著者
新沼 智之
雑誌
玉川大学芸術学部研究紀要
巻号頁・発行日
no.12, pp.35-41, 2021-03-30

俳優や劇作家や演出家などの芝居作りの中心にいる者と、デザインをしたりプランを組んだりするスタッフ、そしてそれを再現するスタッフ、そして広い意味での研究者など、その周縁にいる者とのかかわり、あるいは後者の仕事ぶりというのが、一般の観客にはなかなか見えて来ない。それはなぜなのか。そのことを探るべく、芝居作りおよび「演劇」の構造の分析を歴史的観点および美学的観点から試みる。美学的には「上演」とは何か、「演技」とは何か、「演出」とは何かの分析をする。そこには、単に内輪のこととして処理されて外へと語られない慣習というのではない構造上の原因が浮かび上がってくる。
著者
佐藤 あずさ
出版者
Waseda University
巻号頁・発行日
2004-02

制度:新 ; 文部省報告番号:甲1870号 ; 学位の種類:博士(学術) ; 授与年月日:2004/2/16 ; 早大学位記番号:新3744
著者
雨宮 俊彦 水谷 聡秀
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.139-166, 2006-03-25

音感素は、音素と形態素の間のレベルに位置する、音象徴における基本単位である。英語やスウェーデン語などにおいては、二子音、あるいは三子音からなる多くの音感素の例が報告されている(Hinton, Nichols and Ohala, 1994; Abelin, 1999)。日本語は、二子音、三子音からなる音のパターンを欠いているので、そのような音感素も存在しない。Hamano(1998)は、日本語における各子音と各母音を音感素に設定し、日本語におけるオノマトペを組織的に分析している。Hamanoの分析は大変興味深いが、音感素と感性的意味の選択は分析者の直感によっている。この予備的研究で我々は、こうした基本問題に関する経験的な証拠を提供し、これを日本語における音象徴全般の問題に関連づけることを試みる。1)60のオノマトペが用いられた。オノマトペはすべてCIVIC2V2形式で、意味は感情に関連するものだった。12人の被験者がこれらのオノマトペを24の形容詞対により評定した。形容詞対24次元空間における60のオノマトペ間の距離行列がMDSにより分析された。2次元解が採用された。第1次元は明るさと、第2次元は硬さと最も高い相関を示した。2)157の日本語の拍が用いられた。99名の被験者がこれらの拍の明るさを、100名の被験者がこれらの拍の硬さを評定した。67の拍の評定平均値がカテゴリー回帰分析によって分析された。従属変数は明るさと硬さであった。独立変数は子音と母音だった。重相関係数は、明るさと硬さともにほぼ1であった。拍への影響は、明るさと硬さともに子音の方が大きかった。
著者
大倉 韻
出版者
首都大学東京・都立大学社会学研究会
雑誌
社会学論考
巻号頁・発行日
no.32, pp.109-134, 2011-10-31

現代日本のアダルトゲーム(ポルノゲーム)はただ性行為を消費するだけではなく、感動的な物語や登場キャラクターへの恋愛感情をも消費対象とするような独特の進化を遂げている。それを消費するオタクたちは概して現実の恋愛や性行為に対する意欲を欠くため、しばしば「虚構に逃避している」と批判されてきた。だが実際には彼らは逃避しているのではなく、恋愛に関して独自の価値観を持っているようであった。そこでアダルトゲーム消費者にインタビューを行ったところ、次のような知見が得られた。(1)中学高校時代を「一般人」として過ごした者は恋愛の実現に意欲的な傾向があり、「オタク」として過ごした者は意欲的ではなかった。(2) 前者は友人や先輩などから恋愛に関する情報を多く得ており、後者にそのような経験はなかった。Berger and Luckmann の「第二次的社会化」の概念を用いれば、人は「意味ある他者」と恋愛に関する情報交換をすることで恋愛の実現を自明とみなす価値観を内面化していくと考えられる(「恋愛への社会化」) 。前者はその主観的必然性が強化されるものの後者は強化されず、よって「多くのオタクは一般人と比較して恋愛の実現にあまり動機づけられていないため、虚構の恋愛描写で十分満足できる」という可能性があることが見出された。
著者
直原 康光 安藤 智子 JIKIHARA Yasumitsu ANDO Satoko
出版者
Division of Physhology, Faculty of Human Sciences, University of Tsukuba
雑誌
筑波大学心理学研究 = Tsukuba Psychological Research (ISSN:09158952)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.73-85, 2018-02-28

This paper (a) summarizes both the Japanese and English literature regarding the measurement of parental conflict following separation or divorce, (b) discusses that literature, especially, studies on the psychological effects on children, and (c) offers some suggestions for further research issues. Based on a search of an electronic database, two Japanese articles and 26 English articles are reviewed. Parental conflict includes (i) inter-parental conflict, (ii) being caught between parents, and (iii) parental alienation behaviors and parental denigration. There has been very little research assessing the effects of parental conflict following separation or divorce within the Japanese articles. Within the English literature, there are few appropriate measures of parental conflict and the results concerning parental conflict and child adjustment are mixed. For future research, it is necessary to clarify the relationships and influences between the various aspects of parental conflict, to develop a scale of parental conflict, and to investigate the relationships and influences between parental conflict, parenting time and quality of parenting.