著者
佐藤 郁哉 Ikuya Sato
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review) (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.1-26, 2023-06-30

同志社大学商学研究科において2018年度いらい開講されてきた「研究基礎」の概要について、これまでの授業実践の内容を中心にして解説するとともに、同授業科目の今後の方向性について検討していく際に参考になると思われる幾つかの論点を、講義担当教員としての体験を踏まえて提出した。
著者
植田 康孝
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.29, 2019-03-15

アイドル・エンタテインメントは,スポーツ,演劇,映画などと同様,ファンと呼ばれる熱狂的なファンの応援を基に成立している。ファンは「お気に入り」の存在を深く理解し,共感し,支持をしてくれる。アイドルとは,ファンがいないと何も出来ない職業である。ファンから応援してもらい,それにアイドルが頑張りで応えるのが,アイドルのビジネスモデルである。本稿は,アイドル「推す」「担」行為に見る「ファンダム」をテーマとした。乃木坂46 や欅坂46,ジャニーズ系などアイドルグループのファンは,新曲が発売されると組織的にCD を買い占め,互いに協力してヒットチャート入りを後押しする。アイドルファンにとって,応援行動は使命であり,生活の一部になっている。そして,近年,特定のグループ(箱推し)やメンバー(単推し)に熱狂する集団(ファンダム)の活動が,かつてないほど活発になっている。体験消費やインターネットの発達により,「直接コミュニケーション」や「ヴァーチャルコミュニケーション」が活発となり,「応援するメンバーと直接やり取りしたい」「同じグループやメンバーを応援するファンとつながりたい」「自分に適した居場所を見つけたい」という心理が,SNS や動画アプリ,スマホ等の発展に合わせて顕在化,かつてない程の盛り上がりを見せている。AKB48 など「会いに行けるアイドル」が人気を得た時代から,スマホアプリを通じて会話が出来るアイドルが最も身近な存在として意識される時代へ変化している。アニメ声優グループやヴァーチャルユーチューバー(V チューバー)が新たな形のアイドルとして人気を集めるスタイルも生まれ始めている。 アイドルは刹那の煌めきを見せるエンタテインメントであるが,アイドルとファンの間の関係性を表す言葉として「推す」「担」が挙げられる。「推す」行為は,単に「好きになる」「ファンになる」だけではなく,「感情移入」することに相当する。「共感」のレベルから「熱狂」へ,「愛着」から「無二」へ,「信頼」から「応援」へ昇華して,アイドルファンとなり,推しメンに対する支持を強めて行く。先ずアイドルを好きになってもらい,間口を広げる「好き(Like)」から,推しメンでなければダメであるという「愛(Love)」に高めて行くことが大切である。これは,アイドルだけでなく,一般的な商品にも通用する「マーケティング戦略」である。少子高齢化が加速し人口減少が深刻化する日本において鍵となるのは,自社の商品やサービスのファンを大事にすることである。愛着が深まれば,安定的な顧客基盤になることに加えて,「伝道師」のように新たなファンを呼び込む力にもなる。 本稿は通常,定性的にしか議論されないファン心理について数理モデルを援用して科学的アプローチを試みたことに,新規性と独自性を伴う。
著者
加藤 謙介 カトウ ケンスケ Kensuke KATO
雑誌
九州保健福祉大学研究紀要 = Journal of Kyushu University of Health and Welfare
巻号頁・発行日
vol.15, pp.51-60, 2014-03

This study investigated the long-term transition of community conflict caused by cat breeding, especially the case of `community cats' activity in Isogo, Yokohama-city. In this practice, residents treated `cat problem' as `residents-relation problem' thoroughly to manage community conflict, and established "guideline" including two divided claims (like/dislike cats). To examine the features of the long-term practice, content analysis on volunteers' annual reports from 2001 to 2011 was performed. The results suggested that volunteers faced many difficulties during the `community cats' activity and that appropriate communication in a community is vital in conducting the `community cats' activity.
著者
町田 裕璃奈 日野 麻美 堀 成美 奥村 貴史
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.725-732, 2022-03-15

2020年に生じた新型コロナウイルスによるパンデミックは,世界各国に大混乱を引き起こした.日本の行政機関においても,対応のため様々な業務が発生し,とりわけ,保健所ではファックスを中心とした業務慣行の非効率が注目された.そこで厚生労働省は,感染症対策の最前線にあたる医療機関や保健所の負担軽減を目指し,ウェブシステムを新規開発しその代替を図った.しかし,業務知識を欠いたまま設計したシステムは,実際の保健所業務と合致せず導入に時間を要したことに加え,各自治体側が自助努力として進めていた業務支援策とのミスマッチが生じた.結果として,開発したシステムの活用は低調にとどまり,期待された情報集約の迅速化は実現しなかった.一方,地方自治体や医療機関では,国よりも限られた予算や権限において様々なシステムを開発し,感染対策に役立てていった.システム開発において,現場の業務知識を欠いたままトップダウン方針のみを強化すると,実ユーザとの乖離の拡大を通じたシステムの破綻という逆説的な状況が生じうる.デジタル庁の設置を初めとした今後の行政情報化に向け,貴重な教訓の共有とともに,行政におけるボトムアップ型の開発手法の検討が望まれる.
著者
渡辺 和子
出版者
東洋英和女学院大学
雑誌
人文・社会科学論集 (ISSN:09157794)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.19-37, 2021-03

This article aims to contribute some material to the discussion on the Shamanism of Ancient Mesopotamia. A specialist, known as the āšipu, who belonged to some of the main temples, was responsible for treating most diseases in conjunction with other specialists who were organized under him. I believe that this āšipu should be regarded as a shaman in Mesopotamian society.This discussion will include a sample text (No.115) from a book by JoAnn Scurlock (2006) which outlines how the āšipu, in the first stage of his treatment, makes his diagnosis of a client based on their symptoms. When the āšipu ascertains that the disease has been inflicted on the living by a roving ghost (eṭemmu) that is assumed to dwell in the underworld, he organizes a treatment consisting of a series of ritual procedures which includes a set of recitations.In the second stage, he makes a clay figure of the ghost, sets up an offering table to the ‘three great gods’ (Ea, the god of wisdom and freshwater; Shamash or Šamaš, the sun god and Asarluhi or Marduk the son of Ea), and has the client recite a prayer that he (the āšipu) has prepared three times to the gods. In the third stage, the āšipu buries the figure of the ghost and pours water on it, presumably enabling the ghost to return to the underworld as the figure melts. In the final stage, he purifies the client with a censer and the flame of a torch and then sends the client home by a different path than the one he came by with instructions not to look back.In a case like this, where the disease was caused by a ghost, the healing ritual places great importance on the fact that the ghost is never attacked or made to perish, but is given proper care so that it can remain in the underworld and not venture out among the living again.Japanese people are quite familiar with this kind of understanding. Therefore, an insight into Japanese folk religion and its practices from the viewpoint of comparative studies of religion would shed much light on our understanding of Mesopotamian religion which, like Japanese folk religion, arose naturally over time (during ca. 3000-300 BC).
著者
宗臺 秀明
出版者
鶴見大学
雑誌
鶴見大学紀要. 第4部, 人文・社会・自然科学編 = The bulletin of Tsurumi University. Pt. 4, Studies in humanities, social and natural sciences (ISSN:03898032)
巻号頁・発行日
no.55, pp.191-223, 2018-02

中世都市鎌倉の諸遺跡から出土する「かわらけ」には、古代末の土師質土器の系譜を引くと思われるロクロ成形のものと、京都から伝播したと考えられている手づくね成形の 2 系統がある。その「かわらけ」をめぐっては編年案が複数提示されているが、それぞれにロクロ成形「かわら」の成立と手づくねの導入年代が異なり、またその変遷の画期についても若干の異同がある。本稿では中世鎌倉出土「かわらけ」の編年とともに、「かわらけ」の名称に込められた非日常性について京都や平泉出土「かわらけ」との比較から探り、その背景にある中世社会の推移について考察することを目的とする。そのため、鎌倉をはじめ京都と平泉での研究史から論点を導き出した。今回は、土師質土器系譜の「かわらけ」と以後の「かわらけ」をどのように見極めるべきか、そして京都からの手づくね「かわらけ」の導入背景の考察にあたっては、受け入れ側の意図、すなわち京都「かわらけ」のどの部分を重要視したのかという認知論的視点が必要であるとの見解にいたった。こうした視点をもとに、次回は編年を組み立てながら考察を進めることとする。
著者
岩橋 瑠伊 矢吹 太朗
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.113-114, 2018-03-13

デマゴギー(デマ)が拡散されることを防ぐために,デマツイートをリツイートしているユーザーの特徴抽出を行う.そのために,現時点でデマだとわかっているツイートを過去に拡散したユーザの活動履歴を収集・分析する.分析結果をランダムサンプリングしたデータと比較することで,デマを拡散するようなユーザに共通する特徴を抽出し,その結果を報告する.
著者
佐藤 正志
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 = Journal of Business Administration and Information (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.29-48, 2015-02

日本人は原爆(核)被害を受けたにも関わらず、「原子力平和利用」を受容し、世界第3 位の原発大国を作り上げていった。本稿では、最近の「原子力平和利用」に関する研究を整理しつつ、「平和利用」を推進した政治的リーダーのひとりであった岸信介の日米安保改定交渉や「反核外交」、事前協議に関する密約問題などを取りあげ、彼がいかに原子力技術を理解し、核政策を行ったのかを概観し、その思想的背景を考察する。
著者
鈴木 堅弘 Kenkou SUZUKI スズキ ケンコウ
出版者
総合研究大学院大学文化科学研究科
雑誌
総研大文化科学研究 = Sokendai review of cultural and social studies (ISSN:1883096X)
巻号頁・発行日
no.7, pp.19-54, 2011-03-31

これまで春画といえば、性表現を扱った絵画として研究対象から除外されてきた。ところが近年、こうした傾向はしだいに改善され、春画に関する研究書が数多く出版されるようになり、春画の公開データベースが大学や研究所で作成されている。 こうした春画研究の進展を受けて、今回、国際日本文化研究センターに所蔵されている春画・艶本コレクションの三五〇〇画図を分析対象とし、江戸春画に描かれた図像表現を数量として把握することを目的とした。その方法として、一枚の春画から「性描写の有無」、「性交者の性別」、「性交者の立場(男性)」、「性交者の年齢(男性)」、「性交者の立場(女性)」、「性交者の年齢(女性)」、「第三者の有無」、「第三者の立場」、「第三者の年齢」、「第三者の行為」、「場所」、「場所の種類」、「場所の開放性の有無」の図像情報をカテゴリー別に抜き出し、その数量を数えることで、春画に描かれた人物(立場)、性別、場所などの割合を算出する。そのことで、江戸春画に描かれた図像表現の全貌を明らかにする。 また春画は性表現を多分に含んでいるがゆえに誤解も多く、ポルノグラフィと同意義に扱われたり、男色画や手淫画などが多く描かれていると考えられてきた。そこで本考察では、江戸春画の特色を正確に把握することで、こうした誤解をひとつひとつ解いていき、これまでの春画認識に新たな見解を示す。 なお本論では、春画の図像を分析する際に、同時代の風俗画や随筆類を積極的に参照した。江戸春画には当時の生活風景がありのままに描かれており、春画表現を通じて江戸時代の色恋の風俗を読み解くことも試みている。Heretofore, Shunga has been marginalized and excluded from academic research in favor of nature paintings. Recently, however, numerous book of research on Shunga have been published, and databases of Shunga have been established in universities and research institutes.This paper analyzes 3500 picture figures of the Shunga collections that are kept by the International Research Center for Japanese Studies and utilizes quantity analysis to examine the picture figures expressed in Shunga.Shunga is an often misunderstood form of artistic expression. For instance, there is a common misunderstanding that Shunga is the same as pornography and often depicts homosexual acts. This paper attempts to correct such misunderstandings by illuminating the characteristics of Edo Shunga.As the daily lives of ordinary people were often depicted in the Shunga of the Edo period, this paper also discusses the culture and customs in the Edo period by analyzing the Shunga of the era.