著者
中野 由章
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.652-655, 2021-11-15

2021年6月18日に,文部科学省が「教育職員免許法施行規則および免許状更新講習規則の一部を改正する省令案に関するパブリックコメント」を実施した.改正省令案では,ICT活用指導力を総論的に修得できる科目の履修等の条件が新設されている.これに対して,本会が7月14日に提出した改正省令案に対する意見書の内容について解説する.また,このパブリックコメントを経て決定された改正省令について,「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)モデルカリキュラム」を踏まえて本会の考えを述べる.加えて,9月28日に教員免許更新制度の廃止と経過措置の概要も文部科学省から発表された.これについて本会がどのような対応をすべきかについても述べる.
著者
高芝 朋子 中津 忠則 吉田 哲也
出版者
徳島赤十字病院
雑誌
徳島赤十字病院医学雑誌 = Tokushima Red Cross Hospital Medical Journal (ISSN:13469878)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.52-55, 2009-03-25

症例は小学校中学年女児で,X年7月,友人関係のつまずきを契機に,朝泣いて登校を嫌がるようになった.親や担任が登校刺激するも,女児の抵抗感は強く不登校になった.同時に母親は抑うつ状態に陥っていた.X年10月当院小児科外来を受診し,主治医が母親面談を,臨床心理士が女児の遊戯療法を担当し,別室にて並行面接が開始された.治療経過の中で箱庭療法を導入したことで,女児の遊びを通した自己表現が促進し,強迫症状や母親への暴力は改善した.約4ヶ月,合計11回の治療で再登校に至り,経過は良好である.本症例では,女児の箱庭作品の変化から,急性期総合病院の小児科外来における箱庭療法の効果について,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
須藤 祥代
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.186-190, 2018-01-15

これまでの授業およびカリキュラムを見直し,より学習が加速するように加速学習の一つであるアクセラメンツを導入し,授業改善の実践を行った.学習サイクルを意識したカリキュラムや授業のデザインを行うことで,主体的・対話的で深い学びを行うよう設計し,実施した.また生徒自身が学習の質を向上させるために,アセスメントの方法や内容の改善を行った.自己・他者・場の視点を意識したアセスメントを実施したり,学びに向かう態度として受容的・生成的・継続的態度へと変容できるようなルーブリックを作成した.アクセラメンツの学習サイクルを導入し,それに対応したアセスメントを実施することで,生徒の変容を促すことができたと考える.
著者
小林 正士
出版者
国士舘大学法学会
雑誌
国士舘大学大学院法学研究科・総合知的財産法学研究科 国士舘法研論集 = Kokushikan Daigaku Daigakuin Hogakukenkyuka Sougouchitekizaisan Hougakukenkyuka Koushikan Hokenronshu = the Graduate School law review
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-24, 2017-03-05

1 問題の所在2 学説状況―総論として3 判例と学説の状況―各論として4 市民法学における国家論の観点からの検討結語
著者
相場 恵
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku Fukushi University (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.111-114, 2021-03-18

障害のある人たちの多くが経済的に厳しい状況に置かれている現在,障害基礎年金の必要性は増している。しかしその申請手続きは,非常に煩雑である。手続きは,本人や家族による「本人請求」が可能ではあるが,とても一般の人が自力で行えるようなものではない。 本研究では、年金の手続きの専門家でもある社会保険労務士のアンケート調査から,障害基礎年金の申請にあたっては「本人・家族と専門職協働での申請手続きの必要性」「医療機関との継続的なつながりの必要性」「障害基礎年金システムの啓発の必要性」「今後必要とする制度・システムの改善」の4つの課題が明らかになった。 年金手続きの専門家への相談にたどり着くまでの仕組み,行政機関,病院などと連携するシステムの開発が必要である。さらに,20歳前傷病での障害基礎年金の手続きを要する場合を考えると,子どものころからの受診記録,特に初診日の認定がわかる書類の保管などが必要になってくる。このような情報の周知や,医療や福祉のサービスに関わる情報の共有とそれを一元的に管理することのできる仕組みが必要であると結論した。
著者
松元 崇裕 松村 成宗 渡部 智樹 今井 倫太
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.181-199, 2020-02-15

高齢化による認知症予防や心理ケアの重要性が高まっており,情報工学の分野では対話ロボットを回想法などの心理療法に用いる取組みが進められている.一方で対話ロボットは目新しさにより最初は利用されるものの,長期間の利用を継続させることが難しい.そのため長期実施が前提の心理療法へ適用するには,ロボットが人と良い関係性を維持する技術・手法の確立が必要となる.本論文ではロボットが高齢者との関係性を構築・維持するため,手紙による非同期コミュニケーションを用いる方法を提案し,提案手法が長期関係性に与える効果について調査を通じた仮説を示す.本研究は単発の大規模実験で統計的な結論を出すのではなく,少数の参加者を一定期間にわたって追うケーススタディによって,関係性への効果の時間的な変遷事例を得て,傾向を確認することを重視する.我々は最初に6人の高齢者を対象として,手紙をロボットの作成したものとして渡す条件と,第三者の作成したものとして渡す条件でケーススタディを行う.ケーススタディではロボット対話と手紙提示を隔週で交互に4回実施し,ロボットの印象の時間遷移について調査を行う.また対話データから発話重要度を推定するアリゴリズムを提案し,提案アルゴリズムを用いた非同期コミュニケーションのための手紙生成システムを示す.最後に我々は8人の高齢者を対象として,提案アルゴリズムの有無で手紙内容が異なる2条件を用いた2つ目のケーススタディを実施する.ケーススタディ2も同様に,対話と手紙提示を隔週で交互に4回実施し,関係性の構築・維持に与える影響について,両ケーススタディを通じて形成した仮説を述べる.
著者
尾﨑 大夢 ライエル グリムベルゲン
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.77-80, 2020-11-06

AlphaGo Zeroの登場によってゲーム固有の特徴量を用いないで強いゲームAIを作ることが可能になった.一方で人間らしい動きをするAIや不完全情報ゲームにおけるAI研究の分野は強いAIこそ完成したものの発展途上であると考えられる.本研究では不完全情報ゲームの麻雀をテーマとして、捨て牌などの局情報をもとに相手の狙っている役の予測をニューラルネットワークで予測することを目的とする.牌譜から抽出したデータを入力データとしてLSTMモデルによる予測を行わせ,役ごとに確率を出力させる.実験の結果に有意差は確認できず,今後の課題を残すこととなった.今後の課題として実験結果の原因を調査することになる.
著者
Schalow Paul
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国際日本文学研究集会会議録 = PROCEEDINGS OF INTERNATIONAL CONFERENCE ON JAPANESE LITERATURE (ISSN:03877280)
巻号頁・発行日
no.13, pp.13-24, 1990-03-01

Scholars of Edo Period literature generally evaluate mid seventeenth- century kana-zôshi ("books written in kana") as representing a necessary developmental phase towards the more literarily sophisticated ukiyo-zôshi ("books of the floating world ") that appeared later in the century, but the exact nature of that developmental process has not yet been studied in much detail. This paper discusses several important kana-zôshi that treat the topic of nanshoku (male love) to show that they indeed established a way of describing male love that exerted a major influence on subsequent writings.Kana-zôshi writers gathered and incorporated a substantial amount of information about nanshoku into their history of male love, including references to Chinese emperors, to Buddhist legends, and to Japanese homoerotic literature. Two particularly influential components were the story of the Chinese poet Su Shih (Tong-p 'o), who woud and won a handsome boy at "wind and water cave," and the legend that attributed Kûkai with the introduction of male love to Japan from China in the ninth century. These stories and others were reported and embellished by kana-zôshi writers in their task of devising a history of male love.The literary process whereby kana-zôshi writers established a commonly accepted discourse for nanshoku represented a complex group effort, and the impact of that effort on ukiyo-zôshi is discussed with regard to two of Ihara Saikaku's works, Kôshokuichidai otoko and Nanshoku ôkagami. The paper concludes by suggesting that the importance of kana-zôshi's influence on ukiyozôshi and subsequent literature deserves greater recognition.
著者
中村 唯史
出版者
山形大学人文学部
雑誌
山形大学人文学部研究年報 = Faculty of Literature & Social Sciences, Yamagata University annual research report
巻号頁・発行日
vol.3, pp.29-44, 2006-02-20

日本のある種のマンガ(いわゆる「少女マンガ」)には,一時期,他の芸術にはない独自の言語位相が認められた。図1における中央部白ヌキの言葉は,その一例である。1981年にこのページに驚いた私は,その後少女マンガをよく読むようになったが,それは主としてこの位相に引かれたためであった。これはマンガを描く能力を持たない私のような者には,なかなか実現できない位相である。このような言葉は,他の芸術ジャンルでは,たとえマンガの隣接領域である文学やアニメにおいてさえ,作り出すことが容易ではない。白ヌキの言葉(「ハンプティ/ダンプティ/死んでしまった/白ねずみ, くだけた/ガラス/食べちゃった/お菓子,すべて/もとには/もどらない」) それ自体はいうまでもなく『マザーグース』の歌詞であり,文学の領域においてすでに実現されているものだ。したがってこの言葉が少女マンガ独自の位相を帯びているというのは,言葉それ自体によるのではない。この言葉と作中人物たちとの関係や,この言葉が作品世界で果たしている役割が,他の芸術ジャンルにはあまり見られないようなものなのである。この位相を持つ言葉は,形態面についていえば,吹きだしや枠で囲まれることなく,いわばむき出しで画面上に配置されている場合が多い。本稿はこの少女マンガ独自の言語位相の考察を目的とする。ただしここで対象とする言葉の位相は,1970年代から80年代にかけて発達し,一部の少年マンガや劇画にまで影響を及ぼしたものの,1990年前後を境に急速に衰退して,現在ではすでに少女マンガにおいてさえアクチュアルな位相とは見なされていない。1990年代以降に登場した描き手たちの多くは,この言語位相の使用を好まない。
著者
渡邉 俊彦
出版者
拓殖大学言語文化研究所
雑誌
拓殖大学語学研究 = Takushoku language studies (ISSN:13488384)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.259-277, 2020-03-25

本稿は,台湾華語の句頭に出現する「啊」を扱い,関連の先行研究からこの「啊」が台湾で使われる理由を整理することを目的とする。句頭とは,発話の最初あるいはフレーズの最初の位置のことを指す。この台湾華語で句頭に「啊」と表記されるものの中には,感嘆詞の用例のみでは解釈しがたいもの,すなわち規範的とされる用法から逸脱するものが存在する。その発音は多く[aʔ](-ah)と発音されること,ならびに台湾という地域における言語環境の歴史的な経緯から閩南語の影響を受けたものと推測し,閩南語の「啊」に関する先行研究を整理した。その結果,先行研究では閩南方言を母語のひとつとする地域において使われる標準中国語を「地方普通話」として部類した上で,それは規範的とされる中国語の習得途中で形成された一種の中間言語であると見做す。つまり,本稿で扱った台湾華語における句頭語気助詞「啊」を含む方言要素は,基本的に転移の結果であることが先行研究からの大まかな見解であった。一方で行政院主計総処(2010)の統計を前提として,台湾人口の約8 割にあたる人が家庭内で閩南語,あるいは閩南語ともうひとつの言語として台湾華語を使っていることを考慮すると,一概に習得途中において形成された一種の中間言語として台湾華語を位置づけ,その中で句頭語気助詞「啊」を単なる転移の結果とするのは,今後も引続き議論が必要であることを本稿は指摘した。