著者
志村 五郎
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.65-80, 1961-12-25 (Released:2008-12-25)
参考文献数
41
著者
橋田 英俊 本田 俊雄 森本 尚孝 相原 泰
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.700-703, 2001-09-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
13
被引用文献数
3 5

75歳の男性が見当識障害, 構語障害, 歩行障害の増悪を来して入院した. 患者は4年前に頸椎症と診断され治療を受けていたが, 四肢の運動障害及びしびれ感は徐々に増悪していた. みかけ上の血清Cl値の上昇が端緒となり, ブロム中毒が疑われた. 10年来のブロムワレリル尿素含有鎮痛薬の内服歴及び血清ブロム濃度上昇を認めたため, ブロム中毒と診断された. 輸液により症状は軽減したが, 四肢の運動障害は残存した. 四肢の運動障害は頸椎症に加え慢性ブロム中毒による不可逆性の障害も関与している可能性が否定できない. 高齢者の精神・神経症状は, 老人性痴呆や加齢による影響と判断され積極的な診断や治療が見送られることが多い. ブロムワレリル尿素は市販の鎮痛薬等にも含まれている成分であり, 高齢者で精神・神経症状を呈した症例に対しては, ブロム中毒を念頭におく必要がある.
著者
岩田(井上) 未来
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要 社会学研究科篇 (ISSN:18834000)
巻号頁・発行日
no.37, pp.37-54, 2009-03

トランスジェンダーについて,近年「性同一性障害」という診断名によって説明がなされるようになった。その治療は,「彼らは心と体の性別が食い違い,心の性を強制することは不可能なので,体の性を変えて男女どちらかに一致させる」というものである。しかし「トランスジェンダー」として自己表明する人々の語りを詳細に見ていけば,「女」と「男」の二元論では語り得ない人々の存在が明らかになる。トランスジェンダーは性別を移行するだけではなく,性別を乗り越え,否定し,無化し,撹乱する可能性を秘めている。性別が一貫した本質的なものとして捉えられる理由について,Sedgwickのホモソーシャル理論から解釈した。すなわち男性中心社会によって,性の自然性についての言説は支えられていると考えられる。故に「心にも性がある」とする主張もまた,男性中心社会の性別規範に則ったパフォーマンスである。トランスジェンダー性別二元論男性中心社会インタビュー
著者
大薗 博記
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR ANIMAL PSYCHOLOGY
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
pp.71.1.6, (Released:2021-06-14)
参考文献数
55
被引用文献数
1

Many studies suggest that cooperation in human societies has been achieved via peer interactions such as reward and punishment. As the group size is larger, however, it is difficult to maintain cooperation only by peer interactions. Instead, a centralized punishment system such as police governs large-scale societies and cooperation is maintained. In this paper, first, I explain why peer interactions have limitations to achieve large-scale cooperation and why centralized punishment system, which often includes social hierarchy, has superiority. Second, I discuss how social hierarchy can be formed and maintained. Considerable evidence indicates that hierarchy in humans is principally based both on dominance (coercive capacity based on strength and threat) and prestige (persuasive capacity based on skills, abilities, and knowledge). Some researchers argue that non-human animals also form hierarchy based on dominance, but only humans form stratification based on prestige. After introducing their argument, I would like to discuss how humans (and other animals) form hierarchy and achieve cooperation.
著者
倉橋 耕平
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.153-171, 2009-01-31 (Released:2017-10-06)
参考文献数
19

Our concern i s to examine i ssues relating to the falsification of the NHK televisionprogram“ ETV 2001” broadcasted on Jan. 30, 2001. But here we limit ourdiscussion to the matter of press freedom. The judgment each pronounced bythe Supreme Court and the Tokyo High Court i llustrate the point. The formertook account of“ the freedom of expression” i ndemnified by the Constitution ofJapan, the latter condemned an i llegality of NHK for dereliction of i ts duty as acorporate body. It i s clear that there are substantial discrepancies betweenthem i n the concept of freedom.
著者
永岡 智之 石田 直樹 中川 祐輔 梶原 伸介
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.1039-1042, 2017-11-30 (Released:2018-09-14)
参考文献数
19

症例1は77歳,女性。認知症のため施設入所中であった。腹痛と嘔吐を主訴に受診し,腹部CTでイレウス像と小腸内にらせん状の低濃度陰影を認めたため,腸重積や腫瘍,異物を疑い手術を施行した。回腸末端より150cm口側腸管を切開すると7cm大の椎茸が陥頓していた。症例2は59歳,男性。腹痛を主訴に受診し,腹部CTでイレウス像と回腸内に不整な低濃度陰影を認めた。椎茸によるイレウスが疑われ,ロングチューブを挿入し保存的加療を行ったところ,約24時間後に排便とともに2cmの椎茸が4片排出された。その後の腹部CTで低濃度陰影の消失とイレウス像の消失を確認した。食餌性イレウスはまれな疾患であり,術前診断が困難なことが多く,手術報告例が多い。今回われわれは,手術治療を行った症例と,保存的に治療可能であった症例をそれぞれ経験したので,文献的考察を加えて報告する。
著者
内田 力
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:24343110)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.195-213, 2018-11-30

日本中世史家の網野善彦(生没年一九二八~二〇〇四年)は、一九七〇年代ごろから新しい歴史学の潮流(「社会史」)の代表的人物として注目されるようになり、のちに「網野史学」・「網野史観」と称される独自の歴史研究のスタイルを打ち立てた人物である。かれの歴史観は、とくに大衆文化の実作者への影響が大きく、映画監督の宮崎駿や小説家の隆慶一郎、北方謙三の作品にその影響がみられる。 では、網野はなぜこれほどまで個性的な歴史研究者になったのか。そう考えて網野の自伝を読むと、一九五三年の夏に左翼政治運動から離脱したことが重大な転換点として語られている。本論文では、網野自身が研究上の重大な転換点として語っていた一九五〇年代の網野の活動を、同時代の左翼政治運動の潮流とつきあわせて検証した。 本論文ではまず、日本の敗戦直後における網野と共産党の関係について確認した(第一節)。そのうえで、一九五三年以降の共産党分裂期を対象として、網野をとりまく政治的状況を分析するとともに(第二節)、網野が歴史をめぐっていかなる活動を展開していたのかを分析した(第三節)。最後に、一九五〇年代後半、つまり網野が左翼政治運動から離脱したあとに、いかなるかたちで歴史研究を再開したのかを検討した(第四節)。 以上をとおして本論文では、一九五〇年代前半の一時期、国際共産主義運動の一部分に組み込まれて翻弄されていた網野善彦が、左翼運動離脱後に、政治的に否定された学説の検証に向かったことを示した。くわえて、一九五〇年代の段階ですでに、歴史を表象するメディアの問題に接していたことを指摘した。
著者
小島 聡子
出版者
岩手大学人文社会科学部
雑誌
Artes liberales (ISSN:03854183)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.69-86, 2010-06-25

近年,地域の言語の多様さの例として,伝統的「方言」ではなく「標準語」とも異なる独特の言葉が取り上げられるようになってきた。これらの語のあり方の多様さを反映して,「地方共通語」や「新方言」など様々な用語もある。具体的には,東北地方に特有なものとして「しなきゃない」(=「しなければならない」),「お先します」などが知られている1)。本稿では,そのような伝統的「方言」とも「標準語」とも異なる地域に独特な言い方について,岩手の例を挙げてみたい。
著者
志田 未来
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.303-323, 2015-05-29 (Released:2016-07-19)
参考文献数
23
被引用文献数
1 2

本稿の目的は,子どもの視点からひとり親家庭研究に新たな理論的視角を提示することにある。これまでのひとり親家庭に関する研究は,彼らの生活を経済的な不利に収束しがちであったこと,子どもを主体として捉えることがなされてこなかったことなどの課題を残していた。そこで本稿はひとり親家庭の子どもに対する聞き取りから得られたデータを基に,ひとり親家庭という構造の中で子どもが主体としてどのように生き抜こうとしているのかについて検討した。 調査より明らかにされたのは以下の二点である。第一に,彼らは自己の家庭経験にアンビバレントな感情を持ちながらも自己の家庭経験を肯定的に理解しようとしている。第二に,同居親との関わりには多様性があったが,同居親以外のつながりを豊富に持ち,それを活かしながらうまく生き抜こうとしている。 このことから二つの次元における承認の重要性が導き出された。第一に,ひとり親の子どもたちにとって,自己の複雑な家庭経験を正当なものとして理解するために自己・他者からの承認を要している。そしてその役割を果たしているのが,同じひとり親の子どもであった。第二に,ひとり親家庭であることに対して周囲から承認を得ることによって,彼らは家庭外の豊富なつながりを持つ基盤を獲得している。 以上より,本稿は従来から指摘されてきた経済的な再配分に加え,承認の観点が必要であることを提示した。
著者
山田 高誌
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集 = The Joint Journal of the National Universities in Kyushu. Education and Humanities (ISSN:18828728)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.No.3, 2022-03-31

本論は、18世紀後半、ナポリを中心とするナポリ王国下でのオペラ巡業とそれらを担った人々の実態について、特にカラーブリア州コゼンツァでの1777~78年のオペラ興行の契約文書(公証人史料)、プーリア州への巡業記録を基に解き明かすものである。またイタリア現地の最新研究動向を紹介しながら、17世紀から1799年までの期間についてのナポリ王国領域内(アブルッツォ州を除くモリーゼ、カンパニア、プーリア、バジリカータ、シチリア各州)各中小都市の音楽劇上演一覧を作成、分析を行うことで、南イタリアでは聖史オペラdramma sacroという世俗的宗教音楽劇の役割が大きかったことを示し、「オペラ巡業」を広い同時代文脈の中で改めて提示する。
著者
井澤 修平 城月 健太郎 菅谷 渚 小川 奈美子 鈴木 克彦 野村 忍
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.91-101, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
78
被引用文献数
42 34

近年,疾病予防などの観点からストレスの評価法に注目が集まっている.本稿では唾液を用いたストレス評価について概説した.人の唾液には様々なストレス関連物質が存在することがわかっており,非侵襲的なストレス評価法として利用できる可能性が考えられる.唾液採取,検体の取り扱い,測定などの基本的事項を紹介し,唾液より測定可能な 7 つの物質(コルチゾール,デヒドロエピアンドロステロン,テストステロン,クロモグラニン A,3-メトキシ-4-ハイドロキシフェニルグリコール,α アミラーゼ,分泌型免疫グロブリン A)の各種ストレスとの関連や使用の際の留意点を概観した.最後に目的や状況に応じた唾液によるストレス評価の方法や今後の課題について述べた.