著者
古崎 晃司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.406-412, 2020-08-01 (Released:2020-08-01)

Webで公開したデータを相互につなげる(リンクする)ことにより,データのWebを形成しようとするLinked Dataの取り組みは,2010年ごろから盛んに進められている。中でもオープンなLinked DataであるLinked Open Data(LOD)は,さまざまな分野で構築されており,その有効活用が期待される。本稿では外部のLODとつながったデータを作成することで,複数のデータを統合して活用する方法について解説する。特にLinked Data用のクエリ言語SPARQLを用いて,複数のデータセットを横断して検索する統合クエリ(Federated Query)の基本的な使い方を紹介する。
著者
高橋 堅二
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.1, pp.79-87, 1991-05

昭和51年8月「東海地震説」が発表されて以後、静岡県では県民と一体となった東海地震対策が推進されてきた。その一環として、県では東海地震に対する県民意識を隔年毎に、又県政世論調査においても一部地震関係の調査を実施している。これにより、県民の意識や実態、経年的な変化を把握し、地震防災に係る施策を検討する基礎資料としている。以下は、この調査資料をもとに分析した「県民の防災意識変化」の要旨である。1 県民意識の変化分析(1)東海地震に対する関心度58年度から6年間の経過で関心層が約7%減少しており、ゆるやかな意識低下を続けている。男女別、年代別においては大差ないが、地区別では東部における関心層の減少率が低い。これは、これまで年中行事のごとく発生していた伊豆半島東方沖の群発地震や平成元年7月の海底噴火のためと思われる。県政世論調査による「地震発生後の行動についての話し合いの有無」においても、同様な傾向が見られる。しかし、「東海地震説」発表以前の昭和46年度における調査では61.1%と高い結果を見るが、これは、44年11月「駿河湾から遠州灘沖での地震発生の可能性大」との発表が、県民にかなりの動揺を与えていた結果と思われる。(2)家庭内対策の実施状況(1)家族の話し合いが必要と思われる対策項目について、わずかづつ低下しているが、これは(1)の関心度と相関があり、地震に関する話題が家庭内で減少していることを表している。(2)「出火防止対策」の項目では他より実施率が高いものの、やや低下を示すのは、種々の安全装置の普及によるものと思われる。(3)「家具の固定」「食料・飲料水の備蓄」等では、販売商品の多様化によるためか、実施率の上昇を示す。2 イベントと意識変化元年度の県民意識調査によれば、伊東、熱海両市を中心とした東部地区の「関心度」「家具の固定」が他地区に比較し高い結果を示している。この結果が平成元年発生した群発地震から海底噴火にいたる一連の現象によることは明らかであり、イベントとの遭遇が意識変化と大きくかかわっていることが分かる。中西部においては、51年度目立ったイベントがなく静穏であることが、家庭内対策必要性の認識を弱めている。3 意識低下の要因と今後の対策防災意識を低下させている要因は種々考えられるが、中でも、「日本(特に東海地震予想震源域)において、近年、大きな地震がない」ことが最大であろう。今後、適度な揺れを待つことができない以上、県民が東海地震に対する正しい認識を身につけると共に、地震に備えた日頃の家庭内対策の重要性を認識するよう、県・市町村一体となった啓蒙、啓発活動を繰り返し展開していく必要がある。
著者
取井 猛流 木下 菜月 浦野 諒人 三好 大輔 川内 敬子
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.25-35, 2022 (Released:2022-01-10)
参考文献数
68

分子生物学の研究が飛躍的に進歩し、分子標的薬の開発や治癒が困難であった様々な疾患に対する治療法が確立されてきた。一方で、標的タンパク質を同定できたとしてもタンパク質の構造上の特徴などから、標的とすることが難しいケースも依然として多い。そこで注目されているのが核酸を狙った分子標的薬である。特に、核酸の代表的非標準構造であるグアニン四重らせん構造(G-quadruplex: G4)を標的とした薬剤の探索が進められ、新たながん治療法への応用が期待されている。本総説では、G4が標的分子として注目されている理由、そして光増感能を持つG4リガンドのがん光線力学療法への応用について我々の研究を中心に紹介する。
著者
谷 伊織
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、真正粘菌変形体の数理モデルを計算素子(リザバー)として用いることで、極端な一般化能力を持つ機械学習手法を開発することを目的とする。生物の振る舞いに由来する頑健性や適応性を機械学習に取り込むことによって、深層学習を始めとする既存の枠組みから逸脱し、従来的な手法よりも環境の変化に対して頑健で、適応的に対応可能な機械学習アルゴリズムを開発する。また、従来手法と比較することで本研究の手法の有効性を検証する。

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1920年04月06日, 1920-04-06
著者
伊東 清志 猪俣 裕樹 丸山 拓実 荻原 直樹 佐藤 大輔 八子 武裕 四方 聖二 北澤 和夫 小林 茂昭
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1183-1196, 2021-11-10

Point・頚椎前方除圧固定術は,米国の脳神経外科医が開発し,長きにわたり改良され,受け継がれてきた信頼性が高い治療方法である.・頚椎は運動器として動きながら頭蓋を支える側面をもつため,脊髄への圧迫も「動態」での評価が必要であり,「固定」することで圧迫を解除することは理にかなっている.・この方法を安全かつ効果的に行うためには,局所解剖を十分に理解し,術中の操作に取り入れることが大切である.
著者
藤塚 吉浩
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.28-37, 2019-03-15 (Released:2020-04-22)
参考文献数
30

本稿では,社会主義後のプラハを事例に,ジェントリフィケーションに関して次の3 点を明らかにした.第1に,都市の内部構造について,旧市街では地域住民の減少が大きい一方,裕福な住民や外国人が増加した.保存されている歴史的建築物が観光客向けの店舗やホテルに再利用されるという,ツーリズムジェントリフィケーションの影響がみられた.第2 に,歴史的市街地では歴史的建築物が保存されているため,景観に大きな変化はないが,機能の変化に合わせて建物は改変されることを明らかにした.オフィス需要の増大は,歴史的な建築物の再利用だけでは満たすことができず,歴史的市街地の周辺にオフィスビルが開発され,新しい景観がつくられるとともに,ジェントリファイアーを生起する要因となった.第3 に,ヴルタヴァ川のリバーフロントでは共同住宅開発が進められてきたが,そのうち付帯施設の充実した住戸は価格が高く,外国人,特にロシア人を主な顧客としており,グローバリゼーションの影響が看取できた.これらの共同住宅は,洪水地帯に開発された旧河川港に面しているため,浸水のおそれがあることを指摘した.
著者
大⻄ 裕也
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.e28-e34, 2021-03-15

2010年台後半から再び盛り上がりを見せている量子コンピュータの応用先として,量子化学計算が注目されている.本稿では量子化学計算とは何か,そして量子コンピュータによってどのような恩恵が量子化学計算にもたらされるのかを概観し,その道のりは決して平坦ではないが,制御レベル,ミドルウェア,ソフトウェア,アルゴリズムの面では非常に興味深い挑戦がいくつもあることを述べる.
著者
根津 由喜夫 Nezu Yukio
出版者
金沢大学文学部
雑誌
平成14(2002)年度科学研究費補助金 基盤研究(C) 研究成果報告書 = 2002 Fiscal Year Final Research Report
巻号頁・発行日
vol.2000-2002, pp.70p., 2003-04-01

今回の研究の課題は、国土の中に様々な民族集団を抱え、時として厳しい対立や緊張関係を生みつつ、長期的には一定の安定と相互の共生システムを築くことに成功したビザンツ社会の実態をできるだけ詳細に解明することにあった。ここでは、ひとつの事例研究の試みとして、対象とする時期を11-12世紀に絞り、以下の3つの角度からこうした主題に取り組むことを目指した。 第一の視点は、11世紀後半、トルコ人の侵入に伴う混乱の中での小アジアの現地住民の動向を、当時、この地域で勃発した反乱の過程を分析することによって明らかにすることである。小アジア内の異なる地域でほぼ同時期に発生した複数の反乱を相互に比較することにより、それぞれの地域が抱えた特殊事情や、地域の枠組みを越えた当時の小アジアの全般的な情勢などがそこから浮かび上がらせることを目指した。 第二の視点は、11世紀末から12世紀初頭のバルカン半島、とくにテッサロニケ周辺の地域における社会構造を、主としてアトス山修道院文書の分析を通じて解明することである。この時期、この地域にはトルコ人に故郷を追われた小アジア出身の貴族家門が多く移住している。ここでは彼らが現地社会に同化してゆく過程で生じた様々軌轢が解決されてゆくプロセスを、修道院に残された訴訟・係争関係文書を読み解きながら解明しようと試みた。 最後に第三の視点として、西欧勢力の大規模な東地中海沿岸地域への進出が始まった12世紀において、ビザンツが国家の内外においてこうした勢力にいかに対処したかが考察された。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1400, pp.88-93, 2007-07-16

仙台駅東口から大通りをクルマで走ること5分。突き当たった森林公園の中に、東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地、フルキャストスタジアム宮城がそびえる。 宮城県が所有する球場で、隣には同じ県所有の陸上競技場がある。その中間地点に、白線が引かれている。 この線を境にして、まるで北緯38度線のように空気が一変する。
著者
伊吹 京秀
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.71-80, 2012 (Released:2012-06-20)
参考文献数
26
被引用文献数
1

近年医学研究の進歩はめざましく,痛みの研究については,米国議会の決議した1990年からのThe Decade of the Brainや2001年からのDecade of Pain Control and Researchキャンペーンにより,新たな知見が集積されてきた.しかし残念ながら,難治性の痛みの画期的な治療を生み出すには至っていない.その実現には,われわれ実地医家も基礎にある科学的知識を習得する必要がある.本稿では,このような視点から痛み学説の変遷,痛覚神経系の特徴,痛覚伝導の仕組み,末梢感作,中枢感作を解説する.20世紀初頭われわれが受け継いだ痛みの理論は,17世紀以来のデカルトの特異説であるが,1965年革命的なゲートコントロール説が提唱され多くの疑問が解決された.しかしその後,機序の解明されていない現象を説明できる新たな学説はまだ日の目を見ていない.人間の痛みを対象として診療を行っているという非常に有利な立場から,われわれには新たな発想で画期的な説を打ち出せる可能性がある.本稿が実地医家の方々に何らかの影響を及ぼすことになれば,幸いである.