著者
御影 雅幸 小野 直美
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.419-428, 2009 (Released:2010-01-13)
参考文献数
40
被引用文献数
4 5

漢方生薬「芍薬」は,日本ではシャクヤクPaeonia lactiflora Pallas(ボタン科)の栽培根を乾燥したものを使用しているが,中国では「赤芍」と「白芍」に区別して用いている。中国では5世紀には芍薬に赤と白の別があることを認識し,原植物も複数種あった。芍薬の赤・白の区別点については古来,根の色,花の色や花弁の形態,野生品と栽培品の相違などの説があった。本研究で古文献の内容を検討した結果,野生品か栽培品かに関係なく,根の外皮をつけたまま乾燥したものを赤芍,外皮を去って蒸乾したものを白芍としていたと考証した。また明代の湖北,安徽,浙江周辺では,野生品で赤花のP. veitchiiやP. obovata Maxim. の根を赤芍とし,栽培品で白花のP. lactifloraの根を加工して白芍薬として使用していたと考察した。このことは芍薬の赤白がたまたま花色と一致したため,赤芍は赤花,白芍は白花とされ,同様に赤芍は野生品,白芍は栽培品として区別する習慣ができたものと考察した。
著者
岡部,和代
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, 2003-09-15

着心地の良いブラジャーの設計や新しい設計システムを構築するためには,複雑に動く乳房の運動機構やブラジャー着用に伴う乳房振動特性の変化を明らかにしておくことが重要である.そこで,本研究では半透明なブラジャーを用いて,運動画像解析システムにより,ブラジャー着用時と非着用時の走行中と歩行中の乳房の動きを計測した.乳房の動きから体幹部の動きを分離し,乳房独自の振動データを抽出した後,離散フーリエ変換によって分析した.その結果,乳房の振動は歩行周期の影響を直接に受け,走行中が歩行中より,垂直方向が水平方向より大きくなった.ブラジャー非着用時の垂直方向の振幅は歩行周波数で最大となり,体幹部の運動の影響を強く受けることが分かった.非着用時の乳房振動は乳房の硬さ指標と相関が高く,柔らかい乳房が硬い乳房より振幅が大となった.ブラジャーの着用によって,乳房の振幅スペクトルに高い周波数成分が生じるようになり,測定点間の相関も低くなった.またブラジャー着用時の乳房が硬い乳房に近くなり,両者の特性が似たものとして表れた.以上のように乳房振動を分析し,その特性をとらえることができた.乳房の振動特性は,ブラジャーの着くずれや着心地に関係する問題を含み,設計に欠かすことのできない要因である.ブラジャーの設計支援システムの中で,乳房の振動特性をどのように制御するかが重要な課題である.今後は胸部の3次元形状データのモデルを利用して,運動機能性のよいブラジャー設計の技術開発につなげたいと考えている.
著者
平井章康 吉田幸二 宮地功
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.1441-1446, 2013-07-03

近年,登場してきた簡易脳波計は携帯可能な大きさであり,装着が簡単で,装着者の行動を制限しない.このため,日常的な使用が可能で,比較的安価で入手し易い利点がある.そこでこの簡易脳波計を用いて脳波情報を取り入れた遠隔教育における指導支援にフィードバックできるシステムの構築を検討している.本論文では簡易脳波計の特性や脳波状況について論じ,脳波計測において学生の学習行為中の思考や記憶に関して脳波データの相関関係を実験により比較分析した.その結果,β/α値はストレスや思考する集中度合いを測る指標として,Low_γは記憶作業に反応を示す事が判明し,記憶の度合いを測る指標として有効であると結果が出た.
著者
盛田 帝子
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 = Otemae Journal (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
no.20, pp.259-329, 2021-03-31

本稿は「光格天皇主催御会和歌年表―享和期・文化期編」(『大手前大学論集』第19号」)の続編として、文化15年(文政元年)(1818)~文政13年(天保元年)(1830)までに光格上皇が主催した仙洞御会での光格上皇の御製、および仁孝天皇が主催した内裏御会での光格上皇の御製・仁孝天皇の御製を年表形式で提示したものである。底本には、国立国会図書館所蔵『内裏和歌御会』(請求記号:124-202)・同所蔵『仙洞和歌御会』(124-202)を用いた。また代々御所伝受の保持者を輩出した有栖川宮家伝来の宮内庁書陵部所蔵『御会和歌留』(請求記号:有栖-5081)によって校訂した。文政期は、光格上皇の歌人としての面に光をあてれば、仙洞御会を営みながら、仁孝天皇の歌道教育に力を注いだ時期であり、対面しての和歌指導を行い、仁孝天皇歌壇を支える事になる廷臣達をも含め、次々に御所伝受を相伝している。また在位中に引き続き、中宮欣子内親王の重用や女房歌人達の活躍なども見られる。その他の文化面に光をあてれば、管絃に力を入れながら、修学院離宮への御幸の再興や、中務卿韶仁親王への入木道御伝受の相伝、また、前権大納言四辻公萬から蘇合香、筝を相伝されるなどの事がある。『光格天皇実録』(ゆまに書房、2006年)等から出典を示して事項を記し、それらの事柄と御会の運営状況との関係性、文政期の光格上皇の動向を立体的に提示することを試みた。
著者
北脇 裕士 堀川 洋一 小豆川 勝見 野川 憲夫
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会誌 (ISSN:03855090)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.17-19, 2014

Two slightly orangy pink morganites with residual radioactivity were studied. The dose rate of the samples, measured by a scintillation survey meter, ranged from 0.15 to 0.35 μSv/h. Although this radioactivity was likely not hazardous, it was above the recommended exposure limit set forth in 1990 by the International Commission on Radiological Protection. To identify the radionuclides, gamma rays from the samples were measured using a Ge(Li) semiconductor detector. The activation products ^<134>Cs, ^<54>Mn, and ^<65>Zn were detected, proving that the samples had been artificially irradiated with neutrons.
著者
髙橋 紀穂
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.111-120, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
28

本稿の目的はバタイユ理論における「自然」の意味を把握することにある。議論は次のようになされる。最初に,バタイユが自身の議論の基底に「自然」を置いていること,また,その「自然」の意味づけが変化しているという観点を示す(第1節)。次に,1927年頃に書かれたと思われる最初期のエッセイ「太陽肛門」において描き出されている「自然」を明らかにする(第2節)。続いて,雑誌「ドキュマン」においてバタイユが発表した論考から彼の「自然」概念の変化を考える(第3節)。次に,「社会批評」に1932年に発表された論文「ヘーゲル弁証法への基底への批判」における「自然」概念の展開を見る(第4節)。われわれはこれらの探求によりバタイユの考える「自然」が詩的・文学的なイメージを超え,ひとつの政治哲学的思想を支える基礎にまで展開されていることを示す。最後に,これらの探求を踏まえた上での今後必要となる研究に触れる(第5節)。