著者
藤井 貴志
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.49-64, 2016

<p>花田清輝は昭和二十四年に発表した「ドン・ファン論」において、「近代の超克」を果たす為には〈人間中心主義〉から〈鉱物中心主義〉へのパラダイムシフトが不可欠であると記している。疎外された〈人間〉の主体性の回復に躍起になる同時代の〈主体性論争〉を挑発するかのように、花田はむしろ「おのれ自身を、客体として、オブジエとして、物体として」(「わが物体主義」)捉える必要性を強調し、自動人形や動く石像、あるいは〈物〉に化していくプロレタリアートといったモティーフを〈鉱物中心主義〉のもとに変奏していく。本論は、〈物〉になる〈人間〉という一見疎外論的なイメージを逆手に取り、謂わば〈人形〉のような非-主体を立ち上げることによって画策された花田の〈革命〉のヴィジョンを横断的に追跡し、その可能性を再検討する試みである。</p>
著者
深澤 伸一 下村 義弘
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-10, 2017 (Released:2018-03-22)
参考文献数
16

優れた通知機能の設計要件を明らかにするために、周辺視野への視覚的な動きと報知音の提示が、気づきやすさと中心視野における知的作業の集中性および両者の関係性と意味伝達の容易性に及ぼす影響について、複数の計測指標により総合的に検討を行った。正面のメインディスプレイ上で暗算作業中の実験参加者に対し、「瞬時」「透出」「拡大」の3種類の動き様態がそれぞれ付与された文字刺激を周辺視野領域に設置されたサブディスプレイ上に表示し、さらに半数の条件では報知音を併せて提示して、心理指標と行動指標により評価した。その結果、報知音提示がない条件では気づきやすさと中心視野での作業集中性に有意な正の相関関係が認められ、気づきやすさ、作業集中性、意味伝達の容易性のすべてで拡大表現が有意に最も優れた値を示した。一方、報知音提示を伴う条件では、気づきやすさが全体的に高くなるものの拡大表現において注意喚起効果の加算的作用による過剰化が要因と考えられる作業集中性の有意な低減が発生し、動きをもった通知への報知音の併用は適用状況を考慮する必要があることが示唆された。
著者
木村 浩彰
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.610-614, 2016-08-18 (Released:2016-09-16)
参考文献数
10

外傷や手術後に四肢の激しい疼痛や腫脹を生じることは,反射性交感神経性ジストロフィーや肩手症候群として知られており,近年,複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome,以下CRPS)として名称が統一された.CRPSの原因は不明で,早期診断と治療が重要である.CRPSの診断は,外傷や不動化の既往と原因から想像できない疼痛,浮腫,皮膚血流変化からなる世界疼痛学会の診断基準が知られているが,鑑別診断のための診断基準も報告されている.CRPSを疑う状況が発生すれば,確定診断を待つことなく直ちに投薬や神経ブロック,リハビリテーションなどの集学的治療を開始すべきである.
著者
浅野 孝
出版者
岩手医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

アルツハイマー病は原因不明の疾病で完治が不可能であるため、症状の進行を遅らせるための薬の開発が数多く行われており、複数のアルカロイドの有効性が報告されている。本研究では、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有するGalanthamineを含むヒガンバナ科植物に注目し、効果的なアルツハイマー病治療薬を創り出す基盤として、ヒガンバナアルカロイドの安定かつ効率の良い生産を無菌的に培養可能な植物にて確立することができた。
著者
田辺 千夏
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.372-376, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)

現在の第3次人工知能ブームは,情報の蓄積が爆発的に進んだことと情報処理能力が向上したことがきっかけとなっている。特許情報も例外ではなく,特許調査・解析分野への人工知能の応用は既に始まっている。筆者の所属企業である昭和電工(株)でも数年前から人工知能の特許調査分野への応用に着目しており,Patent Explorer,XLPATといった人工知能を用いた商用ツールの導入により特許調査の効率化,自動化を推進している。本稿ではシステムユーザーとしてこれらのツール導入にあたっての期待効果,使用感ならびに今後の展望を紹介する。
著者
今井 淳
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.365-378, 1997-10-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
47
著者
中村 隆一 日笠 裕治 村口 美紀
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.317-322, 2003-06-05
被引用文献数
1

1.ブロッコリーの花蕾腐敗病は、窒素施肥量の増加に対応して多発した。発病株率の高い区では低い区に比べて花蕾部の窒素濃度が高かった。カルシウム資材を花蕾部に葉面散布すると、花蕾部のカルシウム濃度が高まり、花蕾腐敗病の発病株率は低下した。2.花蕾腐敗病の発病には花蕾部の窒素濃度の他にカルシウム濃度が影響する。花蕾部のCa/N比が低いほど発病株率は高く、Ca/N比が0.2以上では発病株率は10%以下で、Ca/N比が0.3以上では発病が認められなかった。3.窒素を分施することで、地上部カルシウムの花蕾部への分配比率が高まる傾向が認められた。したがって、花蕾腐敗病が多発する作型では窒素の分施が発病抑制に有効である。4.低地土が主体の地区で花蕾腐敗病発病状況を調査した結果、花蕾腐敗病は有効土層が浅く、下層土のち密度が高いなど排水性が不良な圃場で多発した。5.以上からブロッコリーの花蕾腐敗病の発病には、花蕾部の窒素濃度とカルシウム濃度が関与し、発病の抑制には窒素の分施および土壌物理性の改善、カルシウム資材の葉面散布が有効である。

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著者
岡本米蔵 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
1915
著者
浜口 昌巳 川原 逸朗 薄 浩則
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.189-193, 1993-06-20 (Released:2010-12-10)
参考文献数
24

佐賀県栽培漁業センターで1992年の4月に採卵・孵化したのち, 種苗生産を行っていた稚アカウニに8月後半から9月初旬にかけて大量斃死が発生した。発生時の水温は23~25℃で, 斃死個体は黒斑や脱棘が顕著ではなく, 囲口部の変色や付着力の低下などの症状を呈していた。また, 管足表面には多数の糸状とも思える長かん菌の蝟集が認められた。この菌はFlex-ibactey maritimus2408株に対する抗血清とよく反応した。海水で調製した改変サイトファガ培地上で分離したところ, 無色で周辺が樹根状のコロニーを形成した。この細菌による人為感染試験を菌液塗布法 (2.3×106cells/ml) と浸漬法 (3.8×106, 3.8×105cells/ml) によって行ったところ, いずれも発症・斃死にいたった。このことから, 今回の大量斃死は細菌感染症であることが明らかとなった。
著者
金子 光美
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水質汚濁研究 (ISSN:03872025)
巻号頁・発行日
vol.9, no.8, pp.478-483, 1986-08-10 (Released:2009-09-10)
参考文献数
35