著者
鈴木 仁
出版者
北海道大学大学院文学研究科北方研究教育センター
雑誌
北方人文研究 (ISSN:1882773X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.19-47, 2019-03-25

本論は、日本領時代の樺太における郷土研究について、島内で発行された新聞・雑誌から、その形成と展開を考察したものである。 日本領樺太には大正期にパルプ・製紙工業が進出し、水産業に代わる基幹産業へと成長する。工場を中心とした市街地が拡大し、また、原材料を供給する林業により冬期間の労働が生まれたことで、移住民の定住を促進させた。 昭和期に入ると、内地での郷土研究・郷土教育の影響を受け、移住地であるこの地域を「郷土」として研究する取り組みが現れる。1930年に結成された樺太郷土会には、教職員、樺太庁の役人、新聞記者など、幅広い人脈が広がっている。その研究分野も、歴史、民族学、自然科学など樺太における様々な事象を対象にしており、研究成果は新聞や出版物で発表された。また、史跡保存、博物館の資料収集、図書館設立も企画し、樺太庁への運動も行っている。 樺太郷土会結成の契機には、樺太の有力紙『樺太日日新聞』の主筆菱沼右一による主導的役割があり、同紙は活動の広報媒体にもなっている。また樺太郷土会が活動した時期に、政府や樺太庁では、樺太を内地に編入し、自立した地方行政への転換が計画されたことも、住民の郷土意識が求められた背景に影響していると思われる。 会の活動は1932年にはなくなるが、参加した研究者は、個人や別の団体を結成し、研究活動を続ける。1930年に樺太郷土会により始められた様々な活動は、その後も公的な文化事業や個人の研究活動に影響している。
著者
齋藤 毅 辻 直也 鵜木 祐史 赤木 正人
出版者
Acoustical Society of Japan(日本音響学会)
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.267-277, 2008-05-01

歌声特有の音響特徴量と歌声知覚の関係を検討するために,歌声らしさの知覚モデルを提案する。このモデルは,「歌声らしさという聴覚印象が複数の基本的な心理的特徴の知覚に起因する」という仮説のもと,歌声らしさと音響特徴量の対応関係の間に基本的な心理的特徴を介した3層で構成される階層構造モデルである。第1層(歌声らしさ)と第2層(基本的な心理的特徴)の関係については,多次元尺度構成法と重回帰分析によって調査した。第2層と第3層(音響特徴量)の関係については, STRAIGHTを用いた音響分析・合成と心理物理実験によって調査した。その結果, "揺れ," "響き"といった基本的な心理的特徴が歌声らしさの聴覚印象に大きく寄与しており,両者の聴覚印象には基本周波数の準周期的な振動成分であるヴィブラートとそれに同期したホルマントの振幅変調成分,及び3kHz付近の顕著なスペクトルピーク成分と同帯域の強い高調波成分がそれぞれ寄与していることが明らかとなった。更に,これらの音響特徴量を話声に付与することで歌声らしさの聴覚印象が向上する結果を得た。以上から,歌声らしさの知覚モデルを構築することで,歌声知覚における歌声特有の音響特徴量の役割について詳細に検討することが可能であることを示した。
著者
園 信太郎
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.1-2, 2010-09-09

根元事象の定義を反省してみた。
著者
高嶋 真之 大沼 春子 尹 景慧 淡路 佳奈実 川村 睦月 杉谷 真実 田宮 弘貴 松尾 奈緒 篠原 岳司
出版者
北海道大学大学院教育学研究院 教育行政学研究室・学校経営論研究室
雑誌
公教育システム研究
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-27, 2019-09-30

本稿は、北海道奥尻高等学校(以下、奥尻高校)の「町立化」に伴う変化を、教職員、生徒、地域住民へのインタビューより明らかにし、考察を加えた調査研究報告である。北海道南西部の奥尻島にある奥尻町は、町内の北海道立奥尻高校を2016年4月に町立移管した。この奥尻町の決定は、わが国において急激に進行する過疎化と人口減少、そしてそれに伴う郡部の高校の小規模化と存続の危機に対し、地元の自治体(主に町村)が高校経営の主導権を持ち、その存続と変革の道筋を拓くものと捉えられる。一方、奥尻高校が町立移管されたことに伴い、その高校教育にいかなる変化が起きるのかは、町の教育行財政および高校の学校経営の観点から追究されたい間いである。 今日の研究動向を概観してみると、高等学校の学校設置者移管に伴う当該自治体と学校経営の変化に焦点を当てた研究は、事例が稀少であることも重なり、決して多いとは言えない。「移管」という地方教育行政の政策選択について奥尻や他の事例に基づき検討したもの(小入羽・本多 2018、国立教育政策研究所 2019:104-115)や、高校を核とする今日的な地方創生のあり方として奥尻高校を事例に検討するもの(徳久 2018)が見られるが、それらは主として地方自治体ならびに教育行財政の観点で研究されたものであることから、高校の学校経営のリアリティについては焦点があたらないままである。 一方、小規模高校や町村立高校の研究は、島根県や鹿児島県の離島、そして北海道の郡部において小規模化する高校をその地域の持続的な発展や地元人材の育成と今日的な地方創生施策との関連で論じる研究(宮ロ・池・山本 2014、山内・岩本・田中 2015、樋田・樋田 2018)が見られる他、北海道大学の研究チームでも北海道北西部の天売島に存立する羽幌町立北海道天売高等学校と天売島の地域おこし実践との関係について調査研究をおこなってきた(高嶋・大沼・篠原他 2017)。島根県の海士町と島根県立隠岐島前高校の歩みを紹介する山内・岩本・田中による『末来を変えた島の学校』(岩波書店、2015年)は、研究としてまとめられたものではないが、町と高校が島留学生を迎え入れ変革の道を歩む過程を実際の生徒たちの学習と生活の様子から詳細に描かれており、本調査研究を進める上でも特に参考となったものである。 ただし、過疎地域の小規模高校とその存立自治体が抱える事情は多様であり、それぞれに固有の文脈を有していると考えられることから、上記の図書や文献等に留まらず複数の事例に視野を広げ、質的調査によって教職員や生徒らの声に基づく事例研究を積み重ねていく必要があるだろう。なにより、今日のわが国においては、人ロ減少社会における地域の持続的発展と学習権保障の課題を検討することは喫緊の課題であり、本調査は、奥尻島と奥尻高校が経験する高校の町立化が地方創生と高校教育にいかなる影響をもたらしたかを問うことで、国内の共通問題に対する一定の示唆をもたらせるものと考えている。 そこで本稿では、町立移管の後に様々な取り組みが進められていく奥尻高校の教職員、生徒、地域住民へのインタビューを行い、奥尻高校と奥尻町の変化の実態に迫ってみることにしたい。なお、町立移管の政策選択とその行財政の過程は別稿で著すこととする。 なお、本稿では、町立移管と「町立化」を次の意味で使い分ける。町立移管は、移管決定後から実際に移管が行われた時点までの過程を表し、「町立化」は町立移管後の町立高校としての歩みを含めた町立奥尻高校の末完のプロジェクトの総体を表している。
著者
北川 佳子
出版者
Waseda University
巻号頁・発行日
2003-03

制度:新 ; 文部省報告番号:甲1754号 ; 学位の種類:博士(工学) ; 授与年月日:2003/3/6 ; 早大学位記番号:新3517
著者
鈴木 あいり
出版者
酪農学園大学
巻号頁・発行日
pp.1-34, 2018

Endangered costal plants and insects inhabits in Lower Ishikari River, Hokkaido. However, non-native frog, Japanese toad (Bufo japonicus formosus) was introduced into Asahikawa city in 1980, and it was spread the distribution along Ishikari River Basin recently. The toad was firstly found at lower Ishikari River Estuary in 2005, and the established population was confirmed in 2011. Because this invasive toad preys on the above-ground insects in other areas of Hokkaido, it is believed that costal ecosystem of Ishikari Estuary is facing a serious ecological threaty. This study aims to assess the predation impacts of Bufo japonicus formosus by examining their diet composition. And the breeding season Bufo japonicus formosus capture method use large pitfalls and drift fence. Prey species obtained from stomach contents of Bufo japonicus formosus was classified into 16 families of 13 orders among 5 classes. We observed 291 prey species. Grasshoppers weevil families were the highest stomach content and ants and bees also were composed of stomach content at significant level.11 species of ants od which included seed disposal of costal flowers such as Viola grayi and Formica yessensis, were preyed by the toad. This result might show predation influence and impacts of long-term costal landscape and biodiversity. This study also harvested 1,067 Bufo japonicus formosus from April 16 of 2017 to May 22 with drift-fenced pitfall traps. And there were more harvesting at 2018 (from April 19 of 2018 to May 22) with 2,271 toads 1,445 toads were mark-recaptured; however, onlys 422 (29.2%) were recaptured. . . This 2 years research harvested total of 3,338 Bufo japonicus formosus, and more than 90 % were captured in the short period of time (May 1 May 5). Because this short peak, a breeding season of Bufo japonicus formosus at lower Ishikari River might be shorter than other areas. It's important to conduct continual disinfestation activity using a drift fence and pitfall trap and monitoring investigation in the Ishikari River estuary area where indirect effects on the coastal ecosystem are suggested, from now on and link it to the distribution spread, the number of individuals reduction and explosive increased prevention.
著者
島村 潤一郎
出版者
金沢大学附属高等学校
雑誌
高校教育研究 (ISSN:02875233)
巻号頁・発行日
no.70, pp.17-26, 2019-03

どうして日本人はこんなに長時間労働が好きなのだろうかと首を傾げることが多い。 さらに理解できないことがある。結果が出なかった時,「頑張ったから仕方がない」というような言い訳が出てくる点だ。 「頑張る ・ 頑張らない」と「結果が出る ・ 出ない」を交差させると四つの象限ができあがる。 一番いい 組み合わせは「頑張ってない ・結果が出る」で,最低の組み合わせは「頑張る・結果が出ない」である。 いかに効率よく生徒に国語の力をつけさせるかという試みをまとめたものが本稿である。
著者
村田 麻里子 パスキエ オレリアン 山中 千恵 伊藤 遊
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.57-81, 2014-10-31

This paper reports on the special exhibition of Korean comics ‘Flowers that Never Wilt’ at the 2014 Angouleme International Comics Festival. It also analyzes the ‘politics’ involved in the festival site and the exhibition display. The exhibition, which dealt with the issues of ‘comfort women’, raised disputes among the three involved countries: Korea, Japan and France. This paper tries to carefully examine the cause of these disputes, and to clarify the differences or the gaps in their perspectives towards exhibiting such political issues.本稿は、フランス・アングレーム市で毎年開催されるアングレーム国際BDフェスティバルに出展された韓国漫画の展覧会「枯れない花」展を、現場のレポートを交えて概観するとともに、そこにおいて顕在化した場と展示の〈政治性〉についての考察を行うものである。これによって、日韓仏三国には、〈政治性〉をめぐる解釈に齟齬があること、またここには日韓間の問題だけではなく、ヨーロッパからみた「オリエント」としてのアジアという問題も、影を落としていることが明らかになった。
著者
阪田 卓洋 SAKATA Takahiro
出版者
筑波大学附属駒場中・高等学校研究部
雑誌
筑波大学附属駒場論集 = Bulletin of Junior & Senior High School at Komaba, University of Tsukuba (ISSN:13470817)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.191-201, 2018-03

英語教育の世界では,関係節の指導法を巡って議論がなされてきたが,その多くが制限用法の関係節についてであり,非制限用法の関係節に関してはあまり議論されていないように思われる。本稿では,非制限用法に焦点を当て,英語の修飾構造の特質を整理しながらその指導法を検討する。結論としては,①日本語を用いて非制限用法の感覚を掴ませること,②非制限用法を英語の修飾構造という大枠の中で体系的に位置づけること,が肝要であると思われる。また,英語の関係節・非制限用法には現在の英文法参考書で扱いきれていない言語現象があることも最後に付け加えておきたい。
著者
上垣 渉 佐藤 あつ子 UEGAKI Wataru SATO Atsuko
出版者
三重大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
三重大学教育学部附属教育実践総合センター紀要 (ISSN:13466542)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.57-66, 2000-03-01

現行の中学校数学科の学習指導においては、3年生の初期の段階で「平方根」の学習が行なわれている。平方根は、生徒がそれ以前の学習によって獲得してきた数概念である有理数とは異なる数概念としての無理数の一例であって、生徒にとっては認識の飛躍が要求される内容の一つであるとも言える。本研究は、そのような無理数概念の形成を平方根の指導を通して実現するために、数学史からの知見を活用しつつ、その指導のあり方を考察しようとするものである。
著者
黒田 勇
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-29, 2019-10-31

This essay aims to reveal the history of the sports business and suburban development operated by Hanshin railway and two newspaper companies, The Osaka Asahi and The Osaka Mainichi, in the early 20th century. These two sectors of the new industries developed rapidly as cultural industry by stimulating people's desire on the suburban life and leisure activity.