著者
八島 章博 鈴木 丈一郎 田村 紗恵子 松島 友二 五味 一博 新井 髙
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.159-167, 2015-12-28 (Released:2015-12-29)
参考文献数
34

近年,音波歯ブラシが一般に普及している。音波歯ブラシの利点は高振動数によりプラーク除去効率に優れ,歯周ポケット内細菌に影響を与えていると考えられる。しかし,音波歯ブラシの歯周ポケット内細菌への影響を評価した研究は少ない。本研究では,音波歯ブラシのプラーク除去効果と臨床パラメータの変化,歯周ポケット内細菌への影響について評価した。振動数の異なる音波歯ブラシ3種と手用ブラシを無作為に40名の被験者に割り振り,使用前,2, 4週後に臨床パラメータ(Probing Pocket Depth, Gingival Bleeding Index, Gingival Index)とPlaque Control Recordを評価した。歯周ポケット内細菌はPCR-Invader法により総菌数と歯周病原細菌数を評価した。全歯ブラシで,ベースライン時に比べ,4週後のPlaque Control Recordと臨床パラメータで改善傾向を認めた。歯周ポケット内細菌は,いずれの歯ブラシでも総菌数の顕著な変化はみられなかったが,歯周病原細菌の中には音波歯ブラシの使用によって減少傾向を示す細菌種も存在した。以上より,どの歯ブラシを用いても縁上プラークの減少と臨床パラメータの改善が認められ,一定の効果を有することが示された。また,音波歯ブラシは,歯周ポケット内細菌叢に影響を与える可能性のあることが示唆された。

3 0 0 0 OA 師範音楽

著者
文部省 編
出版者
文部省
巻号頁・発行日
vol.本科用 巻1, 1946
著者
中村 俊一郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.367-375, 1972 (Released:2007-07-05)
参考文献数
20
被引用文献数
5 6

1970, 71年の2年にわたり, イチゴの10余品種を採種してその発芽性を調査した.1. どの品種も強い光感性を示し, 暗黒下の発芽は不良であつた. 発芽温度については変温が著しく促進効果を示した. 恒温では25°C付近が適温であつたが, 20°Cから30°Cにわたつて比較的幅広い適温帯があつた.2. 採種後約1年間では休眠性の変化はみられず, 各品種とも強い休眠性を維持した.3. 薬品処理では硝酸カリが最も効果を示し, エスレルおよびジベレリンも相当程度有効であつたが, チオ尿素はわずかな効果しか示さなかつた.4. 低温処理は短期間では効果がなく, 1か月以上の処理が有効で, 3か月間処理すると大きな発芽促進効果を示した.5. 濃硫酸処理を行なつて種皮を腐蝕すると発芽が相当に促進され, イチゴ種子の休眠には種皮が大きな役割をもつていると考えられる.6. 近赤外光は強い発芽抑制作用を示し, 変温を行なつても発芽率は0%であつた. ただし低温処理は近赤外光の抑制作用に相当程度うちかつことができた.7. 種子は乾燥または低温下で良好に貯蔵された.
著者
by Tosihusa Kimura
出版者
[s.n.]
巻号頁・発行日
1973
著者
佐藤 友梨 サトウ ユリ SATO Yuri
出版者
西南学院大学大学院
雑誌
西南学院大学大学院研究論集 (ISSN:21895481)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.123-134, 2016-02

エーリッヒ・フロムはその著書『自由であるということ』 の中で旧約聖書における神・人・歴史観を再解釈し、人間存在における自由という概念を提起している。フロムの代表作は1941年に刊行された『自由からの逃走』であり一貫して自由ということが主題となっている。第一次世界大戦後古い君主政治から新しいデモクラシーに代わって、人々は自由を手に入れたはずなのに、またしても新しい強力な権力〈ファシズム〉に服従し始めたのは何故かという問題意識がフロムの著作には一貫して流れている。フロムは他にも様々な著作を刊行しているが、それらは基本的に『自由からの逃走』で示された議論を展開したものとして理解できる。つまり、1966年に刊行された『自由であるということ』におけるフロムの議論は、『自由からの逃走』で示された議論を、旧約聖書というユダヤ教の書物から再解釈することによって発展または変容させたものであると考えられる。この意味において、『自由であるということ』を旧約の妥当な解釈を行った著作であるか否かを議論することは有意義ではない。しかし、フロムの議論は社会心理学的な面が注目されがちであるが、フロムは宗教と精神分析に独自の接近法で考察を行っているため、フロムの自由の議論においては宗教的側面に着目することが可能である。以上のことから、本稿ではフロムの社会学的及び精神分析学的側面を認めつつも、実存論的次元を明らかとするために、人間の精神の深部に迫る宗教的側面に特に注目する。
著者
長岡 正範
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.133-146, 2004-06-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
3

救急病院に入院した脳卒中患者を例に, リハビリテーションの進め方を説明した. リハビリテーションは, 個人に, 彼らの機能障害 (生理学的あるいは解剖学的な欠損や障害) および環境面の制約に対応して, 身体・精神・社会・職業・趣味・教育の諸側面の潜在能力 (可能性) を十分に発展させることと定義されている. 現在は, 工学や種々の新技術により失われたものを再獲得することも可能性として議論されるようになっている. しかし, 目の前の困難や不安をどのように解決するかという問題は, 今, 直ちに解決されなければならない事柄である. リハビリテーションでは, 種々の職種が広くかかわって, 困難を少しでも軽減するような集団的なアプローチが採られている. 医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・臨床心理士・医療ソーシャルワーカーなどは主に, 医療を中心に関与する. 一方, 病院から出た後の社会における専門家も多い. 特に, 高齢化社会に対応して, 医療と福祉の連携を図るべく創設された介護保険によってさらに多くの職種が関与するようになっている. このような現状の中で, 直接患者に接する医師に求められる知識は, 専門家としての医学的知識のほかに, 疾病や傷害が直接もたらす機能的障害, 一人の個人としての能力の障害, 社会の一員として役割を演ずる上での障害など, 社会における人間として患者にかかわる諸問題に眼を向ける必要がある. このようなリハビリテーション医学の知識は, 従来の肢体不自由だけでなく, 感覚器障害 (眼・耳など) ・精神障害, その他の内部障害など医学の広い分野で必要なものである. 特定機能病院の限られた条件の中では, 急性期 (順天堂医院) から慢性期 (社会) への〈連続した医療ネットワーク〉を構築することがリハビリテーションの観点から重要である.
著者
髙橋 稔
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.106-113, 2018-10-31 (Released:2020-01-05)
参考文献数
21

臨床心理学の分野では,心理学的技法の効果を検証するために,しばしば一般にみられる虫や動物などの恐怖経験を対象としてアナログ研究を重ねてきた。本研究は,虫に対する自己評価式の恐怖経験評価尺度(以下,虫恐怖尺度)を作成し,信頼性と妥当性を確認することを目的とした。新たに作成した33項目からなる虫恐怖尺度を配布し,336名を分析対象とした。探索的因子分析および確認的因子分析の結果,虫恐怖尺度は11項目,1因子構造となった。虫恐怖尺度は内的整合性が高く,再検査信頼性も高かった(r=.88)。虫恐怖尺度とFQ-虫との相関はr=.67 であり,虫恐怖尺度とFQ-16(広場恐怖,血液・外傷恐怖,社会恐怖)との間ではr=.24~.34であった。また虫恐怖尺度とPRS-虫との間には有意な正の相関が確認された(r=.66~.72)が,PRS-小動物との間では有意な相関は確認されなかった(r=.19~.26)。本研究結果から,虫恐怖尺度は信頼性と妥当性を備えた尺度であることが示された。しかし,臨床群への応用については課題が残された。
著者
Shohei Yoshida Hayato Tada Tetsuo Nishikawa Tamami Nakagawa-Kamiya Takuya Nakahashi Kenji Sakai Kenji Sakata Masa-aki Kawashiri Masahito Yamada Masayuki Takamura
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
pp.3870-19, (Released:2019-12-26)
参考文献数
11

Transcatheter aortic valve implantation (TAVI) is widely accepted as the treatment for patient with severe aortic stenosis (AS) whose prognosis may be over one year; however, there is no consensus concerning extremely high-risk patients whose prognosis may not exceed one year. We herein report a highly frail patient with severe AS complicated with transthyretin-type cardiac amyloidosis who had a very poor prognosis. Given his condition, we treated him by percutaneous antegrade balloon aortic valvuloplasty (A-BAV) instead of TAVI. A-BAV may be a beneficial option for treating extremely high-risk severe AS patients, including those with cardiac amyloidosis.
著者
中島 啓
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.337-359, 2000-10-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
51
被引用文献数
1
著者
福井 次郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木史研究論文集 (ISSN:13495712)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.165-175, 2004

Jiun Masuda (1883-1947) was a bridge designer representing Japan who played an active part in the Showa period of prewar days from the end of Taisho period (1920th-1930th). However, few documents remain from that time, but Masuda has been known only to a small group of specialists. In Fall 2002, it became clear that many reports and drawings for bridges that Masuda designed are saved in the Public Works Research Institute. In this paper, the achievements of Masuda were reviewed through these new documents and the actual bridges he designed. The research clarified that besides the well known bridges, Masuda had designed about 20 more bridges, subway stations, docks, quay walls etc. Moreover, it was revealed that he worked with very capable staff, designed the bridge of a variety of structure types, etc. Finally, the future application of these documents was discussed.

3 0 0 0 OA 算術教科書

著者
藤沢利喜太郎 著
出版者
大日本図書
巻号頁・発行日
vol.下巻, 1896
著者
日野 克博
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.53_1, 2018 (Released:2019-01-18)

学習指導要領改訂を契機として、教職課程の質保証や教員の資質能力の向上を意図した教職課程の見直しが図られている。教員養成系大学では、教職課程コアカリキュラムに基づく再課程認定の手続きが進められており、学習指導要領の理解や具体的な授業場面を想定した授業設計等の知識や技能を身に付けるなど、「教科の指導法」科目の充実が期待されている。そこでは、「学習指導要領」「教材研究」「指導案作成」「模擬授業」等の内容をバランスよく指導することが求められており、その指導にあたっては、学問領域として「体育科教育学」が基盤になっていること、「体育科教育学」の種々の研究成果が指導内容に反映されていることが重要になってくる。しかし、「体育科教育学」の知見や成果をどのように反映させればいいか、各授業科目での達成基準との整合性、授業時間数等の条件、具体的な授業展開の方法など実践上の課題も少なくない。そこで、本シンポジウムでは、教職課程の見直しについて概説し、愛媛大学での「保健体育科教育法」の実践事例を紹介しながら、教員養成における「体育科教育学」の役割や指導のあり方について提案する。
著者
大谷 信介
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.471-484, 2003-03-31 (Released:2009-10-19)

社会調査は, 社会学者がおこなう学術調査以外にも実社会で多様にかつ多量に実施されている.市町村や中央省庁で実施される意識調査やマスコミが実施している世論調査等はその代表的なものである.しかしこれまでの社会学研究ではそれらにほとんど関心が示されてこなかったのが実情である.実社会で「社会調査がどのように実施され」それらが調査方法論の観点から「どのように評価できるのか」といった実態を正確に把握する作業は, 社会調査教育を提供している社会学にとって, 必要かつ重要な仕事といえるだろう.このような視点から, われわれは大阪府44市町村が総合計画策定のために実施した市民意識調査に関する聞き取り調査, およびそれらの調査票の質的評価に関する内容分析を実施した.そこで明らかになったのは, 社会調査論の観点からはとても看過できない問題を抱えた市民意識調査の深刻な実態であった.それらの詳細な実態については, すでに大谷信介編著『これでいいのか市民意識調査』 (ミネルヴァ書房2002年) としてまとめている.そこで本稿では, この調査で明らかとなった実態の中で, 特に社会学会として注目しなければならないであろう課題という視点から問題点を整理していきたい.
著者
中島 正夫
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.515-525, 2011 (Released:2014-06-06)
参考文献数
20
被引用文献数
2

目的 既存の資料に記載されている乳幼児体力手帳制度,妊産婦手帳制度,母子手帳制度,母子健康手帳制度の政策意図などを整理し,各手帳制度の公衆衛生行政上の意義について考察することである。方法 厚生省関係通知,関連書籍,および妊産婦手帳制度等の企画立案に従事された瀬木三雄氏の著作物等により,各手帳制度の政策意図などを整理,検討する。結果 (1)乳幼児体力手帳制度:根拠は国民体力法(1942年改正)。1945年度まで実施。乳幼児体力検査受診者に手帳を交付。保健医療従事者が記載した記録を当事者が携帯,その後の保健指導等に役立てた。(2)妊産婦手帳制度:根拠は妊産婦手帳規程(1942年)。妊娠した者が医師または助産婦の証明書を付して地方長官に届出(義務)をすることにより手帳を交付。保健医療従事者が記載した健診等の記録を当事者が携帯,その後の保健指導等に役立てた。一定の妊産保健情報を提供。妊産育児に必要な物資の配給手帳としても利用。(3)母子手帳制度:根拠は児童福祉法(1948年)。(2)を拡充し乳幼児まで対象。手帳交付手続き等は基本的に(2)と同様。乳幼児を対象とした一定の保健情報も追加。配給手帳としての運用は1953年 3 月まで。(4)母子健康手帳制度:根拠は母子保健法(1966年)。妊娠の届出は勧奨(医師等の証明書は不要)とされた。当事者による記録の記載が明確化,また様々な母子保健情報が追加された。結論 各手帳制度の公衆衛生行政上の意義について次のとおり考える。(1)母子保健対象者の把握:乳幼児体力手帳制度以外すべて,(2)妊産婦を早期に義務として医療に結びつけること:妊産婦手帳制度,母子手帳制度,(3)保健医療従事者および当事者が記載した各種記録を当事者が携帯し,その後の的確な支援等に結びつけること:基本的にすべての手帳制度(当事者による記録の記載は母子健康手帳制度で明確化),(4)当事者•家族による妊産婦•乳幼児の健康管理を促すこと:①保健医療従事者が記載した各種記録を当事者が保持;すべての手帳制度,②母子保健情報の提供;乳幼児体力手帳制度以外すべて,③当事者による記録の記載;母子健康手帳制度で明確化,(5)配給手帳として母子栄養を維持すること:妊産婦手帳制度,母子手帳制度。  以上のことから,わが国の手帳制度は,戦時下において主に父権的制度として制定され,その後の社会情勢の変化や保健医療体制の整備などに伴い,当事者の自発的な健康管理を期待する制度へと成熟していったと考えられる。
著者
上野 俊一
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.163-198, 1985

オニメクラチビゴミムシ群 (group of Trechiama oni) の甲虫類, 主として中国山地の東部と四国北東部とに分布し, 淡路島南部と和泉山脈にもそれぞれ1種が生息する。日本海岸から瀬戸内海の南側まで拡がっているので, この種の昆虫群としてはかなり例外的な分布域をもつことになる。本来は地下浅層にすむものらしいが, 石灰洞など自然の洞窟や鉱山の廃坑からも見つかっている。既知種は17あり, 新たに6種を追加記載した。これら23種のすべてを文献とともに列挙し, 区別点を検索表を検索表で示すとともに, 既知種のうちで原記載の不完全な2種の再記載も行った。 この種群は3亜群に大別され, そのうちのふたつはさらに2∿3の系列に次のように区分される。 1) サトウメクラチビゴミムシ亜群 a) ゾウズサンメクラチビゴミムシ系 ムラカミメクラチビゴミムシ T. murakamii S. UENO, ゾウズサンメクラチビゴミムシ T. instabilis S. UENO b) サトウメクラチビゴミムシ系 フジワラメクラチビゴミムシ T. fujiwaraorum S. UENO, オノコロメクラチビゴミムシ T. onocoro S. UENO, サトウメクラチビゴミムシ T. satoui S. UENO, シロトリメクラチビゴミムシ T. tenuis S. UENO 2) オニメクラチビゴミムシ亜群 a) フジタメクラチビゴミムシ系 フジタメクラチビゴミムシ T. fujitai S. UENO, ワカスギメクラチビゴミムシ T. moritai S. UENO, キンショウメクラチビゴミムシ T. spinulifer S. UENO, マチオクメクラチビゴミムシ T. cuspidatus S. UENO, トノミネメクラチビゴミムシ T. crassilobatus S. UENO, ヒウラメクラチビゴミムシ T. hiurai S. UENO, ユキコメクラチビゴミムシ T. yukikoae S. UENO(この種は別系列のものである可能性が強い) b) オニメクラチビゴミムシ系 オニメクラチビゴミムシ T. oni S. UENO c) コスゲメクラチビゴミムシ系 タンゴメクラチビゴミムシ T. tangonis S. UENO, シュテンメクラチビゴミムシ T. shuten S. UENO, イチジマメクラチビゴミムシ T. silicicola S. UENO, コスゲメクラチビゴミムシ T. kosugei S. UENO, ムコガワメクラチビゴミムシ T. expectatus S. UENO, イズミメクラチビゴミムシ T. dissitus S. UENO, テンガンメクラチビゴミムシ T. yoshiakii S. UENO, ノトメクラチビゴミムシ T. notoi S. UENO 3) タイシャクメクラチビゴミムシ亜群 a) タイシャクメクラチビゴミムシ系 タイシャクメクラチビゴミムシ T. insolitus S. UENO これらのすべてが同一の祖先から分化したものかどうか, という点には多少問題があるが, いずれもヨシイメクラチビゴミムシ群 (group of T. ohshimai) のうちから派生したことは確かなので, ここでは単一の種群の亜群として取り扱った。 最初の亜群は, 四国の北東部と淡路島南部とに分布し, 吉野川本流の右岸には侵入していない。このことからみて, 中国山地の東部から瀬戸内海を渡って四国へ移住した祖先型のチビゴミムシは, おそらく讃岐山脈を中心に分化したものと推察される。次の亜群は, 主として中国山地の東部に分布し, 東からコスゲメクラチビゴミムシ系, フジタメクラチビゴミムシ系, オニメクラチビゴミムシ系の順に拡がっている。系列間の相互係は複雑で, 分化の過程を追跡するのも容易ではないが, 少なくともオニメクラチビゴミムシが, 2番めの系列のうちから分化したことは確かだろう。最後のタイシャクメクラチビゴミムシ亜群は, 上翅の剛毛式がほかの亜群の場合と大きく異なり, 分布の様子も遺存的なので, かなり古い時代から隔離されてきたものであるにちがいない。 この種群の甲虫類の調査はまだ不十分で, とくにオニメクラチビゴミムシ亜群に属する系列間の空隙を埋める地域の様子がよくわかっていない。将来, 千ヶ峰山地, 西丹山地西部, 播但高原北部, 津山盆地周辺の山地などからこの亜群メクラチビゴミムシ類が発見されれば, 系統関係も分布の過程も, より高い信頼性をもって解析できるようになるだろう。