- 著者
-
村上 祐一
- 出版者
- 電気通信大学
- 巻号頁・発行日
- 2013-03-25
レーザ加工では,レーザ光線をレンズで集光し,発生する熱によって材料を融解して加工するため,加工面には大きな熱影響が残る.また,レーザ切断では被加工材が急熱急冷されるため複雑な相変態が生じる.特に高張力鋼鈑などの炭素が含まれる材料において,マルテンサイト変態は体積膨張を伴い加工面付近での熱応力分布に強く影響を及ぼす.このため被加工母材には「ねじれ」や「反り」といった現象が生じ,生産加工分野において問題となっている.レーザ加工について,現在まで切断品質に及ぼすレーザ加工条件の影響について,数多くの研究が行われているが,レーザ切断における被加工母材の特性に注目した研究はあまり行われていない.そこで本研究では,これまで研究の対象であった薄板材(1.2mm)に対して,厚板材(3,6mm)を対象として,レーザ切断の影響が残留応力,温度分布に及ぼす影響を調査した.また,数値解析においても残留応力と温度分布の解析を行い熱影響の挙動把握を試みた.さらに,加工条件のみの変更では残留応力の低減に限界があるため,レベラ加工を用いずに残留応力を低減できるかを試みた.1.出力と速度が及ぼす熱影響切断速度が遅い場合は被加工母材への入熱量が増加し,熱影響が強くなってしまうため切断速度はなるべく速くするべきである.2.レーザ切断における数値解析切断速度が遅い場合,被加工母材に生じる熱分布の高温領域が広くなることにより引張応力の影響が強くなることが分かった.また,温度履歴に伴う相変態を考慮することでより正確な熱-塑性解析が行えることを示した.3.残留応力の抑制法の検討板材を圧延することによってレーザ切断後に近い残留応力を発生させることができた.残留応力を発生させた板を圧縮することによって,残留応力を低減させることができた.