- 著者
-
高橋 大輔
- 出版者
- 日本農業経済学会
- 雑誌
- 農業経済研究 (ISSN:03873234)
- 巻号頁・発行日
- vol.87, no.1, pp.9-22, 2015-06-25 (Released:2017-07-06)
- 参考文献数
- 45
本稿は,速水佑次郎によって提唱された「農業調整問題」の観点から,日本農業の構造調整と技術進歩・価格政策・農地政策との関わりについての議論を行う.主な結論は以下のとおりである。第1に,生物化学的技術進歩が需要の壁によって停滞する中で,機械学的技術進歩によって生まれた規模の経済性が,農地流動化の制約によって労働土地比の減少につながらなかった.第2に,米の生産調整をはじめとする現行の価格政策は,所得移転の効率性が低い上に構造調整を阻害してきた.第3に,構造調整を進める上で中心的な論点は農地政策であり,農地の取引費用を考える上では公式・非公式の制度の役割について考慮するべきである.アジアで最初に先進国段階に達した日本は,農業調整問題の解決策について,ポジティブな実証研究と政策提言を発信するべきである.