著者
稲村 友彦 岩崎 一晴 齋藤 仁 中山 大地 泉 岳樹 松山 洋
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.123-138, 2009-03-31

阿蘇山の特徴的な地形(中央火口丘,阿蘇外輪山および立野火口瀬)が,立野火口瀬の西で起こる局地風「まつぼり風」に及ぼす影響を,メソ気象モデル(RAMS)に現実の地形と仮想的な地形を与えることによって調べ,まつぼり風発生のメカニズムを考察した.まつぼり風は南東の地衡風が吹くときに発生しやすく,発生が確認された1999年4月17〜18日を対象に実験を行ったところ,現実の地形の実験で,立野火口瀬周辺にはおろし風や地峡風が出現した.仮想的な地形の実験との比較により,まつぼり風を発生させる主要な原因は,立野火口瀬南側の外輪山によるおろし風であり,立野火口瀬による地峡風効果と中央火口丘によるおろし風が,強風をさらに強めていることが示唆された.また,下層の東寄りの風と上層の西寄りの風との間,高度1500m付近に現れる東西風速0m/sの層により形成された臨界層が,おろし風の強化に寄与していると考えられた.
著者
道場 親信
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.240-258, 2006-09-30
被引用文献数
3

本稿では, 社会運動史の視点から1960-70年代の「市民運動」「住民運動」がもっている歴史的な意味を再検証するとともに, それが近年の「市民社会」論に対して不可欠の問題提起を含んでいることを明らかにする.その際, 近年の社会運動研究の一部に存在する, 運動史の誤った「段階論」的理解を批判的に取り上げるとともに, 同時代の論議の場に差し戻して検証することで, その "誤り" が, 「公共性」「市民社会」を論じるあり方にもバイアスを与えていることを論じていきたい.その上で, これらの誤解の背後には, 社会運動理解の文脈の歴史的な断絶, 論議の中断が存在することを論じる.1960-70年代の社会運動がもっていた運動主体をめぐる論議の蓄積は, 今日の社会運動, また「市民社会」や「公共性」のあり方をめぐる論議の中で正当な評価を得ているとは必ずしも言い難い.この点につき本稿では, 当時の議論の水準を, とりわけ「住民運動」と呼ばれる運動の展開に即して再確認するとともに, 「地域エゴイズム」というキーワードを手がかりに, 運動文脈の適切な理解を妨げる認識論的な問題が当時と今日を貫いて存在していることを明らかにしたい.
著者
花房 真二
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.974-975, 2007-11-30
被引用文献数
1
著者
菅 道子
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戦時期の音楽教育実践史の特質として次の点を明らかにした簡易楽器の指導は、1930年代に東京市内尋常小学校の教師たちによって着手された。それらは玩具的楽器による音楽的自己表現という児童中心主義の思想とともに、次第に戦時行事の活性化という意図を含んで拡大していった大阪府堺市の佐藤吉五郎によって推進された和音感教育は、音楽の基礎的能力の育成とともに、敵の飛行機や潜水艦の音の聴き分けるといった国防教育としての新しい位置づけが生まれたこれら音楽教育実践の普及には雑誌の発行やSPレコード、映画などメディアの活用が不可欠な条件となっていた
著者
西田 香利 山本 理恵 仲村 美幸 齋藤 誠司 今村 徹
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.205-211, 2011-06-30 (Released:2012-07-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

発症最初期にみられた anarthria による不規則な構音の歪みや置換の改善とともに,運動障害性構音障害や他の失語症状を伴わない純粋な foreign accent syndrome (FAS) を呈し,その後症状がほぼ消失した症例を報告した。症例は 47 歳,矯正右利きで,中枢性右顔面麻痺を伴う右片麻痺と呂律困難で発症した。頭部 MRI では中心前回中・下部を含む左前頭葉に梗塞を認めた。発症 5 日時点で見られた発話における音の不規則な歪み,置換や語頭音の繰り返しは発症 2 週後までに軽減,消失し,その一方で,自発話や単語,短文の音読,復唱時に prosody 障害が目立つようになった。すなわち,単語内のアクセントの移動や 1 単語における 2 単位のアクセントなどが頻発し,発話速度の増加もみられた。これらの特徴は患者の発話の聞き手に外国人様という印象を抱かせた。この prosody 障害は発症 7 ヵ月までに軽減,消失した。本症例の prosody 障害は,anarthria に随伴する prosody の平板化と発話速度の減少を主体とするタイプとも,右半球損傷でみられる感情表現の prosody 障害を主体とするタイプとも異なっており,平板化とは逆方向の prosody 障害や,発話速度の性急さなどの特徴から FAS と考えられた。
著者
田村 秀行 坂根 茂幸 富田 文明 横矢 直和 金子 正秀 坂上 勝彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.321-328, 1982-05-15
被引用文献数
12

画像処理アルゴリズムをプログラムとして収集・蓄積し ポータブルなソフトウェアとして流通させるための仕様を検討し ソフトウェア・パッケージSPIDERを開発した.従来の画像処理ソフトウェアのほとんどは ハードウェア・システムに依存したプログラミングや 汎用性のない設計思想によって移植性を欠いている.この要因を分析し 現時点でのアルゴリズム収集と高い移植性を実現するプログラム仕様を採用した.画像処理プログラムはすべて入出力操作(ファイル・アクセス 画像用周辺機器駆動等)に独立なFORTRAN サブルーチンとする他 SPIDER仕様では画像処理概念の整理 コーディング上の制約 コメント文やマニュアルの記法も規定した.その結果 代表的な画像処理アルゴリズムのサブルーチン・ライブラリとその管理プログラム群 計442個のプログラムからなるパッケージを能率よく製作できた.このパッケージは きわめて高いポータピリティを有し すでに約120の研究グループで利用されている.
著者
石前 禎幸
出版者
岩波書店
雑誌
思想 (ISSN:03862755)
巻号頁・発行日
no.751, pp.p61-83, 1987-01
著者
佐々木 英洋
出版者
大手前大学・大手前短期大学
雑誌
大手前短期大学研究集録 (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.29-41, 2007
被引用文献数
1

近年の「ゆとり教育」の方針により小・中学校、高校における各科目の指導実施要綱の内容が以前より少なくなっているなどの影響から、大学・短期大学に入学後、それ以前の基礎学力の欠如により、授業の理解が追いつかない、授業についていけないという学生が多く授業運営に支障をきたす等の問題が全国の大学・短期大学で多く見られている。本学(大手前短期大学)でもそういった事情は例外ではなく、特に基礎学力の低下が就職活動等にも影響を及ぼしており、基本的な知識を問う筆記試験等を学生がクリアできず就職率に影響が出るなど、教育、就職の両面から基礎学力を補完するための対策をとる必要に迫られていた。そこで本学では平成19年度入学生対象に、小・中学の範囲の計算問題を理解させ、解くことができるようにさせるために数学(計算問題)の入学前・リメディアル(補完)教育を実施した。平成19年春学期(4月〜7月)に行ったその実施内容と補習授業への出席率等の結果について報告する。
著者
Yejin Mok Soyoung Won Heejin Kimm Chungmo Nam Heechoul Ohrr Sun Ha Jee
出版者
日本疫学会
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
pp.JE20110110, (Released:2012-07-28)
参考文献数
39
被引用文献数
6 14

Background: Physical activity decreases deaths from cardiovascular disease and other causes; however, it is unclear whether physical activity is associated with cancer incidence and death in Asian populations.Methods: Data from 59 636 Koreans aged 30 to 93 years were collected using a questionnaire and medical examination at the Severance Hospital Health Promotion Center between 1994 and 2004. Study participants were followed for a mean duration of 10.3 years.Results: In the exercising group, the multivariate Cox proportional hazards model showed a lower risk of cancer death (hazard ratio [HR] = 0.72, 95% CI = 0.62–0.85) in men but not in women. Those who exercised, as compared with those who did not, had lower risks of all-cause death (men: HR = 0.68, 95% CI = 0.60–0.76; women: HR = 0.65, 95% CI = 0.53–0.79) and noncancer death (men: 0.63, 0.53–0.75; women: 0.52, 0.39–0.69). Physical activity was inversely associated with risk of noncancer death among men and women.Conclusions: Physical activity was associated with lower risks of cancer death and noncancer death.