著者
寺田 貴美代
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.49-54, 2019-11-29

本稿は、多文化ソーシャルワークに関する国内の研究論文を文献調査によって整理し、その定義やアプローチの発展についてまとめたものであり、個別領域における適用可能性を把握し、多文化ソーシャルワークを活用する上での課題を明確化することを目的としている。具体的方法としては、日本において主流となっている多文化ソーシャルワークの定義を紹介した上で、この定義に基づくアプローチの発展についてまとめ、難民支援や就学支援などの個別領域におけるこのアプローチの適用可能性を整理した。さらに、多文化ソーシャルワークを活用する際の課題についてまとめ、特にカルチュラル・コンピテンスに基づく支援の重要性が指摘されていることを明らかにした。これらの結果から、多文化ソーシャルワークはカルチュラル・コンピテンスに基づいて、多様な背景を持つ人々への支援を視野に入れたアプローチとしてのさらなる発展が期待されていることが示唆された。また「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」において、社会正義や人権、集団的責任と並ぶソーシャルワークの中核的原理の一つとして多様性の尊重が位置づけられているように、日本でもより広義の多様性に対応し、クライエントの社会的背景に配慮した支援体制の構築に寄与するよう期待されていることが明らかとなった。症例・事例・調査報告
著者
白石 明継 熊代 功児
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0308, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】わが国の「大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン」によると,大腿骨近位部骨折患者の入院中の死亡原因となる合併症は肺炎が最多で,30~44%を占めるとされる。また,金丸らは大腿骨近位部骨折患者における術後1年以内の死因のうち,術後に発症した合併症の死亡率が術前に比べて有意に高く,その原因として肺炎が最も多いと報告している。そのため,術後の肺炎予防は生命予後において非常に重要である。先行研究では大腿骨近位部骨折の手術待期日数が合併症と関連があるとされる一方,早期手術と術後合併症は関連がないとする報告も散見され,術後の肺炎発症の要因について一定の見解が得られていない。そこで本研究の目的は大腿骨近位部骨折患者における術後の肺炎発症に影響する因子を検討することとした。【方法】対象は2013年1月~2016年6月に大腿骨近位部骨折にて当院整形外科に入院した65歳以上の患者459例のうち,術前に肺炎を発症した23例を除いた436例とした。対象者を肺炎非発症群(非発症群)422例,術後肺炎発症群(術後発症群)14例に分類し,患者要因として年齢,性別,神経学的疾患既往の有無,認知症の有無,呼吸器疾患既往の有無,医学的要因として受傷から手術までの日数(手術待期日数),血中ヘモグロビン濃度(Hb値),血清タンパク質値(TP値),血清アルブミン値(Alb値),理学療法要因として入院から理学療法開始までの日数(PT開始日数),手術から端座位開始までの日数(術後座位開始日数)を後方視的に調査した。統計解析は,非発症群と術後発症群間の比較を性別,神経学的疾患既往の有無,認知症の有無,呼吸器疾患既往の有無はχ2検定,年齢,手術待期日数,Hb値,TP値,Alb値,PT開始日数,術後座位開始日数は対応のないt検定またはMann-Whitney検定を用いて実施した。統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】非発症群と術後発症群の比較の結果,術後発症群で有意に男性が多く(p<0.05),Alb値が低かった(p<0.05)。【結論】本研究におけるAlb値は入院時に調査した値であり,骨折受傷前の状態を反映していると考えられる。金原らは栄養状態と生体防御機構は密接に関わり合い,低栄養状態下では免疫能が低下すると報告している。そのため,本研究においても低栄養状態で入院した患者は感染に対する抵抗力が弱く,肺炎発症のリスクが高くなったと考える。本研究では理学療法で介入可能な要因は抽出されなかった。しかし,術後座位開始日数の平均値は非発症群2.2日,術後発症群3.6日であった。肺炎発症の要因として,長時間の仰臥位が報告されており,男性で入院時より低栄養状態を呈している症例は術後の肺炎発症のリスクが高くなるため,より早期から離床を図り,術後肺炎発症の予防を行うことが重要であると考える。
著者
宗 健
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.422-427, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
17
被引用文献数
3 2

日本の人口は減少しており自治体間で熾烈な人口獲得競争が行われている。しかし、どのような政策が人口増加に繋がるのかは、必ずしも明かではない。本研究では全国を対象とした約18万人の地域の居住満足度アンケートデータと、住民基本台帳人口データの関係を分析した。分析結果は以下のようなものである。居住満足度と人口増減には高い相関関係がある。「イメージ」「親しみやすさ」「生活利便性」の各因子は人口増加と正の相関があり、「静かさ・治安」「自然・観光地」の各因子は負の相関がある。「物価家賃」や「交通利便性」、「行政サービス」は有意な関係がない。
著者
庄司吉之助 編著
出版者
吉川弘文館
巻号頁・発行日
vol.巻1 (寛文風土記), 1979
著者
家世実紀刊本編纂委員会 編
出版者
吉川弘文館
巻号頁・発行日
vol.第1巻 (首巻~巻之20), 1975
著者
余田 佳子 島 正之 大谷 成人
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

空気清浄機の使用による一般家屋内の大気汚染物質濃度の低減と、それによる呼吸器系への影響の改善効果を評価するために健常者32名を対象にクロスオーバー介入研究を行った。その結果家屋内の微小粒子状物質(PM2.5)濃度は、本物の空気清浄機使用では偽物に比べて約11%低減したがその差は有意ではなかった(p=0.08)。同居のいない世帯で空気清浄機によりPM2.5の有意な低減効果が見られた。しかし、健康影響については明らかな効果はみられなかった。一方、屋内粗大粒子(PM10-2.5)濃度の増加により1秒量の有意な低下が見られた。同様に屋内オゾン濃度の増加により最大呼気中間流量の有意な低下が見られた。
著者
大学宇宙工学コンソーシアム(UNISEC) University Space Engineering Consortium (UNISEC)
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構契約報告 = JAXA Contract Report (ISSN:24332240)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-CR-21-002, pp.1-434, 2022-01-24

本報告は、日本の大学・高等専門学校による超小型衛星(50kg以下)の開発・運用プロセスの「信頼性」を底上げし、目的/目標としたミッションを成功させるためのベストプラクティスを検討するための基礎となる情報の調査結果である。国内大学・高等専門学校等における超小型衛星の開発状況と、打ち上げ済みの場合はその運用結果、ミッションや衛星・搭載機器等の成功/失敗の状況について調査を行った。なお、「成功」/「失敗」の事例については、「ミッション全体」のみではなく、サブシステムやコンポーネント(例えば、機器の不具合や運用のトラブル、マネジメントの停滞等)も対象に含めて調査を行った。その結果、32機の衛星数について208 件の事例情報(うち、成功事例72、失敗事例136)を取得し、分析・評価した。更にこれらの結果を基に、超小型衛星のミッションサクセスのための要件項目(超小型衛星ミッションを成功させるために最低限行っておくべき事項)を抽出し、プロジェクトマネジメント、衛星設計、試験の3つの観点で分類した。
著者
田中 和夫 島地 英夫
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.59-64, 1992-06-30 (Released:2010-06-22)
参考文献数
9
被引用文献数
5 4

トマトの大量苗生産に必要な高密度苗生産技術の一つとして接触刺激の利用を検討した.1) 作動時刻, 走行速度および高さを任意に変えることができる自動走行式の接触刺激装置を作成した.この装置を用い, トマト苗の生長部に30分に1往復の頻度で, 走行速度は10m/minに設定して接触刺激を行った.2) トマト苗の生長部への接触刺激を行うことにより, 徒長防止だけでなく, 主茎長を中心とした生育の均一化や乾物率の上昇による苗質向上の効果が認められた.なお, 接触刺激によるトマト苗の乾物生産能力の低下はほとんどなく, また花芽の発育にも悪い影響を認めなかった.3) 接触刺激を利用することで, トマトの苗生産は最大栽植密度を展開葉数が4~5枚までの場合で約1, 000株/m2, 展開葉数が6~7枚までの場合で約400株/m2まで高めることが可能と考えられた.4) 生育初期から生育速度に個体間差の大きいトマト培養苗の成苗化過程において, 生育の均一性を高める顕著な効果が接触刺激により得られた.