著者
榎並 利博
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.298-306, 2014

日本政府は2000年にIT戦略本部を設置し,国家戦略として世界一のIT国家を目指してきた。しかし,情報通信基盤は著しく進展したものの,電子政府のランキングは低迷している。その原因は国全体でITを有効に活用するための基盤となるコードの統一化・データの標準化ができていないためである。国民を識別するためのコードの統一化については,ようやくマイナンバー法が制定され,実行に移されつつある。しかし,より根本的な問題である日本語文字の統一化の問題,特に行政手続きにおける人名漢字に関する問題はいまだに残されたままである。政府の議論においては,ITで扱う漢字コードを増やすことで解決する方向性を示しているが,その方法は問題解決にならないばかりか,新たな問題を引き起こす。筆者は,漢字の問題を公共性および人間とコンピューターの関係等の視点からとらえ直し,ITで扱う漢字の文字数を法的に制限すべきことを提案する。
著者
安達 則嗣
出版者
一般社団法人 芸術工学会
雑誌
芸術工学会誌 (ISSN:13423061)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.45-52, 2011

日本の商業アニメーションは、日本を代表するコンテンツとして期待されて久しいが、期待されているほどの成果が得られているとはいえない。そこで、大手アニメーション制作会社である(株)ゴンゾ及び東映アニメーション(株)の事例研究を通じて、アニメーション制作会社とアニメーション産業の現状についてあらためて検討を実施した。その結果、従来からいわれている課題や新たな課題を含めて、いまだに多くの課題が存在していることが把握された。すなわち、(1)海外展開の困難性、(2)作品の均質化・固定化、(3)ビジネスの不透明性、(4)会計基準の不存在、という課題である。従来から期待されているソフト・パワーと経済波及効果に資する「アニメ(Anime)」ブランドというビジョンを実現するためのビジネスデザインには、これらの課題を克服するという観点が求められる。すなわち、質・量ともにストック豊富という強みを活かしながら、低迷する国内外の市場、特に海外市場を拡大して収益機会を得ると同時に、ビジネス上の課題を解消することでアニメーション関連事業者に適正な利益を還元し、業界を活性化させるというものである。具体的には、海外展開を支援する国際見本市や国際共同製作等の制度を充実し、かつ、作品の均質化・固定化を打破する創造的な人材の育成支援策を実施することで、低迷する市場を拡大させる。そして、作品に係る著作権等の帰属やテレビ放映権収入の有無等のビジネス慣行を透明化し、かつ、会計基準を設定することで、アニメーション関連事業者に適正な利益を還元させる。これらを政策として同時並行的に実施することで、期待されつつも低迷する日本の商業アニメーションのさらなる発展を期待したい。
著者
佐藤 俊樹
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社会科学研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.157-181, 2006

靖国神社(およびその前身の東京招魂社)は,長く「国家神道」の中心施設だと見なされてきた.しかし実際には,第二次大戦以前でも,その宗教的な性格や政治的な位置づけはかなり変化しており,特に1900年代の前と後では大きくことなる.ほとんどの靖国神社論は政治的立場のいかんを問わず,この点を無視されている.それらが1911年に出た『靖国神社誌』の靖国神社像を踏襲しているからである.本論では,『武江年表続編』や東京ガイドブックといった同時代史科をつかって,1900年代以前の靖国神社(東京招魂社)がどんな宗教的・政治的な意味をおびていたかを,政治家でも宗教家でもない,東京のふつうの生活者の視線から描きだす.それによって,戦前前半期の日本における宗教-政治の独特な様相の一端を明らかにする.
著者
鈴木 俊之 藤田 和央
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-12, 2007-03

アブレータ熱防御システム信頼性向上に向けて,アーク風洞気流にさらされたアブレータ供試体の熱応答を評価する解析手法を開発した.本手法では,アブレータの熱応答を2 次元で解き,加熱面の境界条件はアーク風洞気流条件を用いたアブレータ周りの流れ場解析との連成により求めた.アーク風洞気流条件は風洞運転条件を用いた加熱器内部の流れ場解析とノズルにおける膨張流れ場解析を行うことで決定した.開発した連成解析手法を用いて,宇宙科学研究本部アーク風洞における加熱試験で得られたアブレータ熱応答の再現計算を行い,表面触媒性,表面窒化反応,表面粗さが熱応答に与える影響を調査した.実験結果との比較では,小さな触媒効率を仮定することにより測定温度に近づくことがわかった.また本加熱試験条件において表面粗さによる影響は少ないものの,窒化反応がアブレータ熱応答に与える影響は非常に大きいことが判明した.
著者
笹部 昌利
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.33-47, 1999-03-01

本稿は、薩長土以外の中小諸藩の個別分析が欠如するこれまで明治維新史研究に介在する問題点を明らかにするために、津山松平藩を析出し、同藩の幕末維新期の政治動向を明らかにしようとするものである。特に中央政局と地方(諸藩)の複雑な推移、対立、相互関係など多元的な政治過程のなかから、個別藩における中央への対応形態がどのように精選されていくのか、諸藩の政治運動が活発化する文久期(一八六一-一八六三)において、津山藩が諸藩の動向および攘夷問題に知何に対応していったのかを明らかにし、幕末期における藩の実像に迫る。津山藩攘夷諸藩の政治運動親兵八・一八政変
著者
坂本 卓也
出版者
佛教大学
雑誌
鷹陵史学 (ISSN:0386331X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.83-114, 2013-09-28
著者
奥田 晴樹
出版者
金沢大学地域連携推進センター
雑誌
金沢大学サテライトプラザミニ講演記録
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, 2008-10-04

幕末政治が抱える「内憂外患」のジレンマの打開策を模索する中から立憲政体導入構想が登場してくる。この構想は、大政奉還後、「公議政体」論として政治的に具体化され、王政復古後、政体書の制定によって国制化の端緒をつかむ。さらに、廃藩置県後は、その導入への動きが、度重なる政変によって翻弄されながらも、一歩一歩、国家意思となる道を進んでいく。これが帝国憲法制定へと展開する過程を展望し、明治維新とは何かを考える。
著者
竹内 康浩
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.115, no.1, pp.35-53, 2006

Suigongxu is a bronze vessel that has appeared in the research literature as of late and which many scholars believe dates back to the middle of the Western Zhou period. The vessel contains a long inscription of about 100 characters, the content of which has been rendered as unique. In particular, two aspects of the inscription stand out. One is the appearance of a mythological character Yu禹; the other, the use of the term tianxia天下(the world). Neither terms have appeared in the available source materials on the period to date and therefore have been lauded as new insights into Western Zhou thought and culture. However, we do not know the circumstances surrounding the archeological discovery of the vessel, and both its construct and inscription differ greatly from what has been identified to date as "Western Zhou" style bronzeware and prose. Based on such doubts, the author of the present article discusses the content of the vessel's inscription and comes to the conclusion that great caution should be taken in assuming that at face value the vessel will shed new light on the period in question. What has to be debated first is whether it is a genuine Western Zhou period bronze artifact or not.
著者
石原 正仁 藤吉 康志 田畑 明 榊原 均 赤枝 健冶 岡村 博文
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.139-163, 1995-04-25
参考文献数
42
被引用文献数
19

「集中豪雨のメカニズムと予測に関する研究」の一環として1988年の梅雨期に九州北部を中心として実施された特別観測期間中に、梅雨前線に沿ってメソスケール降雨帯が発生し、最大総降水量178mmの大雨が発生した。2台のドップラーレーダーによる観測結果をもとに、この降雨帯のレーダーエコーと循環の3次元構造を解析し、その構造と維持過程を中心に議論する。降雨帯は1988年7月17日に発生し、7時間維持された。発生環境を見ると、大気下層の水平温度傾度が大きくはなく、熱力学的不安定度は熱帯と中緯度の中間であった。降雨帯の長さは170kmに達し、内部は対流性領域と層状性領域から構成されていた。降雨帯の走向は北西-南東であり、大気中層と下層の間の風の鉛直シヤーとほぼ平行であった。対流性領域にある既存の対流セルは降雨帯の走向に沿って移動し、周囲の南西風が入り込む降雨帯の南西端に新しい対流セルが次々と発生した。降雨帯の中には次のような特徴的な流れが確認された。:1)降雨帯の前部にある対流規模上昇流、2)降雨が最も強い領域にある対流性下降流、3)後部中層のエコーのノッチ(切れ目)からの乾燥空気の流入、4)この後部流入に接続するメソ下降流、5)対流規模下降流の下の大気最下層の前方と後方に進む発散流。これら最下層の発散流は周囲より4℃程度低温の寒気プールを作り、この寒気プールと降雨帯前方の暖湿な南西流との間にガストフロントが作られた。降雨帯後方にあった中層の総観規模の乾燥域は、最下層の暖湿気流とともに、降雨帯を維持するために重要な役割を果たした。高層データによると、雨滴の蒸発冷却によると思われる低温域が対流規模下降流とメソ下降流の中に存在した。後部流入にともなう乾燥空気は対流性領域の最下層まで達していた。こうした熱力学特徴は、ドップラーレーダー解析から得られた運動学的構造とよく適合した。降雨帯は中緯度の前線帯に発生したとはいえ、対流圏下層に限れば降雨帯の前後の熱力学的条件の差異は非常に小さかった。この降雨帯は、西ヨーロッパや北米太平洋岸の寒帯前線にともなって観測されるメソ対流システムよりも、熱帯や中緯度のスコールラインのような「自立型対流システム」に属するであろう。
著者
関 嘉彦 辻 清明 松本 重治
出版者
中央公論新社
雑誌
中央公論 (ISSN:05296838)
巻号頁・発行日
vol.95, no.10, pp.p298-307, 1980-08