著者
鈴木 久美
出版者
山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所
雑誌
山形県立米沢女子短期大学附属生活文化研究所報告 (ISSN:0386636X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.95-108, 2018-03-15

1990 年代後半、日本長期信用銀行の破綻など、金融機関の破綻が相次いだ。そのため、この時期には金融システムの安定化のための議論や提案が多くなされた . そもそも、部分準備制度のもとでは健全な経営をしている銀行でさえ、銀行取付にあい破綻する可能性を持っている。この経営が健全な銀行でさえ破綻する可能性を理論的に示した Diamond and Dybvig(1983)モデルでは、効率的な均衡と非効率的な均衡のどちらが達成されるかはサンスポットであるとしていた。本論文では、実験経済学の手法を利用し、Diamond and Dybvig(1983)モデルの検証を行った。結果、銀行破綻回避策がない場合は、非効率的な均衡が達成される、すなわち、銀行破綻が生じやすいことが確認された。また、消費者(預金者)のタイプの割合がわかっている場合、支払停止条項は有効な銀行破綻回避策となりうることが、消費者のタイプの割合がわからないときは、政府による預金保険が有効な銀行回避策であることがわかった。
著者
山本 智美 西田 昌司 Tomomi YAMAMOTO Masashi NISHIDA
雑誌
神戸女学院大学論集 = KOBE COLLEGE STUDIES
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.141-152, 2017-06-20

大脳皮質でのアミロイドβ沈着は、アルツハイマー型認知症(AD)の病態と密接に関連している。神経細胞は、異常蛋白質を修復する小胞体にアミロイドβ沈着物を取り込む。異常蛋白質の蓄積によって小胞体ストレスが増加すると、細胞はシャペロン蛋白の誘導などの小胞体ストレス応答(UPR)を惹起して小胞体ストレスに対処する。しかしUPRの惹起が十分でない場合は、アポトーシスによる細胞死に至る。今回我々は、アミロイドβ負荷による神経細胞のUPRがERストレスの対処には不十分であり、AD発症率を低下させる女性ホルモンがUPRを増強して細胞死を抑制するかを、培養細胞モデルを用いて検討した。ラット神経系由来のPC-12細胞に、小胞体ストレス誘発剤であるツニカマイシン、アミロイドβ単量体、または凝集体を負荷すると、小胞体ストレスが増加するとともに、UPRで誘導されるジャペロン蛋白GRP78も増加させた。女性ホルモンの17β-エストラジオールによる前処理は、ツニカマイシン、アミロイドβによるGRP78発現を増強するとともにすると、神経細胞における小胞体ストレスを減少した。また、アポトーシスが誘導されたことにより、ツニカマイシンによるUPRは小胞体ストレスの凌駕には不充分であることがわかる。17β-エストラジオールによる前処理はツニカマイシンによるアポトーシスも減少させた。以上より、大脳皮質におけるアミロイドβ沈着は神経細胞の小胞体ストレスを惹起するが、誘導されるUPRが不十分な場合にはアポトーシスによる細胞死が生じた。女性ホルモンのエストロゲンは、UPRを増強することによってアミロイドβ負荷による小胞体ストレスを軽減し、アポトーシスを抑制する可能性が示された。女性ホルモンは、アミロイドβによる神経細胞の小胞体ストレスを修飾することによって、ADの発症率を低下させていることが示唆された。
著者
田部井 世志子
出版者
北九州市立大学文学部
雑誌
北九州市立大学文学部紀要 = Journal of the Faculty of Humanities, the University of Kitakyushu (ISSN:13470728)
巻号頁・発行日
no.72, pp.43-64, 2006

「個人は愛し合えない。」D・H・ロレンスはアポカリプスの中でこのような現代における個人の愛の不毛性の問題を世に投げかけてこの世を去った。われわれは彼のこの言葉をどう受け止めればいいのだろうか。おそらく人類が始まって以来、常に振り子のように揺れてきた人間存在の在り方──個人重視か集団重視か──についての議論を加えつつ、とりわけ個人主義が標榜される今日にあって、今一度真摯にロレンスの問題提起に耳を傾け、問題解決の一助──宇宙的大自然との一体化のうちに個人どうしの愛の可能性を見る──を彼の『アポカリプス』の中に探る。
著者
武永 尚子
雑誌
二松学舎大学人文論叢
巻号頁・発行日
vol.61, pp.100-101, 1998-10-10
著者
靳 琳 江崎 哲也
出版者
山梨大学教育国際化推進機構
雑誌
高等教育と国際化 : 山梨大学教育国際化推進機構紀要年報 (ISSN:21893993)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.17-21, 2019-11-30

日本語教育では、日本語の/u/ を非円唇母音[ɯ] としていることが多い。一方、先行研究では円唇母音[u] の存在が指摘されている。本研究では、日本語母語話者が/u/ を円唇母音[u] と発話する要因を解明するため、実験を行い、言語外的要因、及び言語内的要因を探った。その結果、/u/ の含まれる音節にアクセント核がある場合、また/u/ の直前に半母音/j/ がある場合に円唇母音[u] と発話される率が高まることが確認された。また、発話スタイルが[u] の生起率に影響を与えることも明らかになった。
著者
山中 靖子
雑誌
東京女子大学言語文化研究 (ISSN:09187766)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.87-100, 2008-10-31

In comparison with other languages,the Japanese language has clear sexual distinction in its words.Sexual distinction is especially outstanding in personal pronouns,such as boku and atashi, and in the end of a sentence, such as ze, zo and wa In recent years, sexual distinction in words has decreased. This is partly because women's language has changed a lot. In this thesis, by using questionnaires, I researched the actual conditions and awareness of college students in order to investigate the decrease in sexual distinction in women's language. As a result, we can see there is clear sexual distinction in the first personal pronouns, but in the second personal pronouns we can see women intentionally use men's language. In addition, in the end of a sentence, women also use men's language and the usage rate exceeds 50% in some words.This research showed that women use those words knowing they are men's language. Therefore, among the young people, the decrease in sexual distinction of language has emerged. It is because women have come to think that men's language is friendly and active. The images of ideal women have changed. Nowadays,women are not slaves of convention which forces them to be careful in their choice of words such as women's language and men's language,but they can select effective words according to circumstances.
著者
三井 寛文
出版者
成城大学
雑誌
常民文化 = Jomin bunka (ISSN:03888908)
巻号頁・発行日
no.35, pp.1-28, 2012-03
著者
渡辺 亮 Ryo Watanabe
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2017-03-24

人間の皮膚感覚は,皮膚の機械的変形を伝える触覚(本論文では機械的変形を伝える感覚を狭義の触覚とする),温度感覚,痛覚等によって構成されている.このうち触覚については近年,バーチャルリアリティ(VR)等,さまざまな分野への応用もなされている.しかし温度提示の応用は,VRにおける皮膚感覚の一要素としての温度感覚の提示や,保温等による快適性の向上に限定され,いまだ発展途上の研究分野といえる.一方で温度提示は機械的な駆動部を必要とせず,また振動提示等と比べて低コスト,低エネルギーであるため,全身への情報提示に向いている可能性がある.これらのメリットを持ちながら応用が行われない理由として,これまでの温度提示が「温度そのものの知覚」に主眼をおいていたことが挙げられる.しかし,温度提示によってもたらされるものは温度そのものの知覚に限らない.温度感覚は温度の情報を伝達するのみならず,時としてほかの感覚を生起し,さらには人間の運動を誘発する.例えば痛み,痒みの感覚は必ずしも温度提示と不可分の感覚ではないが,伝達する神経は温度を伝達する神経と共通し,実際には温度感覚と不可分の関係にある.また近年の研究では,人間が物体を把持する力の調節に温度感覚が寄与することが示唆されている.このような温度感覚の運動および感覚に与える作用を考えれば,上述した振動等の触刺激提示に対する利点を活用することができるであろう.本論文は単純な温度情報の伝達にとどまらない,温度感覚がもたらす運動・感覚作用に注目し,特に医療福祉分野における応用を提案する.本論文ではこうした温度感覚が身体に与える作用を「純粋に感覚的なもの」,「身体運動に影響を与えるもの」の2つに分類した.温度感覚の身体作用については限定的にしか知られていないが,上記の分類それぞれについて「温度感覚による痛みの生起」と「温度感覚による運動調整」が挙げられる.「純粋に感覚的なもの」として挙げた温度感覚提示が痛みの感覚を生起する現象に着目すると,痒みの鎮静(鎮痒)への応用可能性がある.温度感覚はAδ線維とC線維によって伝達され,同じくAδ,C線維により伝達される痛み,痒みとも密接な関係をもつ.痒みは乾皮症や腎不全,糖尿病等様々な病気の症状として知られるが,なかでも日本国内に約35万人の患者を抱えるアトピー性皮膚炎は非常に重大な問題となっている.現在一般的な痒みの治療法は少なからず副作用の危険性を持つ.特に,アトピー性皮膚炎の治療薬として最も一般的なステロイド薬には多くの重篤な副作用が報告されている.この他の痒みを抑制する方法に,患部を掻きむしる,患部に痛みを与える等がある.いずれも鎮痒効果があることは検証されているが,皮膚を損傷し症状を悪化させる危険性が大きく,治療に用いることは難しいとされる.これに対して本論文では温度錯覚現象Thermal grill illusion(TGI)を用いた鎮痒を提案した.TGIは温冷2つの温度感覚提示によって痛みを生じる現象であり,皮膚を損壊せず痛みを提示することが可能であることから,副作用のない鎮痒手法になる可能性がある.ローラー型の温冷刺激部が皮膚上を回転することで時空間的に交互に温冷刺激を提示し,TGIを生起させるという手法を提案し,複数回の鎮痒デバイスの試作および鎮痒効果の実験を行い,一定の鎮痒効果を有するという結果を得た.またローラーを用いずにTGIを生じさせるために,温度感覚が触覚提示部位に転移する現象であるThermal Referral(TR)を用いる手法を検討し,TRによって転移した温度提示部にTGIが生じることを発見した.さらにTRが全身に適用できることを示した(第4章).「身体運動に影響を与えるもの」として挙げた温度感覚と把持力調節機能の関係に着目すると,温度感覚検査への応用可能性がある.近年の温度感覚研究では温度感覚の脱出した患者の把持動作に異常がみられることから,Aδ,C線維が伝達する温度感覚が運動機能に関与する可能性が示唆されていた.この知見は人間の温度知覚を,主観的な回答に依らない把持力の変化という客観的な形で表すことができる可能性が大きいことを示している.これまで温度知覚能力を計測する際には,患者の主観的な回答に頼る場合が多く,明確にその能力を計ることが困難であった.無意識的な運動調節が温度の知覚サインとなるのであれば,検診やリハビリの現場で温度,痛みを評価する際の指標としての運用が期待できる.本論文ではより直接的な温度提示と把持力調節の関係を探るため,物体の表面温度を動的に変化させることが可能なキューブ型のマニピュランダムを開発した.被験者が拇指,示指で装置を把持した際の,表面温度の変化に伴う把持力の推移を記録した.温度変化と把持力の関係性を検討したところ,物体表面の温度が増加すると把持力が減少するという関係性を認めた.健常者におけるこのような変化が温度覚由来の調節であることを確かめる目的で,温度感覚が脱失しているCIPA患者4名に同様の課題を行わせたところ,温度変化と把持力変化の間には関連性を認めなかった.また,実験を行った健常者は温度の変化を知覚した一方で把持力が変化したことを認識していなかったことから,温度の変化に伴う把持力調節は無意識的な調節であることが示唆された.これらの結果により,提案手法,デバイスが温度知覚能力の検査に応用可能であることを示した.次に把持動作についてみられた運動調節が姿勢や状況に依存しないものであるか検証を行った.手掌部における実験では温度と加重の推移に関連はみられなかった.これは把持動作に,「把持した物体を落さない」という明確な目的があるのに対し,手掌部の実験の場合明確な目的がなく加重調節の必要がなかったためと考えた.そこで立位という明確な姿勢調整の必要性を持つ条件を用いたが,温度変化と重心の推移の関係は不明確であった.しかし人間が立位姿勢をとるときの自然な重心動揺が実験条件に近いことから,周期をより大きく変更した実験を行った.その結果,温度変化時にわずかではあるが重心の偏りが生じることが示唆された(第5章).以上のように,本論文は温度感覚のもたらす「温度そのものの知覚」以外の身体作用に注目し,特に医療福祉分野における応用を提案した.温度感覚によって痛覚を生起するという現象を鎮痒に利用できること,温度感覚によって運動調整が生じるという現象を温度知覚機能検査に利用できることを示した.
著者
羽太 園 野畑 理佳 東 健太郎 戸田 淑子 安達 祥子
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 = The Japan Foundation Japanese-Language Education Bulletin (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.13, pp.55-70, 2017-03-01

国際交流基金関西国際センターで実施している外交官・公務員日本語研修では、これまで主教材として『みんなの日本語』を使用していたが、コース目標とカリキュラムのずれ、レベル差の拡大による学習ストレス、日本文化社会理解のシラバスの偏りなどの問題から、平成27年度より『まるごと日本のことばと文化』(以下『まるごと』)を使用することとした。主教材変更に際しては、本研修参加者の多様な背景や学習能力などをふまえ、①職業的な知識や経験の利用、②レベル差への対応、③文法を重視する学習者への対応、の3点に留意してコースデザインを行った。研修の結果、成績下~中位レベルの口頭運用能力の向上、ストレスの軽減、コミュニケーションへの積極性などの変化が明らかになったが、上位レベルのカリキュラムには課題が残った。
著者
馬渕 康子
雑誌
樟蔭国文学
巻号頁・発行日
vol.8, pp.35-41, 1971-03-20

1 0 0 0 OA 茶道と文学

著者
古矢 弘
出版者
東京女子体育大学
雑誌
紀要 (ISSN:03898806)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.148-152, 1981-03-31