著者
小野塚 実 渡邊 和子 藤田 雅文 斉藤 滋
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.109-116, 2002

In recent years, dysfunctional mastication, which is resulted from decreased number of residual teeth, use of unsuitable dentures, or reduced biting force, has been suggested to be related to the development of senile dementia. Recently, in senescence-accelerated mice (SAMP8 mice), we have studied the involvement of masticatory dysfunction, e.g. cut off of the upper molar teeth, extract of the upper molar teeth, or cut of the one side of the masseteric nerve, in the senile process of learning and memory. First, we found that conditions of such dysfunctional mastication progress age-related deficits in spatial memory storage in a water maze test and in hippocampal pyramidal neurons. These pathological phenomena were begun to occur in middle-aged mice, suggesting that masticatory disfunction may lead to hippocampal pathological changes in the elderly.<BR>Second, it was found that cutting off the upper molar teeth causes a reduction in the protein product, Fos, of the immediate early gene, c-fos, in the hippocampal CA1 subfield. Interestingly, both the suppression of memory storage ability and the decrease in Fos induction in this subfield induced by cutting off the upper molars were considerably improved by restoring the lost molars with artificial crowns, suggesting that normal mastication may be an important factor in maintaining normal hippocampal activities.<BR>Third, in biochemical and immunohistochemical studies examining the effect of masticatory dysfunction on age-related changes in the septohippocampal cholinergic system, we have foundthat, in aged mice, masticatory disfunction induces a decrease in acetylcholine release and choline acetyltransferase activity in the hippocampus and a reduction in the number of choline acetyltransferase-immunopositive neurons in the medial septal nucleus. However, these effects were not seen in young mice, implying that dysfunctional mastication may enhance an age-related decline in the septohippocampal cholinergic system.<BR>Finally, stress may be linked to hippocampal pathological changes induced by masticatory dysfunction. As expected, in the aged mice, conditions under masticatory dysfunction brought about a chronic elevation in plasma corticosterone levels. However, pretreatment with metyrapone, which suppresses the stress-induced rise in this hormone levels, prevented dysfunctional mastication-induced increase in plasma corticosterone levels, reduction in hippocampal pyramidal neuron numbers, and impairment of spatial memory. These findings suggest a link between the masticatory dysfunction and the glucocorticoid response, which may be involved in deficits in learning and memory and hippocampal neuronal death.<BR>In conclusion, we suggest that normal mastication may be effective in preventing senile dementia by maintaining normal function in the hippocampus, which is the most sensitive region to aging processes.
著者
中島 還
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.83-92, 2005-06-30
参考文献数
46

摂食行動は, 生後吸畷運動から咀噛運動へと大きく転換する.この転換の背景には, 顎顔面口腔器官の発育変化に対応した中枢神経機構の変化があると考えられるが, その詳細はいまだ明らかでない.そこで本研究は, 近年開発された光学的電位測定装置をラット脳幹スライス標本に適用し, 三叉神経運動核 (MoV) とその三叉神経上領域の外側部 (1SuV) の問に存在する, 下顎運動の制御に関与すると考えられる局所神経回路の発育様態を調べた.前頭断脳幹スライス標本のさまざまな部位を電気刺激したところ, 1SuVにおいてMoVに興奮性の光学的応答を誘発する部位が見出された.さらに, 細胞外液のCa<SUP>2</SUP>+をMn<SUP>2+</SUP>に置換してシナプス伝達を遮断した状態でMoVを電気刺激すると, 1SuVに逆行性の光学的応答が認められた.次に, この興奮性出力を担う神経伝達物質を検討したところ, 1~6日齢の動物では, CNQXとAPVの同時投与, あるいはstrychnine投与により, 1SuV刺激に対するMoVの興奮性応答が減弱し, グルタミン酸受容体およびグリシン受容体の関与が明らかとなった.一方, 7~12日齢の動物ではCNQXとAPV投与でMoVの興奮性応答は抑制されたが, strychnine投与によるMoVの興奮性応答は増強し, グリシン性のシナプス伝達は抑制性に変化した.以上の結果から, ISuVからMoVに対するシナプス伝達様式が発育により変化することが明らかとなった.このような変化は, 吸畷から咀囑への転換に対応する可能性が考えられる.
著者
石山 育朗 鈴木 政登 佐藤 誠 中村 泰輔
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.55-69, 2006

健康な20~42歳の男性9名を対象に, チューインガム咀嚼は交感神経系と副交感神経系のいずれをより亢進させるのかを明らかにするため, ガム咀嚼時の循環系(心拍数, 血圧, 心拍パワースペクトル), 唾液成分, 脳波(α ・β 波)を指標として検討した.実験には2種類の硬さ(soft, hard)のテアニン含有ガム(RX)と, ガムベースのみの対照ガム(C)を用い, 成分の影響等を比較した.<BR>RX, Cガム咀噛時ともに心拍数, 血圧の増加と唾液分泌量が増加し, 指尖容積脈波波高(WH)は低下した.唾液分泌量, 唾液総蛋白, 唾液α アミラーゼ濃度および電解質濃度は, RXガム咀嚼時に著しく増加した.Cガム咀嚼時には分泌型免疫グロブリンA(slgA)濃度と心拍パワースペクトル低周波/高周波成分比(LF/HF)が低下したが, RXガム咀嚼時には変化が認められなかった.コルチゾール濃度の変化はみられなかった.また, Cガム咀嚼時の脳波α 波の抑制が顕著にみられた.<BR>これらの結果から, ガムの味の有無に関わらずガム咀嚼中は交感神経系活動の亢進が顕著となるが, 口腔内では副交感神経系を同時亢進させ, 味付きガム(RX)の唾液分泌への影響は顕著であった.両ガムとも咀嚼終了によって循環系から推定する副交感神経系反応は顕著になるが, 唾液中sIgAと脳波α波の増減から推定したリラックス効果は, 咀噛刺激よりもリラックス成分の影響によると推察された.
著者
村岡 宏祐 田中 達朗 久保田 浩三 森本 泰宏 横田 誠
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.121-128, 2008-06-28
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

本症例は, 慢性歯周炎広汎型の患者で, 歯周基本治療により, 咬合機能が改善された際, functional MRI(fMRI)のBOLD(blood oxygeneration level dependent)信号で咬合状態の改善を示す信号変化が確認されたので報告する。患者は60歳女性で, 全顎的な歯周治療を希望して来院した。既往歴は, 高脂血症である。臨床診査およびX線診査によって, 慢性歯周炎広汎型と診断した。歯周基本治療は, Tooth Brushing Instruction, Scaling, Root planingのみとし, 咬合調整は一切行わなかった。患者の同意を得て, 初診時と再評価時に, 咬合力の診査とfMRIを撮影した。初診時のfMRIでは, 噛み締め時に, 弱いBOLD信号を片側大脳皮質一次体性感覚野のみに認めた。歯周基本治療を行うと, 歯周組織, 咬合力の改善を認めた。同時に, fMRIによる脳血流を示すBOLD信号は, 左右対称性を示すと同時に増加傾向を認めた。<BR>この結果は, 慢性歯周炎広汎型の患者に対する歯周基本治療により片側のみの弱い咬合から両側性の強い咬合状態に変化したことをfMRIによりとらえた可能性を示唆する。<BR>日本歯周病学会会誌(日誌周誌)50(2) : 121-128, 2008
著者
荻原 啓文 荒木 海人 上村 麻子 金内 理江 江口 勝彦
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CdPF2042-CdPF2042, 2011

【目的】<BR> 野球やサッカーなどでは,ガムを噛みながら競技を行っている選手を見ることがある.ガム咀嚼が脳血流量を増大させる,あるいはガム咀嚼により覚醒水準が上昇したなどの報告があるが,その結果として運動パフォーマンスにどのような変化をもたらすのであろうか.本研究の目的はガム咀嚼が単純反応時間に及ぼす影響を明らかにすることである.先行研究から,中枢神経への影響であるると推察される.我々は,「反応時間,なかでも中枢神経処理過程を反映しているといわれているpremortor time(以下PMT)を短縮させるのではないか」という仮説をもとに,ガム咀嚼時の,光刺激に対する単純反応時間を検討した.<BR>【方法】<BR> 対象は健常若年成人男性20例(平均年齢22.1歳±1.4)であった.条件1)何も口に含まない,条件2)ガム(エクササイズ・キシリトール ロッテ社)咀嚼,の二条件で光刺激に対する膝伸展を課題として単純反応時間の測定を行った.被験者を足底が床に着かない高さで背もたれつきの椅子に座らせ,右踵部と椅子脚前面に電極を付け右膝関節伸展運動の指標とした.さらにEMGシステムPTS137(Biometrics社)を用い右側大腿直筋より筋電図を導出した.被験者の右前方に配置した光刺激装置の発光部から予告合図なしで単色光を発光させ,刺激に対し素早く膝関節を伸展させた.光刺激,筋電図,関節伸展運動の信号を同期させA/D変換器PowerLab16/30(ADInstruments社)を経由しパーソナルコンピューターに取り込んだ.また,条件2では先行研究に従い,鼓膜温をガム咀嚼前と咀嚼10分後に測定し,脳血流量の指標とした.条件1,2の測定順序はランダム配置にて行った.光刺激から関節運動が起こるまでの時間を反応時間(reaction time,以下RT),光刺激から筋活動が生じるまでの時間をPMT,筋活動から関節運動が起こるまでの時間をmortor time(以下MT)とした.<BR> 得られたデータは,統計解析ソフト(JMP5.0.1,SAS Insti.)を用い,単純反応時間は条件1,2について,鼓膜温はガム咀嚼前後での測定値について,それぞれ対応のあるt-検定を用い分析した.有意水準は5%とした。<BR>【説明と同意】<BR> 対象は,本研究の目的・方法・参加による利益と不利益などの説明を十分に受け,全員自らの意思で参加した.また,本研究は本学研究倫理委員会の規定に基づき,卒業研究倫理審査により承認され実施した.<BR>【結果】<BR> RTは条件1(180±20msec),条件2(177±18msec)と,条件間による有意な差はなかった(p=0.68).PMTは条件1(117±17msec),条件2(112±18mesc),MTは条件1(63±16msec),条件2(65±15msec)と,それぞれ条件間による有意な差はなかった(p=0.84,p=0.27).鼓膜温は,条件1(摂氏35.6度±0.4),条件2(摂氏35.8度±0.4)と,条件間に有意な差を認めた(P=0.003).<BR>【考察】<BR> 一般に鼓膜温は脳循環の内頚動脈温を反映する深部体温であるとされている.塩田<SUP>1)</SUP>はガム咀嚼は脳血流量を増加させ,覚醒レベルを上げると報告している.本研究では,ガム咀嚼前に比べ咀嚼後の鼓膜温は有意に上昇したことから,脳血流量が上昇したと考える.<BR> 一方,条件1と条件2の単純反応時間に有意な差は認められなかった.佐橋<SUP>2)</SUP>は,「ガム咀嚼は認知的機能を亢進させ,反応時間の短縮をさせると考えられる」と報告している.また,佐藤<SUP>3)</SUP>は,光と音刺激による「ジャンプ動作」および「ボタン押し」課題による身体運動反応時間について報告しており,ガム咀嚼前後で差は無かったとしている.本研究でも脳血流量は増加したものの,RT,PMT,MT共に短縮しなかった.<BR> 本研究の結果より,ガム咀嚼は脳血流量は増加せしめるが,反応時間は短縮させないことが明らかになった.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> ガム咀嚼による運動パフォーマンスへの影響を明らかにすることにより,スポーツ競技のみならず,広く応用できる可能性がある.<BR>【文献】<BR>1) 塩田正俊・他:ガム咀嚼による脳覚醒が運動パフォーマンスに及ぼす影響,体力科学. 58(6) : 852, 2009.<BR>2) 佐橋喜志夫:ガム咀嚼が事象関連電位に及ぼす影響,歯科基礎医学会,46(2) : 116-124, 2004.<BR>3) 佐藤あゆみ:ガム咀嚼が身体運動反応時間へ及ぼす影響,東京歯科大学歯科衛生士専門学校卒業研究論文集,20, 2008.
著者
山下 裕 古後 晴基
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】高齢者の咀嚼能力の低下は,一年間の転倒歴,排泄障害,外出頻度の減少,うつ状態などと共に,要介護リスク因子の一つとして取り上げられている。しかし,咀嚼能力と身体機能の関連については未だに不明な点が多い。一方,片脚立位時間の測定は,簡便な立位バランス能力の評価として広く臨床で使用されている評価法であり,高齢者の転倒を予測する指標としての有用性も報告されている。そこで本研究は,咀嚼能力の評価指標である咬合力に着目し,身体機能との関係を明らかにした上で,咬合力が片脚立位時間に影響を及ぼす因子と成り得るかを検討した。【方法】対象者は,デイケアを利用する高齢者55名(男性18名,女性37名,要支援1・2)とした。年齢82.9±5.6歳,体重54.7±13.5kgであった。対象者の選択は,痛みなく咬合可能な機能歯(残存歯,補綴物,義歯含む)を有することを条件とし,重度の視覚障害・脳血管障害・麻痺が認められないこと,及び重度の認知症が認められないこと(MMSEで20点以上)とした。咬合力の測定は,オクルーザルフォースメーターGM10(長野製作所製)を使用した。身体機能評価として,片脚立位時間,残存歯数,大腿四頭筋力,握力,Timed Up & Go test(TUG),Functional Reach Test(FRT)を実施した。統計処理は,Pearsonの相関係数を用いて測定項目の単相関分析を行い,さらに片脚立位時間に影響を及ぼす因子を検討するために,目的変数を片脚立位時間,説明変数を咬合力,大腿四頭筋力,TUG,FRTとした重回帰分析(ステップワイズ法)を用いて,片脚立位時間と独立して関連する項目を抽出した。なお,統計解析にはSPSS ver.21.0を用い,有意水準を5%とした。【結果】各項目の単相関分析の結果,咬合力と有意な関連が認められたのは残存指数(r=0.705),片脚立位時間(r=0.439),大腿四頭筋力(r=0.351)であった。また,片脚立位時間を目的変数とした重回帰分析の結果,独立して関連する因子として抽出された項目は,TUGと咬合力の2項目であり,標準偏回帰係数はそれぞれ-0.429,0.369(R<sup>2</sup>=0.348,ANOVA p=0.002)であった。【考察】本研究は,高齢者における咬合力と身体機能との関係を明らかにし,片脚立位時間における咬合力の影響を検討することを目的に行った。その結果,咬合力は,残存歯数,片脚立位時間,大腿四頭筋力との関連が認められ,片脚立位時間に影響を及ぼす因子であることが示された。咬合力の主動作筋である咬筋・側頭筋は,筋感覚のセンサーである筋紡錘を豊富に含み,頭部を空間上に保持する抗重力筋としての役割を持つことが報告されている。また,噛み締めにより下肢の抗重力筋であるヒラメ筋・前脛骨筋のH反射が促通されることから,中枢性の姿勢反射を通じて下肢の安定性に寄与していることも報告されている。本研究の結果,咬合力と片脚立位時間に関連が示されたことは,高齢者の立位バランスにおいて咬合力が影響を与える因子であることを示唆しており,これらのことはヒトの頭部動揺が加齢に伴い大きくなること,平衡機能を司る前庭系は発生学的・解剖学的に顎との関係が深いことからも推察される。咬合力を含めた顎口腔系の状態と身体機能との関連について,今後更なる検討が必要と思われる。【理学療法学研究としての意義】臨床において,義歯の不具合や歯列不正・摩耗・ムシ歯・欠損等により咬合力の低下した高齢者は多く見受けられる。本研究により咬合力が片脚立位時間に影響を及ぼすことが示されたことは,高齢者の立位バランスの評価において,咬合力を含めた顎口腔系の評価の重要性が示された。
著者
埴淵 俊平 伊藤 京子 西田 正吾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.383, pp.59-64, 2011-01-14
参考文献数
20

近年笑顔認識技術の向上・市販化により,今後人と人,もしくは人と人工物がコミュニケーションをする際に笑顔情報を利用したインタフェースデザインが検討されると考えられる.本研究では,笑顔がもつ他者の受容が適用可能なコミュニケーション場面とそのインタフェースデザインを検討することを目標とし,笑顔の送り手-受け手といった関係性を顕在化した場面を適用することで,内部観察的に笑顔の受容が会話に与える影響を分析することを目的とする。具体的に笑顔表出者が笑顔メッセージを受け手に送信する過程を笑顔アイコンを用いて視覚化した2種類の会話場面(対面・非対面会話)によって分析する.会話実験より,笑顔がもつ受容は5つの主成分に影響を与え,また爽快な印象が自分の笑顔表出量と相関があり,社会的な印象が他者の笑顔表出量と相関がある可能性が示唆された.
著者
佐藤貞雄
雑誌
日本歯科評論
巻号頁・発行日
2005
被引用文献数
1
著者
久保 金弥 岩久 文彦 小野塚 実
出版者
日本教育医学会
雑誌
教育医学 (ISSN:02850990)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.335-340, 2008-06