著者
田中 博道
出版者
北海道大学
巻号頁・発行日
1978

博士論文
著者
牧田 慶久
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.1445-1449, 1999-12-28
被引用文献数
1

長期透析患者の副甲状腺機能を検討する目的で, 10年以上観察し得た安定期維持透析患者38例を対象にc-PTHなどを各種パラメーターとして検討した. 透析導入時の年齢とc-PTHとの関係では, 高齢になるにつれてc-PTHが低値となる傾向が認められた (p<0.05). c-PTHが10ng/m<i>l</i>以上を二次性副甲状腺機能元進症として検討すると充進症の頻度は経年的に増加し, 透析開始10年後には38例中17例 (44.7%) が機能亢進症に陥った. 機能亢進症に影響を与える諸因子の検討では, (1) 透析期間中の平均血清Ca値が9.0mg/d<i>l</i>以上の群では9.0mg/d<i>l</i>未満の群に比し, 機能亢進症が有意に低頻度であった (p<0.0005). (2) 活性型ビタミンD (VitD) 投与期間が透析期間の60%以上の群では60%未満の群に比し機能亢進症が有意に低頻度であった (p<0.0005). (3) 活性型VitD投与期間と血清Ca値の間には正相関が認められた (r=0.452, p<0.005). (4) 血清P値と機能亢進症の間には有意な相関を認めなかった.<br>以上から, 血液透析期間が長期化するにつれc-PTHは漸増し重篤な骨合併症を惹起する副甲状腺機能亢進症に陥る危険性が高まることが示唆された. またこれを予防するには活性型VitDを投与し, 血清Ca値を9.0mg/d<i>l</i>以上に保つことが有用と思われた.
著者
中村 克典
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.21-26, 2014-06-25

東日本大震災およびこれに伴う巨大津波が東北地方太平洋沿岸地域にもたらした被害については筆舌に尽くしがたい。この地域の,特に砂丘海岸地を広く覆っていたクロマツを主体とする海岸林は,風や砂,塩の害から沿岸の生活を守り続け,さらには津波に対する防災効果も期待されてきたものであるが,今回の災害では「壊滅」とも表現される激甚な被害状況を呈するに至った。この事態,というよりむしろ「壊滅」というキャッチコピーとともに伝えられたショッキングな映像の印象により,「海岸林は役に立たなかった」「そもそも,マツの植林がよくなかった」といった画一的な観念が人々の間に広まってしまったことに,長く海岸林に関わってきた研究者の多くは強い危機感を感じている。東日本大震災津波により「壊滅」したとされる海岸林であるが,実際に発生した被害の状況や形態は地域により様々であり(中村,2011),一概に壊滅・消失したわけではない。また,津波被害を受けた樹木のほとんどがクロマツ・アカマツ(東北地方太平洋沿岸では,磯浜海岸を中心にアカマツが広く分布する)であったのは事実だが,それは単に元の海岸林でのこれらの樹種の優占度を反映したものに過ぎず,マツが他樹種に比べ津波に弱いことを示しているわけではない。一方,マツであれ他の樹種であれ,被災直後には生き残ったように見えた木でも,津波に伴う海水への浸漬と土壌への塩類の付加,海砂のよ堆積,漂流物衝突による物理的損傷などで生じたストレスにより時間をかけて衰弱が進行する可能性があり,一時期での観察結果をもって津波による樹木被害のあり方を断ずることはできない。結局のところ,海岸林を構成する樹木,中でもその主体を成していたクロマツ・アカマツが津波に強かったのか,弱かったのかを判断するには,様々な条件下におかれていた木について,一定期間の継続的な調査を実施して,科学的な検討に耐えるデータを集積する必要がある。そのような観点から,筆者らは青森県から宮城県にかけての樹種,樹齢や津波被害状況の異なるクロマツ・アカマツ林に固定調査区を設置し,マツの衰弱・枯死経過に関するモニタリング調査を行った(中村ら,2012)。しかしながら,そのような科学的な検証を経た結論が示されるより前に,被災前の海岸林で主体となっていたクロマツ人工林に対する否定的な見解が広く行き渡り,反動として広葉樹を主体とした海岸林再生が主張されるようになった(磯田,2013;齋藤,2013)。あるいは,技術的に確立されたクロマツ植栽を中心に海岸林再生を考えようとする立場からも,より高い防災機能や松くい虫被害への備え,ないし多様な生物相の醸成といった観点から広葉樹の導入・活用に向けた期待は高まっている(日本海岸林学会,2011;東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会,2012)。海岸林への広葉樹導入についてはすでに相当な研究の蓄積があるが(金子,2005:宮城県森林整備課,2012),津波影響の残る海岸砂丘地や決して理想的とは言えない外来土砂による盛土面など,津波被害跡地という特殊な状況下での植栽技術については,広葉樹のみならずマツに関しても再検討されることが必要であろう。実際,すでに多くの研究機関や団体がそのような観点からの試験植栽に取り組んでおり,森林総合研究所東北支所は東北森林管理局と共同で青森県三沢市の津波被害跡地に海岸防災林植栽試験地を設定し,広葉樹を含む植栽木の活着・成長やその生育基盤である土壌環境について調査研究を行っている。本稿では,森林総合研究所東北支所が取り組んでいる上記の試験研究について,2013年3月28日~29日に開催された森林立地学会現地研究会での訪問先との関連で説明する。ただし,ここで示す内容には未公表のため詳細を示せないものや,調査継続中のため今後結論が変わる可能性のあるものが含まれる点,あらかじめご了承いただきたい。
著者
平岡 義和
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.19, pp.4-19, 2013-11-10

2011年3月,東日本大震災によって福島第一原子力発電所において未曾有の大事故が発生した。この事故は,東京電力が主張するような「想定外」の事象ではない。さまざまな報告書が指摘するように,津波のリスク,全電源喪失のリスクは,いずれも事故以前に指摘されていた。にもかかわらず,東京電力,経済産業省原子力安全・保安院,内閣府原子力安全委員会の多くの不作為が積み重なり,適切な対策が取られなかったことが,結果として事故につながったのである。その意味で,この事故は,「組織の逸脱(organizational deviance)」ないしは「組織体犯罪(organizational crime)」という観点から考察することができる。本稿では,この事故同様大きな被害をもたらした水俣病事件と対比しつつ,福島事故の経緯を検討する。そして,両者に通底する「組織的無責任(organizational irresponsibility)」のメカニズムを指摘することにしたい。それは,事業者と規制当局が相互依存関係の中で,経営リスクなどの外的圧力のもと,本来対応すべき「問題」を外部との「コンフリクト」として処理してしまうというものである。それを正当化するために用いられるのが,厳密な証明を求める実証科学の論理なのである。こうしたメカニズムは,組織においてつねに働く可能性があり,巨大技術の不確実性と相まって,根本的に事故のリスクをゼロにすることはできない。その意味で原発事故は不可避と言える。
著者
比留間 伸行 橋本 佳三 武田 常広
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.1293-1300, 1994-10-20
被引用文献数
13

両眼融合式立体テレビの試作番組を観視している被験者の調節応答を, 眼球運動を追尾して測定可能なTDO III(Three-Dimensional Optometer III)で測定を行った.試作番組は, 2系統のハイビジョンカメラとVTRで制作してNTSCにダウンコンバートし, 液晶シャッタを用いた時分割立体ディスプレイで提示した.番組観視中は, 通常の平面のディスプレイの場合に比べ, 被験者の眼球の焦点位置が近方に調節される傾向があること, また, シーンのカット切り換えの直後に被写体が画面いっぱいに現われ, 距離感が急激に変化するような演出の立体画像や, 主な被写体がスクリーン面より手前にある画像では, この効果が強く現れることが計測された.これらの知見は, 立体画像の視覚への影響の解明や立体テレビ番組の制作に役立つであろう.
著者
深瀬 敦 藤田 忠寛 青木 英夫 玉置 勝司 山村 雅章 山田 重雄 渡辺 英男 盛重 正仁 兼松 恭規 遠藤 ゆかり
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.1092-1101, 1992-10-01
被引用文献数
3 1

近年,コンピュータ支援による補綴物製作の手法が広く検討されているが,当講座においても,1984年頃よりCAD/CAM補綴のシステム化に関する課題に着手した.歯冠補綴物の変遷を考えると,CAD/CAMによる加工は"第三の波"ともいえるが,現在ではすでに製作方法も実用化の段階に入っている.しかし,補綴物は一般工業製品とは異なる多くの条件をもつので,その特殊性を考慮した独自のソフトウェアの構築が必要である.本論文は,CADによる歯冠形態設計の手法として,マスターモデルの修正法,支台歯マージンの設定法,エルミート曲線による軸面形態付与法について検討したものである.
著者
梅原 肖美 脇元 幸一 岡田 亨 斉藤 仁 佐々木 紗英
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.H1046-H1046, 2004

【目的】<BR>我々は、2002年6月よりN高校アメリカンフットボール部に対して、医科学的サポートを実施している。今回、傷害調査とフィジカルチェックを通して、オフェンス(以下OF)・ディフェンス(以下DF)別の受傷機転と身体能力の関連性について以下に報告する。<BR>【対象】<BR>2002年6月~2003年11月にN高校アメリカンフットボール部に在籍し、ライン以外のポジションの選手、延べ29名、平均年齢16.4歳を対象とした。<BR>【方法】<BR>傷害調査は、2003年1月から10月の期間、聞き取り調査を実施した。調査結果より、傷害で1日以上練習を制限、または試合を欠場した選手の受傷機転を調べた。受傷機転は1対1のコンタクト時を単数群、密集や、1対複数の受傷を密集群とし発生傾向を調査した。<BR>フィジカルチェックは、年に2回6、10月に実施した。項目は、以下のとおりとした。身体計測「体重・体脂肪・筋力量」、柔軟性測定「指床間距離;Finger-Floor-Distance以下FFD、下肢伸展挙上;Straight-Leg-Raising以下SLR、踵殿間距離;Heel-Buttock-Distance以下HBD」、筋力テスト「等尺性膝伸展筋力、等速性膝伸展筋力;以下60deg/sec(peak-Torque/Body-Weight)」。結果は,Wilkcoxonの符号順位和検定を用いた。<BR>【結果】<BR>傷害調査結果、対象は31件だった。その中でポジション別、受傷機転別での傷害発生は、OFは単数群7件、密集群5件、DFは単数群12件、密集群5件であった。フィジカルチェックの結果によるOFとDF間の違いは、体重OF:62kg、DF:61kg、体脂肪率はOF:13.7%、DF:13.9%、SLR:はOF:84°、DF:86°、HBDはOF:8.6cm、DF:8.9cm、等尺性膝伸展筋はOF:111.0kg/kg、DF:102.9kg/kg、60deg/secは、OF:99%、DF:101%、と有意差は認められなかった。<BR>【考察】<BR>傷害調査より、OFはDFより1対複数のコンタクトによる受傷が多い傾向にあった。これは、OF選手がタックルの対象になるため、多数の選手より大きな外力を受ける結果と考えられる。また、フィジカルチェックでは、OF・DF間に有意差はなく、身体特性と受傷機転には関連性が認められなかった。これには、競技年数が浅く初心者が多いことから各ポジションにおける身体能力の確立が十分でないことが原因として考えられる。このため、選手の身体能力の状況とポジション別の障害発生の傾向を十分理解し、現場のリスクマネージメントと競技力向上に協力していくことが重要と考える。
著者
平松 雅伸
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.195-204, 2016

2015 年8 月12 日夜,中国天津市の危険物倉庫で大きな爆発火災事故があり,消火にあたった数百人の消防士が殉職,負傷するとともに,多数の住民が死傷し,また,住宅建物設備の損壊も生じ,生活・生産・物流・環境汚染等の面で深刻な影響があった. 事故発生当初の速報としては,インターネット上を始め,かなりの情報が発信されていたが,直後から当局の情報管理や制限により,被害状況,調査の進捗や報告の状況,再発防止策が見えにくかった. 公開された事故情報やその後の調査報告書から見えてきたのは,事業者の法令遵守の逸脱や規制当局の違法許可,消防技術の教育不足等の課題であり,総合的にみて事業者の安全文化から社会構造までにわたり根の深い問題と捉えられた.
著者
西村 智
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.25-37, 2016

本稿は,若者の恋愛離れの非経済的要因として,恋人探しを先送りする行動に着目した。行動経済学にもとづくアンケート調査と実験結果から,目先の気楽な独身生活を優先させて恋人探しを先送りしている未婚者が少なからずいることがわかった。また,恋愛を先送りしており,かつ,現在偏重型の者は,先送りしていることを自覚させられることにより恋愛においてより積極的になるという結果が得られた。これらの結果は,恋愛の先送り行動に関するさらなる研究の必要性を示唆している。
著者
Anello Giovanni
出版者
日本数学会函数方程式論分科会
雑誌
Funkcialaj Ekvacioj (ISSN:05328721)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.113-122, 2016
被引用文献数
3

Let Ω be a bounded domain in RN with smooth boundary. Let f: [0, + ∞[ → [0,+∞[, with f(0) = 0, be a continuous function such that, for some a > 0, the function ξ∈]0, +∞[ → ξ−2 · ∫0ξ f(t)dt is non increasing in ]0,a[. Finally, let α: <span style="text-decoration: overline">Ω</span> → [0,+∞[ be a continuous function with α(x) > 0, for all x ∈ Ω. We establish a necessary and sufficient condition for the existence of solutions to the following problem −Δu = λα(x)f(u) in Ω, u > 0 in Ω, u = 0 on ∂Ω, where λ is a positive parameter. Our result extends to higher dimension a similar characterization very recently established by Ricceri in the one dimensional case.
著者
小林 大太 居村 岳広 堀 洋一
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.136, no.6, pp.425-432, 2016
被引用文献数
14

Transmitting efficiency is one of the most important characteristics in dynamic wireless power transfer for electric vehicles. In this paper, a simple and efficient topology for a transmitting system called the DC bus system is introduced. Its simplicity maximizes the potential transmitting efficiency. Moreover, a receiving circuit topology and a maximum efficiency control, which is a method to maximize the transmitting efficiency by controlling the secondary voltage, are proposed. A real-time coupling coefficient estimation method is necessary to calculate the secondary voltage command for the control. A simulation and experimental evaluation of the maximum efficiency control was performed using an experimental setup. The results indicate that it provides a large improvement in efficiency and its implementation in a real dynamic power transfer system for electric vehicles is feasible.