著者
鈴木 和夫
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 開発工学部 (ISSN:09177612)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.47-54, 2008-03-31

この総説では痛みの定義および古代からの痛みの治療について挙げ,レーザー治療に至る経緯,現在のレーザー治療およびその鎮痛機序の解析について紹介している.低出力レーザー(ソフトレーザー)とはどの様なものか述べ,実際の治療について麻酔科領域や整形外科領域の症例の肯定的および否定的両方の報告を示した.次に低出力レーザー照射鎮痛機序の解析的研究について,痛覚誘導をおこす物質や微生物を用いた疼痛モデル動物実験を挙げ,低出力レーザーが鎮痛に確かに効果があることを述べた.また,人為的に発生させた痛覚の活動電位(スパイク)を中枢に伝える感覚神経にレーザー照射したときスパイクは抑制され,レーザーはC 神経線維由来の感覚シグナル,つまり疼痛に特に効果があることを紹介した.そして,ミトコンドリアやATP などの生体活性物質が低出力レーザーにより変化して,それが起因して鎮痛がおこるという説,血流改善による鎮痛作用,中枢の下降性抑制系の賦活化による鎮痛作用,神経細胞膜のチャネルに作用,および発痛物質のシグナル伝達系の蛋白質に作用するという説を紹介した.これらの仮説から鎮痛機序をさらに解明するには中枢神経系の下降性抑制系のレーザーによる賦活化,およびレーザーが細胞レベルの物質に作用して光活性反応による分子構造変化を誘発しシグナル伝達を変調させるという観点から研究を進めることが期待される.
著者
山本 達人
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.139-148, 2015

The purpose of this article is to review of the empirical studies of parents' attitudes toward school education in Japan and to lead problems about the study of the opinions and requests from parents to school in Japan. For this purpose, I try to review the empirical studies of parents' attitudes toward Japanese school education in time series.
著者
秋葉 和温
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.775-780, 2013-07

私は媒介者検索のため,7月22日に久保田さんの家の離れにお邪魔した。幸いにも,久保田さんの離れを井野専務夫妻が借りておられて,私を泊めて下さるというのである。有り難いことであった。しかも,この離れの裏にはバタリー鶏舎があったので,この離れに血液塗抹や染色用具,携帯顕微鏡,接種用ヒナなどを置き,裏の鶏舎で作業して,その処理を,この離れの部屋の座り机の上ですることができたので,大変好都合であった。お邪魔して最初は,裏の鶏舎に入り,まず糞の状態を見る。緑色をした便を見つけたら,顔を上げて鶏冠の状態を見るのである。鶏冠が白っぽくなっていれば,その鶏は貧血しているのである。このようにして緑色便と貧血の見られる鶏を数羽,探し出して,血液塗抹をとった。離れに帰ってメタノール固定し,ギムザ染色をして顕微鏡で検査して,II期とV期の原虫が同時に見られるような鶏を選び出したのである。V期の原虫のみしか見られない鶏では,すぐ消失してしまうかもしれない,II期とV期の原虫が同時に見られるような鶏はV期の,すなわちガメトサイトの出始めであることを示していて,ニワトリヌカカに吸血させるのに好都合であったからである。
著者
KOVALEVSKII Alexander L. NEFEDEV Michail A. LANDA Will E.
出版者
The Society of Resource Geology
雑誌
資源地質 (ISSN:09182454)
巻号頁・発行日
vol.44, no.248, pp.429-438, 1994

潜頭貴金属鉱床ゾーン,南部タイガの丘陵地域の鉱床の探査や地質構造マッピングには,生地球化学,生地球物理学,地質考古学を組み合わせると大変効率的である.もっとも効率的な方法は,生地球化学的探鉱(NBE)と生地球化学的探査(NBP)である.ブルドーザーによって100-200mの長さをもつ16の溝を掘って調べた通常の土壌と地質の調査により詳しい探鉱の行われていたところで,これらの方法を用いたところ160の銀の生地球化学的異常(SOBA)と10の金と6つの白金属の強い生地球化学的異常が見いだされた.銀含有量が100-3,000ppmの15のSOBAを調べたところ3,300-6,000ppmのAgをもつ9つの鉱体, 1-50ppmの銀と,金,白金属を含む33の銀を含むゾーンが見いだされた. NBPを用いて100-3,000ppmのSOBAのところで, 4-10mの溝を掘って再調査をしたところ15の銀の鉱床が見つかった.植物サンプルを1-3m間隔で採集し, NBPを用いて51, 35と15の銀の異常(SOBA)をもつ3つの有望な銀鉱床が見つかり,植物の灰の中に70-3,000ppmの銀を含むことがわかった.最初の探査段階で生地球化学プロファイルとともに生地球物理学と地質考古学を共に用いることが推奨される. NBPは,鉱体の全体を知ることと,地表での地質構造調査に基づいて鉱床の様子を知るのによい方法である.
著者
三宅 正二郎 橋爪 剛 渡部 修一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMD, 機構デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.366, pp.25-28, 2003-10-10
被引用文献数
1

新しい固体潤滑膜を開発するため銀と金のナノ周期積層膜をRFスパッタリングで形成した。ナノインデンテーション試験によれば、ナノ周期積層膜は高硬度を示す。さらにボールオンディスク試験によると4-nm周期積層膜はμ=0.05の低摩擦を示し、銀、金単屠膜より長摩擦寿命を示す。また、摩擦による電気抵抗の変化は単層膜より著しく小さい。
著者
島田 周平
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.2_1-16, 2009
被引用文献数
2 1

脆弱性理論は,脆弱性概念の多義性のために未だ有効な分析概念とは認められていない.しかし,アフリカの貧困問題や農業の持続性の理解のための学際的研究分野においては,大きな可能性を持つと考えられている.本稿では,アフリカ農村社会の分析にとって適切な脆弱性の定義を試み,次に個人,世帯,社会集団という主体の違いによって現れる脆弱性の多様性を整理した.その上で,ナイジェリア,ブルキナ・ファソ,ザンビアで行った農村調査の結果をもとに,個人,世帯,社会集団の脆弱性がどのような過程で増大してきているのか考察した.その結果,個人,世帯,社会集団の脆弱性は,相互に密接な関連を持ち影響しあっていることが明らかとなった.たとえば,ブルキナ・ファソから南部諸国への出稼ぎは,干ばつ常襲地域の世帯の脆弱性を緩和するものであったが,2000年にコート・ジボワールで起きた外国人排斥運動に遭い,突然中止せざるを得なくなった.このことで国外追放された個人,世帯はもとより,彼らが帰った先の故郷の農村社会の脆弱性にも深刻な影響を与えた.このような複雑な脆弱性を理解するためには,主体間の脆弱性増大の影響やそのプロセスを明らかにした上で,次にそれらの間の相互関係を解析する必要がある.
著者
岡野 初枝
出版者
岡山県立大学短期大学部
雑誌
岡山県立大学短期大学部研究紀要 (ISSN:13404687)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-11, 1997

社会福祉労働について一つの定義をあげれば,社会福祉の制度とか政策が住民に活用されるために,社会福祉に従事している人々により行われる労働ということができる。労働の分類では直接財貨を生産しないために,非生産的労働としてサービス労働に分類されている。しかし社会福祉労働は非生産的な労働ではなく,憲法にもとづく生存権を保障するために社会福祉行政に伴って現れる有用な労働である。 社会福祉労働は,生活に課題を持つ個人およびその家族に対して働きかける有用な労働であり,その対象は現実の社会的な諸関係に制約されている生きた肉体を持った個人の生活課題とそれに付随する精神的・人格的課題に対して行われる。そのとき社会福祉労働は個人の恣意として行われるのではなく,社会の責務として人問の社会権存在権を保障するために行われる。 社会福祉労働に従事する場所は,社会福祉事務所や児童福祉施設などが主であったが,高齢社会を迎えた現在では,老人福祉施設など高齢者を対象にした施設での従事者が増加している。また地域福祉や在宅福祉サービスの整備によりホームヘルパーの増加などその一端を示している。 社会福祉労働に従事する場合,基本理念としての倫理性が重視される。同特に,存在権を保障する方法については専門的技術を必要とする。高齢社会を迎えた現代の社会福祉労働の新しい課題は,社会福祉労働者によって住民の環境としての社会制度や政策を変革していくことである。
著者
増山 栄一 エリック
出版者
広島国際学院大学現代社会学部
雑誌
現代社会学 (ISSN:13453289)
巻号頁・発行日
no.10, pp.115-131, 2009

It has often been criticized that Walt Disney's "They lived happily ever after" storiessuch as Sleeping Beauty and Snow White do not represent the real U.S. society. Inorder to wipe off this criticism, Walt Disney Pictures released Enchanted in whichGiselle the heroine is sent to New York City by evil Queen Narcissa from a fairytaleland, Andalasia where she was supposed to get married with Prince Edward to livehappily ever after. The movie appears to be a success because Walt Disney Picturesintroduces the traditional plots that they have valued for a long time and cleverlyintertwines them with the contemporary alternatives, or the facts of life, some ofwhich should have been mentioned in Disney's works in order to let children knowthat "living happily ever after" cannot always happen in our real lives. When Ichecked people's criticism on this successful movie in Japan and the U.S. written onthe internet, I found interesting differences in their comments and opinions in thesetwo countries. Why do these differences exist? How differently do people in thesetwo countries perceive "They lived happily ever after"? And why? In this paper, Iwill conduct a socio-cultural analysis on this Walt Disney movie, Enchanted, in order to answer these questions. 「ウォルト・ディズニーの『眠れる森の美女』や『白雪姫』等に見る『2人はその後幸せに暮らしました。』はアメリカの現実社会を適切に表していない。」とたびたび批評されてきたが、そのような批評を消し去る為に、ウォルト・ディズニーピクチャーズは『魔法にかけられて』を制作した。この映画では、ヒロインであるジゼルは悪女王ナリッサによっておとぎの国、アンダレージアから現代のニューヨークの町に送られてしまう。ゼジルはアンダレーシアで結婚して、エドワード王子と2人でその後幸せに暮らすはずであった。この映画は成功を収めたが、その理由はディズニーが長い間大切にしてきた伝統的なストーリーラインを、『魔法にかけられて』に盛り込みながらも、それを、ディズニーがもっと前に紹介すべきであった現代的な考え方、言い換えれば日常生活の現実と一緒に映画の中に組み込むことで、「2人はその後幸せに暮らしました。」は必ずしも実際の生活の中では起きるとは限らないと示唆したからである。この成功を果たした映画に対する日本とアメリカの人たちの映画批評をインターネットで読んだ時、国の違いで批評がかなり相違していることに気が付いた。なぜこのような相違が存在するのか。「2人はその後幸せに暮らしました。」は日本とアメリカでいかに相違して受け止められているか。そして、その理由は。私は、この論文でウォルト・ディズニー映画『魔法にかけられて』に関する社会文化的な分析を行い、これらの質問に答えていきたい。