著者
新谷 歩
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-11, 2014 (Released:2014-01-31)
参考文献数
14

論文投稿からアクセプトまでのプロセスはEBM 医療が盛んになる近年厳しさを増す一方です.医学雑誌の最高峰であるNew England Journal of Medicine では,年間約5000 本の論文が投稿され,最終関門の統計査読に到達した5%の論文の中から更に20%が統計手法の不備でリジェクトされます1).査読者が何を見ているのかが事前に分かれば,過酷な査読地獄を生きぬくための強力な武器となるのではないでしょうか.British Dental Journal が提供している統計チェックリストを紹介しながら,歯学研究を行う際に留意したい10 個のトピックについて解説します2).
著者
北浦 嘉之
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学 (ISSN:03759253)
巻号頁・発行日
vol.26, no.11, pp.1207-1213, 1962-11-01 (Released:2010-10-07)
参考文献数
20
著者
今村 峯雄
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.509-516, 2001-12-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

多くの教科書では,弥生時代の開始は300BCとして記されていが,その根拠は必ずしも明確ではない.本稿では,14C年代からみた縄文時代晩期から弥生時代への移行期の絶対年代について考察する.これまで,14C年代測定された縄文時代晩期から弥生時代にかけての遺跡は非常に少なく,そのほとんどが高精度AMS14C測定以前のもので,誤差が大きいこと,しかもそのかなりのデータは資料選択の不適性さ,遺跡の撹乱などの可能性があり,問題が多いことがわかる.これまでの少数の14C年代測定例からみると,縄文時代晩期と弥生時代の画期は750BC~400BCにある.この時期は,14C濃度がほとんど変化しない特異な時期にあたっており,実年代を精度よく求めることが難しい.今後,測定数を集中的に増加させるとともに,年輪試料を用いた14Cウイグル・マッチングなどの高精度測定への取り組みが要請される.
著者
日高 利夫 桐ヶ谷 忠司 上條 昌彌 木川 寛 河村 太郎 河内 佐十
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.267-273_1, 1992-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
5
被引用文献数
10 16 6

浸漬液中の次亜塩素酸ナトリウム (NaClO) の濃度を変えて, もやし及びキャベツ中の残留塩素とクロロホルム (CHCl3) の生成量を調べた結果, 残留塩素, CHCl3ともにNaClO濃度が高くなるにつれて増加した. しかし, キャベツにおけるCHCl3の生成量はもやしより少なかった. NaClO溶液で処理したもやし及びキャベツをガラス製容器に保存し, 残留塩素及びCHCl3生成量を経時的に調べた結果, 残留塩素は低温保存の場合に損失が少なく, CHCl3は塩素の残存している間は増加した. また, 温度の異なるNaClO溶液にもやしを浸漬して調べた結果, 処理温度が低いほどCHCl3の生成量は少なかった. したがって, 野菜をNaClO溶液で処理する場合, CHCl3の生成の少ない低温処理が望ましいことが分かった.
著者
佐藤 武宏
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
no.57, pp.p50-63, 1994-11
被引用文献数
1

これまでの各論で述べた様々な動物群による捕食形式とその捕食器官, また捕食によって生じる捕食痕についてまとめたものが, 表2である.本論では化石に残る捕食痕を生じさせる捕食様式に焦点をあてて議論を進めてきた.破壊という捕食様式を中心として捕食被食の関係を観察する際に, 被食者である巻貝を例にとると, その対捕食者戦略としてはVermeij (1983)などがまとめた, 密な巻き方, 外部装飾, 殻口部の肥厚と歯の存在などといった物理的な戦略が第一に挙げられるだろう.このような形態的な対捕食者戦略は化石サンプルからもその発達を考察することができるため, 極めて重要である.しかし, 現実には形態的な対捕食者戦略以外の戦略を採用しているものも少なくない.例えば毒を持つ, 捕食者にとってまずさを感じさせるような防御機構を持つといった化学的戦略も有効であろう.また, 生態的な戦略としては二枚貝の持つ固着の戦略(Harper, 1991)やイタヤガイ科貝類の遊泳(Hayami, 1991), 堆積物の中に深く潜るといった戦略, あるいは捕食に対しては直接的には何の防御手段を持たないがr戦略的な繁殖様式を持つといった戦略も考えられるだろう.進化の過程において海底洞窟などのような捕食圧の低い, 隠生的な環境に生息することによって原始的な形態を保持しつづけているグループも報告されている(Hayami and Kase, 1992).破壊という捕食様式に注目すると, 各論で詳しく述べたようにタマガイ科, アクキガイ科の巻貝, タコの仲間, カニの仲間, およびシャコの仲間による捕食は極めて特徴的な捕食痕を示すものであり, 捕食されて破壊された貝の貝殻や再生痕の認められる貝殻から捕食者をある程度特定することが可能であろう.このような捕食者と被食者の種間関係を硬組織上に記録された情報から推定することが可能であるということは化石サンプルへの応用を考える際には非常に重要な意味を持つであろう.なぜならば種間関係の時間的な推移を知ることで初めて具体的なエスカレーションの検証が可能になるからである.しかし, それにはまだいくつかの問題点も残されている.その一例として非生物学的な破壊, すなわち運搬や堆積に伴う物理化学的な殻の破壊や欠損と捕食による破壊を分離する必要がある.ということが挙げられよう.Kidwell and Baumiller (1990)は堆積物と水を満たした回転ドラム内にウニの標本を入れて様々な条件下での破壊や磨滅の様子を詳しくしらべているが, 同様に堆積物を加えた回転ドラムや流水水槽などを用いて貝殻の物理的な破壊実験を行ってその特徴を分析する, あるいは様々な条件下での貝殻の溶触実験を行って比較を行うなどの実験的なアプローチが必要であろう.また, この生物による破壊と非生物起源の破損を分離することはこれまでの古環境解析の手法にも大きな問題を提起するだろう.これまでは産出化石が自生的なものか他生的なものかということは, 捕食の影響を考えずに, 古環境の復元に際して重要な鍵であるとされてきた.しかし, 実験等によって得られた知見などによって堆積過程における破壊を単離することが可能になるならば, より一層精度の高い古環境復元が可能になると予測される.破壊された化石サンプルを加えて化石を評価することができるということはある意味では非常に無駄の少ない研究であると言えよう.これまでの古生物学の研究の主題には分類学や機能形態学といった完全な標本が必要とされるものが多く選ばれており, 不完全な, 破壊の見られる標本はしばしばなおざりにされてきた.しかし, 破壊された個体も含めて群集内のすべての個体を評価することを主眼とした研究においては.「不完全な」個体は非常に重要な意味を持つ.また, このような個体群動態を通じて進化プロセスを考察する研究ではいわば(伝統的地質学にありがちな)山師的な研究方法が通用しないということがいえよう.分子古生物学の分野でもどれだけ古い化石サンプルからDNAやタンパク質を抽出することができたか, という方針に対して分子のデータを用いて系統関係を再構築したり, 種分化を伴う生物地理学に応用したりといった方針の重要性が説かれている.それと全く同様に捕食被食の関係を研究する場合でも, 捕食痕を持つ最古の化石を追い求めることももちろん重要ではあるが, 多くのサンプルを用いた群集の時間的推移やその進化プロセスを検討する研究も重要であることはいうまでもないだろう.これまで多くの種間で捕食被食の関係は確認されているが, その共進化システムやエスカレーションのプロセスにまで考察を加えたものは多くはない.各論で述べたように被食者を中心としたその対捕食戦略の発達について水槽実験や化石標本の形態計測などから検討したものはいくつか見られるが捕食者の捕食戦略に対して考察を加えたものはほとんど見られない.佐藤(1994)は浅海域における巻貝の重要な捕食者であるガザミPortunus (P.) trituberculatusの捕食器官であるハサミの同種内での地理的変異とその被食者の分布パターンとの関係がエスカレーションによって導かれる結論に調和的であることを指摘しているが, 今後このような, 捕食者と被食者のそれぞれの戦略を比較した研究が多く行われることが必要であろう.理論的な捕食被食関係のシミュレーションや実験を中心とした考察は一般に一対一の種間関係のみで行われてきた.しかし, 現実にはある被食者に対して複数の捕食者が影響を与えていたり, ある捕食者が複数の種を捕食したりすることは一般的に見られることである.のみならず, ある種が捕食者であると同時に被食者であるような中間捕食者の立場や共食いを行う種である場合もあり得る.さらにある種が捕食被食の種間関係によってのみ制約を与えられている場合は極めて稀であり, その他にも競争関係や共生関係, 資源利用の制約といった複雑な種間関係から同時に制約を与えられていることが多い.複数の系に対するシミュレーションや実験等のアプローチはまだその手法も十分に確立されているとは言い難いが, 複雑な系における進化プロセスを考察することによってこそいわば拡散共進化的な群集全体の進化過程がより明確に理解されるのではないだろうか.また, 現生生物の観察においてもどの種間関係がその種にどれだけの影響を与えているのかを単離することや, その種間関係によってもたらされる同種内異変をどう解析するかが今後の課題として重要性を持つであろう.
著者
神川 龍馬
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

光合成は、エネルギーと糖を太陽光と二酸化炭素から得られるという利点がある。にもかかわらず、光合成能を完全に喪失し、光合成性から従属栄養性へと進化した藻類が存在する。従属栄養性への進化を解明するため、本研究では非光合成性珪藻類Nitzschia sp. をモデルとして研究を行った。その結果、本藻は光合成能喪失後も葉緑体を維持しており、光合成以外の葉緑体代謝機能をほぼ喪失しておらず、アミノ酸や脂肪酸などの物質を細胞内で合成できることが分かった。すなわち、光合成能の喪失とは必ずしも葉緑体機能の縮退を意味しない。