著者
鈴木 紀子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.23, pp.258-276, 2013 (Released:2013-10-22)
参考文献数
21

1950年代に加速するアメリカの冷戦文化政策に,文学はどのような関わりを持ったのか.本論文は,戦後日本で広く名を馳せ,且つGHQや米国国務省の支援を受けた米文学作家-William Faulkner,Pearl Buck,Laura Wilder-とその作品に着目し,戦後アメリカが日本に対し行った「模範的民主国家アメリカ」の自己イメージ形成にこれら米文学作家・作品が果たした役割を考察する.一方日本人読者はどのようにその「アメリカ」を受容したのか.筆者は,日本人読者がアメリカを優越的他者として受容しながら,同時に文学に表象された,また作家自身が体現する「アメリカ」に日本文化との共通要素を積極的に見出そうとする解釈が見られる事に注目する.この独特な解釈には,戦後日本人がアメリカを「内側」に取り込み,自己として消化し,それを足掛かりにすることで形成しようとした新たなアイデンティティの一端を見ることが出来るのではないか.これらの考察を通し,本論文は,戦後冷戦初期に日米両国のナショナルな主体形成の一助を成した米文学の機能と,それを巡る両国間の相互依存関係を提示する.
著者
鶴島 博和 櫻木 晋一 亀谷 学 菊池 雄太 城戸 照子 西村 道也 新井 由紀夫 徳橋 曜 安木 新一郎 図師 宣忠 阿部 俊大 西岡 健司 名城 邦夫 山田 雅彦 向井 伸哉
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1. 2018年5月20日日本西洋史学会(広島大学)でDr David Roffeを招聘してDomesday Moneyersと題する研究報告、5月24日熊本大学においてThe Domesday Text Projectという講義を行った。2. 9月2日から8日までは、熊本大学と同志社大学においてThe International and symposium workshop on Money and its Circulation in the Pre-Modern Western Eurasian World in 2018を開催した。報告者は地中海世界のイスラーム貨幣に関してはスペインの大学からProf. F. M.atima Escudero, Prof. Alberto Canto, Carolina Domenech Belda 、Prof. W. Schultz、と科研メンバーの亀谷学が、世界のキリスト教世界に関してはイギリスからDr William Day , Dr Adrian Popescuが、スペインからはProf. D.Carvajal de laと Vega Dr Albert Estrada-Riusが、そして科研メンバーの阿部俊大が行った。議論は、多岐にわたり、とくに少額銀貨の流通に関して有意義な知見をえた。スペイン貨幣史研究の指導的研究者である Prof. Alberto Cantoからはこれまで経験したシンポジウムの中で最良のものの一つであるという評価を得ている。これらの報告内容に関しては報告書(2029 for 2018)に収録する予定。3.熊本地震で出土した益城町出土の古銭を地元の協力を得て分析し報告書を出版した。研究を地域に貢献することができた。4.2019年1月23日から2月10日まで鶴島がイタリアでProf. Andrea Saccocci, Prof. Monica Baldassariと研究打ち合わせを行い本年度のシンポジムに関する意見交換を行った。オックスフォード大学でZomiaに関する研究会に招待されて貨幣史から見たイングランドの無統治地域についての報告を行った。3月28日は今年度まとめの研究集会を行い、29日にドイツとバルト海の交易と貨幣についてProf. Michael Northと研究打ち合わせを行った。
著者
中尾 香 Nakao Kaori ナカオ カオリ
出版者
大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.23, pp.283-301, 2002

本稿は、一九三四年に誕生し今なお活動をつづけている学習グループ、札幌の「白雪会」の活動を跡づけ、そこから時代の変化の意味を考察しようとするものである。「白雪会」は、一九一六年に創刊された雑誌『婦人公論』の、全国に点在する愛読者グループのひとつである。熱心な女性解放論者であった嶋中雄作が入社してまもなくこれを創刊し、一九三一年からは、新たな読者層を開拓していくために先頭に立って全国をまわった。「白雪会」も、これを契機に誕生する。「白雪会」のユニークさは、戦前から戦中そして戦後へと、ほとんど途切れることなく活動をつづけてきたことである。このように継続してきたことの要因としては、①発会当時に山下愛子という、知性・人望に優れた人物がリーダーとして存在したこと、② 戦時中には特高対策のため知人に頼ったり、『婦人公論』の廃刊中に連続して講義をしてくれる講師を得るなど人脈に恵まれていたこと、③中央から著名な作家・思想家が「白雪会」を訪れ座談会をもつなど、知的な刺激にあふれていたこと、彼らが訪れなくなった一九六五年以降も地元の有識者に定期的に講義を受けていること、④戦後の活動のメインとなる「読書会」.も充実したものであったことなどである。中央公論社のつくりだした「文化圏」のなかで雑誌も読者グループも成長し、メンバーたちはグループに「解放」の場を見出していたということが言える。
著者
小田 尚子 田中 雅子 別府 道子
出版者
東京家政学院大学
雑誌
東京家政学院大学紀要 (ISSN:02866277)
巻号頁・発行日
no.22, pp.p41-44, 1982-12
被引用文献数
1

l-ペリラアルデヒドの抗菌性を,細菌5種類,糸状菌3種類を用いて,食塩との関係で検討し,更に,細菌についてはpHとの関係も併せて検討したところ,結果は以下のよぅであった。細菌においては(1)各菌におけるl-ペリラアルデヒドの生育阻害を最小生育阻止濃度で求めたところ,1600-1700ppmから3000ppm以上であった。(2)食塩とl-ペリラアルデヒドを同時に使用した場合は,併用効果がみられた。しかし,菌種によってその効果の程度に違いがみられ,S. aureusでは,効果は少なかったが,P. ovalisと,K. pneumoniaeでは顕著な効果がみられた。(3)l-ペリラアルデヒドの生育阻害作用は,水素イオン濃度の高い条件(pH5)では,より効果的になった。(4)いずれの条件でも,生育を阻害するためには,高濃度のl-ペリラアルデヒドが必要であり,実用性は期待出来ないように思われた。糸状菌においては(1)l-ペリラアルデヒドは,750ppmの濃度において,5〜7日の培養期間中,各菌の生育をほぼ完全に阻止した。(2)食塩との併用は,相剰的な効果があったが,耐塩性のP. chrysogenumにおいて,より顕著に現われた。(3)200ppm以下のl-ペリラアルデヒド濃度においても生育の阻害がみられたことと,(2)から,ある程度の実用性が期待出来るものと思われた。
著者
西林 長朗 猪野 俊平
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.820-821, pp.501-505, 1956 (Released:2006-12-05)
参考文献数
23
被引用文献数
1

1. 游走子嚢および側糸の両器官共に, 胞子葉の表皮細胞から発生する。2. 游走子嚢内における最初2回の核分裂は減数分裂であり, 其の後, 引きつづいて3回の核分裂が行われて32の遊離核が形成され, その結果, 32の游走子が作られる。3. 本植物の染色体数は n=22 である。4. 第一分裂中期の紡錘体の両極には, それぞれ中心体状の小粒が認められた。
著者
Yusuke HASEGAWA
出版者
Japan Language Testing Association
雑誌
日本言語テスト学会誌 (ISSN:21895341)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.3-22, 2019 (Released:2020-02-07)

This study aims to reveal whether any specific type of vocabulary learning strategy (VLS) leads to higher scores on semi-contextualized word meaning tests—a multiple-choice gap-filling format in which short written contexts are provided. A total of 132 first-year university students learning English as a foreign language completed a VLS questionnaire and a semi-contextualized word meaning test. The relationship between these two variables was examined using Pearson’s correlation analysis, confirmatory factor analysis, and exploratory factor analysis. The results demonstrated that the relationships between VLS use and test scores were very weak (less than rs = .20), regardless of the strategy type. The smaller correlations compared to those reported in previous studies using vocabulary size tests may be caused by the more complicated constructs involved in the semi-contextualized word meaning test, which requires not only receptive knowledge about word meanings, but also reading comprehension skills and knowledge about word forms and usage in a sentence. However, imagery strategies, such as creating a mental image of word forms, had a very weak but significant positive correlation with the test scores. Based on these results, this study further discusses how Japanese high school students who will take examinations that employ the semi-contextualized word meaning test format should learn vocabulary.
著者
東 禹彦 佐野 榮紀 久米 昭廣
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.280-284, 1994 (Released:2010-08-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

プルゼニド® (センノシド) による光線過敏型薬疹の1例を報告した.患者は66歳, 男性で, 露光部位に痒みを伴って, びまん性の発赤を生じて受診した.初診時に検査では光線過敏を認めなかったが, 偶然の機会にUVAに過敏反応を生じていることが判明した.プルゼニドRを含めて6種類の薬剤を使用していた.プルゼニド®中止により光線過敏は消失し, プルゼニド®内服により光線過敏が出現した.原因薬剤が下剤の場合には, 常に使用している薬剤ではないので, 注意深く問診を行わないと見逃す可能性がある
著者
KATO Masaki TAKASUGI Jun ICHIKAWA Takeo OGA Tatsuhide
出版者
Japanese Society for Brain Function and Rehabilitation
雑誌
Journal of Rehabilitation Neurosciences (ISSN:24342629)
巻号頁・発行日
pp.200508, (Released:2020-05-28)

There are few case reports of patients with hemiparetic stroke who had previously been diagnosed with poliomyelitis (polio). Herein, we present the case of an 84-year-old male stroke patient with right-sided hemiparesis and polio. He was infected with polio at age 6 and had severe right-leg palsy. He was able to walk independently, performed knee hyperextension, and walked using a cane prior to the stroke at age 84. He was transferred to our hospital 31 days post-stroke. At that time, manual muscle test (MMT) was Poor-to-Good for the right ankle muscles and Trace for the right hip and knee muscles. He required assistance from a therapist to walk even with grasping parallel bars because he could not hyperextend the right knee and the knee had collapsed. For physical therapy, he performed stretching, muscle strengthening, standing, and walking exercises. Consequently, he was able to walk with a walking frame independently at discharge (day 131 after the onset). He regained knee hyperextension and resolved the knee collapse. MMT for the right hip muscles became Poor. This hemiparetic stroke patient with polio had severe right leg palsy and consequently had trouble walking due to knee collapse. It is postulated that regaining the knee hyperextension enabled him to walk safely.
著者
橋田 規子
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.2-8, 2017 (Released:2019-02-15)
参考文献数
4

瓶の生産量が年々減少している。その原因の一つに若者のお酒離れがある。本稿は若者が好み,コンビニエンスストアなどで手に取ってもらうような,酒瓶のデザインの研究である。酒瓶商品としては,瓶以外にもラベルという大きなデザイン要素があるが,著者は,瓶の需要を高めることを目的とし,瓶形状に限定して研究を行われている。是非参考にしていただきたい。
著者
大森 不二雄
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.9-30, 2014-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
40
被引用文献数
1

本稿は,大学教育改革の鍵概念となっている「教学マネジメント」及び「内部質保証」に関し,大学経営と質保証の両面で先行した英国の政策と実態に関する分析・考察から,日本にとっての含意を得ることを目的としている. 大学教育に関する日本の政策言説は,全学的な教学マネジメントや大学ガバナンスの内部質保証にとっての有効性に,素朴なまでに信を置いている.しかし,英国の大学における教学マネジメントを含む内部質保証システムの整備の考察からは,経営機能の強化は,質保証の実質化の必要条件であっても,十分条件ではない可能性が示唆される.また,質保証の取組がコンプライアンスにとどまり,教授・学習過程にインパクトをもたらすに至っていない,との批判的分析は,質保証の一筋縄ではいかない複雑性と困難を表す.
著者
中川 博雄 佐々木 均 室 高広
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.277-281, 2019-11-25 (Released:2020-05-27)
参考文献数
7

注射剤は患者の組織に直接取り込まれるため,薬剤師が無菌的な環境下で調製することが望まれる.しかし,一般病棟の非無菌的な環境下で,看護師による注射剤調製が行われている施設も少なくない.そのため,注射剤の微生物汚染による医療関連感染の問題も未だに散見される.感染対策に携わる薬剤師は,自施設の注射剤調製時の無菌操作や製剤の衛生管理の整備に努めるとともに,注射剤調製の作業手順に関して監督指導を行う立場でなければならない.本稿では,薬剤師による無菌的な環境下での注射剤調製の手順を見直すとともに,看護師による非無菌的な環境下での注射剤調製に関する注意点をまとめた.