著者
滝沢 龍 笠井 清登 福田 正人
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.41-46, 2012 (Released:2017-02-16)
参考文献数
34

現在の臨床精神医学の克服すべき点の1つに,診断と治療に役立つ生物学的指標を探索・確立することがある。今回は,発達(個体発生)や進化(系統発生)の視点から,生物学的精神医学において必要な脳研究の方向性に示唆が得られないか探ることをテーマとした。人間の脳の発達・成熟のスピードは部位によって異なり,より高次の機能を担う部位では遅く始まると想定されている。思春期には,前頭前野のダイナミックな再構成が起こり,この時期の発達変化の異常が統合失調症などの精神疾患の発症と関連している可能性も指摘されている。進化の視点からは,前頭前野の中でも前頭極や言語機能に関連する脳部位が人間独特の精神機能と関連するとして注目が集まってきている。進化論により注目される脳部位と,それに関連する最も高次な認知機能への理解が進むことは,人間独特の精神機能や,その障害としての精神疾患への鍵となる見識をもたらすことが期待される。
著者
磯部 勝孝 藤井 秀昭 坪木 良雄
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.453-459, 1996-09-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
11
被引用文献数
6 8

サツマイモ栽培における木炭の施用が土壌環境とサツマイモの収量に与える影響について調べた. 供試した木炭には多量のカリウムが含まれており, これを施用すると土壌中の交換性カリウム含有量が増大した. さらに中粒炭を10a当たり2,000kg施用すると土壌物理性が改善され, 気相割合や孔隙率が高まり固相や液相の割合は低下し, サツマイモがカリウムを吸収するのに良好な土壌環境となった. この結果, 木炭を施用すると塊根の加里/窒素比が高まり, 塊根肥大が促進され収量が高まることが明らかになった.
著者
佐藤 陽彦
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.1-18, 1986 (Released:2008-02-26)
参考文献数
117

ヒトの骨格筋の筋繊維組成の大枠は遺伝により決定されているが,動物実験の結果やヒトにおける筋繊維型の転換を示唆する知見から,ヒトにおいても筋繊維型の転換が生じていると考えられる。持久性訓練或いは日常活動によってII B 型→II A 型→I型の方向に繊維型が変化する。II C 型II A 型から I 型に変化する過程での過渡的な型である。この変化は可逆的で,訓練の中止や不活動によって逆方向の変化が生じる。この逆方向の変化を別にすれば,I型繊維からII型繊維への転換はより困難であると考えられる。運動選手における筋繊維組成や筋繊維組成の年齢的変化は,このように考えると説明できる。喫煙や栄養状態や甲状腺ホルモンも筋繊維組成に影響を与える。
著者
山本 晃生
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測と制御 (ISSN:04534662)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.122-126, 2004-02-10 (Released:2009-11-26)
参考文献数
34
被引用文献数
1 3
著者
上椙 英之 上椙 真之 多仁 照廣
雑誌
じんもんこん2012論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.7, pp.179-184, 2012-11-10

本論文では,画像を登録すると,過去の解析実績から類似した残存状況の石像遺物に適用された解析手法を検索・適用し,自動解析を行う,解析型のアーカイブシステムの開発を行った.
著者
中村 麻子 島崎 信夫 田中 梨恵 飯田 秀夫
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.193-202, 2018-09-25 (Released:2019-03-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1

2013年9月にL. pneumophila serogroup 1によるレジオネラ肺炎の院内発生を認めた.調査の結果,パルスフィールド電気泳動にて病室内給湯水と患者から採取した喀痰のレジオネラDNAのバンドパターンが一致したことから感染源が給湯系であると推察した.給湯系の汚染を調査した結果,混合水栓1か所からL. pneumophila SG 1が検出された.除菌対策として熱水消毒後,配管内の湯温低下防止のため湯の持続放流を実施し,さらに不要配管を除去した結果,除菌は成功した.しかし40℃の混合水から再びL. pneumophila SG 1が検出されたことを契機に92か所の水を調査したところ,23か所から同菌が検出され給水系の汚染を認めた.給水系の除菌対策として,末端混合栓での水の遊離残留塩素濃度が0.87 mg/L以上となるよう受水槽に次亜塩素酸ナトリウムを持続的添加に加え,最遠位の混合水栓から毎日6分間および全病室洗面台から毎日1分間水を放流した.これらの対策により遊離残留塩素濃度は平均0.81 mg/Lに上昇(p<0.01)し,同菌の検出が13.6%から0.4%に減少(p<0.01)し有効性を認めた.本研究の結果から,給湯系のレジオネラ属菌汚染を認めた場合,給水系に汚染源がある可能性を考慮して調査が必要であると考える.
著者
吉村 孝之 種田 智成 西沢 喬 尾崎 康二 山田 勝也 池戸 康代 植木 努 曽田 直樹
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.63, 2012 (Released:2013-01-10)

【目的】 下腿の筋挫傷の疫学的調査では、腓腹筋内側頭(以下、MG)の損傷が多いと報告されている。下腿三頭筋の研究は腓腹筋とヒラメ筋を比較したものが多く、MGと腓腹筋外側頭(以下、LG)を比較した報告はあまり見られないため、MG筋挫傷の原因は明らかになっていない。我々は、形態学的特性として、超音波画像診断装置を用いて筋厚を調べた。機能的特性として、足関節底屈等尺性収縮時の筋活動を調べた。2つの実験からMG筋挫傷の原因を考察したので、報告する。【対象】 下肢に整形疾患のない男性6名6肢(平均年齢27.5±4.5歳、平均身長168.8±4.1㎝、平均体重66.0±11.3㎏)の右下腿とした。なお、対象者には研究概要の説明を文書及び口頭にて行い、実験参加への同意を得た。実験の実施に際し、平野総合病院倫理委員会の承認を受けた。【方法】 1)筋厚の評価 膝関節裂隙から踵骨隆起のアキレス腱付着部までを8等分し、近位部から、1/9, 2/9, …、9/9と表記する。超音波画像診断装置(東芝メディカルシステム社製famio8)を用い、安静時の短軸像を撮像し、筋厚を測定した。統計処理は、MGとLGの筋厚に対して、対応のないt検定を用い、検討した。2)足関節等尺性底屈運動時のMG及びLGの筋電図測定 予備実験として、腹臥位膝関節伸展位、足関節中間位にて、足関節等尺性底屈運動の最大収縮時のMG及びLGの筋活動量をNoraxon社製筋電図シリーズTelemyoG2を用いて測定し、筋力をアニマ株式会社製ミュータスF-1を用いて測定した。 足関節等尺性底屈運動の収縮強度は、最大筋力の10, 20, …、70%とし、MG及びLGの筋活動量を測定した。統計処理は、MG及びLGの正規化された筋活動量を収縮強度に対して一元配置分散分析を用い、検討した。 1)2)ともに、統計解析にはSPSS16.0を用い、有意水準を5%とした。【結果】 1)腓腹筋近位1/9~6/9までは、MGがLGよりも筋厚が有意に厚かった。それ以降遠位では、筋厚に有意差は認められなかった。2)足関節等尺性底屈運動時のMG、LGともに収縮強度と比例して、筋活動が高まり、かつ収縮強度10%を基準として、50%以上の収縮強度で筋活動に有意な差が認められた。【考察】 腓腹筋近位部では、MGがLGよりも筋厚が有意に厚く、K. AlbrachtaらのMRIを用いた研究を支持する結果となった。FTAの正常値が174°であることより、荷重は膝関節外反ストレスとなりやすいため、膝関節内反作用を持つMGがより発達しやすいのではないかと考えられる。MG、LGどちらも、50%以上の収縮強度で筋活動に有意に高まった。本研究では、MG、LGの筋活動に著明な違いは認められなかったため、どちらも、50%以上の収縮強度にて筋損傷のリスクが高まると考えられる。筋厚は筋の生理的断面積に比例することから、筋力の指標と考えられるため、MGはLGに比べ、強い筋力を発揮しやすいと考えられる。そのため、MGの筋挫傷のリスクが高くなると推察される。【まとめ】 ・腓腹筋近位部では、MGはLGより有意に筋厚が厚かった。・荷重下膝関節外反ストレスに拮抗するために膝関節内反作用を持つMGが発達しやすいと考えられる。・MG、LGともに収縮強度50%以上で、筋挫傷のリスクが高まると考えられる。
著者
長井 優希乃
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第51回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A16, 2017 (Released:2017-05-26)

本発表ではインド、デリーにおいて働く不可触民であるメヘンディ描きの家族に焦点を当て、メヘンディ描きの仕事のなかでいかに彼らが他者のまなざしを操っているかということを考察する。その上で、まなざしを操る彼ら自身が、不可触民であるということを他者からまなざされることを恐れながらもそれを隠し、いかにビジネスをし、貨幣を介して装うのかということを考察する。

2 0 0 0 OA 刊行の辞

著者
岩田 修二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-1, 2006 (Released:2010-06-02)
著者
中川 洋一
出版者
日本歯科薬物療法学会
雑誌
歯科薬物療法 (ISSN:02881012)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.28-34, 2016 (Released:2016-05-10)
参考文献数
49
被引用文献数
3

A global consensus regarding the terminology of dry mouth is needed in order to facilitate diagnosis and treatment as well as future research and education. This review summarizes the terms concerning dry mouth, including : xerostomia, hyposalivation, altered salivary composition, salivary gland dysfunction, and salivary dysfunction.
著者
藤井 宏志
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.881-888, 1987-12-15 (Released:2011-11-04)

山口県は日本海・瀬戸内海のふたつの海に接し, 地形上平野・盆地が分散していることから, 都市や産業もまた分散構造であるという。その山口県における酒造リの歴史を, 地理的要因・時代の背景を基に詳細に解説していただいた。遠く藩政時代から今日に至るまでの酒造場数・造石高の推移あるいは山口杜氏の起源と変遷が詳述されておりまことに興味深い。