著者
関根 康人 高野 淑識 矢野 創 船瀬 龍 高井 研 石原 盛男 渋谷 岳造 橘 省吾 倉本 圭 薮田 ひかる 木村 淳 古川 善博
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.229-238, 2012-09-25

エンセラダスの南極付近から噴出するプリュームの発見は,氷衛星の内部海の海水や海中の揮発性成分や固体成分の直接サンプリングの可能性を示した大きなブレイクスルーであるといえる.これまでカッシーニ探査によって,プリューム物質は岩石成分と相互作用する液体の内部海に由来していることが明らかになったが,サンプリング時の相対速度が大きいこと,質量分析装置の分解能が低いことなどの問題があり,内部海の化学組成や温度条件,海の存続時間など,生命存在の可能性を制約できる情報は乏しい.本論文では,エンセラダス・プリューム物質の高精度その場質量分析とサンプルリターンによる詳細な物質分析を行うことで,内部海の化学組成の解明,初期太陽系物質進化の制約,そして生命存在可能性を探ることを目的とする探査計画を提案する.本提案は,"宇宙に生命は存在するのか"という根源的な問いに対して,理・工学の様々な分野での次世代を担う若手研究者が惑星探査に参入し結集する点が画期的であり,我が国の科学・技術界全体に対しても極めて大きな波及効果をもつ.
著者
大谷 栄治 倉本 圭 今村 剛 寺田 直樹 渡部 重十 荒川 政彦 伊藤 孝士 圦本 尚義 渡部 潤一 木村 淳 高橋 幸弘 中島 健介 中本 泰史 三好 由純 小林 憲正 山岸 明彦 並木 則行 小林 直樹 出村 裕英 大槻 圭史
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.349-365, 2011-12-25
被引用文献数
1

「月惑星探査の来たる10年」検討では第一段階で5つのパネルの各分野に於ける第一級の科学について議論した.そのとりまとめを報告する.地球型惑星固体探査パネルでは,月惑星内部構造の解明,年代学・物質科学の展開による月惑星進化の解明,固体部分と結合した表層環境の変動性の解明,が挙げられた.地球型惑星大気・磁気圏探査パネルは複数学会に跨がる学際性を考慮して,提案内容に学会間で齟齬が生じないように現在も摺り合わせを進めている.本稿では主たる対象天体を火星にしぼって第一級の科学を論じる.小天体パネルでは始原的・より未分化な天体への段階的な探査と,発見段階から理解段階へ進むための同一小天体の再探査が提案された.木星型惑星・氷衛星・系外惑星パネルは広範な科学テーマの中から,木星の大気と磁気圏探査,氷衛星でのハビタブル環境の探査,系外惑星でも生命存在可能環境と生命兆候の発見について具体的な議論を行った.アストロバイオロジーパネルでは現実的な近未来の目標として火星生命探査を,長期的な目標として氷衛星・小天体生命探査を目指した観測装置開発が検討された.これらのまとめを元に「月惑星探査の来たる10年」検討は2011年7月より第二段階に移行し,ミッション提案・観測機器提案の応募を受け付けた.

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出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.10, pp.614a-614a, 1925
著者
荻原 正博 井田 茂
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.34-34, 2007

M型星のまわりの地球型惑星形成領域での微惑星からの地球型惑星集積過程をN体シミュレーションによって調べた。特に原始惑星が形成されるごとに円盤ガスとの相互作用によって内側へ移動し、円盤内縁にたまり、そのことがハビタブル・ゾーンでの惑星集積過程に与える影響や、氷境界以遠から散乱されてくる氷微惑星の影響に着目し、太陽型恒星の場合との違いや生命居住可能惑星の形成確率を調べた。
著者
荻原 正博 井田 茂
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.89-97, 2009-06-25

観測技術の発展に伴い,低質量の系外惑星が発見され始めており,特にM型星での系外惑星探査が注目を集めてきている.M型星は低光度であるので,ハビタブルゾーンが中心星近傍に存在するが,そのような領域では円盤ガス面密度が大きく,半径方向の惑星移動が惑星形成に大きな影響を及ぼすと考えられる.そこで,本研究ではM型星周りでの地球型惑星形成を,円盤ガスを考慮に入れたN体シミュレーションで調べた.計算の結果,中心星近傍の地球型惑星の軌道構造は惑星移動速度に大きく依存することがわかった.また,これまで発見されている中心星近傍のスーパーアース(地球質量の数倍程度の惑星)は,惑星移動速度が遅い状況で形成したと解釈できる.更に,惑星移動によって多くの氷成分が内側領域に輸送され,惑星は概して水を多く含むことが示唆された.
著者
蓮実 重彦
出版者
青土社
雑誌
ユリイカ (ISSN:13425641)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.p38-57, 1991-04
被引用文献数
1
著者
秋山 弘貴 宮下 芳明
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.22, pp.1-6, 2010-03-05
被引用文献数
1

本稿では,「光速に近い速度で動くオブジェクト」 における CG 表現について検討し,CG の代表的なレンダリング技法であるレイトレーシングのアルゴリズムを拡張し,光線追跡時に描画対象となる仮想世界の時間を逆向きに進行させることによって光の速度を鑑みた CG 描画ができるシステムを実装した.そして,このシステムで光速を実世界より遅く設定すると,オブジェクトの動きを誇張する映像効果 「Light Brake Effect」 が発現することを確認した.この特殊な世界では,高速に移動するオブジェクトに対して伸縮や遅延が起こり,その影にも影響が及ぼされるため,動きを誇張するエフェクトとして効果的であると考えられる.In this paper we discuss CG expression of objects moving close to the speed of light. We expanded a ray trace program with the light speed in mind, and developed a rendering system that turns back the clock during tracing calculation. When we slow down the parameter of the light speed in the system, we observed special effects in the rendered images; we called it Light Brake Effect. There fast moving objects and their shadows stretch and get delayed apparently, so we consider the effect as overdramatizing expression.
著者
清水 晴生
出版者
白鴎大学法学部
雑誌
白鴎法学 (ISSN:13488473)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.209-247, 2011-05
著者
関内 淳
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.13, no.7, pp.483-490,530, 1964

寒冷刺戟に過敏性を有する所謂寒冷アレルギー現象の発症に, 抗体素因が関与するとすれば, その抗体素因の形成に必要な抗原は何か, 化学物質の移入なく本症が寒冷によってのみ発症するから寒冷によって自己抗原が遊離され抗体素因が形成されるのではないかと考え, ウサギ自己血液を24時間0°〜5℃に冷却し, そのまゝもとのウサギに静注した.この操作を隔日に35回行い, その間10日毎に沈降反応, 抗原感作赤血球凝集反応, 補体結合反応, クームス試験, 寒冷凝集反応, アルチウス反応, PK反応, RAテスト等を行い, 37℃並びに0°〜5℃で判定し更に寒冷曝露試験を行った.又末梢血液像, 血清蛋白像, 諸種の肝機能検査並びに組織学的検索を行った.その結果冷却自己血液が抗原性を獲得した明らかな確証は得られず従って冷却自己血液の感作では寒冷に特異的な自己抗体素因は作り得ないものと考える.
著者
土居 清之 宮内 聡
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.32, no.33, pp.21-24, 2008-07-31
被引用文献数
1

番組制作のHD化が促進され,中継番組におけるFPU伝送のデジタル化も進んでいる.これまでのアナログ伝送の場合は,映像をそのままモニタで確認できたが,デジタル伝送では圧縮された信号を伝送するため,マイクロ中継ポイントで映像をモニタするには高価なデコーダを数多く必要とする等の問題があった.今回,複数のプログラムが多重されたTS信号をIP信号に変換する装置「多重TS-IP変換装置」を開発し,民生品の安価なIPTV用STB(セットトップボックス)を接続して映像をデコードすることで,マイクロ中継ポイントにおいても,安価に映像をモニタする事が可能となり,アナログ伝送同様の運用ができるようになった.
著者
市川 虎彦
出版者
松山大学
雑誌
松山大学論集 (ISSN:09163298)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.135-163, 2010-04-01
著者
桑嶋 健一
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.166-181, 1999
参考文献数
39
被引用文献数
1

本稿の目的は、医薬品産業における効果的な研究開発のパターン(研究開発の成功要因)とそれに影響を与えるマネジメント上の要因を明らかにすることである。医薬品産業は研究開発が極めて重視される産業であることから、これまでにも研究開発マネジメントをテーマとした研究は数多く行われてきている。しかしながら、その多くは企業レベルの分析であり、研究開発プロセスに法典を当てたものはほとんど見られない。 本稿では、日本における新薬開発の成功事例として、三共のメバロチンの事例を取り上げ、研究開発プロセスに焦点を当てた詳細な事例分析を行う。従来の医薬品産業の研究開発マネジメントに関する研究において、研究開発パフォーマンスに影響を与える要因として特に強調されていたのは、自動車をはじめとする組立型産業においてもその重要性が指摘されている「コミュニケーション」や「情報統合」といった能力であった。それに対して本稿では、他の産業の研究開発と比較した場合に、不確実性が高くその成功確率が極めて低いという特徴を持つ医薬品の研究開発(本稿ではこれを「多産多死型の研究開発」と呼んでいる)においては、研究開発の過程における「go or no-goの意思決定の能力」が極めて重要な組織能力であることが指摘される。
著者
高田 衛
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.37, no.8, pp.1-8, 1988-08-10

十八世紀、「江戸戯作」と称される文芸(小説)が成立していった過程で、科学者平賀源内の『根南志具佐』ほど、この文学ジャンルの性格と形成を決定づけた作品はなかった。だが、滑稽と笑いを喚起し、大きな虚構によって都市江戸の生態を活写し、江戸の文学の流れを変えたこの作品について、現在いまだにすぐれた作品論は存在していない。本論文では、『根南志具佐』の作品論へ向けて、その前段階として、大田南畝の『根南志具佐』批評を引用し、分析しつつ、この作品が<江戸>のスキャンダラスな悪場所(バッドシティホリゾン)つまり芝居町=男色者たちの世界の、実際の生態と深くかかおり、そのスキャンダラスな世界(ホリゾン)を逆手にとって、ちょうど遠目鏡で地獄をのぞくように、遠近法を充分に駆使して、コトバで「江戸」をカリカチュアにし、また滑稽なミニチュアにして、読者の前に提供した初めての作品であったことを、豊富なエピソード(悪場所の)を並記して、証明した。そして、「戯作」という文学ジャンルが、じつは文学ジャンルである前に、文学の新しい方法であり、地上的人間世間(シャバ)の全体性を、明快に相対的に描き出す「志」(こころざし)(自立し、他からの妨害を排除し、自由な精神の確立を目的とする作者のつよい意志)に根ざす、笑いを武器とした創造的な文学であることを証明した。従来の学問における固定的な「戯作」観念(余技的な遊び)は、改められなければならない。
著者
富永 美咲 内海 千種
出版者
徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部
雑誌
徳島大学人間科学研究 = Journal of human sciences (ISSN:21873968)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.49-66, 2016

The purpose of the study is to consider the desire for help-seeking about moral harassment in romantic relationship. In the course of the study we focused on the magnitude relation between benefits and costs of help-seeking.We have surveyed four-year college students (N =206) in Tokushima prefecture. They were all asked about i) their awareness of the severity of moral harassment, ii) their desire for help-seeking about moral harassment, and iii) the benefits a nd costs of help-seeking.For every type of moral harassment, we examined how the desire for help -seeking can be influenced by the evaluation of the pros and cons of asking for help -seeking. As for the evaluation here, we calculated it from the benefits and the costs that help-seeking may have. In all cases, the severer they, i.e. the students in our survey, considered moral harassment to be, the stronger their desire for help -seeking tended to become. In cases of moral harassments by control and monitor, and by indirect attack as well, the evaluation of pros and cons had a positive influence on the desire for help -seeking, while, in cases of moral harassments by verbal attack, it seemed that the evaluation of pros and cons did not.Having observed in the study as well as in the preceding studies that moral harassments by verbal attack particularly are more likely to be overlooked, we have thus come to believe that influence that the evaluation of pros and cons has on the desire for help-seeking will change from one harassment type to another.