著者
沼田 真美
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.360-367, 2019 (Released:2019-10-25)
参考文献数
33
被引用文献数
2

The purpose of the present study was to investigate the effects of overt and covert narcissism, isolated from self-esteem, on forgiveness, as mediated by cumulative humiliation. To test the validity of the model used in this study, structural equation modeling was performed on data collected from 388 undergraduate students. The results indicated that both overt and covert narcissism had direct, positive effects on revenge, and only covert narcissism, mediated by cumulative humiliation, had positive effects on revenge and avoidance and negative effects on benevolence. These findings suggest that overt and covert narcissism moderate revenge in order to recover self-evaluation. The results also suggest that covert narcissism had more negative effects on forgiveness.
著者
長束 勇 小林 範之 石井 将幸 上野 和広 長谷川 雄基 佐藤 周之 佐藤 嘉展
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

初年度(2017年度)の成果を踏まえ,本年度は日本国内で実施する実験・解析の課題について取り組むこととした。一方,ブータン王国側のカウンターパートである農林省農業局(DOA)との共同研究の推進(とくにVisa取得,計測機器や資材のブータン王国内への搬入)に,日本の大学との関係の明文化が求められたことに加え,ブータン王国の国政選挙から政権交代(2018年12月)があり,現地調査等の進行を止めざるを得なかった。その中で,佐藤が2018年6月に単独で渡航し,DOAのチーフエンジニアと面談をし,現地実証実験のフィールドの確認と今後の工程を確認している。本研究課題のゴールは,開発途上国で容易に応用可能で経済性に優れ,耐震を含めた安定性を有する小規模ため池の工法開発である。本年度は,各研究分担者によって,実験室内レベルで設定した研究課題をそれぞれ進めた。根幹となるため池築造技術に関する研究としては,ベントナイトを利用する研究を進めた。ベントナイト混合土によるため池堤体内の遮水層構築は,理論的には可能である。しかし,ベントナイトの膨潤特性の管理や強度特性など,安定した貯水施設の利用には課題が残っている。本年度は,ベントナイトの種類,ベントナイト混合土を室内試験にて一定の条件で確認するための母材,ベントナイト添加率と物理的・力学的特性の評価を行った。本実験で確認した条件下でのベントナイト混合土に対して,透水性の評価までを行い,十分に実用に耐える配合条件を確保できることを確認した。今後,最終年度には,耐震性および浸透特性の解析を国内で進めながら,ブータン王国内における現地実証試験の具体化を進める予定である。具体的には,現地で確保できるベントナイトならびに母材を用いたベントナイト混合土の特性評価,ならびにため池堤体の建造技術への応用を進める予定である。
著者
山村 隆治 下村 泰志
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
日本油化学会誌 (ISSN:13418327)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.449-456,523, 1998-05-20 (Released:2009-11-10)
参考文献数
57
被引用文献数
2 2

エイコサペンタエン酸 (EPA), ドコサヘキサエン酸 (DHA) やドコサペンタエン酸 (DPA) を含む高度不飽和脂肪酸 (PUFA) はその生理活性から機能性食品や医薬品として注目を浴びている。中でも医薬品原料として利用したり, またその機能を確認するためにはPUFAを高度に精製する必要がある。PUFAを高度に精製するためにこれまで多くの検討がなされEPAのように実用化されているものもある。しかしPUFAの種類や由来する原料により複雑な処理工程を必要とし, 必ずしも大規模精製が完成しているとは言えない。筆者らは, DHAとn-6ドコサペンタエン酸 (DPA) を高い含量で含む海生菌から得られたSingle Cell OilエチルエステルをODS充填カラムを用いた工業的規模での分取HPLCを行い, 分取クロマトだけで高度に分離・精製されたDHA-EとDPA-Eが得られる可能性を見いだした。
著者
山内 豊明 高木 美智子 藤内 美保
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.311-318, 2003-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
14
被引用文献数
1

肥満などとの関連から、『早食い』は改善すべき食習慣の1つとされており、日常的に使用されていながら、その明確な定義はない。今回食べ方についてのイメージを聞き取り調査した。『早食い』については、48%が「全体の食事時間が短い」としその具体的な食事時間を2~20分と、44%が「一口あたりの咀嚼回数が少ない」としその具体的な咀嚼回数を2~30回、と回答していた。また『ゆっくりよく噛んで食べる』については、34%が「全体の食事時間が長い」としその具体的な食事時間を15分~1時間と、64%が「一口あたりの咀嚼回数が多い」としその具体的な咀嚼回数を10~100回、と回答していた。一方で具体的に咀嚼回数や時間を聞いても「思いっかない」と回答した者もいた。この結果、単に食事時間や一口あたりの咀嚼回数だけをイメージするとは限らないことが明らかになり、食べ方の指導時には対象者の認識のアセスメントが不可欠であると考えられた。
著者
平山 朝治 Asaji HIRAYAMA
出版者
Master's and Doctoral Programs in International and Advanced Japanese Studies, Graduate School of Humanities and Social Sciences, University of Tsukuba
雑誌
国際日本研究 = Journal of International and Advanced Japanese Studies (ISSN:21860564)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-22, 2020-02

日本で途切れることなく定められるようになった最初の元号である大宝は首皇子(後の聖武天皇)誕生に因んだものと思われ、中国の建元が漢の武帝即位を基準とするのとは異なり、キリスト受肉紀元ADの影響があるのではないかという仮説を立てて検証を試みる。ADは641年には東シリア教会キリスト教とともに唐に伝わっており、久米邦武は聖徳太子伝にキリスト伝の影響があるとし、7世紀後半に唐からそれが伝わったと論じたが、根拠薄弱と批判されてきた。中国経由ではなく、インド人夫婦をはじめとするドヴァーラヴァティー(現在のタイ国チャオプラヤー川下流域)の遣唐使節が654年日向に漂着し、彼らによってキリスト教が伝えられたことが、天智朝において製作されて流通した日本最初の鋳貨である杋銀貨(無文銀銭)や、インドから中国を経ずに朝鮮半島を経由して日本に渡来したとされる善光寺本尊如来によって裏付けられ、善光寺信仰のほか、祇園信仰、怨霊・御霊信仰や春秋彼岸会にもキリスト教の影響を読みとることができる。日本に定着した不可逆的な歴史意識は終末を欠いており、ダーウィンの進化論との相性がよいことを丸山真男は指摘し、岡本太郎は’70年万博の太陽の塔のなかに生命の樹としてそれを表現した。終末思想は周期化されて辛酉革命・甲子革令の思想に基づく改元慣行となった。後醍醐天皇や孝明天皇の在位中にそれらによる改元があって討幕運動が高まり、1921辛酉年には原敬首相暗殺が起こり、その前後に大正デモクラシーが昂揚した。また、日本固有の進化論的歴史意識は高度経済成長後アイドルが担うようになった。The Taiho era, which was the first era to be established without interruption in Japan, started from the birth of Prince Obito, who later became Emperor Shomu. This era is quite different from China’s Kengen era, which was based on the enthronement of the Emperor Wu of Han. In this paper, we explore and test the hypothesis of the influence of the anno domino (AD) period after Christ’s incarnation on Taiho.AD was transmitted to Tang with East-Syriac Christianity in 641. Although Kunitake KUME points out that Christianity influenced Prince Shotoku’s biography and that it was transmitted from Tang to Japan in the late 7th century, this argument has been criticized as unsound. An entourage which included an envoy of Dvaravati (the present-day Chao Phraya River area in Thailand) as well as Indian couples who intended to pay tribute to Tang came to Japan in 654 via a route that by-passed China. The fact that they also brought Christianity to Japan is supported by the production and circulation of the first Japanese coin (Bon Silver Coin), circulated in the Tenchi era. The principal image of Amida Sanzo-zo (the statue of Amida Triad) in Zenko-ji Temple (善光寺)is believed to have been sent to Japan from India via the Korean peninsula without passing through China. In addition to the Zenko-ji Faith, Christianity’s influence can also be found in the Gion Faith (祇園信仰), the Spiritual Faith (怨霊・御霊信仰), and the Spring/Autumn Fair Party (春秋彼岸会).As pointed out by Masao MARUYAMA, the irreversible historical consciousness that has been established in Japan is unending and compatible with Darwin’s theory of evolution. Taro OKAMOTO expresses it as the Tree of Life within the Tower of the Sun in the 1970 Exposition. Eschatological thought was transformed into cyclical patterns and was found in the practice of Kaigens based on the ideas of the Shin-yu Revolution (辛酉革命)and the Ko-shi change of order (甲子革令). During the reigns of Emperor Godaigo and Emperor Komei, the Kaigens based on these ideas were performed and the abolition movement against shogunate government(幕府)became dominant. Prime Minister Takashi (Kei) HARA was assassinated in 1921, and the Taisho democracy movement started to become dominant around that time. In addition, Japan’s unique evolutionary historical consciousness has been expressed by idols since the period of high economic growth.
著者
宇都 良大 小野田 哲也 愛下 由香里 田中 梨美子 大重 匡
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.59, 2016 (Released:2016-11-22)

【はじめに】糖尿病において,末梢神経障害は最も早期に発症する合併症であるが,特に痛みを伴う有痛性糖尿病神経障害は大きな問題となる.その中でも,軽い触覚刺激などで疼痛を生じるアロディニアは,不眠症や抑うつ症状を伴いQOLを低下させ,治療行動へのアドヒアランスも低下する.今回,アロディニアを発症した症例に対して,痛みに考慮しながら療養指導や運動療法を行うことで,QOLの改善と運動療法のアドヒアランスが改善した1例を経験したので報告する.【症例】糖尿病教育入院を経験している2型糖尿病の49歳男性.夜間帯の仕事によって食事と睡眠が極めて不規則となり,体重増加と血糖コントロールが不良となった.また,アロディニアによって,四肢末梢・右顔面や全身にnumerical rating scale(以下NRS):4~8の持続疼痛が生じ,抑うつ状態の進行と睡眠障害が悪化し,就業不能となり再教育入院となった.インスリン強化療法と内服による疼痛コントロールが開始された.発汗で掻痒感が出現すること,低血糖への恐怖から運動に対しての意欲は低く,行動変化ステージは熟考期であった.生活習慣改善と体重コントロール目的でリハビリテーション(以下リハ)依頼となり,抑うつ状態や希死念慮に対しては,臨床心理士のカウンセリングが開始された.【検査所見】身長181.7cm,体重101.5kg,BMI30.7kg/m2,体成分分析(BIOSPACE社,In Body720)において骨格筋量37.7kg,体脂肪量33.7kg.血糖状態は,空腹時血糖200~210mg/dl台,HbA1c(NGSP)8.2%,尿ケトン体陰性.アキレス腱反射-/-,足部振動覚 減弱/減弱,末梢神経障害+,網膜症-,腎症+,自律神経障害+.【経過】介入時,覚醒状態不安定で,動作による眩暈・ふらつきを伴うため臥床時間が延長し,食事摂取量は不安定であった.生活習慣の構築を目的に,食前の覚醒促しと食後1~2時間の運動療法介入を設定した.自己管理ノートに日々の体重と,運動療法前後の血糖値を記録し,低血糖対策の個別指導をした.非運動性熱産生(以下NEAT)の指導を行い,日中の活動量向上を促した.運動療法プログラムは,NRSから有痛症状を訴にくい部位を判断し,股関節周囲のストレッチと体幹のバランス訓練を開始した.介入4日目から下肢筋力訓練を追加実施可能となり,介入12日目に掻痒軽減が図れたタイミングで有酸素運動を開始した.【結果と考察】内服による疼痛コントロールと,インスリン強化療法による糖毒性解除により,空腹時血糖値が90~100mg/dl台と改善したことに伴い,NRS:1~2と疼痛が軽減した.また,眩暈やふらつきが軽減したことで日常生活に支障がなくなり,カウンセリングにより情緒面の安定が図れたことで3週間後退院となった.仕事の関係上,夜型のライフスタイル変更は図れなかったが,食事時間を規則的にすることや昼間の活動量を高めることを約束された.体重97.4kg,骨格筋量37.0kg,体脂肪量30.7kgとなった.筋力訓練やウォーキングを自主訓練として立案・実行するようになり,行動変化ステージは準備期となった.【まとめ】アロディニアは,通常痛みを起こさない非侵害刺激を痛みとして誤認する病態であり,QOLの低下,糖尿病療養に必要なセルフケア行動やアドヒアランスが低下し,運動療法の阻害因子となる.しかし,疼痛コントロールやインスリン治療について十分に把握する事に加えて,病態を理解して疼痛部位の詳細な評価を行い,適切な運動療法の介入を行うことで,アドヒアランスの改善が生じたと考えられる.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理委員会の承認を得た.対象者には研究内容についての説明と同意を得た上で実施した.
著者
Masaya IGASE Yuki MORINAGA Masahiro KATO Toshihiro TSUKUI Yusuke SAKAI Masaru OKUDA Takuya MIZUNO
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.19-0667, (Released:2020-03-06)
被引用文献数
1

DEP domain-containing 1B (DEPDC1B) is involved in the regulation of cell de-adhesion and actin cytoskeleton activity during the G2/M transition of the cell cycle, and its overexpression has been proven to be associated with cancer progression in several human cancers. Canine DEPDC1B was identified as a gene that was overexpressed in canine lymphoma tissues in our previous study. However, in dogs, the protein expression of DEPDC1B remains to be determined due to the lack of a specific monoclonal antibody. Here, we developed rat monoclonal antibodies against canine DEPDC1B and characterized their applicability for immunodetection assays. Our findings demonstrated that these antibodies are functional and can be important tools to investigate the precise role of DEPDC1B in canine tumors.
著者
藤原惠洋
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.53-60, 1992
被引用文献数
1

制限図は,日本近代の国家神道体制下において造営・整備される神社の様式・規模・社殿配置を規制した。本稿では,まず明治初期の制限図検討過程を通し,限られた予算下において国家神道体制の拠点施設として神社の再整備が必要とされたため,適度な規模内容を持った全国一律の様式的普遍形式を生み出す規制的標準設計の役割を制限図が担ったことを究明した。次に検討期を経て整理された制限図の規制内容が,(1)神仏習合の近世神社を遡り古式遵奉をめざすため,流造本殿・入母屋造拝殿を中心とする独立社殿により構成された。(2)社殿の配置・平面・規模を決めた平面的規制と,立面姿絵・仕様表示による造形的規定から成る意匠規制の性格を持つ。(3)大中小の社格に応じた規模と仕様の差異を厳格に見せた,という3点に代表されることを明らかにした。一方,制限図が別格官幣社創建を中心に明治年間から大正期明治神宮造営頃まで適用されながらも,明治34年以降,伊東忠太に主導され制限図批判が展開した点を考察,昭和初期における制限図の終末を示した。
著者
梅田 英春 ウメダ ヒデハル
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
no.19, pp.165-170, 2019-03-31

大正琴は、1912年(大正元年)に、名古屋在住の森田吾郎(1874-1952)により創案、製作された鍵盤付弦楽器である。この楽器は、1915年頃から1940年頃まで、東アジア、南アジア、東南アジアへと広く輸出された。アジアに伝播した大正琴は、その後、それぞれの地域で変容をとげ、各地の音楽の中に取り込まれ、現在まで用いられている。本論文では、インドネシア、バリ島西部タバナン県ププアン村に伝播し、マンドリンとよばれる大正琴を起源とする楽器について概観する。