著者
粟生田 晋哉 小宮 桂治 髙村 浩司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab1097, 2012

【はじめに、目的】 臨床では、対象者の姿勢の安定や動作修正のために、セラピストが徒手的に介入する事が多い。しかし、過度な介入は対象者の運動制御の機会を逆に損なわせる事になりかねない。また運動制御において、感覚情報としてフィードバックに利用できる物は、自身が運動を遂行する事によって変化する体性感覚であり、特に筋・骨格系から入力される手足の動きや位置の情報は重要である。先行研究に、身体位置関係の認識が立位姿勢バランスと関連するという報告があるが、それを用いた運動学習や歩行に言及した報告は少ない。そこで目的として、健常者を通じ、下肢を中心とした身体認識を促す運動学習が立位及び歩行における運動制御に及ぼす影響について検証する事とした。【方法】 対象は下肢・腰椎に整形外科疾患の既往のない健常成人20名(平均年齢25.7±1.7歳)とした。研究デザインは2群間のパラレル比較に基づくランダム化比較試験とし、対象者を乱数表により無作為に介入群と対照群に割り付けた。群の割り付け情報は対象者にのみ盲検化を行った。下肢の空間での身体認識能力の評価として、立位で一側下肢を挙上し母趾にて目標物へのポインティング(以下PTG)を行いその位置を学習させた。その後、閉眼で再試行し認識誤差距離を測定した。これを左右斜め前方と後方の3方向行い誤差距離の合計を計算した(以下PTG誤差)。また、立位バランスの指標として開・閉眼静止立位(30秒)と開・閉眼での両側片脚立位(10秒)の重心動揺検査による総軌跡長(以下LNG)、及び開・閉眼での左右・前後への最大重心移動幅を測定した。測定機器は、任天堂社製Wiiバランスボードを用い、富家千葉病院作成のプログラムを使用しデータ化した。また歩行能力の評価は、10m歩行(最大速度)と応用歩行の評価指標に用いられている障害物歩行テストと方向転換歩行テストを組み合わせた応用歩行テスト(以下応用歩行テスト)を独自の評価指標をとして用い、快適・最大速度で行い歩行速度を測定した。上記評価を課題前後に測定した。介入群には、身体感覚を積極的に認識させる運動学習として、閉眼立位にて片側下肢での目標物へのPTGを自身で探索しながら3方向に各3回ずつ実施した。一方対照群では、介入群と同様の関節運動をセラピストが対象者の足部を徒手誘導することにより同回数実施した。その際、被検者自身に身体認識は一切求めずに行った。そして同群間の課題前後の検定にはWilcoxon符号付き順位和検定を、2群間の検定にはMann-WhitneyのU検定を用いた。なお統計解析には「改変Rコマンダー」を使用し、有意水準5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき、被験者全員に研究の目的・方法の説明を行い、書面にて同意を得た。【結果】 介入群では、PTG誤差、開眼静止立位、PTGした下肢を支持側とした開眼片脚立位でのLNG、開・閉眼での左右への最大重心移動幅、及び応用歩行テストでの快適・最大歩行速度において有意差が認められた。また対照群では、PTG時と同じ片脚立位でのLNGのみ有意差が認められた。2群間の比較では、PTG誤差、応用歩行テストでの快適・最大歩行速度で有意差が認められた。【考察】 介入群では、先行研究と同様に立位バランスに一定の効果が認められた。理由として、揺らぎの修正や自身の重心位置や下肢の角度・方向などの身体情報を正確に認識しようとする事により、動的立位での体性感覚フィードバックが活性化した事が考えられる。また対照群においても、意識していなくても下肢を空間制御する中で自律的な姿勢反応による効果が生じていたと考えられる。そして、対照群と比して純粋に身体認識を促す学習を行った効果としては、PTG誤差と応用歩行テストにおいて有意差を認めた。受動的な接触や静的立位、片脚立位では、高次運動野領域には活性化が認められなかったが、識別を要求した認知的課題やより動的な制御や意図的かつ予測的な運動制御が要求される場面では、頭頂葉や前頭前野、補足運動野を中心とした高次運動野等の活動増加が認められたとの報告がある。今回の結果は、身体認識を促す学習を、より動的な制御下で行った事で、高次運動野等に働きかけ応用歩行における予測的な運動制御につながったと推測される。しかし、立位と歩行での制御システムの違いや他の環境・身体要因の影響に対しての配慮が十分ではなく、今後その課題も踏まえ検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】 身体認識を促す知覚学習は、皮質等高次脳機能による予測的な運動制御を要する、環境に適応するための跨ぎ動作や方向転換等の応用歩行における治療の一助となる可能性が示唆された。

2 0 0 0 OA 大辞典

著者
平凡社 編
出版者
平凡社
巻号頁・発行日
vol.第十七卷, 1936
著者
木村 俊哉 高橋 政浩 若松 義男 長谷川 恵一 山西 伸宏 長田 敦
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-22, 2004-10

ロケットエンジン動的シミュレータ(Rocket Engine Dynamic Simulator : REDS)とは、ロケットエンジンの始動、停止、不具合発生時等のエンジンシステム全体の過渡特性を、コンピュータを使って模擬し評価する能力を持った計算ツールである。REDS では、ロケットエンジンの配管系を有限個の配管要素の連結(管路系)としてモデル化し、この管路系に対しボリューム・ジャンクション法と呼ばれる手法を用いて質量、運動量、エネルギーの保存方程式を時間発展的に解くことによって管路内(エンジン内)における、燃料、酸化剤、燃焼ガスの流動を計算する。ターボポンプ、バルブ、オリフィス等の流体機器はボリューム要素やジャンクション要素にそれらの対応する作動特性を持たせることで動作を模擬する。燃料や酸化剤の物性については、ロケットエンジンの特殊な作動範囲に適応するよう別途外部で開発された物性計算コード(GASP 等)を利用するが、そのためのインターフェースを備える。燃焼ガスの物性計算については、熱・化学平衡を仮定した物性計算を行い、未燃混合ガスから燃焼状態、燃焼状態から未燃混合状態への移行計算も行う。ターボポンプの運動は、ポンプやタービンの特性を考慮したポンプ動力項、タービン動力項を加速項とする運動方程式を流れの方程式と連立して時間発展的に解くことによって求める。未予冷区間においては、配管要素と流体との間の熱交換を、熱伝導方程式を解くことによって求め、再生冷却ジャケットにおいては、燃焼ガスから壁、壁から冷却剤への熱伝達を考慮する。燃焼室、ノズル内においては、燃焼ガス流れの分布から熱流束の分布を考慮する。今回のバージョンでは、2 段燃焼サイクルを採用した我が国の主力ロケットLE-7A 及びLE-7 の始動、停止過程時における動特性を模擬することを目的にエンジンモデルを構築し、実機エンジン燃焼試験の結果と比較することでシミュレータの検証を行った。但し、ボリューム要素の組み合わせは任意であり、エキスパンダーサイクルなどの新しいエンジンシステムに対しても適用が容易に出来る。計算の高速化のために2CPU 以上用いた並列処理への対応を行い、ネットワークで接続した複数のPC(PC クラスタ)を用いた並列計算も可能である。
著者
中井 俊樹
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

大学教員の教育と研究の葛藤はどの国においても大きな課題である。イギリスの高等教育アカデミー、アメリカの学生研究体験協議会などにおける研究と議論を中心に分析した結果、教育と研究の関連性を高めるための方策を明らかにすることができた。特に教育と研究の関連性を高める有効な形態の一つとして、学生の研究体験(Undergraduate Research)が注目されており、日本の大学のカリキュラム、教授法、FDの内容にどのように反映することができるのかについて示唆が得られた。
著者
武田 恵世
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.135-142, 2013 (Released:2013-11-21)
参考文献数
37
被引用文献数
1

風力発電機は現在世界的に鳥類への影響が問題になっており,影響が大きいという報告から,小さいという報告まである.日本での詳しい報告はまだない.そこで本研究では,風力発電機の野鳥の繁殖への影響を,51基を有する日本有数の大規模風力発電所のある三重県中部の青山高原(布引山地)において調査した.風力発電機から200 m以内の,建設時に改変を受けていない森林に調査区を設定し,青山高原内で風力発電機から可能な限り離れ,標高,植生がほぼ同じ森林に対照区を設定し,鳥類の繁殖期のテリトリー密度と種数密度をテリトリーマッピング法で調査した.調査は2007年5月下旬~6月下旬の午前中に行った.風力発電所近くの広葉樹林では,テリトリー密度で対照区(5.4±0.95テリトリー/ha)にくらべ約1/4(1.3±0.69テリトリー/ha)に有意に減少し、種数密度で対照区(3.1±0.73種/ha)にくらべ約1/3(1.2±0.45種/ha)に減少していた.また,風力発電所近くのヒノキ植林地ではテリトリー密度,種数密度共に約1/4に有意に減少していた.また風力発電所に隣接する布引の森自然保護区では風力発電機建設前(1994年)に比べ,建設から4年後の(2007年)には種数で21種から9種へと約43%に減少していた.以上により風力発電機の鳥類の繁殖期の生息密度への影響は大きいことが示唆され,その建設,立地には慎重な検討が必要であると考えられる.

2 0 0 0 OA 当世奇話 2巻

著者
何毛呉饀内
出版者
巻号頁・発行日
vol.上,

2 0 0 0 展望

出版者
筑摩書房
巻号頁・発行日
1946
出版者
東京高等師範学校
巻号頁・発行日
vol.明治44年4月-45年3月, 1911
著者
森田 勲 山口 明彦 須田 力
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.631-639, 2002-11-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

本研究はショベリング除雪に必要な,パワーおよび身体資質の関係を明らかにすることを目的に行なった.258名の男子大学生が被検者となったが,その内訳は,積雪地出身者(SG)が126名で,非積雪地出身者(NSG)が132名であった.それぞれ握力,背筋力,脚伸展パワーの測定を行なったほか,5 kgと10 kgの負荷によるショベリング投擲を行なった.両グループの身長,体重,筋力および脚伸展パワーの平均値に有意な差が認められなかったにもかかわらず,投擲距離においてはSG群がNSG群を上回り,5 kg負荷時(6.5±1.3 m vs 5.9±1.1m)と10 kg負荷時(4.2±0.77 m vs 3.9±0.79m)で有意な差が認められた.投擲距離とそれぞれの測定項目との間に有意な相関関係が認められたほか,SG群を除雪の実施状況に応じたグループに分けて比較をしたところ,常習的に行なっていたグループが,ほとんどしないグループおよびNSG群を上回る結果が得られた.これらのことから,ショベリング除雪能力を規定する因子として,体力と技術の関与が示唆された.

2 0 0 0 撃剱会始末

著者
石垣安造著
出版者
島津書房
巻号頁・発行日
2000
著者
中村 圭爾
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3・4, pp.285-320, 1980-03

The inscription buried in the grave of Liu Tai 劉岱 in Nan-ch’i 南斉 era was excavated in Chiang-su 江蘇 Province in 1969. This inscription gave full detail of the marital relations of Liu Tai. The purpose of this study is to discuss the characteristic features of marriage during the Southern Dynasties through a description of marriage as described in this inscription, and to relate this marital mode to the aristocracy of the Southern Dynasties.The inscription states that the Liu Tai family had marital relations with eight families in all. Moreover, within these eight families several had marital relations with each other, while among them several had been rejected by clans of the highest social status in the Southern Dynasties. Based on this fact, we presume that there existed two groups which had differing ranges of marriage possibility.Up till now it has been recognized that there were two major social statuses, namely shih 士 and shu 庶, and that they differed in the range of marriage possibility. But even within the shih class we can see the existence of two groups which had no marital relations with each other because of their difference in social status. Those are the groups stated in the beginning. Therefore we can confirm the existence of stratified groups classified by marital relationships. The marital relations described in the inscription in the grave of Liu Tai belong to the group which was placed between the highest status clan and shu people.By examining the official position of bureaucrats who came from the family, it became clear that their positions were right between the highest and lowest classes of bureaucrats. Based on this, we can see that the stratum of marriage possibility was almost coincident with bureaucrat position.On the other hand, marriages were carried out according to social status, and the stratum of marriage possibility was coincident with the social status of each clan. Therefore, we can conclude that in the Southern Dynasties the position of bureaucrats corresponded to their social status, and that these groupings formed particular social classes.Finally, the historical character of the Southern Dynasties’ aristocracy is defined by this unity of social status and bureaucratic position. Indeed, it was upon the existence of these particular social classes that the principles of governance by the Imperial authority were based.