著者
伊豆 裕一
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.97, 2015 (Released:2015-06-11)

1955 年、東京芝浦電気(現株式会社東芝)より発売された自動式電気釜ER-5(以下:ER-5)は、米と水を入れてスイッチを入れればおいしいご飯が炊けるという、今ではごく当たり前となったことを実現した商品であった。日本国内で急速に普及率を伸ばした炊飯器は、その後、世界各国に輸出され、米食を身近なものとしてきた本研究では、日本における炊飯器のデザインの変遷から、この商品と技術や住環境との関係について述べる。さらに、同じく米を主食とする韓国との比較を行うことで、地域の食文化との関係を考察する。
著者
鳩山 紀一郎 藤原 裕樹 岩永 陽
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.295-300, 2005
被引用文献数
3

本研究は、 PDCAサイクルの考え方による継続的な協働型まちづくりスキームを提案し、世田谷線沿線地域を対象として、地域発案型まちづくり団体である「世田谷線とせたがやを良くする会」を通じてこれを試行することによって、まちづくり手法において継続性と協働性が重要であること、本スキームによって参加者間の意識共有化効果がなされることを検証することを目的とする。結果として、継続性と協働性の重要性を確認できたとともに、点検地図などを利用した本スキームを通じて短時間ではあるが参加者間で意識が共有化されることが確認できた。今後は、一般住民へのアンケートなどを実施しつつワークショップを継続し、特に関心の高かった世田谷線の魅力向上方策を中心に具体化し、実施計画を行う予定である。近年、地域発案型のまちづくり活動団体を各地で登場している一方、行政側でも地方分権の構想が本格化しつつあり、自治体の自主性と自己決定能力が問われる時代になりつつある。従って今後は住民と行政が協働し、継続的に方策を検討し実施しては評価・診断を行っていくという構造が、まちづくり活動に一層必要なものとなると考えられる。
著者
宮本 邦男 Kunio Miyamoto 作新学院大学地域発展学部地域発展学科 Division of Economy Faculty of Community Development Sakushin Gakuin University
出版者
作新学院大学地域発展学部
雑誌
作新地域発展研究 (ISSN:13481711)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-34, 2003-03

経済学は利己心に基づく学問である。個人が私益だけを追求していれば価格メカニズムという神の「見えざる手」に導かれて社会的な最適が達成されるというのがその基本原理である。しかし現実の人間は利己心だけではなく利他心も持っている。より現実的に現実を分析するためには,経済学といえども利他心を考慮することが求められている。しかし利他心の利他心たる所以はその相互依存性にあるために,利他心を経済学に導入しようとすると,さまざまな困難が出現する。本論は経済学に利他心を導入するための課題を,先行業績をサーペイしながら考察したものである。まず利他心は何故生まれ得たか。進化論的に考えれば,利己主義の方が利他主義より個体の生存を維持するのに適しており,利他心が利己心を抑えて生き残れる理由がない。しかし,自然淘汰が個体だけではなく,その集団にも作用すると考えると,利他心の発生は説明できる。集団は利他的なメソバーが多いほど生存適性が高くなるからである。進化論では,一般的には「集団」を自然淘汰の対象としての「有機体」とは認めていないが,その一派である多段階自然淘汰論では,「集団」も「個体」と同じく自然淘汰の対象たり得るとする。一方社会学では,人間集団はその集団に個有の「文化」を持つことで,一つの有機体となっているとされている。「文化」こそその集団の「遺伝子」である。社会学の成果に鑑みると,集団は有機体として機能していると見るべきであり,筆者もその立場を取るものである。多段階自然淘汰論による利他心の発生をより厳密に論証するのが,進化論とゲーム理論を合わせた進化論的ゲーム理論である。人間は自他の利害が対立する社会を生き技かなければならない。協力すれば社会的に望ましい結果を作れるのに自他の利害が対立してそれができない状況は「社会的ジレンマ問題」と称される。それをゲームで表したものが「囚人のジレンマ」である。囚人のジレンマでは非協力解がNash均衡となるが,それに一定の条件をつけると,協力解がNash均衡となり得る。社会的ジレンマの中からも利他心が生まれ得るのである。その条件は,ゲームが一回限りで終わらず何回も繰り返されること,相手を識別してゲームの相手として協力的な相手を選べることなどである。現代社会では「市場」と「政府」だけでは十分対応できない問題が増えており,NPO/NGOの役割が高まっている。 NPO/NGOは利他心に基づいて自発的に形成された集団である。もっともそのNPO/NGOも利他心を補強する仕組みとして利己心も利用している。それは地域の助け合いを支えるために奉仕に若干の報酬をつける地域通貨である。また政府も規模の大きい中央政府よりも規模が小さく,住民により密着した地方政府の役割が高まっている。地方政府も中央政府と同じく強制に基づいて作られる集団であるが,規模が小さいだけ,メンバーによる監視やメンバー間の連帯意識が強く,メンバーのニーズに沿った行政が可能となる。地方政府とNPO/NGOは異なる原理に従うので,両者の間には緊張関係も生まれるが,市場原理の足りないところを補うと言う面で両者は補完・協力する役割がある。経済学が利他心を取り扱う一つのアプローチは「信頼」を社会資本と見なすことである。信頼をグループヘの参加度や価値観のアンケート等で指標化した研究によると,途上国の経済発展のためにも先進国の経済効率を高めるためにも信頼が大きな役割を果たしている。より本格的に利他心を経済学に導入するには,経済学の基礎をなす効用関数に相互依存を導入しなければならない。先駆的な研究によれば,利他心の存在は利害対立を緩和はするが解消はしない,利他心に基づく解決が市場に基づく解決に劣る場合もあり,それが市場を発生させる契機となる,等の知見が得られている。一方複雑系の経済学でも行動主体間に相互作用を仮定してシミュレーションを行うことにより,景気循環や株のバブルの発生を説明したりしている。以上のように利他心を経済学に導入する試みはいろいろなされている。しかし利他心の本質である「相互依存性」のために,実証的には勿論,理論的にも現実的な政策提言ができるまでの十分な成果が蓄積されてはいない。利他心を経済学に導入する研究は外部性,収穫逓増,非対称情報等の研究と軌を一にすべきものと考えられる。筆者も強い関心を持ってフォローしていきたい。
著者
光本 いづみ 松下 年子 大浦 ゆう子
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.185-196, 2008-06-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
7 5

訪問看護師の仕事負担感や就業継続意思と訪問看護の業務特性を明らかにした. 対象は福岡県内の訪問看護ステーションに勤務する看護師で, 自記式質問紙調査を実施した. その結果, 下記の事柄が明らかになった. 「就職前に考えていた仕事内容と実際との相違」「訪問以外の仕事の多さ」「判断を必要とする場面の多さ」「複雑な看護技術の多さ」を感じている人ほど仕事の負担感を大きいと考え, 「ステーションの将来性」「看護師の人数」「賃金」について肯定感を持つ人ほど仕事の継続意思を持っていること. また, 訪問看護師の就業意欲向上のために, 管理者が労務管理の意識を高めることやリアリティショックへの対策として体系的・系統的継続教育の実現を図る環境を整えることも継続意思を持つことの一助となることが示唆された.
著者
小高 桂子 近藤 侑鈴 横田 小百合 竹下 信啓 川上 和之 林 和彦
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.81-89, 2018-06-25 (Released:2018-06-25)
参考文献数
24

Our philosophy is to conduct chemotherapy for patients with advanced cancers as safely as possible and to carry out palliative care in parallel. To further promote home palliative care as a medical policy in Japan, we examined how extensively this policy was introduced among terminal patients discharged from our hospital department in the past year. We reviewed the records of deceased discharged patients for one year from Nov. 2015 to Oct. 2016. The total number of hospitalizations was 353, and the number of hospitalized patients was 173. Among all hospitalized cancer patients, 33 patients left hospital mortality, of which 25 were hospitalized urgently. Overall, only 27 % received home palliative care. We were not able to confirm the place of death desired by many of these discharged terminal patients. Therefore, we recommend that terminal cancer patients and their families decide in advance where and when home palliative care should start to maintain high quality of life until the end of life.

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著者
稲葉通龍補正
巻号頁・発行日
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著者
柘植 勇人 富田 真紀子 加藤 由記 稲垣 憲彦 岩田 知之 山脇 彩 宮田 晶子 松田 真弓 中原 裕子 中島 務
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.239-248, 2011 (Released:2011-07-28)
参考文献数
28

Tinnitus Retraining Therapy (TRT) の音響療法を実施する中で, sound generatorのノイズ音に馴染むことが出来ない症例を経験する。そこで, TRTの音響療法として, 自然環境音で同様の効果が得られないかを検討した。sound generator (SG) を十分に使い慣れているTRT実施中の患者10名の協力を得て, 携帯音楽プレーヤーと耳かけオープン型イヤホン (一側耳装用) を用いて, 川のせせらぎなどの5種類の音源の試聴を行い調査した。その結果, TRTにおける音響療法は広帯域ノイズに固執する必要はなく, 自然環境音で代用できる可能性が示唆された。人によっては様々な音源による音響療法が成り立つ可能性と静寂部分が含まれている「波の音」は適さない傾向が示唆された。一方, 広帯域ノイズに似た「滝の音」が好まれるグループがあったので, SGの有効性も示された。今回の結果より, 夜間の静寂を避けて寝室に心地良い環境を作るという意味で, 自然環境音をBGMとして活用する価値も考えられる。今後は, 実際の活用症例の効果を検討する必要がある。
著者
佐藤 愛子 岩原 信九郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.232-235,254, 1962-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
5

某県の高校入学者の女子について,入学試験,入学時の知能検査結果,および入学後の学業成績間の相関を求めたところ,入試と学業の相関がきわめて高く,また学業成績は学年がすすんでもあまり相対的位置をかえないにもかかわらず,知能と成績との相関は意外に低く,しかも学年のすすむにつれて低下の傾向を示した。このことは入学後の成績の予言には入試のもつ重みはきわめて高いが,知能の重みは無視できるほど低いことと,学業成績は年とともに知能の因子を含む割合が減少する傾向のあることを示している。この点,大学入学のときの学科試験や進学適性検査のもつ意味といちじるしく異なる。なぜなら大学の場合はこれら2つの変数は入学に適さないものを落すという意味はあるかもしれないが,入学後の成績を予言することは非常に困難であるからである。

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出版者
文林堂
巻号頁・発行日
1952
著者
松川 康夫 張 成年 片山 知史 神尾 光一郎 YASUO MATSUKAWA NARITOSHI CHO SATOSHI KATAYAMA KOICHIRO KAMIO (独)水産総合研究センター中央水産研究所 (独)水産総合研究センター中央水産研究所 (独)水産総合研究センター中央水産研究所 (株)東京久栄 National Research Institute of Fisheries Science Fisheries Research Agency National Research Institute of Fisheries Science Fisheries Research Agency National Research Institute of Fisheries Science Fisheries Research Agency Tokyo Kyuei Co. Ltd.
出版者
The Japanese Society of Fisheries Science
雑誌
日本水産学会誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.137-143, 2008-03-15
参考文献数
60
被引用文献数
8 37

我が国のアサリRuditapes phillipinarumの総漁獲量は,1960年には10万トンであった。その後,一部に漁場の埋め立てによる減少があったにも関わらず,1982年には14万トンまで増加したが,1984年から激減して,1994年にはわずか3分の1程度(5万トン)になり,その後もこの水準が続いている。著者らはアサリの生態や資源に関する報告を総括し,1984年以降のアサリ漁獲量の激減の主要因を過剰な漁業活動,すなわち親貝と種貝用の稚貝に対する過剰漁獲と結論づけた。それ以外にも,周年の過剰操業による底質擾乱は,稚貝の生残率低下を助長した可能性が高いと考えられる。The annual catch of the Manila clam Ruditapes phillipinarum in Japan increased from 100 thousand tonnes in 1960 to 140 thousand tonnes in 1982. This increase occurred despite a local decrease in coastal fishing grounds due to land reclamation and helped to balance overall production. Since 1984, however, the catch has decreased drastically to only 50 thousand tonnes and has remained at this low level. The authors reviewed published reports relevant to the ecology and resources of Manila clam and concluded that the main factor responsible for the drastic decrease in catch is over-fishing. Over-exploitation of the adults and sub-adults significantly affected and damaged reproduction and source-sink relationships among localities. Disturbance of the clam habitat throughout the year by heavy fishing gear may also be responsible for lowering the survival rate of the juveniles.
著者
森口 眞衣
出版者
北海道生命倫理研究会
雑誌
北海道生命倫理研究 (ISSN:2187834X)
巻号頁・発行日
pp.15-28, 2015-10

At the center of the academic discipline known as thanatology (death-and-life studies) is the major current of the foundation of Western thought. However, the views on life and death of the Japanese have been deeply affected by Eastern thought, religion, and culture, such as Buddhism. Therefore, it has been noted that in Japanese thanatology, there is a samsara (the cycle of reincarnation) in ancient Indian society as providing one perspective from the area of religious studies on dealing with "death." Two different perspectives for the positioning of death have been established. The first is the perspective of "the inserted death," and the second is the perspective of "death that continues to support life." The former is a Christian attitude toward death and is a philosophy that can be described as the foundation of Western thanatology. The latter is a philosophy from ancient Indian society, of the notion of completing samsara after passing through several stages, and it also formed the background to the formation of Buddhism that has had an enormous impact on Japanese culture. In this paper, along with the flow of how were death and life respectively positioned in the establishment stage of the notion of samsara, the structure and characteristics of "death that continues to support life" are considered.