著者
小嶋 秀樹
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.96(2000-ICS-122), pp.13-18, 2000-10-13

いまロボットに必要とされているのは,人間の社会的活動にコミットする能力である.社会的活動は,他者との効率的な協調・競争を実現するものであり,他者の行動を予測・制御する能力によって成り立つ.本論文では,この他者行動の予測・制御という視点から,他者の心的状態にアクセスするための「心の理論」を,とくにその発達に焦点をあててモデル化する.この社会的発達モデルは,原初的な共同注意と模倣を出発点とし,他者の行動を間接的に疑似体験することによって社会的な行動パターンを蓄積していく.また,遅延模倣やランダム反応といった自発的行動を,他者(とくに養育者)からのフィードバックに応じて意味づけしていく.このような他者とのインタラクションをとおして,他者が物理的・社会的環境についてもっているモデルを探索し,さらに社会のなかで共有されたプロトコル(ジェスチャ・言語など)を探索していく.この探索活動は,マクロ的には社会的発達であり,ミクロ的にはコミュニケーション(社会的コミットメント)でもある.
著者
松村 晴路 Seiji Matsumura
雑誌
聖徳学園岐阜教育大学紀要 = Bulletin of Gifu College of Education (ISSN:09160175)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.149-168, 1991-09-30

This study is and essay on the conjugal name of The Civil Code 750. The Family Law shall be understood from the standpoint of individual dignity and essential equality of the sexes since The Civil Code was revised after World WarII. However, The Woman problem of thesedays have resulted from the substantial inequlity of the sexes in family relation. Especially, The fundamental point is the key to separate the married woman's name from the husband's name
著者
川崎 惣一
雑誌
宮城教育大学紀要 = BULLETIN OF MIYAGI UNIVERSITY OF EDUCATION
巻号頁・発行日
vol.56, pp.91-101, 2022-01-31

自我アイデンティティは自分自身の同一性と持続性の自覚であるが、つねに生成の途上にあり、変化しつつあるものでもある。道徳的アイデンティティは道徳性に関するアイデンティティであり、私たちの道徳的判断基準の基盤となっている。道徳的アイデンティティは、自身が帰属意識をもつコミュニティのなかで身につけられるものであり、私たちは自身の属するコミュニティにおいて「善き生」のイメージを生き方のモデルとして受け取る。ただしそれは無条件にではなく、私たちはコミュニティ内部で共有されている価値や規範に違和感を覚えたり反発したりすることもある。道徳的心理学は私たちの道徳的行動が思考よりもむしろ直観や情動に強く影響されていることを証拠立てているが、道徳的アイデンティティはこうした直観や情動のレベルと結びついたものであり、思考によって吟味されたり矯正されたりする。
著者
岡野 憲治
出版者
松山大学総合研究所
雑誌
松山大学論集 = MATSUYAMA UNIVERSITY REVIEW
巻号頁・発行日
vol.27, no.4-1, pp.277-298, 2015-10-01
著者
中村 俊介
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.106-107, 2022-02-15
著者
李 長波 Choha Ri
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究 = Bulletin of Center for Japanese Language and Culture (ISSN:21868816)
巻号頁・発行日
no.13, pp.71-96, 2015-03

本稿は、上代歌謡と万葉集の「見ユ」の用例の分析を通して、一、「見ユ」と一人称との関連、二、上代語における「動詞・助動詞終止形+見ユ」の形式と「見ユ」の意味、三、「見ユ」の活用形の展開と助動詞への接続の文法史的な意味を考察した。主な結論は、以下のとおりである。一、佐竹昭広(1975)が指摘した「上代人の自己中心係数」は、上代歌謡と前期万葉において特に顕著なものであり、万葉集の中でも、万葉第三期、第四期と時期が降るにつれてすでに次第に低下していく傾向が見られた。これは文体史的な問題とともに文法史的な問題であると考えられる。二、上代語における「動詞・助動詞終止形+見ユ」の形式は特に上代歌謡に顕著な特徴であるが、万葉集を第一期、第二期、第三期、第四期に分けてみた場合、その用例が次第に減少していくのに平行して、「見ユ」の活用形、特に連用形を中心に助詞・助動詞が下接する用法が増えていく傾向が見られた。上代語の「見ユ」は視覚的にものが存在する意、すなわち「現前の視覚事実=事態」を表す動詞であり、その終止形終止法は現在を表すものと考えられる。三、「見ユ」連用形に下接する助動詞のうち、いわゆる「過去」の助動詞では「キ」が、いわゆる完了の助動詞では「ツ」が先行し、「ケリ」と「ヌ」はいずれも第四期において初めて用いられ、これは上代語の資料を一つの共時態として見るよりは、上代歌謡→前期万葉(万葉第一期、第二期)→後期万葉(万葉第三期、第四期)に分けて考えたほうが文体史的にも文法史的にも有効であり、「キ・ケリ」、「ツ・ヌ」の意味機能を考える上で示唆を与えると考えられる。「見ユ」連用形に下接する動詞、助動詞に見る空間的・時間的な「近vs. 非近」は話者への空間的、心理的な関係性として、上代語の人称体系、「一人称vs. 非一人称」との相関を窺わせる。
著者
田中 美菜江 奥田 玲子 深田 美香
出版者
鳥取看護大学・鳥取短期大学
雑誌
鳥取看護大学・鳥取短期大学研究紀要 = MEMOIRS OF TOTTORI COLLEGE OF NURSING AND TOTTORI COLLEGE (ISSN:21898332)
巻号頁・発行日
no.84, pp.13-23, 2022-01-14

食支援において大切にしていることおよび課題について,鳥取県内の特別養護老人ホームで勤務する多職種を対象にアンケート調査を行った.現場では,誤嚥や窒息のリスクを考慮するとともに利用者一人ひとりが安全に食べることができ,食事が楽しく豊かな時間となるよう支援していた.よりよい支援にむけて,利用者の摂食嚥下状態の把握に努め安全に食べられるための環境調整や食事介助のスキル向上,専門職の配置と多職種連携の強化を課題としていた.
著者
西ノ平 志子 松井 博和 大島 千佳 中山 功一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.388-400, 2022-02-15

本論文では,上肢に障害がある人でも,すぐにギターを演奏したい気持ちを叶える支援装置“F-Ready”を提案した.対象者は,脳梗塞や脳性まひなどの脳神経系疾患による上肢の動作に困難がある重度障害者である.対象者のギターを演奏したいというモチベーションを維持するために,「すぐに演奏できる」「演奏している実感がある」に通ずる演奏動作に着目した.その演奏動作を実現するために鍵となる動きは,片方の手でギターネックに沿い手を動かし弦を押す動作と,もう片方の手で弦を弾く動作の協調動作である.対象者の上肢機能を考慮して,F-Readyはギターネックに沿い手を動かし弦を押す動作を支援する.本論文では,11人の対象者がF-Readyを搭載したギターを弾くことに挑戦した.9人の対象者はすぐにギターを演奏できた.さらに「ギターを演奏している実感がある」との回答を得た.次に別の対象者1人が,F-Readyを搭載したギターで1年間練習した.練習開始から5週間後には約1分間の曲を演奏できるようになった.続けて1年後には,4分以上の曲を演奏できるようになった.理学療法士は,対象者が楽器の練習により両上肢を運動する機会が得られ,通常のリハビリテーション以外で持久力と上肢の制御が改善されることを認めた.
著者
折原 征幸 塚田 浩二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.424-436, 2022-02-15

デスクワーク等を行う作業机,特に電子工作では多数の電子部品や工具が机の上に配置され,それらを組み合わせて使用するために煩雑になりやすい.本研究では,電子工作等の作業机に着目し,机上の工具/部品等のさりげない移動・整理を目指すシステム「PartsSweeper」を提案する.本システムは,机の裏に設置したXYプロッタ,ヘッド部の永久磁石と昇降機構,および作業空間を入力するタブレット端末を中心に構成される.特別なセンシングを行うことなく,工具と電子部品を個別に移動/整理することを目指す.本論文では,コンセプトを整理した後,プロトタイプや応用例を制作する.さらに,性能評価とユーザテストを通してプロトタイプの基礎的な性能やその動作に対する印象等を調査する.
著者
宮野 勝
出版者
中央大学社会科学研究所
雑誌
中央大学社会科学研究所年報 (ISSN:13432125)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-21, 2019-09-30

We examined which gender has more political interest in Japan through MGCFA (Multigroup Confirmatory Factor Analysis). Our observed variables are six items of political interest from our Web survey in February 2015. They are self-evaluation of political interest, three types of media use (TV, newspaper, and internet) / people (family and friends). All six items positively correlate with others and the Cronbach’s alpha is 0.772. This relation is similar in each gender. However, among items the female means are lower in four, higher in one than male’s and about the same in one. This peculiarity makes the signs of correlation between gender and each item different across items. As we can expect from the peculiar correlations, when we adapted group meanstructure model of one factor MGCFA, both the configural model and metric model fit sufficiently and Scalar Invariance model does not. Then we estimated Partial Invariance models. Models fixing one of intercepts of six items fit adequately. The four-items model by dropping two peculiar items also fits well. The difference in means between female and male depends on models. Since we do not have particular standards to fix one of the intercepts or to drop items, we did not find a persuasive way to choose one model. We conclude that the concept of political interest has some complexity and we cannot be too cautious in constructing and selecting Partial Invariance models of MGCFA.
著者
綾塚 祐二 雅樂 隆基 安川 力 吉高 淳夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.379-387, 2022-02-15

機械学習を用いた画像分類は医療を含め幅広い分野で多くの成果をあげている.しかしその分類は何を根拠としてなされているかが人間には分かりにくい場合も多く,どこを見て分類を行ったかを可視化するためのさまざまな研究が行われている.疾患の分類のような目的のためには,画像中の「それらしい」正の寄与部分(所見)だけでなく「そぐわない」,すなわち負の寄与部分となる所見も診る必要があるが,既存の研究では負に寄与する部分は可視化の対象として注目されていない.我々は,機械学習モデルに対し,画像に微小な差異を加えた画像を入力した場合の確信度の出力の大きさの変化を画像化し提示する手法,DiDAを提案する.提案手法ではグリッド単位で区切りマスクした画像を用いて出力の差異をとらえ,複数のグリッドサイズを用いることで,正負の寄与領域を的確に描出する.DiDAを光干渉断層計による眼底の断層画像からの疾患分類に適用し眼科専門医の見解と照合した結果,DiDAによる解析画像は正負の寄与を的確にとらえていることが分かった.また,眼底の断層画像の疾患分類において画像中の正負の寄与領域を既存手法よりも的確に描出することを確かめた.
著者
鵜飼 渉 辻野 華子 杉村 政樹 木川 昌康 田山 真矢 石井 貴男 古瀬 研吾 廣瀬 奨真 橋本 恵理 澤田 いずみ 山本 武志 白鳥 正典 河西 千秋 相馬 仁
出版者
札幌医科大学医療人育成センター
雑誌
札幌医科大学医療人育成センター紀要 = Journal of center for medical education Sapporo Medical University = Journal of center for medical education Sapporo Medical University
巻号頁・発行日
vol.9, pp.35-43, 2018-03-31

精神科教室セミナーを終えた懇親会で,演者としてお招きした大学教授のA 先生から,突然,“先生も扁桃体クラブの会員なのですね(笑)。”と,言われ驚いたことがある。若くて優秀なその先生に,大変やさしい笑顔で話しかけられ,固く握手までしてもらったと記憶している。“扁桃体クラブ”という“人の集まり”が存在するのかどうか私は知らない。しかし,それがもし“会員制”であったなら,私はぜひ会員の皆様との集いに参加してみたいと思う。私たちはこれまで,精神疾患における,対人コミュニケーション能力をはじめ,種々の社会的な認知機能障害の脳病態の解明を目指す研究を進めてきたが,その観点からは,“扁桃体クラブ”という言葉にはとても魅力的な響きがある。ここでは,近年,家庭,学校,職場で起きている,いわゆる“コミュ障”(コミュニケーション障害の略語とされている)問題を越えていくためにも,本題の“ディープコミュニケーション”の脳機能に関連する知見を集めてみた。