著者
牧野 悠
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.16, pp.16-28, 2008-03

柴田錬三郎が生み出した戦後時代小説最大級のヒーロー、眠狂四郎。その必殺剣、刀身をゆるやかに旋回させることによって、対手を一瞬の眠りに陥らしむる魔技「円月殺法」は、いわゆる剣豪小説ブームに乗り、現在に至っても高い知名度を保っている。しかし、その研究は、一定の強度を備えて描写に踏み込んだ考証となりえず、登場以降半世紀に亘り、典拠考察すらされてこなかった。円月殺法の描写は、同時期の剣豪小説の方法と同様、剣術資料を典拠とし、想像上の秘技を紙上に現出させるための、リアリティ向上に用いていた。そればかりか、その典拠は、円月殺法という魔剣そのものを着想させる可能性すら秘めるものであった。また、典拠の性質を鑑みると、作家がそれをいかに利用するかによって、遣い手である剣士の性格形成にも影響を与え、剣豪小説の双生児とも云うべき二人のキャラクターの誕生をもたらすことにつながった。
著者
高橋 伸夫
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0200515a, (Released:2020-05-30)
参考文献数
92

1990年代以降、日本でも経営・組織のシミュレーション研究が行われるようになってきた。本稿は、研究者間の関係も重ね合わせて、1990年代以降の日本の経営・組織のシミュレーション研究をレビューする。世界の研究の潮流は、シミュレーションの結果だけを、多くはメタファーとして引用するというものである。しかし、日本の一連の研究は、それとは異なる次のようなユニークな研究群である:(1) 既存モデルを批判的に検証した上で、(2) 自分でもシミュレーションを実施し、(3) シミュレーションの結果が実際に存在するのか現実の調査データで検証する。こうした研究がシミュレーション研究の可能性を切り開く。
著者
佐々木あすか 中山伸一 真栄城哲也
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.843-844, 2013-03-06

VOCALOIDと呼ばれる音声合成技術を用いて歌声を生成した楽曲が支持を得ているが,その中でも人気のある楽曲の特徴を解析した.研究対象はニコニコ動画の週刊ランキング「週刊VOCALOIDランキング」をもとに作成した2007年から2011年までの年間ランキングから選出した上位5, 6曲,下位4, 5曲である.それらの楽曲のメロディについて,発音単位毎の音価と,発音単位の継続時間,隣接する音符の音程の差,音域,テンポについて分析した. その結果,ランキングが上位の曲は,テンポ,早口の度合い,リズムのばらつきに特徴があることが判った.
著者
市川 玲子 望月 聡
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.80-90, 2014-12-20 (Released:2015-01-07)
参考文献数
44
被引用文献数
4 1

これまでに,幅広い類型のパーソナリティ障害(PD)が自尊感情の低さと関連することが示されている。本研究では,PDと3つの様態の自尊感情(特性自尊感情,状態自尊感情によって測定される自尊感情の変動性,および自尊感情の随伴性)との関連を検討した。大学生・大学院生66名に対し,質問紙への回答と携帯電話を用いた継続調査への回答を求めた。対象者は,質問紙ではPD特性,特性自尊感情,随伴性自尊感情に関する項目に回答し,継続調査では状態自尊感情の項目に7日間回答した。結果から,特性自尊感情と境界性・依存性・回避性PD特性との負の関連,演技性PD特性との正の関連が示された。また,境界性PD特性は自尊感情の変動性との正の関連を示した。本研究の結果から,特性自尊感情は幅広い類型のPD特性と関連する一方で,自尊感情の変動性は境界性PD特性と特に関連するものであることが示唆された。

14 0 0 0 OA 近世万国地誌

著者
伴山三郎 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
1889
著者
長尾 真
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能 (ISSN:21882266)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.259, 1987-09-01 (Released:2020-09-29)
著者
伊藤 大輔 安井 敬三 長谷川 康博 中道 一生 勝野 雅央 髙橋 昭
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.481-485, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

症例は65歳の女性である.再発性の小リンパ球性リンパ腫に対し,半年間rituximab等が投与され,めまいと小脳性運動失調が発症した.頭部MRIで両側中小脳脚病変を認め,進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)を疑い,髄液中JC virus(JCV)-DNA PCR検査を数回施行し,4回目に初めてJCV-DNAが検出され,診断が確定した.小脳萎縮を認め,granule cell neuronopathyの合併が示唆された.Mirtazapineとmefloquineの併用治療により長期生存が得られた.PMLでは両側中小脳脚の病変で発症する例がある.また,病初期には髄液検査でJCV-DNAが陰性のことがあり,繰り返し検査する必要がある.

14 0 0 0 OA 日本昔噺 : 校訂

著者
巌谷小波 編
出版者
英学新報社
巻号頁・発行日
vol.第一編, 1904
著者
堀内 英雄 加瀬 武志 井上 義和 望月 芳義 三木 栄治 鈴木 恒夫 五里主 リチャード H. Hori E. Suzuki
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬蟲兩棲類學雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.22-24, 1965-11-15 (Released:2009-03-27)
被引用文献数
2

蛇の登攀性を知るため次の実験を行なった。1)実際の電柱とほぼ同大の模擬円柱を自製し,凸起物をつけず登攀実験を行なった。2)鉄製櫓を自製し,これが登攀性を試みた。3)実際の電柱の登攀性を試みた。以上の実験の結果次のことを知ることができた。1)円柱にもしあろ高さ以内に身を支えるに足る凸起物のない時は蛇は巻きつくことなくして,この円柱に登ることは不可能である。2)凸起物を有しないある直径以上の太さを有する円柱にもまた登ることは不可能である。3)鉄製櫓には容易に登ることができた。4)鉄枠の温度がある温度以上の時には蛇はこの枠に登らない。5)防御器は条件が揃えば有効と認められた。したがって,蛇がある径以上の太さの円柱または平坦な面を登るには体長の1/x以内に身を支える凸起物のあることを必要とし,鉄製物体に対してはある範囲の許容温度があることを確かめることができた。これらの条件は再吟呼を要するものと認む。