著者
近藤 有希 澤 龍一 海老名 葵 高田 昌代 藤井 ひろみ 奥山 葉子 谷川 裕子 総毛 薫 田中 幸代 白方 路子 小野 玲
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】分娩所要時間の遷延は手術分娩や胎児の窒息,母体の感染症や合併症などのリスク上昇につながるといわれている。さらに,分娩時間の遷延は出産体験への不満感を招く一因子であり,その後の出産意欲を低下させるという報告もされている。これらのことから分娩は短縮化する必要があるといえる。分娩所要時間には有酸素能力や運動との関連が先行研究で報告されているが,骨盤底筋群トレーニングや水中エアロビクスなど特定の運動介入のものや,アスリートなど特殊な妊婦を対象としている研究が多い。しかし,多くの妊婦が子育てや仕事などの時間的制約によりこのような運動プログラムへの参加が出来ていないのが現状である。そのため,特定の運動だけでなく有酸素能力の維持・向上に効果的である日常生活での習慣的身体活動を維持することが重要と考えられる。また,初産婦と経産婦では分娩所要時間の平均時間が大きく異なる事は知られているにもかかわらず先行研究においては考慮されていない,あるいは初産婦のみを対象としているものがほとんどで経産婦についての報告は少ない。そこで本研究の目的は,初産婦,経産婦それぞれの妊娠末期における習慣的身体活動が分娩所要時間に与える影響を明らかにすることとした。【方法】対象は妊娠末期に研究参加の同意が得られ,欠損なくデータ収集が出来た121名のうち,自然分娩により出産をした初産婦48名(平均年齢28.8±4.7歳,新生児体重=3058.6±371.5g),経産婦55名(平均年齢32.7±5.5歳,新生児体重=3167.7±366.1g)の合計103名とした。妊娠末期では一般情報に加え,習慣的身体活動を質問紙により評価した。妊娠末期における習慣的身体活動はBaecke physical activity Questionnaireの日本語版を用いた。初産婦と経産婦それぞれにおいて合計点数の中央値で高活動群と低活動群に群分けした。分娩所要時間は,分娩記録より分娩第1期,分娩第2期,総分娩時間に分けて収集した。全ての解析は初産婦,経産婦それぞれに対して実施した。各分娩所要時間の群間比較は,Wilcoxonの順位和検定で比較した。多変量解析では,目的変数を分娩所要時間,説明変数を高活動群/低活動群,交絡因子を年齢,妊娠前から記入時の増加体重,出産回数,新生児体重,出産時妊娠週数,妊娠前の運動の有無として強制投入法による重回帰分析を行った。【結果】初産婦における高活動群と低活動群の間で分娩第1期時間,分娩第2期時間,総分娩時間に有意な違いはみられなかった。経産婦において,低活動群と比較して高活動群の分娩第2期の時間が有意に短かった(中央値(最小-最大):20(4-175)分,11(1-102)分,<i>p</i><.05)。交絡因子の調整後においても高活動群の分娩第2期時間が有意に短かった(β=-.36,<i>p</i>=.007,R<sup>2</sup>=.28)。しかし,分娩第1期の時間と総分娩時間では2群間に有意な違いはみられなかった。【考察】分娩所要時間に関与する因子として,陣痛と腹圧を合わせた娩出力と,産道,娩出物が分娩3要素といわれている。分娩第2期は陣痛に加えて妊婦のいきみによる腹圧が加わって胎児を娩出させる段階であり,この時期には妊婦の有酸素能力や腹筋群など骨格筋の収縮力が大きく関与しているため習慣的身体活動との関連が示唆されたと考えられる。一方で分娩第1期は分娩開始から,子宮頸管の熟化と,陣痛による胎児の下降で圧迫され子宮下部が伸展し子宮口が全開大するまでの時期であり,いきみは禁忌とされている。よって分娩第1期の時間は頸管の熟化と陣痛が主な要素であると考えられ,習慣的身体活動がこれらに影響を与えるのは困難であったと考えられる。また,総分娩時間のうち分娩1期の時間が大きな割合を占めているため,総分娩時間の短縮化に至らなかったものと考えられる。一方で初産婦に有意差がみられなかったことについては,初産婦は経産婦と比べて子宮頸部や外陰および会陰部が伸展しにくく軟産道の抵抗が強いため,娩出力以外に産道の抵抗性が分娩所要時間に大きく影響していることが考えられる。今後の研究で産道の抵抗性に影響する因子や,その他の分娩所要時間に関連する因子を解明する必要がある。【理学療法学研究としての意義】妊娠末期の習慣的身体活動は経産婦の分娩第2期の時間に影響する一要因であることが示された。胎児・母体への悪影響は主に分娩第2期の遷延において多く報告されており,妊娠末期の女性に対して適切な運動習慣の指導を行うことで分娩経過と分娩結果に良い効果をもたらす可能性が示唆された。

2 0 0 0 OA 宗教年鑑

著者
文化庁
出版者
文化庁
巻号頁・発行日
vol.平成28年版, 2017-02-28
著者
叢悠悠 浅井健一 戸次大介
雑誌
研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2013-NL-214, no.19, pp.1-6, 2013-11-07

プログラミングにおける 「継続」 とは,残りの計算,すなわちある部分項に対する文脈のことを指す.この概念を自然言語の意味論に取り入れることで,様々な言語現象の意味を記述することができる.本研究では,限定継続命令 shift/reset を用いた副詞 only のフォーカスの分析 (Bekki and Asai (2010)) を OCaml で実装し,一つのフォーカスを含む文の意味表示を正しく計算できることを確認した.しかし,フォーカスが複数存在する場合への非対応など,今回の実装にはいくつかの問題があり,それらについても考察する.
著者
Kyu Kim Darae Kim Sang-Eun Lee In Jeong Cho Chi Young Shim Geu-Ru Hong Jong-Won Ha
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-18-0609, (Released:2018-12-15)
参考文献数
22
被引用文献数
12

Background: Infective endocarditis (IE) in cancer patients is increasing, but because little is known about it in these patients, we analyzed patient characteristics and outcomes and compared these factors in IE patients with and without cancer. Methods and Results: This retrospective cohort study included 170 patients with IE newly diagnosed between January 2011 and December 2015. Among 170 patients, 30 (17.6%) had active cancer. The median age of IE patients with cancer was higher than that of non-cancer patients. Nosocomial IE was more common in cancer patients. Non-dental procedures, such as intravenous catheter insertion and invasive endoscopic or genitourinary procedures, were more frequently performed before IE developed in cancer patients. Staphylococcus was the most common pathogen in cancer patients, whereas Streptococcus was the most common in non-cancer patients. In-hospital mortality was significantly higher in cancer patients with IE (34.4% vs. 12.4%, P<0.001). IE was an important reason for discontinuing antitumor therapy and withholding additional aggressive treatment in nearly all deceased cancer patients. Conclusions: IE is common in cancer patients and is associated with poorer outcomes. Patients with IE and cancer have different clinical characteristics. Additional studies regarding antibiotic prophylaxis before non-dental invasive procedures in cancer patients are needed, as cancer patients are not considered to be at higher risk of IE.
著者
白井 明志 有嶋 和義 政岡 俊夫 高木 博隆 山本 雅子 江口 保暢 赤堀 文昭
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.413-414, 1994-04-15
被引用文献数
1

ラット胎子動脈管に対するパラコート(PQ)の作用を検索した.PQを25mg/kgの用量で妊娠19〜21日のラットに剖検前3時間に投与した.胎齢19日の午後1時に剖検した胎子では,動脈管の収縮はみられなかったが,胎齢19日の午後4時以降に剖検した胎子では有意な動脈管の収縮がみられた.これらの結果は,PQは胎子動脈管に対して収縮作用をもち,その収縮の臨界期は胎齢19日の前半であることを示すものである.

2 0 0 0 OA 寄生木

著者
徳富蘆花 著
出版者
警醒社
巻号頁・発行日
1909
著者
淺井 玄吾 [アサイ ゲンゴ] 浅井 玄吾
出版者
第五高等學校龍南會
雑誌
龍南
巻号頁・発行日
vol.253, pp.35-42, 1948-03-25
著者
今井 理雄
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

東日本大震災は鉄道インフラに多大な痕跡を残したが,その復旧にあたっては,ルート選定,資金面をはじめ,様々な課題が指摘されている.被災した全ての鉄道路線において全面復旧が予定されるが,不通時の輸送体系や利用者の逸走,復旧後の持続可能性などに不安要素も残される.被災路線は概ね,過疎高齢化の進む地域にあり,輸送需要の下支えとなってきた高校生をはじめとする通学利用が減少傾向にある.仮に鉄道を復旧したとしても,不通時に逸走した利用者が回帰するとは限らず,維持には相当の困難を伴う.しかしながら多くの地域は鉄道の復旧を望んでおり,早い段階で鉄道復旧を果たした地域の事例は,その後の展開に影響を与えるものと思われる.茨城県ひたちなか市に路線を有するひたちなか海浜鉄道湊線は,市が主導する第三セクター事業者であり,被災によって運休を余儀なくされた鉄道のひとつである.最大の被害は,沿線の溜池決壊による軌道敷流出であり,洞門ひび割れ,軌道湾曲,駅ホーム崩落など,被害総額は約3億円弱に及ぶ.被災後,3月19日から代行バスによる輸送を開始するとともに,4月以降は沿線高校の授業開始とともに運行ダイヤを修正(増便)し,集中的な工事の結果,鉄道は6月下旬から順次復旧し,7月23日には全線復旧した.ひたちなか海浜鉄道においては,2009年8月~11月に実施したアンケート調査,乗降調査などをもとに,土`谷(2010)が旅客流動,鉄道存続についての市民,利用者の意向を明らかにしており,さらに豊田(2010a;2010b)が,第三セクター化の過程と沿線住民の意向,鉄道存続に向けた市民活動などについて分析している.また土`谷(2011)では,市民アンケートなどをもとに鉄道サービスの評価を検討している.以上のような知見をもとに,本研究では被災鉄道復旧の課題について,当鉄道を事例に,その一端を明らかにすることを目的とする.本研究では鉄道不通にともなう旅客流動の変化を明らかにするため,代行バス運行時(6月22日金曜日)および鉄道全線復旧後(11月8日火曜日)において,終日全便全旅客を対象としたOD調査を実施した.両調査とも基本的に,乗車時に調査票を配付し,降車時に回収,利用券種の分類を行った.さらに2009年10月末実施のOD調査のデータと比較することで,一連の旅客流動の変化を明らかにする.
著者
伊地知 紀子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.292-312, 2004

本論は、韓国・済州島の一海村・杏源里で人々が行う共同慣行、スヌルムとチェという生活実践の姿を通して、生活共同原理の創造性を描く試みである。済州島ではスヌルムとチェと表現される共同慣行は、韓国の農村研究のなかでそれぞれ「プマシ」と「契」と表現され、これらをめぐって数々の記述が蓄積されてきた。そこで、プマシとは労働力の相互交換であり、契とは農村の財政基盤や物的協力を支える伝統的利益集団として規定されてきた。こうして定式化されてきた共同慣行は、いぞれも共同体の構成要素として、社会変化とともに遺物となったり解体されたりするものと看做されてきた。しかし、本論では済州島での調査からの知見を踏まえ、定式化されえない共同慣行の姿から、人々がその時その場の必要に応じて、以前のやり方を踏襲したり、改変、解体し、再編しながら生活世界を共同で構築してきた姿を考察している。植民地化以降資本主義市場経済の浸透とともに、共同慣行は貨幣換算済みの世界へ参入する手立てともなってきた。しかし、日常の営みのなかで人々は多種多様なスヌルムやチェを実践しながら、貨幣換算済みの世界に回収しつくされない共同性を共有してきた。こうした生活実践のプロセスのなかで紡がれていく共同性は、共同慣行に直接参加する人同士を繋げるだけではなく、多様な関わりを生成していく。そのなかで人々は互いの事情を察しあいながら、共に現実に向き合う力を生成してきたのである。
著者
保井 晃
出版者
公益財団法人高輝度光科学研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

固体内部の電子状態解析が可能な硬X線光電子分光(HAXPES)を外部磁場印加条件下で測定可能にするための計測技術開発を行った。従来、磁場影響下での光電子分光は、光電子の放出角度が大きく曲げられ計測自体が困難であることから積極的に実施されてこなかった。光電子が高エネルギーであり、外場に強いHAXPESの利点を生かすとともに、試料からの漏洩磁場を磁気回路で低減させることで、永久磁石による0.4 Tの磁場印加下において磁性多層膜のHAXPES測定に成功した。
著者
平井 岳哉
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.17-43, 2003-07-15

戦後,三井,三菱,住友の3財閥ではGHQによる一連の財閥解体政策で,財閥の機構そのものが根底から否定された。こうした中,旧財閥系の傘下企業群は,さらに新たな課題に直面した。それは財閥の商号商標の使用禁止令である。3つの旧財閥系企業はともに協力して,GHQや日本政府首脳へ陳情を行い,使用禁止令の施行取り止めに成功した。使用禁止令を撤回させて,難題は解決したかのように見えたが,旧三菱系企業群にとって商号商標問題は,依然として複数の障害を抱えて重要な経営課題となっていた。戦前の財閥本社における商標登録の遅れとそれに伴う第3者による登録,本社に代わって商標管理を担った三菱商事の解散による商標保全のトラブル,三菱重工業の分割など企業分割によって生じた同一業種における複数企業による商標の使用,財閥家族との商号商標に関する保有権の明確化,などである。旧三菱系企業群はこれを機に,1950年代から60年代初頭にかけて,グループ内での商号商標の管理について,管理組織の設置,使用基準マニュアルの作成などを骨子とした基本的な対策を講じた。商号商標のもつ信用性の維持保全のため,外部の第3者による不正使用を防止する一方で,内部のメンバー企業に対しても厳格な使用規定を設けるものであり,このルールは今日の三菱グループにおいても継承されることになった。
著者
上田 信 ウエダ マコト Makoto Ueda
雑誌
史苑
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.1-12, 2016-12