- 著者
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上山 浩次郎
- 出版者
- 北海道社会学会
- 雑誌
- 現代社会学研究 (ISSN:09151214)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, pp.21-36, 2012-06-05 (Released:2013-02-28)
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
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本稿では,これまで高等教育進学率の地域間格差がどのように変化してきたのかを明らかにする。その地域間格差は,過去と比べて拡大してきたのか縮小してきたのか,それとも安定して推移してきたのか。こうした論点を検証することを通して,現在の地域間格差の状況を評価する。 先行研究を確認すると,1990年以降,高等教育進学率の地域間格差は拡大してきたという見方と,安定して推移してきたという見方が併存している。こうした見解の違いは,標準偏差と変動係数という,用いる格差指標の違いが関係している。しかし,両者ともに,進学率の格差指標としては適切さに欠ける。そこで本稿では,より妥当性が高い都道府県間相関比を格差指標として分析した。 分析の結果,⑴大学進学率では,男女計・男女別と都道府県別・地域ブロック別のすべての組み合わせで,地域間格差が1990年まで縮小したのち1990年以降は拡大していること,⑵大学に短大を加えた高等教育進学率でも,すべての組み合わせで,地域間格差が1990年を境に縮小から拡大に転じていることが明らかになった。さらに,⑶2010年現在の状況は,「大学立地政策」が実効的な影響力をもつ以前の1975年の格差と比較して,大学進学率で同程度,高等教育進学率でもこれに匹敵する程度となっている。 以上から,現在は,高等教育進学率の地域間格差の是正を意図するような政策が再び必要となる状況へと変化しつつあることが示唆される。