著者
加藤 久典
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

個別化疾病予防のため、食品の効能に対する個人差をゲノムレベルで解明することが重要であるが、日本人集団を対象とする研究は乏しかった。本研究は食品因子と一塩基多型(SNPs)の関連の解明を目的とし、大規模日本人SNPsデータベースと食品摂取に関するアンケート調査を用いてゲノムワイド関連解析を実施した。着目した4つの食習慣に有意に関連するSNPsを同定し、インターネットによるゲノムコホート研究が有用であることを示した。特に、遺伝型によって魚の摂取頻度が変化することを初めて明らかにした。さらに、ヨーロッパ系集団と異なるSNPが日本人集団では食習慣に影響することを示した。
著者
加藤 征江
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.47-54, 2009-06-30 (Released:2009-07-23)
参考文献数
16
被引用文献数
2

揚げ物調理において, 食材, 揚げ方法の条件が揚げ油の劣化に如何に影響するかを, 過酸化物価 (POV) と酸価 (AV) により経時的に調べた。更に, 揚げ油としてはサラダ油と大豆胚芽油とを用いて, 揚げ油の劣化の経時的な変化とその揚げ物 (鶏から揚げ) に対する嗜好を官能評価により比較した。1) 食材としては, 薄切りじゃがいも50gの素揚げ用試料を500gのサラダ油で170℃, 3分間揚げを, 10回繰り返し30分間行い, じゃがいもの総重量500gを1セットと数えた。同様に, 鶏肉のから揚げ試料の場合もまた, 100gの試料を500gのサラダ油で165℃, 6分間揚げを5回繰り返し30分間行い, 鶏肉の総重量500gを1セットとした。いずれの試料もこの操作を繰り返し連続6セット行い1セット毎にPOVとAVとを求めた。  POVでは, 2種類の食材を用いた試料間に違いがあり, じゃがいもの試料ではPOVは高低の変動を示したが, 鶏肉の試料では高くなるのみであった。統計的には, 食材からの試料間に5%の危険率で有意差があり, 鶏肉試料の揚げ油の方は高いPOVであった。  一方, AVでは, 食材からの試料間に有意差はなかったが, 揚げ油使用時間の長さには有意差があった。2) 揚げ方法については, 鶏肉の試料をサラダ油により, 6セットの連続揚げと間歇揚げを行い, それらを比較した。その結果は間歇揚げの方がPOVとAVともに, やや高い値の傾向を示したが, 2つの揚げ方法の間には有意差は見られなかった。3) サラダ油と大豆胚芽油を揚げ油として, 鶏肉の試料を間歇揚げの方法で揚げた時, POVでは, 2種類の揚げ油間に5%の危険率で有意差があり, サラダ油は大豆胚芽油よりもその値は高かった。しかし, AVでは, 2種類の揚げ油間には有意差が見られなかった。一方, サラダ油と大豆胚芽油で揚げた鶏から揚げの官能評価において, 各セットにおける2種類の揚げ物間の比較では, 揚げ色, ジューシー, おいしさの項目ではほとんど同じ評価であった。しかし, 油っぽさの項目のみ, 揚げ時間が長くなるに従い, POVの低かった大豆胚芽油による揚げ物の方がサラダ油による揚げ物よりも油っぽくないと評価された。4) じゃがいもと鶏肉とを通常用いられるサラダ油で連続揚げ, 又は間歇揚げした時, 6セット180分間の揚げ操作でも, その揚げ油はPOVおよびAVにおいて食の安全を保ち, またその鶏から揚げの官能評価では適度な品質を保持していた。
著者
砂田 毅 加藤 智雄 谷戸 恵子
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.325-338, 1966-12-10 (Released:2009-02-17)
参考文献数
23

Japanese goldfish is adequate for toxicity testing in the field because of low cost and easiness in lethal effect testing compared with commonly used laboratory species such as mice or rats. 24-hr TLm for many food additives, poisons and inorganic compounds in goldfish were measured, and we demonstrated its usefulness for the field test in case like the powdered milk poisoning case which had occurred in Japan in 1955 with more than ten thousands injureds babies and one hundred and thirty deaths owing to contamination of preservatives added to milk with arsenic compounds. Further, by this method, lethal effects of mixed chemicals could be easily observed. For such an example, increased toxicity of sodium dodecyl benzene sulfonate in the presence of pentasodium tripolyphate was demonstrated.
著者
松本 健吾 加藤 内藏進 大谷 和男
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

梅雨最盛期の東日本では,50 mm/日を超えるような「大雨日」の出現頻度は西日本ほど高くはないが,梅雨降水の将来予測などの際には,東日本のように大雨の少ない地域についても知見を整理する必要がある。また,長期間の「気候システムの平均像」としての「広いパラメータレンジでの種々の現象の振れ方」の把握の足がかりともなると考え,40年間の梅雨最盛期と盛夏期の東京を例とする東日本の大雨日について,解析を行ってきた。本講演では,降水特性や大気場について,降水域の南北の広がりも参照しながら吟味した。<br> ミニチュア版天気図が手元にある1971 ~2010年の6月16日~7月15日(梅雨最盛期)の東京での「大雨日」の日数は計31回であった(長崎よりかなり少ない)。これらの各事例における気圧配置の違いをパターン毎に分類した。 東日本では,梅雨最盛期の「大雨日」の約半分は台風が直接関連した事例(パターンA,B)であり,また,西日本の集中豪雨と違い,10 mm/h未満の「普通の雨」が持続することにより大雨日となる事例(パターンB,C)が少なくなかった。<br>&nbsp; パターンAでは,暖気移流の大きい領域が北海道東方までのびていたが,まとまった降水域はその南西方の暖気移流の小さい領域(宇都宮~八丈島,約380 km)だった。さらに,そこでの10 mm/h以上の強雨の寄与率は大きかった。パターンBでは大きい暖気移流域の中で多降水域は南北に広く分布していた(宇都宮~八丈島)。その南半分(館山以南)では10 mm/h以上の寄与率も大きかったが,北半分(横浜以北)では10 mm/h未満の「普通の雨」の寄与率が大きかった。<br> パターンA,Bの双方で高温多湿な空気が台風の東側の南風により北方へ侵入してくるが,下層を通過するパターンAに対し,梅雨前線の存在するパターンBでは関東付近で傾圧性が強い場に流入してくる。このような大気場の違いが降水特性の違いに影響しているのではないかと考える。<br> 盛夏期(8月1日~31日)でも東京について,同様に大雨日を抽出した結果,2/3以上が台風に関わる事例であった。梅雨最盛期の東京での大雨日のうち半数近くは,10 mm/h未満の「普通の雨」によるものだったが,盛夏期の東京の大雨日では全体的に,10 mm/h 以上の降水による寄与が非常に大きかった。この結果は,梅雨最盛期から盛夏期への季節経過の中,オホーツク海気団の張り出し方の変化に伴い,梅雨最盛期のパターンBのような状況の出現頻度が少なくなることを含めて影響していると考える。
著者
横地 高志 杉山 剛志 加藤 豊
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

エンドトキシンとD-ガラクトサミンをマウスに投与すると、実験的エンドトキシンショックが誘導される。この実験的エンドトキシンショックの病態におけるアポトーシスの関与が検討された。エンドトキシンショック誘導マウスの各臓器からDNAを抽出し、アガロースゲル電気泳動で展開したところ、肝臓に明らかなDNA断片化が認められた。また、ニックエンド法で染色したところ、肝細胞が陽性に染まり、肝細胞がアポトーシスを起こしていることが明らかとなった。また、腎臓も陽性に染色される部分があった。エンドトキシンショック誘発マウスの血清とD-ガラクトサミンとの移入により、アポトーシスが誘導され、アポトーシス誘導に血清中の因子の関与が推定された。抗TNF抗体の投与によって肝アポトーシスが抑制されたことから、エンドトキシンによって遊離された血清中のTNFがアポトーシル誘導因子であることが推察された。TNFとD-ガラクトサミン投与によって、肝アポトーシスが同様に誘導されたことからもTNFの関与は明らかになった。その他のサイトカインによる作用は認められなかった。このエンドトキシンショックに伴った肝アポトーシスにFas抗原の関与を調べるために、Fes抗原陰性のMRL lpr/lprマウスを用いて検討したところ、同様に肝アポトーシスが起こったことから、Fas分子の関与はないと考えられた。以上の結果から、エンドトキシンショックの病態にアポトーシスが関与し、特にTNFが主要な作用分子であることが明らかになった。エンドトキシンショックにおいて、臨床的に肝壊死と呼ばれていた現象が実際は肝アポトーシスであることも示唆された。
著者
湯浅 哲也 加藤 靖佳 板橋 安人 YUASA Tetsuya KATO Yasuyoshi ITABASHI Yasuto
出版者
Special Needs Edudcation Research Center, University of Tsukuba
雑誌
筑波大学特別支援教育研究 = THE JAPANESE JOURNAL OF SPECIAL NEEDS EDUCATION RESEARCH (ISSN:1883924X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-8, 2018-03

本研究は,重度聴覚障害児の発話にみられる発話速度およびピッチを取り上げて,その韻律的特徴の変化を縦断的に究明していくことを目的としている。今回は,重度聴覚障害児1名を対象に,小学部3年,小学部6年,高等部3年の3時点において,「せつぶん」の音読を実施した。その音読された発話音声の発話速度とピッチを音響的に測定し,各段階および健聴者との比較検討を行った。その結果,発話速度は小学部3年時点に比べ高等部3年時点になると速くなることが示された。ただし,小学部6年時点は小学部3年時点より速度低下が認められた。その要因として,①発話材料の内容を熟考しながら音読したため,②発音要領を明瞭に意識して読もうとしたため,結果的にゆっくりになったと考えられた。また,ピッチに関しては,年齢が上がるにつれて下がっており,高等部3年時点では健聴女性と近似したピッチを示すことが明らかになった。
著者
粟屋 牧子 加藤 修一 狩野 契 渡辺 裕輔 岡田 浩一 鋤柄 稔
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.343-348, 2019 (Released:2019-06-28)
参考文献数
18

がんだけではなく非がん疾患も含めた終末期の血液透析患者において, 呼吸困難は頻度が高く苦痛が大きい症状である. 呼吸困難の緩和のためにオピオイドが用いられることがあるが, 透析患者では代謝物の蓄積による副作用の懸念から, 使用成績についての報告が少ない. 今回われわれは, 呼吸困難を訴えたがんおよび非がん疾患終末期の血液透析患者7症例に対して, 呼吸困難の緩和を目的にオキシコドンを経口あるいは持続皮下注射で投与した. 開始時の平均投与量は注射換算で3.8mg/日, 平均最大投与量は19.7mg/日であった. Support Team Assessment Schedule日本語版における評価で, オキシコドン投与により呼吸困難の有意な改善を認めた. 呼吸抑制など有害事象の発現はなく安全に使用可能であった. 少量から漸増して投与することで, オキシコドンは血液透析患者にも比較的安全に使用することが可能であり, 呼吸困難の緩和に有効な治療選択肢の一つになり得る.
著者
東 耕平 竹腰 開 深井 貴明 品川 高廣 加藤 和彦
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-136, no.9, pp.1-8, 2016-02-22

仮想化技術を用いたクラウドコンピューティングによって提供されるサービスが広く利用されている中,ベアメタルクラウドと呼ばれる新しいサービスが近年注目を集めている.ベアメタルクラウドとは Infrastructure as a Serivce (IaaS) の一種であるが,従来の IaaS がユーザに対して仮想マシンを提供するのに対し,ベアメタルクラウドは物理マシンを提供する.これによって,ユーザは安定して高い性能・機能を発揮するマシンを比較的安価かつ容易に利用することが出来る.しかし物理マシンをユーザにそのまま提供してしまうと,ユーザは物理マシンのハードウェアに直接アクセスすることが可能になるため,重要な情報が記憶されている EEPROM などの不揮発性領域のデータが書き換えられてしまうことによって,マシンが恒久的に起動しなくなったりマルウェアに感染して次のユーザが影響を受けるなどの問題が発生する可能性がある.本稿では,軽量なハイパーバイザを利用して,重要なデータが記憶されている不揮発性領域へのアクセスを遮断する手法を提案する.これにより,ベアメタルクラウドの利点は維持しつつも,クラウド事業者が物理マシンのハードウェアを保護して安全性を確保できるようにする.
著者
加藤 勇夫 太田 結隆 越島 一郎
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会誌 (ISSN:24320374)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.60-80, 2019 (Released:2019-03-23)
参考文献数
35
被引用文献数
1

日本社会が現在の生活の質を維持し、今後、深刻化する少子高齢化社会に対応するためには、既存社会システムの破壊と再生(革新)による労働生産性の向上と、この革新を支えるイノベータの育成が急務である。また、イノベータの育成には、プログラムを機敏にマネジメント(機敏に意思決定)するための基盤となるマネジメント方法論として、リーン&アジャイルプログラムマネジメントの開発と実施が必要であると考えている。本稿では、このリーン&アジャイルプログラムマネジメントを実現するために、これまでのイノベーションプロセスを再考し、イノベータが革新を完遂するためのマネジメントフレームワークを提案する。
著者
太田 結隆 加藤 勇夫 加藤 瑠人 越島 一郎 橋本 芳宏
出版者
一般社団法人 国際P2M学会
雑誌
国際P2M学会研究発表大会予稿集 2019 春季 (ISSN:24320382)
巻号頁・発行日
pp.458-475, 2019 (Released:2019-05-13)
参考文献数
5

日本社会が抱えている問題の一つに重要インフラを支える制御システムを対象にしたサイバー攻撃のリスクがある。もしこのリスクが発生してしまうと、プラントの安全を確保するためには、OT側が実施すべき安全対応とIT側が実施すべきセキュリティ対応が連携して事態にあたる必要がある。インシデントレスポンスをP2Mの構図で考えると、OT側はSafeプロジェクトを実施主体であり、IT側はSecプロジェクトの実施主体と捉えることができる。この二つのプロジェクトを統括するにはプログラムマネジメントが不可欠である。このため、本稿ではP2Mフレームワークを援用して重要インフラにおけるサイバーインシデントマネジメントを議論する。
著者
挾間 渉 森田 鈴美 加藤 徳弘
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.243-248, 1993
被引用文献数
11

キュウリの代表的なブルームレス台木として使用されている&lsquo;スーパー雲竜&rsquo;と,従来から使用されブルームの発生が多い台木の&lsquo;新土佐1号&rsquo;を供試して,褐斑病の発病推移を比較検討した。この結果,褐斑病の発生は,ブルームレス台木への接ぎ木により著しく増加する傾向が認められた。この傾向は特にビニールハウス栽培において顕著であった。台木の違いによる葉中無機成分含有率を比較したところ,必須元素の含有率に差異は認められなかったが,ブルームレス台木接ぎ木区のキュウリ葉ではケイ酸含有量がきわめて少なかった。さらに,ケイ酸無施用で栽培したキュウリは,ブルームレス台木栽培の場合と同様,褐斑病に対する侵入阻止および病斑拡大阻止作用が低下する傾向が認められた。これらの結果から,ブルームレス台木への接ぎ木キュウリにおけるケイ酸の吸収阻害と褐斑病に対する病害抵抗性の低下との関連が示唆された。
著者
杉浦 栄紀 三輪 富生 森川 高行 山本 俊行 加藤 博和
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.715-723, 2009 (Released:2017-11-29)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

相次ぐ路線バスの縮小・撤退を背景に,自治体が主体となって運営するコミュニティバスを導入する事例が増加している.しかし,利用者が少ないコミュニティバスの運営は自治体にとって大きな負担となっており,交通不便地域における市民の足を維持することが困難となっている.本研究はより少ない費用で実施可能な利用促進策としてバスマップに注目し,既存のバスマップの問題点を整理した上で,新しいバスマップの作成を試みた.新しいバスマップの効果をグループインタビュー調査およびアンケート調査を通じて検証した結果,内容を吟味したバスマップは,グループインタビューにおける議論の活性化に影響を与える可能性を示した.