著者
松井 克文 牧野 恵美 馬田 隆明 菅原 岳人 吉田 塁 栗田 佳代子 長谷川 克也
出版者
日本ベンチャー学会
雑誌
日本ベンチャー学会誌 (ISSN:18834949)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.29-43, 2020-09-15 (Released:2022-01-12)

本研究の目的は、起業家によるゲスト講義を中心とした起業家教育プログラムの効果検証である。ゲスト講義は、ロールモデルや代理経験の効果を通して起業における自己効力感を向上させ、起業意思が醸成されて起業につながると期待されてきた。本研究では、同一環境にある非受講のコントロールグループを設定した準実験を実施し、差分の差分法を用いてゲスト講義の効果を検証した。対象のプログラムはゲスト講義を4回含む7週間の大学の大規模授業である。検証の結果、受講の効果による起業意思と起業における自己効力感の向上は確認されなかった。また、受講前の起業意思が高い学生ほど、受講後に起業意思が低下する結果が示された。以上のことから、ゲスト講義中心の教育プログラムは期待した効果が得られていないと考えられる。一方、受講前に起業意思が高い学生は、起業への向き不向きを再考する機会を得て、自らの適性を見つめ直したと考えられる。
著者
山谷 里奈 望月 公廣 悪原 岳 西田 究 市村 強 藤田 航平 山口 拓真 堀 高峰
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

Off Ibaraki region is located at the southern end of the focal area of the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake (Tohoku Earthquake). A dense network of 32 ocean bottom seismometers (OBSs) was deployed at this region with a station interval of about 6 km from October 2010 (11 OBSs started from February 2010) to October 2011. A large number (> 10,000) of aftershocks following the 2011 Tohoku earthquake were detected by this network. However, precise determination of these hypocenters and focal mechanisms is challenging due to uncertainties of seismic properties of thick sediment layers beneath the seafloor. The P-wave velocity structure has been reasonably constrained by active-source seismic surveys (Mochizuki et al., 2008), but the S-wave velocity structure is still unrevealed despite its importance.To constrain the S-wave velocity of the shallower portion, we apply the ambient noise interferometry to the short-period OBS data in this study. After dividing the data into ten-minute segments, we deconvolve the data with instrumental response function, remove trends, and discard data dominated by seismic events. Then, we apply a one-bit normalization and spectrum whitening. Finally, we calculate cross-correlations for vertical-vertical, radial-radial, and transverse-transverse components to retrieve Green's functions.We measure average phase velocity in the array using spatial auto-correlation method (Aki, 1957; Nishida et al., 2008). The phase velocities of the fundamental Rayleigh, the first-higher Rayleigh, and the fundamental Love modes are 0.5 to 2.5 km/s (in the frequency range of 0.1 to 0.3 Hz), 0.8 to 1.5 km/s (0.17 to 0.3 Hz), and 0.5 to 2.0 km/s (0.25 to 0.1 Hz), respectively. Next, we infer the 1-D average S-velocity isotropic structure by non-linear inversion, whose sensitivity is mainly ~5 km. The results show ~1000 m thick sediment with S-wave velocity of 300–1000 m/s immediately beneath the seafloor. At last, we apply band-pass filter with frequency range of 0.125 Hz and measure travel-time anomaly of the phase velocity in each frequency range, following Nagaoka et al. (2012). We apply non-linear inversion (Rawlinson & Sambridge, 2003) and find low-velocity anomalies in the deeper of the northern part and in the shallower of the center part.
著者
山崎 正勝 栗原 岳史 中尾 麻伊香
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1954年3月の米国のビキニ水爆実験によって、第五福竜丸の乗組員が放射線被害を被った。その実態は、自らも調査に関わった当時大阪市立医科大学助教授だった西脇安によって各国に伝えられた。本研究では、遺族から提供された資料などの分析で、次のことが明らかにされた。(1)1954年の西脇の欧州訪問は、大阪の原水爆禁止運動が財政的に支えたこと。(2)訪欧中のジョセフ・ロートブラットとの出会いが、1955年の「ラッセル・アインシュタイン宣言」の重要なきっかけを与えたこと。(3)1957年のソ連及び東欧訪問でその影響が広がったこと。(4)1959年の訪米によってライナス・ポーリングの反核運動を支えたこと。
著者
栗原 岳史
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本年度は,昨年度に引き続き,1950-60年代の科学者たちについて米国政府がどのように理解していたのかを解明するために,主として米国国立公文書館の所蔵する文書史料の調査を行ってきた.これまでに,科学研究活動全体が米外交政策の重要な手段の一つとしての役割を果たしていたことを,かなり具体的に明かにすることができた.昨年度までに原子力技術の日本への導入に関する米外交政策を中心に調査を進めてきたが,米の外交政策は科学全体に及んでおり,原子力技術の日本への導入はその一部にすぎず,科学に関する米外交政策全体の中で,原子力技術がどのような位置づけられていたのかを明らかにする必要があることが明らかになってきた.第二次世界大戦の終結から1950年までに,米国務省は外交政策における科学の重要性を自覚するようになり,科学に関する外交政策を体系的にまとめた報告書を作成し,その報告書の勧告に従って,国務長官の下に科学局を新設し,主要国に科学者を科学アタッシェとして派遣するようになった.日本への原子力技術の導入はこの枠組みの中で行われたものであった.米外交政策の目的は,主要国と共同で科学研究を進めることで国家安全保障にとって重要な科学知識を得ることや,科学の振興によって経済発展をもたらして政治を安定させることで,当時の冷戦体制の中で対立していた共産主義勢力の浸透を防ぐということにあった.そのため,米に批判的な科学者たちの動向を注意深く観察していたことを示す公文書史料をいくつか発見しすることができた.これらの調査成果の一部を,2017年6月4日に香川県の香川大学で開催された日本科学史学会などで発表し,幾人かの研究者たちから助言をいただくことができた.
著者
平井 紗夜子 氏原 岳人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.623-630, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
6

本研究では,Jリーグの試合観戦者を対象としたMM施策を展開し,経年的な効果を検証した.分析の結果,1)2019年のプロジェクト認知度は79%,1試合あたりの自家用車からの転換率は11%であった.いずれも初年度を上回る数値であった.また,「ファジウォーカー」というキーワードの認知率も極めて高く,ブランディングが功を奏した.2)本プロジェクトでは数多くの施策を展開したが,行動プラン法によるワンショットTFPが転換に最も効果的であった.3)ファジアーノバスの内装リニューアルや試合時刻に合わせた運行,国道情報板の標語掲示,JRの駅構内・車内広告といった交通機関と連携した施策が,プロジェクト認知のきっかけとなっていた.4)公共交通機関の利用者は,沿道商店への立ち寄り頻度が相対的に高い.したがって,公共交通の利用促進が地元消費の増加に有効である.
著者
小笠原 岳 近藤 靖史
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会 論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.115, pp.19-24, 2006-10-05 (Released:2017-09-05)
参考文献数
10
被引用文献数
1

空調設備設計の際に用いられる熱負荷計算では非常に複雑である伝熱現象を単純化して扱っている。特に放射熱伝達は放射熱伝達率を用いて壁面温度と室内空気温度との関係として表現される。また放射熱伝達率はほとんどのケースで一定の値が用いられている。しかし放射熱伝達は本来物体表面間のみで起こる熱移動現象であるため、壁面温度と空気温度の関係で実現象を充分に捉えているか、また様々な条件下で一定の放射熱伝達率が適用できるかなど、検討の余地がある。本研究ではCFD解析に基づく放射熱伝達率の算出方法を示し、事務室空間における放射熱伝達率について検討を行う。
著者
丸山 博行 小泉 大 高橋 大二郎 太白 健一 村橋 賢 清水 徹一郎 遠藤 和洋 藤原 岳人 佐田 尚宏 安田 是和
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.250-257, 2016-03-01 (Released:2016-03-18)
参考文献数
26
被引用文献数
3

症例1は76歳の男性で,突然の下腹部痛と嘔気を主訴に救急搬送された.CTで右下腹部に腸管壁の造影不良な拡張した小腸ループと右陰囊水腫を認め,絞扼性イレウス・右陰囊水腫と診断し,緊急手術を行った.ヘルニア囊は腹膜前腔に存在し右内鼠径輪で小腸が絞扼され鼠径ヘルニア偽還納と診断した.小腸部分切除とヘルニア門縫縮を行った.症例2は60歳の男性で,午前8時頃より腹痛,嘔吐があり,右鼠径部膨隆を自己還納したが症状軽快せず,午後4時救急搬送された.CTで右下腹部,鼠径部近傍に小腸ループを認め,右鼠径ヘルニア偽還納と診断し緊急手術を行った.右内鼠径輪で小腸が絞扼され,ヘルニア囊は腹膜前腔に存在し鼠径ヘルニア偽還納と診断した.小腸を腹腔内に引き出し腹膜前腔にメッシュを留置しヘルニア修復を行った.鼠径部ヘルニア偽還納本邦報告例19例に自験例を含め報告する.
著者
田邉 信男 阿部 宏史 氏原 岳人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.553-559, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

「新しい公共」による取り組みが継続・発展するには、その担い手となるNPOなどが「継続的に活動できる団体の運営力」が重要である。また、協働によるまちづくりの現場でも、継続性を担保する仕組みやマネジメントの方法論が問題としてあげられてきている。このような問題意識のもと、本報告では、「新しい公共」の担い手として期待されている任意団体やNPOの団体で継続的に活動している活動主体に着目した。複数の文献から課題を整理し、アンケート調査を通じて、継続的な組織運営の課題の類型化や組織形態別の課題を定量的に分析した。また、分析結果の考察を通して、組織が継続・発展していくためのマネジメントの方策について検討した。
著者
田中 皓介 長谷川 貴史 宮川 愛由 三村 聡 氏原 岳人 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.356-368, 2018 (Released:2018-11-20)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

近年の日本では大型店舗立地による雇用機会,税収,買い物客の増加が期待されるものの,その根拠は乏しい.それどころか先行研究では,大型店舗での買い物は地元商店での買い物に比べて,地域経済の活性化に繋がらないことが実証的に示されている.本研究は,京都市での先行研究の知見が他都市においても妥当するかを検証するため,岡山市を対象に調査・分析を行った.その結果,買い物支出のうち岡山市に帰着する割合は,地元小型商店,地元中型商店ではそれぞれ67.13%,55.21%であった.一方,天満屋,全国チェーンYではそれぞれ40.00%,28.48%に留まり,地元小型商店や地元中型商店の方がチェーン型大型店舗よりも,買い物支出が岡山市に帰着する割合が高いことが示された.こうした傾向は京都市を対象に行った先行研究の知見を支持する結果である.
著者
栗原 岳史
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究 (ISSN:21887535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.227, pp.140-148, 2003 (Released:2021-08-12)

The National Science Foundation (NSF) was established in 1950 after a long debate between Harley M. Kilgore and Vannevar Bush. There is no military research division at the present NSF, but at the time both Bush and Kilgore intended to include it into the NSF. The author maintains that scientists' movement by the Federation of American Scientists (FAS) was the most important factor that the military research division was deleted from the NSF. The FAS insisted that the military should not control the Atomic Energy Commission. The FAS also thought that the military should not control scientific research activities in general. The FAS emphasized that scientific knowledge should be used for peace purposes, and considered the NSF as an alternative of military patronage. The military tried to build scientific research systems in close cooperation with Bush. The FAS criticized strongly both the military and Bush. This idea of the FAS was supported by many scientists. The NSF Bill that met requirements of the military and Bush passed the Congress, but President Truman vetoed it. In the process of amendment of the Bill, the military and Bush reluctantly accepted FAS's requirement to delete military research division from the NSF.
著者
桑原 岳 桑原 和江 桑原 光一
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.65-68, 2013-06-20 (Released:2014-12-06)
参考文献数
7

症例は日本猫,16歳,避妊雌で進行性の呼吸困難を主訴に来院した。一般身体検査では喉頭部にマスが触知された。一般的に,猫の喉頭部腫瘍の予後は悪いといわれている。その理由として,腫瘍特異的な治療法が確立されていないこと,また全喉頭切除術により深刻な合併症を伴い得ることが挙げられる。本症例では永久気管切開による対症療法を実施し,喉頭部の腫瘍に対して部分切除生検を行った。病理学的検査を実施した結果,咽頭喉頭腺癌と診断された。症例は順調に麻酔から覚醒し,手術3日目に退院した。術後,飼い主による主観的なQOLは改善されたようであったが,手術54日目に嚥下困難による食欲廃絶が認められ,その後に死亡した。死亡直前まで呼吸状態は良好であった。咽頭喉頭腺癌により重度の呼吸器症状を呈する猫では,低侵襲な部分切除生検と永久気管切開術を実施して気道を確保することが,動物のQOLを改善し,なおかつ飼い主の満足度を得るための選択肢のひとつとなり得ることが示された。
著者
倉渕 隆 小笠原 岳 熊谷 一清 浅利 雄太郎
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成21年 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.1339-1342, 2009-08-18 (Released:2017-08-31)

Indoor environmental condition to control influenza infection has been a matter of concern from a viewpoint of public health. Following Shaman et al.'s work, Harper's data concerning influenza virus survival rate was reanalyzed to find out relationship between humidity and virus survival rate which is presumably correlated with influenza transmission. It was found that the virus survival rates were highly correlated with absolute humidity even for very short and long elapsed time after released to atmospheric air. Influenza virus survival rate was well represented with a single decay curve by taking half-lifetime period as a representative time scale.
著者
高嶋 真之 大沼 春子 尹 景慧 淡路 佳奈実 川村 睦月 杉谷 真実 田宮 弘貴 松尾 奈緒 篠原 岳司
出版者
北海道大学大学院教育学研究院 教育行政学研究室・学校経営論研究室
雑誌
公教育システム研究
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-27, 2019-09-30

本稿は、北海道奥尻高等学校(以下、奥尻高校)の「町立化」に伴う変化を、教職員、生徒、地域住民へのインタビューより明らかにし、考察を加えた調査研究報告である。北海道南西部の奥尻島にある奥尻町は、町内の北海道立奥尻高校を2016年4月に町立移管した。この奥尻町の決定は、わが国において急激に進行する過疎化と人口減少、そしてそれに伴う郡部の高校の小規模化と存続の危機に対し、地元の自治体(主に町村)が高校経営の主導権を持ち、その存続と変革の道筋を拓くものと捉えられる。一方、奥尻高校が町立移管されたことに伴い、その高校教育にいかなる変化が起きるのかは、町の教育行財政および高校の学校経営の観点から追究されたい間いである。 今日の研究動向を概観してみると、高等学校の学校設置者移管に伴う当該自治体と学校経営の変化に焦点を当てた研究は、事例が稀少であることも重なり、決して多いとは言えない。「移管」という地方教育行政の政策選択について奥尻や他の事例に基づき検討したもの(小入羽・本多 2018、国立教育政策研究所 2019:104-115)や、高校を核とする今日的な地方創生のあり方として奥尻高校を事例に検討するもの(徳久 2018)が見られるが、それらは主として地方自治体ならびに教育行財政の観点で研究されたものであることから、高校の学校経営のリアリティについては焦点があたらないままである。 一方、小規模高校や町村立高校の研究は、島根県や鹿児島県の離島、そして北海道の郡部において小規模化する高校をその地域の持続的な発展や地元人材の育成と今日的な地方創生施策との関連で論じる研究(宮ロ・池・山本 2014、山内・岩本・田中 2015、樋田・樋田 2018)が見られる他、北海道大学の研究チームでも北海道北西部の天売島に存立する羽幌町立北海道天売高等学校と天売島の地域おこし実践との関係について調査研究をおこなってきた(高嶋・大沼・篠原他 2017)。島根県の海士町と島根県立隠岐島前高校の歩みを紹介する山内・岩本・田中による『末来を変えた島の学校』(岩波書店、2015年)は、研究としてまとめられたものではないが、町と高校が島留学生を迎え入れ変革の道を歩む過程を実際の生徒たちの学習と生活の様子から詳細に描かれており、本調査研究を進める上でも特に参考となったものである。 ただし、過疎地域の小規模高校とその存立自治体が抱える事情は多様であり、それぞれに固有の文脈を有していると考えられることから、上記の図書や文献等に留まらず複数の事例に視野を広げ、質的調査によって教職員や生徒らの声に基づく事例研究を積み重ねていく必要があるだろう。なにより、今日のわが国においては、人ロ減少社会における地域の持続的発展と学習権保障の課題を検討することは喫緊の課題であり、本調査は、奥尻島と奥尻高校が経験する高校の町立化が地方創生と高校教育にいかなる影響をもたらしたかを問うことで、国内の共通問題に対する一定の示唆をもたらせるものと考えている。 そこで本稿では、町立移管の後に様々な取り組みが進められていく奥尻高校の教職員、生徒、地域住民へのインタビューを行い、奥尻高校と奥尻町の変化の実態に迫ってみることにしたい。なお、町立移管の政策選択とその行財政の過程は別稿で著すこととする。 なお、本稿では、町立移管と「町立化」を次の意味で使い分ける。町立移管は、移管決定後から実際に移管が行われた時点までの過程を表し、「町立化」は町立移管後の町立高校としての歩みを含めた町立奥尻高校の末完のプロジェクトの総体を表している。
著者
谷本 翔平 氏原 岳人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1253-1259, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
5

本報告では、スポーツ観戦者に対するMM(Mobility Management)として、Jリーグのファジアーノ岡山の試合観戦者を対象として、自家用車から徒歩や自転車、公共交通などに行動変容させるための複合的な施策を提案し、実施した。その結果、2017年(初年度)は自家用車来場者かつMMに関する本プロジェクトを認知している試合観戦者のうちの10%(全自家用車来場者の7%)が自家用車以外の手段に転換した。転換者の属性は、30代~40代が多く、サポーター歴が長いこと、単独での観戦者である傾向があった。また、手段転換のきっかけとしては「ワンショットTFP」が最も多く挙げられていた。その一方で、二年目には、プロジェクト認知度と手段転換者割合ともに減少しており、継続的な効果につなげるための課題も見えた。
著者
竹内 伸行 田中 栄里 桑原 岳哉 臼田 滋
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.53-61, 2006-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
45
被引用文献数
3

Modified Tardieu Scale(MTS)は,関節可動域(Range of Motion ; ROM)と筋の反応の質(Quality of Muscle Reaction ; QMR)を測定する痙縮評価指標で,測定肢位と筋の伸張速度が規定されている特長がある。欧米ではMTSを用いた研究報告は多いが,信頼性や臨床的有用性を検討した報告は散見される程度である。国内ではMTSを用いた報告は見当たらない。今回,脳血管障害片麻痺患者の麻痺側足関節底屈筋を対象に,①ROMとQMRの検者内,検者間信頼性(n = 13),②筋をゆっくり伸張した時のQMRと速く伸張した時のQMRの関連性(n = 28),③QMRとModified Ashworth Scale(MAS)の関連性(n = 30)の検討を行った。本研究の目的は,これらの結果からMTSの臨床的有用性を検討することである。測定肢位は背臥位で,膝伸展位と膝屈曲位とし,足関節底屈筋を他動的に伸張して測定した。筋の伸張速度は,MTSの規定速度であるV1(できるだけゆっくり)とV3(できるだけ速く)を用いた。結果,①ROMの信頼性は,検者内,検者間共にICC = 0.98〜0.99,QMRの信頼性は検者内がκ = 0.73〜1.00,検者間がκ = 0.71〜1.00であり,高い信頼性を認めた。②V1のQMRとV3のQMRの関連性は,膝伸展位は弱い正の相関に止まり(rs = 0.39),膝屈曲位は相関を認めなかった(rs = 0.08)。③V1のQMRとMASの関連性は両肢位共に強い正の相関(rs = 0.89〜0.90)を認めたが,V3のQMRとMASの関連性は両肢位共に弱い正の相関(rs = 0.34〜0.38)に止まった。本研究結果では,MTSの高い検者内,検者間信頼性を認めた。さらにQMRは伸張速度を変えることで非反射性要素と反射性要素を考慮した評価が可能と考えられた。MTSは,痙縮評価指標として臨床的有用性が高いと示唆された。