著者
尾熊 隆嘉 矢野 義孝 財前 政美 牡丹 義弘 伊賀 立二 全田 浩 奥村 勝彦 安原 眞人 堀 了平
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.987-994, 1997-12-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
18
被引用文献数
1 3

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症の治療時におけるバンコマイシンの有効性, 安全性に関与する要因を統計的に検討する目的で, Therapeutic Drug Monitoringの対象となった患者の背景, 病態, 投薬履歴, 血漿中濃度等の要因と, 有効性, 安全性の臨床評価のデータを集積した。有効性としては効果の有無を, 安全性としては副作用として比較的報告例数の多かった腎機能, 肝機能を対象とし, その検査値異常の発現を採用した。患者背景, 病態, 治療履歴, 体内動態の各要因について, さらに項目ごとに有効性, 安全性との関連性を直接確率計算法, ロジスティック回帰分析法にて検討した。有効性に関しては高齢患者におけるアミノグリコシドの先行投与が有効率の向上に対し, 有意な関連性を示した。安全性に関しては肝機能, 腎機能の検査値異常発現率に対する1日投与量の関連性が強いことが示された。特に, 高齢患者においては血清クレアチニン値, 重症度, 総ビリルビン濃度が影響要因になることが明らかとなった。さらに, 腎機能異常値発現率の影響要因となることが示されたトラフ濃度とその発現率についてノンパラメトリックな2値回帰分析により解析したところ, アミノグリコシドとの併用により発現率が高くなることが示されたが, いずれの場合においてもトラフ濃度を10μg/ml以下にコントロールすることにより, 発現率を15%以下に抑制できることが示された。バンコマイシンの適正使用を推進するうえで, 今回の検討において有効性, 安全性に関与する要因を明らかにできたことは意義深いものと考えられるが, 今回の検討によって, 必ずしも十分な結論が得られたとは言い難く, 今後さらに臨床データを蓄積し, より精度の高い検討をする必要があると思われる。
著者
水池 千尋 石原 康成 堀江 翔太 大谷 豊 水島 健太郎 久須美 雄矢 立原 久義
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0271, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】可動域制限を伴う肩関節疾患では,結帯動作が障害され,日常生活動作に支障をきたすことがあるが,その改善に難渋することが多い。肩関節の可動域制限に対するアプローチは徒手療法,物理療法などがあり,近年では機器を用いた運動もセルフエクササイズとして行われている。これまで我々は,機器を用いたディップ運動が肩関節可動域に及ぼす影響について調査し,肩甲上腕関節(glenohumeral joint:以下,GHj)よりも肩甲胸郭関節(scapulothoracic joint:以下,STj)の可動域が拡大すると報告してきた。しかしながら,男女では筋骨格系に違いがあるため,同様の運動を行っても効果に差が生じる可能性が考えられる。そこで,本研究の目的は,機器を用いたディップ運動による肩関節可動域の変化とその性差について検証することとした。【方法】対象は,肩に整形外科的疾患を有さない健常成人20名40肩[男性:11名,女性:9名,平均年齢:33(21-50)歳]とした。運動に使用した機器は,Hogrelディッピングミニ(是吉興業株式会社製)である。運動は,機器のシートに着座した状態で肩のディップ運動を実施した。速さは対象者自身のタイミングとし,回数は40回,負荷は約50N,時間は3分程度であった。運動前後に,肩関節自動挙上角度(以下,挙上角度),第7頸椎棘突起から母指先端までの距離(以下,指椎間距離)を測定した。指椎間距離は結帯動作の指標として用いた。また,上肢下垂位と挙上時における肩甲棘と上腕骨長軸のなす角度(spino-humeral angle:以下,SHA)を測定し,上肢下垂位と挙上時の値の差によって,GHjの可動範囲を評価した。挙上角度とSHAの測定はゴニオメーターを用い,指椎間距離の測定にはメジャーを用いた。統計学的処理は,運動前後の比較には対応のあるt検定,男女間の比較には対応のないt検定を用いた。なお,有意水準は危険率5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき,対象者には事前に研究の目的や手順を十分に説明し,口頭にて同意を得た。また,本研究は所属する職場の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】男女の比較では,運動前のSHAは男性:103.9±12.7°,女性:106.8±12.9°であり,女性が大きかった(p<0.05)。その他の値に差はなかった。すなわち,女性ではGHjの可動範囲が大きかった。運動前後の比較では,挙上角度は男性:運動前158.2±8.5°,後162.3±7.4°,女性:運動前157.5±8.3°,後160.3±7.8°であり,男性は運動後に拡大した(p<0.05)が,女性は差が無かった。すなわち,男性で挙上角度が拡大していた。指椎間距離は男性:運動前150.9.±57.9mm,後137.5±52.7mm,女性:運動前120.8±37.7mm,後111.1±38.0mmであり,男女ともに短縮した(p<0.05)。すなわち,性別によらず結帯動作は改善していた。SHAは男女とも運動前後で差はなかった。すなわち,性別によらずGHjの可動範囲は変わらなかった。【考察】本研究の結果,男女の比較では運動前の挙上角度は差が無く,SHAは女性が大きかった。すなわち,女性の方がGHjの動きが大きく,STjの動きが小さいことが示された。三次元CTを用いた解析から,上肢挙上時に女性では肩甲骨の上方回旋角度が小さいため代償的に肩甲上腕運動での動きが大きくなることが報告されており,本研究もこれを支持する結果となった。次に,運動後に男女とも指椎間距離は短縮し,挙上角度は男性のみ改善がみられた。ディップ運動では僧帽筋上部線維,菱形筋,前鋸筋,上腕三頭筋に強い筋活動がみられたという報告があり,これらの筋の反復収縮と相反神経抑制によって肩甲骨周囲筋の柔軟性の向上が引き起こされたと考えられる。女性の挙上角度は変化が無かったが,120°以上の挙上では肩甲骨の動きに加え,胸椎伸展運動の連動が必要とされる。元々胸郭と肩甲骨の可動性が低く,筋力が小さい女性にとって,本研究の負荷設定では,肩甲骨と胸椎周辺の可動性の改善度が少なかったと推察された。以上から,ディップ運動を実施する際は,男女の特性に適した負荷設定と効果判定を行うことで,より効果的な介入ができる可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】男女の筋骨格系の違いによってディップ運動の効果に差が生じることが示唆された。このことから,男女の特性に適した負荷設定を行うことが効果的な介入方法に繋がる可能性を見出したことに意義があると考えられる。
著者
藪圭輔 榎堀優 間瀬健二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.23, pp.1-8, 2014-03-07

Wi-Fi 電波強度を用いた位置推定において,電波強度の揺らぎを考慮して,電波強度分布の一致度から位置を推定する場合,少数回の観測では十分な電波強度分布が得られず,推定精度が低下する問題がある.そこで本研究では,電波強度分布に,通信理論において,多重経路で受信機に到達する散乱信号のモデルに使われるレイリー分布を用いることで,少数回の観測でも精度の高い位置推定を実現することを目指す.電波強度分布にレイリー分布を想定した場合とガウス分布を想定した場合とを比較した結果,観測回数 2 回の場合の位置推定精度を表す F 値は,レイリー分布利用で 0.770±0.235,ガウス分布利用で 0.055±0.054,5 回で同じく 0.871±0.174 と 0.647±0.195 となった.従って,レイリー分布を利用することで,少数回の観測でも高い精度で識別できることが確かめられた.また,レイリー分布は 1 サンプルでも分布の推定が可能であり,F 値で 0.522±0.235 の精度を得た.In Wi-Fi based positioning, RSSI distribution matching is required to realize robustness for RSSI noise that is occurred by humidity change, human movement, and so on. However, RSSI distribution matching is not effective in small-sample-size positioning if it use common distribution such as Gaussian. Thus, in this paper, we propose use of Rayleigh distribution in order to solve the issue. The Rayleigh distribution is a model of scattering signals arrival with multiple paths in communication theory, and is able to estimate its distribution with small-size samples. As an evaluation result, in two samples, the F-measure is 0.770±0.235 with our proposed method, and it is 0.055 ± 0.054 with Gaussian; and in five samples, the F-measure is 0.871 ± 0.174 with our proposed method, and it is 0.647 ± 0.195 with Gaussian. In addition, our proposed method is able to estimate position in only one sample with 0.522 ± 0.235 in F-measure.
著者
佐藤 弘毅 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.501-513, 2006
被引用文献数
11 5

一斉授業において伝統的に用いられている黒板を,コンピュータやネットワークに接続したものが電子化黒板である.双方向的な授業への活用が期待されるが,この特徴を活かした研究は少ない.本研究では,効果的な電子化黒板の活用を目指し,利点の1つである受講者の視線集中の効果に着目する.その効果として,受講者の存在感の向上を取り上げ,電子化黒板を用いた学習活動情報の共有が受講者の情意面に与える影響について検証する.そのために,電子化黒板の有無,教師役の有無,個人/共同による学習の3要因を変えた実験的な一斉授業を行った.分散分析の結果,電子化黒板がある授業において存在感が高いことが示された.次に,電子化黒板を用いた授業において,存在感を高めた要因と効果を調べるために,共分散構造分析とビデオ分析による検討を試みた.結果,電子化黒板への視線集中が存在感を高め,そのことが情意面を支援した可能性が示唆された.
著者
堀野与七 編
出版者
文祿堂
巻号頁・発行日
1903
著者
内堀 朝子
出版者
神田外語大学
雑誌
Scientific approaches to language (ISSN:13473026)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.71-83, 2006-03-31

本論では,日本語における主文表現の中から,命令・祈願・感嘆表現を取上げ,それらの統語構造について,基本的な性質を検討する。これらの表現の統語構造には,(i)動詞の形態変化,(ii)モダリティを示す補文標識(iii)モダリティを表わす語彙要素,が見られるが,本論では,これらの表現のうち,「こと」「ように」という共通する形態を文末に伴うものを主に議論する。特に(i)(ii)に関しては,動詞の取りうる形態変化上imperativeと,補文標識によって示されるsubjunctiveの相違,また,(iii)に関しては,補文埋込み構造を有する構造について,考察する。具体的には,これらの表現と,主文現象としての丁寧表現との共起が許されるかどうか,また,これらにおいて,非主文現象および名詞性の指標としての「が・の」交替現象が起こるかどうかについて観察し,これらの表現の統語構造を探る手がかりとする。
著者
正岡 徹 長谷川 廣文 高久 史麿 溝口 秀昭 浅野 茂隆 池田 康夫 浦部 晶夫 柴田 昭 齊藤 英彦 大熊 稔 堀内 篤 斎藤 洋一 小澤 敬也 宇佐美 眞 大橋 靖雄
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.199-217, 2000-03-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
29
被引用文献数
2 16

厚生省から再評価指定を受け, 重症感染症に対する静注用ヒト免疫グロブリン (以下MG) 製剤の抗生物質との併用効果を検証するため, 抗生物質単独投与を対照とした多施設共同非盲検ランダム化試験を実施した。広範囲抗生物質の3日間の投与において感染症の主要症状の改善が認められない無効例をmG群または対照群に無作為に割り付けた。割り付け日 (第1日目) より, いずれの群も抗生物質をimipenem/cilastatin (IPM/CS)+amikacin (AMK) に変更し, 7日間投与した。MG群のみにWIGを第1日目より1日59, 3日間連日併用投与した。効果は解熱に要した日数ならびに臨床症状の消失に要した日数を中心に判定した。有効性評価からの除外率は26.1% (178/682) であった。背景因子 (性, 年齢, 病態の区分, コロニー刺激因子 (以下CSF) 製剤投与の有無, 投与前アルブミン濃度, 投与前IgG濃度および好中球数の推移) に関してはすべての項目で両群間に偏りは認められなかった。Kaplan-Meier法にて推定した第7日目までの解熱率はmG群54.8%, 対照群37.2%で, IVIG群が有意に早く解熱した (一般化Wilcoxon検定: P=0.002)。同様に第7日目までの臨床症状の消失率はIVIG群57.3%, 対照群39.4%で, IVIG群が有意に早く消失した (一般化Wilcoxon検定: P=0.002)。客観的な半掟基準にもとつく「有効」以上の有効率はMG群61.5% (163/265), 対照群47.3% (113/239) でIVIG群が有意に優れていた (x2検定: p<0.001)。IVIG製剤は重症感染症に対し, 抗生物質との併用において有効であると考えられた。
著者
戸髙 義一 戸田 健一 堀井 基弘 梅本 実
出版者
一般社団法人 日本鉄鋼協会
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.101, no.10, pp.530-535, 2015 (Released:2015-09-30)
参考文献数
24
被引用文献数
11

The effect of lattice defects on the tribological behavior for low friction coefficient under lubricant was investigated in the nanostructured steels produced by heavy plastic deformation processes. In the surface-nanostructured SUJ2 bearing steel, the stable tribological behavior with low friction coefficient was observed in the ball-on-disk tests under PAO (Poly-α-Olefin 17) - oil or ester - oil, in comparison with the non-deformed steel. This phenomenon was enhanced by using the lubricant with polarity (ester - oil). In addition, the similar phenomenon was observed in the ULC (ultra-low carbon) steel with high-density of lattice defects (grain boundary, dislocation and so on). This reason seems that the molecules of lubricant interacted strongly with the nanostructured surface due to the deviation of electrons (polarization) at the region with high-density of lattice defects.