著者
野中 亮助 佐藤 誠 小池 康晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.1008-1019, 2004-04-01
参考文献数
17
被引用文献数
3

本論文では,Speed-Accuracy Trade-offの問題に関して,水平面内における2点間到達運動において,運動距離,運動精度を変化させ,そのときの運動軌道及び,筋の活性度を示す終電信号を計測した.また,比較実験として運動精度を要求しない課題を行った.その結果,Fitts's lawに準じた2点間到達運動において,運動の筋端点近傍で運動トルク生成のためには不必要な筋の活性が行われていることを示した.また,その筋の活性度は,要求された運動精度が高くなり,運動速度が遅くなっても,小さくはならないこと,更に,精度を要求されない同じ運動速度の運動に対して,精度を要求された精度の高い運動においては,その筋の活性度が大きくなることを示した.この結果は人がFitts's lawに準じた2点間到達運動を行っている際,腕の粘性や剛性といったインピーダンスを積極的に調節することによって,試行ごとに生ずる誤差を小さくするというメカニズムが存在していることを示す.
著者
板口 典弘 森 真由子 内山 由美子 吉澤 浩志 小池 康晴 福澤 一吉
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.436-443, 2019-12-31 (Released:2021-01-04)
参考文献数
16

本研究は, 日常的に利用できるタブレットから取得できる情報を用いて, 書字運動および書字障害を定量的に評価する手法を提案することを目的とした。頭頂葉を含む病変を有する症例 5 名 (以下, 患者群) と高齢健常者 5 名 (以下, 統制群) が参加した。提案手法によって, (1) 書字障害を呈する症例のみにおいて, 字画間にかかる時間が長かったこと, (2) 症状にかかわらず, 患者群の速度極小点の数が統制群の範囲を越えて大きかったこと, (3) 複数症例で, 字画間の時間と距離の関係が統制群と異なっていたこと, (4) 統制群の字画間の時間と距離の相関係数は, 比較的安定であったことが明らかとなった。この知見に基づき, タブレットによる書字運動評価の有用性について議論した。
著者
当麻 哲哉 瀧塚 博志 鳥飼 俊敬 鈴木 等 小木 哲朗 小池 康博
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.118-128, 2014 (Released:2014-08-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2 5

ハイビジョン映像の品質を超える高精細なビデオ?フォーマットが開発されているが、その伝送のための高速データ通信技術は必ずしも一般家庭への適用が容易ではない。家庭向けには、高速通信というテクニカルな要求だけではなく、取り扱い易さ、接続不良のない信頼性、入手しやすい価格等の条件が満たされる必要があり、高速通信で代表的な石英系光ファイバーは、脆く折れやすい上、低コストで精度のよい簡単接続が困難なため、消費者のニーズに合わない。この研究では、折れにくく高速通信が可能な屈折率分布型プラスチック光ファイバーの端面に、球状のガラス・コリメータレンズを組み込んだ超小型ビーム拡大インターコネクトを、低コストで精度の高いボールペン製造技術の応用で実現し、4K3D高精細非圧縮映像伝送実験によるシステム検証を行った。
著者
三武裕玄 長谷川 晶一 小池 康晴 佐藤 誠
雑誌
情報処理学会研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.24(2006-EC-003), pp.9-16, 2006-03-13

人間とバーチャルヒューマンとのインタラクションにおいて、相手の視線はリアリティの向上のために重要な要素である。本研究では、物理シミュレーションベースのバーチャルヒューマンを対象とし、人間らしい自然な眼の動きを与えるため、人間の視覚系を模擬したモデルを構築した。具体的には、物理シミュレータの持つ物体の位置情報をもとに、人間の視覚的注意を模擬した手法によって注視点を決定し、眼球運動の制御モデルによって眼球を動作させた。
著者
礒 千聡 井原 晶子 鈴木 亜美 三藤 雄介 中川 諒 林 涼 小池 康子 新 智美 新 謙一
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.202-205, 2018-05-01 (Released:2018-09-20)
参考文献数
9

77歳の重症慢性閉塞性肺疾患患者に対し,日常生活動作の呼吸困難軽減を目的に在宅にてHigh Flow Nasal Cannula(以下HFNC)を導入した.呼吸困難を伴う食事・入浴の際に使用し,SpO2の改善を認めた.継続使用における問題点として,機器運搬の煩雑さやカニューレのずれがあった.対策として小型の機種に変更し,延長回路を導入した.また,カニューレの固定性を高める為に,持続陽圧人工呼吸療法用ヘッドギアを併用した.HFNC導入4ヶ月後に悪性リンパ腫を併発し,その3ヵ月後に非侵襲的陽圧人工呼吸療法(以下NPPV)へ移行し,その後永眠した.HFNC期間中は体重を維持し,楽しみである入浴が可能な生活を継続できた.本症例より在宅でも安全なHFNC導入は可能であり,NPPV移行までの呼吸サポートとしての有用性が示唆された.
著者
白井 暁彦 長谷川 晶一 小池 康晴 佐藤 誠
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.117-124, 2002 (Released:2008-07-30)
参考文献数
9
被引用文献数
3 4

我々は「タンジブル・プレイルーム」の実証コンテンツとしてインタラクティブ作品「ペンギンホッケー」を開発した.このシステムは,プロジェクタを用いた接触可能な映像空間,大空間が扱えるフォースフィードバックディスプレイを持った通常の何もない子供部屋である.子供たちはコンピュータによって生成されたオブジェクトだけでなく,友達や実空間の物体とともにインタラクションすることができる.ペンギンホッケーは,人工知能ペンギンと遊ぶ,シンプルな3次元ホッケーゲームである.プレイヤはコンピュータで生成されたオブジェクトと,友人といっしょにインタラクションを楽しめる.このコンテンツは小学校程度の低年齢層の子供に体験者層を設定している.このシステムは複合現実感のアプリケーションの1つとしてだけではなく,自然な生活空間への触知の実装でもある.
著者
井村 亘 石田 実知子 渡邊 真紀 小池 康弘
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2-2, pp.433-439, 2018

本研究は,高校生の自傷行為に対する自己および他者に対するネガティブなスキーマと対人ストレスとの関連を明らかにすることを目的に,高校生に対して無記名自記式の質問紙調査を実施した.統 計解析には553人分のデータを使用し,ネガティブなスキーマが対人ストレス認知を介して自傷行為 に影響するとした因果関係モデルを構築し,そのモデルの適合性と変数間の関連性について構造方程 式モデリングにより検討した.仮定した因果関係モデルのデータへの適合度は統計学的許容水準を満 たしていた.変数間の関連性は,自己および他者に対するネガティブなスキーマが対人ストレス認知 に対して有意な正の関連性を示し,同時に対人ストレス認知が自傷行為に対して有意な正の関連性を 示していた.なお,本分析モデルにおける自傷行為に対する寄与率は35.0% であった.本研究結果は, 高校生の自傷行為に対する有効な支援方法の開発に対して一定の示唆を与えると考える.
著者
奥下 竜太郎 吉村 奈津江 神原 裕行 辛 徳 ベルカセム アブデルカデル ナサルディン 小池 康晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.326, pp.1-6, 2014-11-14

脳活動を用いてこれまで手首などの動作や運動イメージを識別した報告がされてきたが,手指などの末端の動きや力の強弱において脳波(EEG)を用いて識別した報告はされていなかった.本研究では,EEGを用いて皮質信号源電流推定を行い手指の屈曲,伸展および力の強,弱において,高い精度で識別出来る事を確認した.皮質信号源電流は脳波(EEG)と核磁気共鳴画像法(MRI)の脳データを用いて,階層的変分ベイズ法(VBMEG)により推定された一次運動野,前運動野,補足運動野の波形とした.また動作と共に神経細胞の発火頻度が変化することから,波形の周波数スペクトルを用いて識別することで高い識別率が得られる事を確認した.
著者
小池 康
出版者
筑波大学文藝・言語学系
雑誌
文芸言語研究 言語篇 (ISSN:03877515)
巻号頁・発行日
no.44, pp.193-219, 2003

本稿は、小池(2002a、b、2003)において提示した、いわゆるモダリティ副詞の明治期以降における変遷過程の解明およびそのモデル化を目指す研究の一環として、モシカスルト・ヒョットスルト・コトニヨルト、およびこれらの変異形に関して考察しようとするものである。 ...
著者
辛 徳 嶋田 修 佐藤 誠 小池 康晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1860-1869, 2004-09-01
被引用文献数
12 3

これまで,人腕のインピーダンスは,マニピュランダムにより摂動を与えることで計測されてきた.これらの実験結果はいずれも摂動区間の平均値なので,時間に対して連続的に変化するスティフネスは測定不可能であり,その摂動区間以外には測定できない.更に,このような摂動実験環境では運動中や接触作業中の変化するスティフネス特性を解析することは難しい.そこで,本研究では表面筋電信号を運動指令とする筋肉骨格系のモデルを作成して,このモデルから直接スティフネスを推定する方法を提案する.このモデルは筋肉の長さの変化項及び筋肉の硬さの変化項を線形関数で表現し,関節トルクを運動指令に関して2次まで表現した.そして,このモデルのパラメータは,筋電信号と力センサから計測した関節トルクを用いて最小二乗法により求めた.その結果,パラメータの推定に使用していないデータに関しても関節トルクを推定できるようになり,スティフネスの連続的な変化値やスティフネス楕円体を推定することができた.
著者
小池 康晴
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

筋電図によるアクティブな制御が可能な防水型福祉機器のために、筋電図用防水アクティブ電極を開発した。また、水中と空気中で計測した波形の質を比較し、性能の低下がほとんど見られずに計測できることを確認した。また、無線による通信のために、消費電力を抑えるシステムを構築した。さらに、防水型の義手の試作として、安価なサーボモータを用いた義手を製作した。関節角度とインピーダンスを可変に設定することで、位置だけでなく力の大きさも筋電図による制御可能とした。
著者
小池 康晴
出版者
東京工業大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

物の操作を獲得するためには,学習や慣れが必要である.これまでは,試行錯誤により操作を覚える,あるいは繰り返し反復練習により熟練度を上げる方法だけで,システマテイックに教育する方法は提案されていない.さらに,高齢化社会を迎え,高齢者がたとえば,車の運転を行なうときに,それまでに獲得した操作にたいする感覚と,筋肉骨格系の衰えによる運動系の誤差が生じると危険な場面に遭遇したり,最悪の場合事故を起こすことになってしまう.安全性という観点からも,物の操作の獲得過程を明らかにすることは重要である.本研究では,「視線の移動が操作の習熟度と関連しているのではないか」という点に着目し,操作に必要な情報をどのように取得するかという,学習と視線の移動の関係を明らかにし,時空間パターンの中からどこの情報をどのような割合で操作に用いているのかを計算機上でのモデル化と行動実験を通して明らかにすることを目的としている.本研究では,複数の制御入力を用いて,最適な制御ができる位置を求めるモデルを強化学習を用いて作成した,強化学習を用いたため,どの位置を見るかは指示せず,最終的な運転結果ができるだけ将来にわたり良くなるような報酬を与えるだけで,学習を行うことができた.また,過去に示されている視野制限での運転方法と,学習によって獲得されたモデルでは,ほぼ同じ方策をとっていることもシミュレーションにより示して,本モデルの有効性を示した.また,行動実験において,視線計測を簡易なドライビングシミュレータを作成して行った.その結果,これまでに提案されているモデルが,幾何学的な情報に基づいて視線が決まっているものであったが,速度が速くなるにつれて視線の位置が遠くに変化することを新たに発見した.さらに,同じ速度であっても,習熟度によって視線が変化することも発見した.具体的には,習熟度が上がるにつれて視線が遠くの方にシフトし,その結果運転操作が滑らかになった.
著者
小池 康晴 川人 光男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.193-203, 1994-01-25
被引用文献数
19

従来人腕のモデルとして,関節トルクだけを考慮したモデルがよく用いられてきたが,実際は筋肉の発生する張力により関節トルクが生じる.筋肉が関節トルクを生じて運動が起きるモデルを構築するためには,筋肉の非線型な性質(長さ-張力曲線,短縮速度-張力曲線)や,腕のキネマティクス・ダイナミックスなどを考慮に入れなければならない.本論文では,これらの性質を考慮に入れて表面筋電信号から関節角加速度を推定する神経回路モデルを学習により獲得した結果とそのモデルをリカレント接続することにより平面内運動軌道を生成した結果について報告する.特に異なる運動では,運動指令の生成のされ方,筋肉の使われ方が異なるという仮説にのっとりモジュラ学習を取り入れた.