著者
小田中 悠 吉川 侑輝
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.315-330, 2018

<p> 本稿では,日常的な相互行為における期待の暗黙の調整メカニズムを,ゲーム理論を軸とした数理モデルによって説明することを試みる.その際,Goffmanが「ゲームの面白さ」論文で提示した,「変形ルール」というアイデアを精緻化することを通して,先行研究とは異なり,次の二点を考慮した上でモデル構築を行った.すなわち,人々によるゲーム状況への意味付与のダイナミクスを捉えうること,及び,経験的な検証可能性を考慮した上で,Goffmanのアイデアをフォーマルに記述することを目指した.そして,カラオケ・ボックスにおける次回歌い手の決定場面を分析することによって,本稿の視座が上述した二点の他にも,たとえば,チキンゲームのような,調整ゲームとは異なる均衡選択場面についても見通しをよくするものであることが示唆された.最後に,本稿のモデルが,公共空間における人々の相互行為を支えるルールの探求について,人々に参照されている「望ましさ」の基準(自らの利益よりも他者や集団の利益を優先するための基準)を捉えられるという点で有用なものであることが示唆された.</p>
著者
下石 和樹 安楽 誠 庵原 大輔 平山 文俊 門脇 大介 陣上 祥子 丸山 徹 小田切 優樹
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.55-60, 2018-02-10 (Released:2019-02-10)
参考文献数
8

Because it is essential to restrict phosphorus intake in dialysis patients, we investigated the phosphorus content per daily standard dose for eight different types of Chinese medicine and 12 different supplements, all of which are typically used by dialysis patients. Phosphorous contents in the range of 3-12 mg were detected in all of the Chinese medicines. Although 11 of the 12 kinds of supplements contained phosphorous, the levels were less than those in the Chinese medicines. The highest phosphorus content among those supplements was found in glucosamine, with a phosphorous content of 6 mg per dose. The phosphorous contents of glucosamine samples obtained from five different companies were all different. Taking these findings together, the intake of phosphorus by dialysis patients heeds to be restricted and the phosphorus contents of Chinese medicines and supplements need to be taken into consideration, by evaluating the total phosphorus intake per day for such patients. Pharmacists should pay attention to maintaining the serum phosphorus level within a reference value by effectively using a phosphate binder if necessary.
著者
川島 夏希 久永 貴之 浜野 淳 前田 一石 今井 堅吾 坂下 明大 松本 禎久 上村 恵一 小田切 拓也 小川 朝生 吉内 一浩 岩瀬 哲
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.237-243, 2019 (Released:2019-09-26)
参考文献数
24

【目的】せん妄を呈した進行がん患者における苦悩の実態の検討.【方法】国内14施設の緩和ケア病棟に入院中または国内10施設の一般病棟に入院し精神腫瘍科が介入中の進行がん患者のうち,せん妄と診断され抗精神病薬の定期投与を受ける患者を前向きに連続サンプリングした.苦悩の有無を緩和ケア専門医が判断し,患者背景,DRS-R-98で評価したせん妄の重症度を比較した.【結果】対象患者818名のうち99名(12.1%)に苦悩を認めた.年齢,39歳以下,認知症の有無に有意差を認めた.治療前のDRS-R-98(15.3±8.1点 vs 17.3±7.8点,p<0.02)は苦悩を伴う群で有意に低く,情動の変容は有意に高かった.【考察】せん妄を呈した進行がん患者で苦悩を伴うものでは年齢が低く,認知症の併存が少なく,せん妄の重症度は低く,情動の変容が強いことが示された.
著者
小田 寿典
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 = THE SHIRIN or the JOURNAL OF HISTORY (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.858-879, 1969-11-01

アリ゠エクベル著『中国記』はH.Yule──H.CordierやG.Ferrandなどの東西交渉史の総括的研究書に取り上げられず、また十分に研究されないで二次的史料のようにみられてきたきらいがある。しかし、本書のオリジナリティは高く評価されてもよいと考える。テキストの全容はいまだ校刊されていないが、明代中期の中国事情を伝えるイスラム文献として興味深い。本稿は主としてオスマン゠トルコ語訳の一写本により、本書の旅行記的性格について述べると共に、文献的評価に関説する。
著者
小田 淳一
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

物語テクストに頻出する様々なレベルにおける「反復」は,同一レベルの同一単位について以外にも,隠喩や換喩,或いは提喩などの転義的操作を経たものや,更に微細な類似性に基づくものまで認められる.このような反復は,旋律を装飾する変奏の一種で,定旋律を他声部が模倣的に先取りする手法である「前模倣」に比することが出来る.本報告は『千一夜物語』のテクストを対象として,装飾としての反復について考察する.
著者
坪井 祐太 森 信介 鹿島 久嗣 小田 裕樹 松本 裕治
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.1622-1635, 2009-06-15
被引用文献数
4

本研究では文の一部にのみ単語分割情報を付与する部分的アノテーションに注目する.重要な部分や作業負荷の少ない部分にのみアノテーションをすることにより,新しい分野に対応するための学習データを効率的に作成できる.この部分的アノテーションを使用して条件付き確率場(CRF)を学習する方法を提案する.CRFは単語分割および自然言語処理の様々な問題でその有効性が示されている手法であるが,その学習には文全体へのアノテーションが必要であった.提案法は周辺尤度を目的関数にすることで部分的アノテーションを用いたCRFのパラメータ推定を可能にした.日本語単語分割器の分野適応実験において部分的アノテーションによって効果的に性能を向上させることが可能であったことを報告する.In this paper, we address word-boundary annotations which are done only on part of sentences. By limiting our focus on crucial part of sentences, we can effectively create a training data for each new target domain by conducting such partial annotations. We propose a training algorithm for Conditional Random Fields (CRFs) using partial annotations. It is known that CRFs are wellsuited to word segmentation tasks and many other sequence labeling problems in NLP. However, conventional CRF learning algorithms require fully annotated sentences. The objective function of the proposed method is a marginal likelihood function, so that the CRF model incorporates such partial annotations. Through experiments, we show our method effectively utilizes partial annotations on a domain adaptation task of Japanese word segmentation.
著者
小田 亮
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.22, pp.131-140, 2000-10-31

日本人における配偶相手の好みにみられる性差を、結婚相手募集広告の分析から研究した。一九九七年一〇月から二〇〇〇年一月までに個人広告雑誌に掲載された七八〇件(男性によるもの五七七件、女性によるもの二〇三件)の広告を分析対象とした。要求または提示されている特徴を比較すると、男性では要求された特徴と提示された特徴の数に違いはないが、女性は提示数よりも要求数の方が多かった。また女性は男性よりも要求数が多く、提示数は少なかった。男性は自らの経済的状況あるいは社会的地位を提示する傾向があり、女性はそれを要求する傾向があった。家庭への投資に関しては提示には偏りがなかったが、女性の方がより要求する傾向があった。身体的な特徴については要求、提示のどちらにも性による偏りがみられなかったが、相手に写真を要求するのは女性の方が多かった。連れ子の拒否については偏りがなかった。一方男性の方が女性よりも連れ子を受け入れる態度を示す傾向があった。男性は年下の女性を相手として好んだが、女性については充分なデータが得られなかった。これらの結果を先行研究ならびに質問紙を使った調査の結果と比較検討した。